業務プロセス分析の方法とは?意識すべきポイントやITツールを紹介
業務プロセス分析に興味があってもなかなか進めていくのは難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。分析の方法を知ってしまえば、比較的対応は複雑ではありません。本記事では、分析方法の解説と、業務プロセスを把握するための便利なITツールを紹介します。
目次
業務プロセスとは何か
業務プロセスとは、1つひとつの業務を多面的に捉え、全体最適化を図るための考え方です。企業、部門、部署、チーム、個人などのさまざまな枠組みで、業務の問題点を洗い出し、タスク配分や手順などの改善に利用されます。
よく似た言葉に業務フローというものがありますが、そのニュアンスは業務プロセスとは異なります。
業務フローが1つの業務の進め方を示すための小規模な表現なのに対して、業務プロセスは複数の業務が連なって構成されるため、単一業務のフローをつなぎ合わせた集合体ともいえます。
そのため、業務プロセスは複数の業務の全体像を把握し、各業務の流れだけでなく、業務間の繋がりやバランスなどを可視化するための術といえるでしょう。
業務プロセス改善の目的とは
人口減少やニーズの多様化による働き方改革が求められる日本にとって、業務プロセス改善は重要な取り組みです。業務プロセス改善の内容次第では、業績の好転やEX(従業員満足度)の上昇にもつながる可能性があります。
それほど大きな影響を持つ業務プロセス改善には、主に4つの目的があります。
業務を可視化する
業務の進行が適切かどうかを見極めるには、判断材料が必要です。業務の内容や手順、ボリューム、メンバー間の連携度合いなどの現状を可視化することで、課題の把握に活用します。
業務課題が明確になれば、改善目標を立てやすくなることに加えて、業務に関わる全メンバーの意識形成にも役立つでしょう。
また、定期的に業務を可視化することによって、最新技術と比較して古くなっているツールやマシンを特定・交換し、時代に合った業務環境にアップデートし続けることも可能です。
業務を標準化する・属人化を防ぐ
限られた従業員にしか担当できない業務が生まれることには、一部の従業員に業務負荷が偏る、業務をマニュアル化できない、担当者が休むと現場が回らないなどのデメリットがあります。
このような属人化を防ぐためには、誰にでも任せられる状態に業務を標準化することが大切です。業務パターンが確立されれば、前述のデメリットが解消されるだけでなく、より効率的に業務を進めるための人材配置やITツール導入も検討できるでしょう。
定量的にコストを把握する
企業として利益を最大化させるためには、売上を伸ばすだけでなく、コストを削減していくことも重要です。そのためには業務工数を定量的に把握する必要があります。
業務に必要な人数と1人あたりの所要時間で人件費を割り出し、移動費・通信費・ツール費なども踏まえながら、改善すべき業務に優先順位をつけていきます。
業務効率化による生産性向上
技術の進歩やニーズの変化が起こる度、業務プロセスには改善の余地が生まれます。それを放置し続けていると、業務に無駄が生まれて生産性の低下を招き、最終的には企業としての競争力を失ってしまうリスクがあります。
業務プロセスを定期的に見直し、生産性を高めていくことは、変化の激しい時代を生き抜くためにも重要です。顧客が求める価値に対して、迅速かつ柔軟に対応するためには、業務プロセスの改善による効率化がカギを握るでしょう。
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業務プロセス分析の基本的な手順
業務プロセス分析には、まず業務の可視化が重要となってきますが、それをどのように行えば実現できるのかイメージできていない方もいるのではないでしょうか。
ここでは業務の可視化に必要な手順と、収集すべき情報を解説します。
1.業務を各プロセスに分解する
多くの業務には、開始から完了までの間にいくつかの区切りが存在します。それを特定するために、分岐点となるプロセスごとに業務を分解します。アクションの内容が変わる、作業環境が変わる、担当者の手を離れるなどが分解の判断基準になります。
業務には、必ず順番通りに行わなければいけないという決まりはありません。限られたリソースの中で効率的に業務を進めるためには、同時並行で実施できるポイントの見極めが重要です。業務をプロセス単位で分解することで、並行して進められる業務の判別ができるようになります。
また、業務を分解することによって、ボトルネックの原因分析や改善後の効果測定にも役立てることができるでしょう。
2.フローを細分化してプロセス間で関連付ける
プロセス単位で業務を分解した後は、全てのタスクを洗い出し、フローチャートを作成しましょう。
担当者を分け、並行して業務を進める場合は、プロセスの開始・完了のタイミングで情報の同期タイミングを設定することが重要です。
情報を同期するタイミングがあることで、特定の業務だけ過剰に進行してしまい、業務のバトンパスの回数が増える、情報の抜け落ちで手戻りが発生するなどのリスクを予防できます。
3.プロセス別に担当人数と工程時間の把握
プロセスごとに作成したフローチャートをもとに、プロセスの完了に必要な人数と時間を試算します。
時間に関しては、作業環境によって処理速度が異なるため、PCのスペックや利用しているツールも確認しておきましょう。
また、業務の難易度と担当者のスキルのバランスが取れているかどうかも、業務を円滑に進めていくうえで重要なポイントになります。
4.業務全体とプロセス別のコストを把握
まずプロセスごとのコストを把握したうえで、それらの合計で業務全体のコストを算出します。具体的にはプロセス単位で算出した人数、1人あたりの単価、工程時間を乗算し、そこで出た人件費と、既存システムの維持費や業務委託費などの費用を足して導き出します。
想定以上にコストがかかっているものは、人員を過度に配置している、あるいは担当者の負担が大きい可能性があります。
後者の場合は、担当者にヒアリングをかけて業務の障害となっている箇所を特定することが大切です。状況によってはメンバーの増員やRPAなどのデジタルツールで代替できる領域がないかを検討する必要もあるでしょう。
また、並行処理を行うための人員を配置すべきかどうかも、コストとの兼ね合いを考慮したうえで判断していきます。
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業務プロセス分析の方法
業務プロセスを分析するうえで重要なのは、改善につなげるための材料を探し当てることです。どれほど細かく業務を分析しても、改善への手立てが見つからなければ時間とコストを浪費してしまうことになります。
では、改善につなげるための判断材料はどこに眠っているのでしょうか。ここでは5つの分析対象を解説します。
業務マニュアルの確認
業務の手順やルールが書かれているマニュアルに対しては、以下の項目を確認しましょう。
- 業務の手順や範囲に漏れはないか
- 情報が点在して分かりにくい箇所はないか
- 判断基準が曖昧になっている箇所はないか
マニュアルは後任への引き継ぎの際にも活用されるため、知識・経験のない新入社員が見ても理解できるように図や表を入れ込むなど、視覚的な分かりやすさも重視されます。また、判断材料を増やすために、クレームやトラブルの過去事例を踏まえた想定パターンの作成も効果的です。
マニュアルの内容が分かりやすい状態になれば、業務の遅延や停滞が起こりにくくなり、業務の処理スピードが向上するだけでなく、人件費の削減や属人化の予防にも貢献できるでしょう。
業務分担表の確認
業務分担表では、細分化された業務の全体像が、第三者でも把握できるような構成が重要です。
- 誰がどの業務を担当し、どの役割を担っているのか
- 何名で業務が処理されているのか
- 業務の完了日がいつに設定されているか
- 現時点で業務がどこまで進行しているか
これらを把握することによって、特定の従業員に業務が偏っている、責任の所在が不明瞭になっている領域があるなどの問題点が浮き彫りになります。問題点が分かることで、業務の取りこぼしを指摘する、遅れているパートに人員を割くなどの対処が、責任者以外の従業員にもできるようになります。
業務フロー図の確認
業務フロー図では、業務のつながりが可視化されることによって、余分な要素を発見しやすくなります。
- 時系列が整理されているか
- 業務の分岐が複雑化していないか
- 省略できるプロセスは存在していないか
- 関係者の洗い出しが十分にできているか
これらを確認することによって、各セクションで業務が止まる要因を分析する、関係各所との協力関係を明確化するなどを通じて、業務改善に役立てることができます。
業務日誌の作成
業務日誌の目的は、現場で発生している日々のトラブルを把握することにあります。業務の手戻りが頻発している、関係各所との調整が上手くいかない、顧客からクレームが発生しているなど、トラブルの内容は多種多様です。
それらの原因を追究していく中で、次第に業務の課題が明らかになります。判明した課題からトラブルの再発防止策を検討し、業務改善へとつなげていきましょう。
担当者へのヒアリング
現場のリアルな声には、業務フロー図や業務分担表では見えにくい情報が含まれています。
- 不明確になっているルール
- 従業員の間での認識の不一致
- 個人のスキルに依存している業務
- 業務遂行に支障をきたしている伝統や慣習
現場の声に耳を傾けることで、これまで把握できていなかった小さな火種が見えてくるでしょう。
業務プロセス分析時のポイント
業務プロセスを改善していくには、分析結果で判明した業務の問題に対して「なくす」「減らす」「変える」という選択肢からアクションを選び取ります。それらの選択肢から適切なものを選び取るために重要な分析ポイントは、業務の図式化とつながりの2つです。
業務が可視化できるように図式化すること
厳密に書こうとすると、業務はどうしても複雑になってしまいます。それを分かりやすい図に落とし込み、可視化するために使用されるのがBPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)です。
BPMNはプロセス完了までの一連の業務プロセスを視覚的に表現するための手法で、国際基準(ISO19510)に準拠したフレームワークです。業務プロセスの記述方法を統一することで、情報粒度や業務の組み合わせ方にばらつきが生まれることを予防するメリットがあります。
また、業務プロセスのリスクを分析するには、業務の担当部門だけでなく、管理部門をはじめとした他部門の視点も参考になります。幅広い関係者が多角的に見ていくためにも、記述法を統一することは重要といえるでしょう。
業務同士のつながりを意識すること
業務は逐次・並行・選択という種類に分けることができ、それぞれの業務がどのようなフローでつながっているかを意識することが大切です。
特にアクティビティの制限や階層の分岐などにより、複数の業務プロセスが連なっている場合は、単一プロセスの改善では別のプロセスに残る課題の影響を受けてしまい、本質的な課題解決につながりません。そのため、業務を効率化していくには、業務プロセス間のつながりにも注意することが求められます。
▷タスク管理に役立つ知っておくべきフレームワーク7選とツールを紹介!
業務プロセス管理におすすめのITツール5選
業務プロセスの可視化や分析にツールを用いることも多く、今では数多くの企業が業務効率化に向けたITツールを提供しています。
ここでは業務プロセス管理において、おすすめのITツールを5つ紹介します。
1.kintone
kintoneは、サイボウズ株式会社が提供するクラウド型の業務アプリ構築ツールです。シンプルな機能と豊富な拡張性を備え、あらゆる業種・部署での利用が想定されています。
kintoneの特徴は、サンプルアプリというアプリのひな形を使い、プログラミングなしで業務アプリを開発できる点にあります。これにより、最短10分という短時間で運用スタートできる強みを持っており、同社はこの強みを手軽にサービスを受けられるファストフードやファストファッションになぞらえて「ファストシステム」と呼んでいます。
提供元 | サイボウズ株式会社 |
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初期費用 | 無料 |
料金プラン | スタンダードコース:1,650円/月(年額19,404円/1ユーザー)ライトコース:月額858円/1ユーザー(年額10,087円/1ユーザー)※5ユーザーから契約可能 |
導入実績 | 20,000社以上の導入実績 ※導入担当者の93%が非IT部門(2020年12月時点) ※東証プライムの3社に1社が導入済み(2022年3月時点) |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
2.Salesforce
Salesforceは、株式会社セールスフォース・ジャパンが提供するSFA/CRMツールです。営業活動の支援と顧客エンゲージメントの向上を目的として利用されます。
Salesforceの特徴は、リード獲得した見込み顧客の情報を集約し、購買意欲を高めるためのマーケティング活動と営業活動を結びつけ、見込み顧客の顧客化、さらにはファン化を最短距離で実現するための支援機能が豊富に用意されている点です。商談タイミングの見極めや、多様なチャネルでの定期接点の獲得などを通じて、成約率の向上をサポートします。
提供元 | 株式会社セールスフォース・ジャパン |
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初期費用 | 無料 |
料金プラン | Essentials:3,300円/月(1ユーザー) Professional:9,900円/月(1ユーザー) Enterprise:19,800円/月(1ユーザー) Unlimited:39,600円/月(1ユーザー) |
導入実績 | 150,000社以上の導入実績 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
3.Senses
Sensesは、株式会社マツリカが提供する組織ナレッジ活用型の営業支援ツールです。情報セキュリティマネジメント「ISO 27001(ISMS)」の認証を取得しており、セキュリティ面の安全性の担保にも注力しています。
Sensesの特徴は、組織としてのナレッジ活用に適している点です。取引企業の情報を自動取得するだけでなく、営業活動における行動記録、ネクストアクション、目標、リスクなどを集約し、チーム全体のパフォーマンス向上に役立てるための機能を揃えています。
提供元 | 株式会社マツリカ |
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初期費用 | 無料 |
料金プラン | Starter:27,500円~/月(5ユーザー) Growth:110,000円~/月(10ユーザー) Enterprise:330,000円~/月(20ユーザー) |
導入実績 | 2,200社以上の導入実績 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
4.Trello
Trelloは、アトラシアン株式会社が提供するタスク管理ツールです。2018年より日本市場に本格参入し、シンプルな管理機能が話題を呼んでいます。
Trelloの特徴は、付箋を貼るような感覚でチームに対して気軽に情報を共有できる点です。日付ごとや担当チームごとなど、状況に応じてリストを作り分けることができ、アサイン状況などの可視化に役立てることができます。
提供元 | アトラシアン株式会社 |
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初期費用 | 無料 |
料金プラン | FREE:無料 STANDARD:5ドル/月(1ユーザー) PREMIUM:10ドル/月(1ユーザー) ENTERPRISE:17.5ドル/月(1ユーザー) |
導入実績 | 全世界で2500万人以上のユーザー登録実績 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
5.COCOMITE(ココミテ)
COCOMITE(ココミテ)は、コニカミノルタ株式会社が提供するオンラインマニュアル作成・運用サービスです。業務の属人化や情報共有に対する悩み解決に役立つ機能が中心に搭載されています。
COCOMITEの特徴は、マニュアルとしての質に着目した点です。情報の量や分かりやすさを考慮してフォーマットが作られており、企業担当者はそれに沿って入力するだけで、ユーザーに対して必要な情報を厳選して届けられるようになっています。
提供元 | コニカミノルタ株式会社 |
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初期費用 | 71,500円 |
料金プラン | エントリープラン:24,200円/月 スタンダードプラン:66,000円/月 エンタープライズプラン:242,000円/月 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
業務プロセスを分析して業務改善を進めよう
本記事では、業務プロセス改善の目的から、基本手順や分析方法、おすすめのITツールなどについて紹介しました。
業務プロセスの改善は、昨今話題のDXでも注目を浴びており、社会やニーズの変化に対応できる素早さと柔軟さを身に付け、企業が持続的な競争力を手に入れるためにも欠かせない取り組みです。
トラブルが発生した際、どうしても手元の問題に目がいきがちですが、業務プロセスの可視化を通じて全体像が見えるようになると、業務の因果関係が明確になり、本質的な問題を発見しやすくなります。
また、業務プロセスを分析することで、業務を効率的に進めるだけでなく、属人化の予防によるチーム全体のパフォーマンス向上も期待できるでしょう。
業務プロセスの改善を通じて、顧客提供価値を高めながら、企業存続のカギとなる利益の最大化を目指していきましょう。
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