労務管理士と社労士の違いとは?仕事内容や資格取得のコツを紹介

最終更新日時:2024/03/21

労務管理システム

労務管理士と社労士の違い

労務管理士と社会保険労務士は、間違われやすいですが内容の異なる資格です。資格取得を目指す場合は、違いを把握しておかなくてはなりません。本記事では、労務管理士と社労士の違いについて、仕事内容や資格取得のコツを紹介します。

労務管理士について

労務管理士とは、労働基準法や労働管理に関する深い知識を有し、適切な労働環境の構築を目的に改善・整備を行える能力を認定した民間資格です。人事・労務分野の専門的職務能力の向上を目的としており、一般社団法人日本人材育成協会と一般社団法人日本経営管理協会が運営しています。

法令遵守を前提に、従業員の就業管理業務を行うための専門知識が習得可能です。民間資格であるものの、労務管理のスペシャリストだと客観的に証明できるため、企業へのアピールポイントになります。

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労務管理士の仕事内容

労務管理士の具体的な仕事内容は、以下が挙げられます。

  • 新規雇用者の募集業務と労働契約の締結
  • 従業員の昇進や異動に伴う労働条件の管理・変更
  • 社会保険や労働保険に関する手続き
  • 従業員の給与や賞与の計算
  • 従業員の健康診断の管理
  • 労働環境の整備
  • 従業員の教育訓練に関する業務
  • 就業規則の更新・管理
  • 退職に関する手続き

労務管理士の種類

労務管理士は2種類あり、「1級労務管理士」と「2級労務管理士」に分けられます。2級労務管理士は学歴や実務経験を問わず、20歳以上であれば誰でも受験可能です。2級労務管理士として認定されたら、1級労務管理士を目指せます。

1級労働管理士は、さらにステップアップしたい方向けの資格です。2級の認定後に資格者研修を受講し、より専門的な知識を身につけられます。昇格審査試験に合格すると、1級労働管理士として認定されます。

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社会保険労務士(社労士)について

社会保険労務士(社労士)とは、労働法や社会保険法などの法令知識を有しており、企業の人事・労務管理のアドバイスを行う専門家です。企業の成長には、人材・物・お金・情報といった資源が必要とされています。なかでも社労士は「人材」に関する専門家として、事業の発達や労働者の福祉向上を目的に業務を行います。

社労士は国家資格であり、特に専門性が高いといわれる「8士業」の1つです。有効期限や更新はないため、資格取得後は生涯にわたり活躍できます。

社会保険労務士の仕事内容

社労士の仕事内容は、1号業務・2号業務・3号業務の3つに分けられます。それぞれの業務内容は、以下のとおりです。

業務の種類業務内容
1号業務
  • 労働社会保険諸法令に基づく各種申請書や届出書の作成と提出
  • 各種申請に関する行政機関の調査・処分に対して行う主張や陳述の代理
2号業務
  • 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類等の作成(就業規則や労働者名簿、賃金台帳など)
3号業務労務管理や社会保険法令などに関する事項についてのコンサルティング業務

1号業務と2号業務は独占業務のため、報酬を得ながら業務にあたれるのは社労士だけです。3号業務は社労士以外も行えますが、経験や知識を要する業務のため、1号・2号業務よりも難易度が高くなります。

労務管理士と社労士の違い

労務管理士と社労士の主な違いは、以下の3つが挙げられます。

  • 国家資格と民間資格
  • 仕事の担当範囲
  • 活躍する場面

それぞれを詳しく解説するので、どちらの資格取得を目指すかの参考にしてください。

国家資格と民間資格

労務管理士と社労士では資格の種類が異なります。労務管理士は民間資格であり、社団法人の独自基準で知識量や能力を判定します。一方で社労士は、国家資格です。国家資格は法律に基づいて専門的な知識や能力があると証明される資格で一定の社会的地位が保証されており、社会からの信頼性も高いのが特徴です。

仕事の担当範囲

労務管理士に比べ社労士は仕事の担当範囲が広い傾向があり、担当範囲が広い理由としては国家資格ならではの独占業務があるためです。労働社会保険諸法令に基づく申請書や届出書、帳簿書類の作成などを行えて、社員の健康保険や雇用保険の手続きなども可能です。

一方で労務管理士には独占業務は行えないため、労働契約の締結や労働環境の整備、退職手続きなどの業務範囲に限定されます。労務管理士の担当範囲を社労士が担うことはできても、逆を行うと法令違反となる場合もあるため注意しましょう。

活躍する場面

社労士は業務範囲に制限がないため、専門家として独立開業が可能です。もちろん企業内でも活躍できるので、好みの働き方を選べます。

労務管理士は独占業務を行えないため、企業内での活躍が主となるでしょう。労務管理のスペシャリストとして、社内での幅広い活躍が期待されます。

3号業務のコンサルティングでなら労務管理士でも独立できますが、申請書等の作成ができない点はビジネスに不利と言わざるを得ません。コンサルティング業務はさまざまな知識や経験を必要とするため、労務管理士では難しい面も多いでしょう。

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労務管理士・社労士の資格を取得する方法

労務管理士と社労士の資格取得方法について、それぞれ分けて解説します。各方法の流れや、試験の難易度などもみていきましょう。

労務管理士の資格を取得する方法

労務管理士の資格を取得する方法は、以下の4つです。

  • 公開認定講座
  • 通信講座
  • Web資格認定講座
  • 書類審査

公開認定講座は全国で順次開催されており、講師から丁寧な指導を受けられます。公開認定講座に出席して資格認定試験に合格すれば、労務管理士の資格を取得可能です。

公開認定講座を受けるのが難しい場合は、通信講座やWeb資格認定講座でも学べます。通信講座で基礎課程を履修後、到達度テストへの合格をもって認定試験も通過とみなされるのです。

Web資格認定講座を利用するなら、基礎課程をeラーニングで学びましょう。資格認定試験もインターネットで受験可能です。受験日程や場所も定められていないため、好きなタイミングで受験できます。

経歴と課題論文による書類審査に合格し、資格を取得する方法もあります。労務管理に関する実務経験が3年以上あることの証明と、労務管理士資格取得者からの推薦が必要です。

労務管理士の合格率

労務管理士の合格率は非公開です。各種講座で学んだ内容をもとに試験を行うため、真剣に学べば合格難易度は高くないと考えられます。Web資格認定試験の合格基準点は70点以上なので、目安の1つにしてください。

労務管理士の勉強時間

労務管理士の勉強時間は、資格の取得方法によって異なります。公開認定講座であれば、1回3時間の講座を集中して受ければ十分に合格を目指すことが可能です。

通信講座やWeb資格認定講座も、同等程度の時間で基礎課程を履修できるでしょう。復習をする場合でも、そこまで多くの時間を確保する必要性は考えられません。

社会保険労務士の資格を取得する方法

社会保険労務士の資格を取得するには、受験資格を満たす必要があります。「学歴」「実務経験」「試験合格」のどれかの条件を満たしていれば、受験資格を得ることが可能です。具体的な条件は以下の表を参考にしてください。

学歴以下どれかの学歴があること
  • 大学、短期大学卒業
  • 大学における要件単位修得
  • 専門学校卒業
  • 厚生労働大臣が認めた学校卒業
  • 各種学校等卒業
  • 専門職大学、専門職短期大学卒業
  • 高等専門学校(5年制)卒業
  • その他(旧高等学校令、旧大学令、旧専門学校令による各学校の卒業または修了)
実務経験以下のどれかに3年以上従事していること
  • 健康保険組合や労働保険事務組合等の役員または従業者
  • 公務員等の役員または職員
  • 日本郵政公社の役員または職員
  • 全国保健協会、日本年金機構の役員または従業員
  • 社会保険労務士または弁護士の補助者
  • 労働組合の専従役員
  • 法人企業または社団・財団の労務担当役員
  • 労働組合の職員または事業を営む個人の従業者
試験合格
  • 社労士以外の国家試験の合格
  • 司法試験予備試験等の合格
  • 行政書士試験の合格

社会保険労務士として実際に働くには、全国社会保険労務士連合会名簿への登録と都道府県社会保険労務士会への入会が必要です。

名簿登録には実務経験2年以上、もしくは事務指定講習の受講が欠かせません。合格したあとの要件まで満たすことで、社労士としての活動を本格化させられます。

社会保険労務士の合格率

社労士試験の合格率は、令和2年で6.4%、令和3年は7.9%、令和4年は5.3%と、年度によって差があります。いずれにせよ高い合格率とはいえないため、合格に向けて綿密な対策を練らなくてはなりません。

令和4年における、社労士試験の配点は以下のとおりでした。

  • 選択式試験……各問1点として、1科目5点満点、合計40点満点
  • 択一式試験……各問1点として、1科目10点満点、合計70点満点

上記に対して合格基準は、選択式試験で総得点27点以上(各科目3点以上)、択一式試験は総得点44点以上(各科目4点以上)です。

総得点で見れば、全体の6〜7割程度の点数を獲得すれば合格に手が届きます。各科目の必要点数も満たさなくてはならないため、いずれかだけに特化するのではなくバランス配分が大切です。

社会保険労務士の勉強時間

社労士の試験の合格に必要な勉強時間は、個人差があるものの、約1,000時間ほどといわれています。なお、社労士の試験は毎年8月の第4日曜日に行われます。1日に確保できる勉強時間がどのくらいかによって、勉強する期間を検討しましょう。

1日10時間確保できるなら100日で1,000時間ですが、1日2時間なら500日かかる計算です。試験日から逆算して、勉強開始時期を決めるとよいでしょう。

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資格取得が目指せる通信講座2選

ここでは社労士の資格取得が目指せるおすすめの通信講座を紹介していきます。

フォーサイト

フォーサイトは累計受講者数40万人を超えている資格取得の通信教育講座であり、社労士の資格取得も可能です。

難関と言われている社労士資格の合格率は26.4%(2023年度)であり、全国平均の合格率と比較して4.13倍という高い合格率を誇っています。豊富な図・イラスト、フルカラーの参考書や講義動画などをダウンロードでき、いつでもどこでも学べる仕組みが整っているのが高い合格率につながっているのです。

フォーサイトの詳細はこちら

資格の大原

資格の大原は教室通学・映像通学・通信講座の3つから、ライフスタイルに合わせて受講スタイルを選べるのが特徴の資格講座です。

実績のある教師陣からの充実した指導やフォローアップ、充実したカリキュラムとフォローアップがあるため、資格取得に向けて万全の体制で学ぶことができます。

なお、社労士の講座については、24時間でインプット講義を受けられるため、効率的に学習ができると支持を得ています。

労務管理士と社労士の資格取得のコツ

労務管理士と社労士の資格を取得するコツを2つ紹介します。いずれの資格取得にも事前学習が必須となり、学び方のなかにポイントがあるのです。

過去問題集を準備する

労務管理士や社労士の試験合格を目指すのなら過去問題集(過去問)を活用して試験対策をしましょう。

過去問を解くことで今の課題が明確になり、解けなかった部分だけを教本などで学び直すと効率的に勉強を進められます。

また、過去問を繰り返し解くことで、現在の実力と合格までの差を理解できます。差を埋めるためにどのくらいの勉強時間が必要か、大まかな目安が把握できるでしょう。問題の出題傾向や項目ごとの時間配分なども見えてくるのです。

過去問から勉強を始めると、知識を得るだけではない本格的な試験対策ができます。まずは過去問を解くことから勉強を始めてみてください。

勉強スケジュールを計画する

あらかじめ試験までの勉強スケジュールを計画しておきましょう。行き当たりばったりで勉強を進めることになると、試験日までにすべての範囲が終わらない可能性があります。いつ何を勉強するのか、いつまでにどの範囲を終わらせるのか、しっかり計画を立ててください。

スケジュールは余裕を持った設定がおすすめです。勉強の時間を取れなかったり、なかなかやる気が出なかったりして、計画通りに進まないこともあるでしょう。過密すぎるプランだと、計画のずれに対応できません。体調不良などのアクシデントも踏まえて、計画には余裕を持たせることが重要です。

大まかな計画を立てたら、1週間や1日単位の勉強計画を立てます。短いスパンのスケジュールは勉強への意識を高めるのに有効なので、うまく活用してください。

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労務管理士と社労士の違いを理解しておこう

労務管理士と社会保険労務士は、どちらも人事・労務管理に関する専門性を担保できる資格で、労務管理士は民間資格・社労士は国家資格という点で大きく違います。

独占業務をはじめ、両者の業務範囲の差についても把握しておきましょう。仕事場の選択肢のほか、資格取得の条件や試験難易度も異なります。

労務管理士と社労士は似ていますが異なる部分もかなり多いので、違いを理解したうえで資格取得を目指してください。

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