ITアウトソーシングのメリット・デメリット|委託を失敗しない秘訣
主に、IT業務における専門性の獲得やIT人材不足を補う目的にて活用される、ITアウトソーシング。業務範囲や内容によっていくつかの種類に分類されますが、IT業務をアウトソーシングすることでどのようなメリットが得られるのでしょうか。本記事では、ITアウトソーシングのメリット・デメリット等を詳しく解説します。
目次
ITアウトソーシングとは?
アウトソーシングとは、社内業務の一部を外部に委託することであり、中でも、ITに関する業務を専門業者に委託することを、ITアウトソーシングといいます。該当する業務は、システム開発や保守、ネットワーク構築・管理・運用・監視などです。
▷ITアウトソーシングとは?活用する際の注意点やおすすめのサービス
▷アウトソーシングとは?意味やメリット・デメリット・種類を解説
ITアウトソーシングの種類
ITアウトソーシングの主な種類について、それぞれを詳しく解説します。
フルアウトソーシング
フルアウトソーシングとは、社内のIT業務のほぼすべてを、外部委託することです。IT業務における技術は日々進化し、IT人材は慢性的な人手不足に陥っています。
そのため、外部の専門業者に委託することで、採用や人材育成にかかるコストや手間を削減することができ、スピーディな業務体制の構築が可能となります。
運用アウトソーシング
運用アウトソーシングとは、社内のITシステムの運用業務のみを外部委託することです。サーバーやネットワーク機器の設定・運用のほか、システムの監視や障害対応、セキュリティ対策の設計やバックアップも含め、保守管理を依頼することもできます。
自社のIT部門の業務負担を軽減したい、使いこなせず形骸化しているシステムを立て直したいといったときに有効です。
ホスティング
ホスティングとは、専門業者からサーバーを借りて利用することです。サーバーのほか、回線や電源など必要な備品もレンタルし、関連業務をまとめて委託することもできます。
メンテナンスを任せることもでき、自社で対応するよりも費用を抑えることができます。
ハウジング
ハウジングとは、サーバーやネットワーク機器などを自社で準備し、外部のデータセンターに設置する方法です。
データセンターは、セキュリティ対策や運用、バックアップや災害対策など、一般企業では対応が難しいとされる高度な技術力と管理力を備えています。そのため、ITの専門知識を持たない企業でも、安心して利用できる点が特徴です。
常駐型アウトソーシング
常駐型アウトソーシングは、委託先の業者から技術者が派遣され、社内に常駐しながらシステムの保守や改善、開発などを行うサービスです。そのため、運用・保守に関するコンサルティングやアドバイスなども随時受けることができます。
メリットは、トラブル発生時の対応やサポートを即座に受けられる点にあると言えるでしょう。専門知識を持つ人材が現場に常駐することで、スピーディかつ効率的な体制構築が期待できます。
ヘルプデスク
ヘルプデスクは、ITに関する顧客からの問い合わせ対応を外部委託できるサービスです。
トラブルの相談や不具合の対応、システムの説明やサポートなど、幅広い業務を委託できます。24時間365日対応可能を謳うところもありますし、社内メンバーからの問い合わせに対応する「社内ヘルプデスク」を依頼することも可能です。
時間を割かれがちな問い合わせ業務を外部に委託することで、コア業務に集中できる社内環境が整います。
▷おすすめのアウトソーシングサービス15選|業務別のサービスを紹介
ITアウトソーシングが注目されている理由
ITアウトソーシングが注目されている理由は、どこにあるのでしょうか。おもに次の3点が挙げられます。それぞれの理由について解説します。
専門性が必要とされるIT業務を効率的に進めるため
IT業務には、専門的なスキルや知識が必要です。そのため、人材育成に人手も時間もかかる点が課題となっています。
その課題を解決してくれるのが、ITアウトソーシングです。スキルや知識を持った即戦力の人材と技術力が確保できることで、IT業務を効率的に進めることができます。
IT関連業務にかかる費用の削減に期待できるため
IT関連業務は、ほかの分野の業務に比べると、固定費が高くなる傾向にあります。人材育成や雇用もそうですし、必要な機器・ソフトウェアの調達、管理や保守にも費用がかかるからです。
しかし、ITアウトソーシングを活用すれば、人材育成や雇用の面で、費用負担を減らすことができます。必要な機器なども一括して依頼すれば、さらに費用を抑えることにも期待が持てるでしょう。
限定的な人員増員の問題を解決できるため
新規システムの立ち上げや決算システムの稼働が集中する年度末など、情報システム部門の業務量が一定期間のみ増加することもあるのではないでしょうか。
一方で、繁忙期のみ人材を採用したり、社内の人員を調整したりすることは、現実的かつ生産的ではありません。しかしITアウトソーシングなら、必要な時期だけ「人手」を増やすことができます。
ITアウトソーシングのメリット
次に、ITアウトソーシングを行うメリットについて見ていきましょう。主なメリットは、以下の4点です。
- IT関連業務のクオリティ向上が期待できる
- ITに関する最新の技術が効率的に得られる
- 人材の確保・教育にかかる費用を削減できる
- 社員がコア業務に集中でき、生産性が向上する
それぞれについて具体的に解説します。
IT関連業務のクオリティ向上が期待できる
経験豊富な専門家にIT関連業務を委託できるITアウトソーシングを取り入れると、クオリティの向上が期待できます。
企業が自社内でIT業務を行う場合は、従業員が知識や技術を身につけなければなりません。しかし、日進月歩で進化するIT分野の知識を常にキャッチアップし、なおかつ高い技術力を養うのは、コストと時間の両方を要することになります。
しかしITアウトソーシングなら、専門の技術者による豊富な知識と技術を必要に応じて活用できるため、短時間でのクオリティアップが期待できます。
ITに関する最新技術が効率的に得られる
自社に適した最新技術が効率的に得られるというメリットもあります。IT分野は日々技術が進化しているため、企業もシステムやセキュリティなどを適宜アップデートしていかなければなりません。
しかし、ITアウトソーシングを利用すれば、新たな人材の採用や研修といった育成にリソースを割くことなく、技術の変化に柔軟に対応することも可能です。
IT人材不足をスピーディに解消できる
労働人口の減少による人手不足は、深刻な社会問題になりつつあります。特にIT人材と呼ばれる情報技術のスキルや知識を持つ人材は、需要が急速に高まったことから、育成が追いつかず、人手不足に拍車がかかっていると言えるでしょう。
ITアウトソーシングを活用することで、そのようなIT人材不足をスピーディに解消でき、かつ、人材の採用や教育といったコストも大幅に削減できるのです。
社員がコア業務に集中できて生産性が向上する
IT部門の業務のうち、運用や保守管理といった業務には、高い技術力を必要としない、日常的な業務も含まれています。
このようなノンコア業務にITアウトソーシングを利用することで、IT部門の社員は、事業戦略や企画の立案といったコア業務に集中することができ、生産性と業務の質を上げることができます。
ITアウトソーシングのデメリット
メリットの多いITアウトソーシングの活用ですが、注意しなければならないデメリットもあります。あらかじめ把握した上で、検討するようにしましょう。
IT業務に必要な知識が社内に蓄積されない
IT関連業務を外部に委託することから、当然、知識やノウハウが社内に蓄積されることはありません。社内にIT人材が育たない点は、あらかじめ認識しておく必要があるでしょう。
喫緊の課題解決としてITアウトソーシングを活用しつつ、IT部門の内製化も進めるのであれば、外部委託先に内製化に向けたフレームワーク構築のサポートを相談してみるのも一つの手段です。
情報が流出する可能性がある
業務を外部委託する以上、どんなに対策を講じていても情報漏洩のリスクを「ゼロ」にすることは難しい点もITアウトソーシングの避けられないデメリットです。
そのため、アウトソース先のセキュリティ体制を十分にチェックして、流出のリスクを最小限に抑えることが重要です。また、秘密保持契約を締結する、責任・権限の所在を明確にするなど、万が一の情報流出に備えた対処も検討しておきましょう。
IT業務が属人化する可能性がある
一部のIT業務が特定の担当者に帰属する「属人化」が起こる可能性があることも、デメリットです。
例えば、システム構築や運用を委託先の担当者に任せっきりにしてしまった場合、社内では全く対応できない運用体制になるリスクも発生します。属人化を回避するためには、委託先とのコミュニケーションを密にし、役割を分散することが重要です。さらに、契約の際には、業務移管時のプロセスや対処の方法を明確にしておきましょう。
事前準備によって業務負担が増加する可能性がある
実際、社内の業務を外部委託するにあたっては、システムやデータを整理する、契約書を作成するなど、多くの事前準備が必要となります。そのため、一時的に業務負担が増加する可能性も否定できません。
導入を終えれば業務の効率化や経費の削減につながるアウトソーシングですが、開始までに労力がかかる点はデメリットと言えるでしょう。そのため、短期的な利用の場合は、費用対効果が見合わなくなることも考えられます。そういったデメリットも考慮して検討することが大切です。
ITアウトソーシングに向いている業務
定型化された業務や、最新・高度なIT知識を必要とする業務は、ITアウトソーシング向きです。
定型化された業務
一定のプロセスによる作業を繰り返し行う定型業務は、そのほとんどがノンコア業務に分類されることから、ITアウトソーシングに適しています。
具体的な定型業務としては、以下の3つが挙げられます。
- PCのキッティング
- マニュアル対応できるメール問い合わせやクレーム対応
- データ解析のレポート作成
データ解析のように、専門知識を必要とするものがありますが、多くは、ルーティンワークとしてこなせるものです。
最新・高度なIT知識を必要とする業務
ノンコア業務がアウトソーシングに向いている一方で、ノウハウや技術力を構築するのに時間やコストを要する、最新かつ高度なIT関連業務もアウトソーシングに適した業務です。
一例として以下のような業務は、一度、専門業者のサポートを検討するのも良いでしょう。
業務の種類 | 業務内容 |
システムマネジメント | システム運用管理、障害対応、セキュリティ対策など |
システムデリバリー | インフラ設備の調達・設定、ネットワークの開通など |
ツール保守・RPA導入 | ツールの開発・設定・保守、業務プロセスの調査・分析、デジタル化計画の策定・実行など |
PMO・コンサルティング | 各種プロジェクトの管理・設計、クラウドの導入支援など |
ITアウトソーシングを失敗しない秘訣
ITアウトソーシングで失敗しないためには、以下の点に注意しながら委託先を選ぶことが重要です。ぜひ委託先を選定する際の参考にしてください。
費用で判断せず実績のある委託先であるか確認する
費用の安さのみを理由に委託先を選ぶと、技術力や業務品質、対応スピードなどに問題が発生することもあります。
委託先を選ぶときは、委託先の技術力、過去の実績、顧客からの信頼度などを確認し、総合的な観点から選定するようにしてください。
セキュリティリスク対策を確認する
ITアウトソーシングの委託先には、場合によっては、自社の機密情報を提供することもあります。そのため、セキュリティ環境や対策についても、必ず確認しましょう。
具体的には、セキュリティポリシーの策定や機密情報へのアクセス制限、情報セキュリティ監査や暗号化通信の実施といったことが該当します。「情報漏洩保険」に加入しているかも、一つの指標です。
対応できる業務・範囲について確認する
さまざまな企業がITアウトソーシングを行っていますが、対応領域は業者によって異なります。ITアウトソーシングを行う際は、あらかじめ委託する業務範囲と方法を明確にしておき、その上で、委託先が対応できるかどうかを確認しましょう。
また、業務範囲やルールについては必ず文書化し、双方の合意を得ておくことで、トラブル防止にもつながります。
委託先のサポート・協力体制を確認する
サポート・協力体制が十分でないと、トラブル対応が遅れる、あるいは、コミュニケーション不足がミスやトラブルの原因となってしまう、といった問題が生じてしまいます。
そのような事態を避けるためには、プロジェクトの進捗状況やトラブルに対する対応など、円滑なコミュニケーションが取れるかどうかも確認しておきましょう。問い合わせ対応の誠実さも、重要な見極めポイントの一つです。
委託業務の管理体制を構築する
社内における管理体制の構築も大切です。アウトソーシングは、業務を丸投げすることではありません。業務の品質や進捗などは、適宜、社内でも管理する必要があります。
「任せきり」にするのではなく、定期的なミーティングの設定や業務の見える化など、管理体制を整えた上で活用するようにしましょう。
ITアウトソーシングのデメリットを補い効果的に活用しよう
ITアウトソーシングには、IT人材不足の解消のほか、IT関連業務のクオリティ向上や最新技術の導入、コスト削減、生産性向上など、様々なメリットがあります。一方で、IT業務に関する知識が社内に蓄積されない、情報流出のリスクがあるといったデメリットがあることも事実です。
外部委託先は、注意点に留意しつつ慎重に選定し、委託後も適切なコミュニケーションを計りながら良好な関係を築くなど、デメリットを補う対策を講じた上で、ぜひITアウトソーシングを活用してみてください。
おすすめのお役立ち資料
アウトソーシングの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら