経理アウトソーシングで失敗する原因・事例|失敗しないための秘訣を紹介
経理業務の効率化に役立つ、経理アウトソーシング。さまざまな業界で導入・普及がすすんでいますが、経理アウトソーシング導入に失敗している企業もあるようです。本記事では、経理アウトソーシングで失敗する原因・事例を紹介、失敗しないための業者の選び方・秘訣を解説します。
目次
経理アウトソーシングとは?
経理アウトソーシングとは、社内の経理業務を専門性の高い外部の業者へ委託することです。経理業務の一部またはすべてを委託するなど、委託する範囲は企業によって異なります。
経理アウトソーシングの導入によって、業務効率化・業務品質の向上・コスト削減などのメリットが期待できるため、導入を進める企業は増えているようです。
経理アウトソーシングに依頼できる業務内容
経理アウトソーシングに依頼できる主な業務内容としては、以下が挙げられます。
- 記帳:経費の精算や支払いなどをもとに、仕訳をおこなって会計帳簿を作成する業務
- 年末調整:毎月の給与のうち、源泉徴収した所得税を精算する業務
- 決算申告:一定期間の収入や支出を計算して、利益や損失を税務署に提出する業務
- 支払い・請求管理:請求書の作成や振込をする業務
- 給与計算:従業員の勤怠状況や手当を確認し、給与額を計算する業務
上記のように、経理業務は毎日・毎月・毎年など、繰り返しおこなわれる業務ばかりです。また、小さなミス1つで会社の大きな損失につながる可能性があるため、担当者は慎重に業務を遂行しなければなりません。
しかし、これらの経理業務をアウトソーシングすれば、専門性の高いプロに業務を依頼できるため、経理業務にかかる時間と手間の削減・ミスの発生防止につながります。
▷【2023年版】経理アウトソーシングのおすすめ14選比較|メリットや費用の目安
経理アウトソーシングで失敗する原因・事例
経理アウトソーシングで失敗する原因・事例を6つ紹介します。満を持して経理アウトソーシングを導入したはいいものの、思わぬところで失敗してしまうこともあるため、具体的な原因や事例を把握しておきましょう。
想定外の費用が発生し費用の削減ができなかった
コスト削減を目的として経理アウトソーシングを導入したにもかかわらず、想定外の費用が発生したためコスト削減が実現しなかったという失敗は多いようです。
経理アウトソーシングする際の費用は、業者や依頼する業務範囲などによって異なるので、1社しか見積もりをとらず、契約後に別の業者のほうが安いと分かったといったケースも挙げられます。
また、経理業務といっても必要なプロセスや流れは企業によってさまざまです。社内と業者ではやり方が異なり、社内のやり方を正確に伝えることができなければ、本来は必要のない業務が追加されるかもしれません。
そのため、経理アウトソーシングを導入する際は、複数社での比較検討や業者と情報共有の機会を設けるなどの対策が必要です。
経営状況の把握・管理を怠り経営が悪化した
経理アウトソーシングすることで、コア業務に集中しやすくなる反面、経理業務の状況を把握しにくいというデメリットがあります。その結果、経営状況の把握・管理を怠るようになり、気づかぬうちに経営状況が悪化していたという失敗もみられます。
経理業務を業者に丸投げし、経営状況を把握・管理しなかった場合、気づいたときにはコントロールできないほどの損失に膨れている可能性があります。
そのため、経理アウトソーシングをする場合、経営状況の適切な把握・管理のため、基本的には自ら業者と連携をとり、情報を共有してもらえるよう促すことが必要です。最低でも月に1回は業者からレポートを発行してもらうなど、経営状況を把握・管理できる体制を整えておきましょう。
経理処理方法が自社にあわず業務負担が増大した
経理処理の方法は、会社の戦略や理念などによって異なるため、経理アウトソーシングをする際は自社の業務フローを正確に伝えなければなりません。
しかし、自社のやり方が上手く伝えられなかったり、伝えたやり方では業務を遂行してくれなかったりするなど、自社に適した経理をしてもらえないケースがあるようです。
たとえば、自社では勘定科目Aとして処理している経費が、業者では勘定科目Bとして処理されていたといった例が挙げられます。このように、業者との認識にズレが生じると、再度確認の手間が増え、「自社で経理業務をおこなったほうがよかったのでは」といった事態を招きかねません。
余計な業務負担が増大しないためにも、自社の経理処理方法を理解し、最適なやり方を採用してくれる業者を見極めることが大切です。
想定していた効果が得られなかった
経理アウトソーシングを導入したはいいものの、業者が柔軟性や専門性に欠けており、想定していた効果が得られなかったという失敗例もあるようです。
「契約内容に記載されていない業務には一切対応できない」「業務内容の追加にはコストがかかる」といった柔軟性に欠ける業者もいます。
また、専門性がないばかりに、「記帳に多くの修正が必要」「こちらの意図をくみ取ってくれない」などの問題にもつながりかねません。
このように、業者に柔軟性・専門性がないと、必要な業務でも対応してもらえなかったり、業務品質が低く、自社でおこなったほうがよかったと感じることがあるようです。
そのため、契約前には必ず対応してもらえる業務範囲や柔軟性の有無、業者の持つ実績などを確認し、想定する効果を得られそうな業者を見極めなければなりません。
担当者とコミュニケーションが取れずにトラブルにつながる
経理アウトソーシングを導入する場合、経営状況を把握しにくくなるため、定期的に担当者と情報を共有しながら、自社でも経営状況の把握・管理をおこなうことが大切です。しかし、担当者と上手くコミュニケーションがとれないと、適切に情報を共有できない場合があります。
情報共有が円滑でなければ、経営状況の変化に気づくのが遅れたり、業務の進捗を把握しにくかったりするなどの問題が生じます。
したがって、経理アウトソーシングを導入する際は、コミュニケーションのとりやすい担当者がいる業者を選ぶことがおすすめです。
経理を担当する自社人材の育成機会を失った
経理アウトソーシングを導入するということは、自社で経理業務を担当する人材が必要ないということになります。そのため、経理アウトソーシングを導入した多くの企業では、経理業務の担当者を設けていません。
しかし、それは同時に自社における人材育成の機会を失ったことにもなるでしょう。たとえば、経理アウトソーシングを依頼していた業者が急に倒産した場合、社内には担当できる人材がいないため、新たに業者を探すなど業務に滞りが生じてしまいます。
その結果、時間をかけてでも自社で経理業務の担当者を育成したほうがよかったと後悔する企業も少なくないようです。ただし、人材育成には時間がかかるので、経理アウトソーシングを活用しながら同時に社内でも人材育成を進めるといった対策が必要になります。
経理アウトソーシングで失敗しない業者の選び方
ここからは、経理アウトソーシングで失敗しない業者の選び方を8つ紹介していきます。スムーズに経理アウトソーシングを進めるためにもぜひチェックしてみてください。
目的にあった契約形態か確認する
経理アウトソーシングで失敗しない業者の選び方を8つ紹介します。
経理アウトソーシングといっても、契約形態には「スポット型」「常駐型」「税理士監修型」の3つの種類があります。そのため、自社の目的にあった契約形態を選ぶことが大切です。
スポット型・常駐型・税理士監修型それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
契約形態 | 特徴 |
スポット型 | 繁忙期やコア業務などの短期間の依頼におすすめで経理業務のマニュアルがあれば、業務の一部またはすべてが依頼できます。 |
常駐型 | 外部の経理担当者が社内に常駐する形で経理業務をおこない、急な欠員が出た際や業務量が多い際におすすめです |
税理士監修型 | 税理士が経理業務を監修してくれてるため、専門性に優れているのが特徴です。 |
上記の表から、経理アウトソーシングは、契約したい期間・依頼したい業務内容・求める専門性などによって最適な契約形態が異なることが分かります。
たとえば、経理業務にリソースを割けない繁忙期のみアウトソーシングを導入したい場合、短期的かつコストを抑えられるスポット型が向いているでしょう。
このように、まずは自社における経理アウトソーシングの導入目的を明確にしたうえで、目的に適した契約形態を選ぶことが大切です。
依頼できる業務範囲を確認する
経理アウトソーシングに依頼したい業務範囲が企業によって異なるように、各業者によって対応できる業務範囲も異なります。そのため、自社が依頼したい業務が、対応できる業務範囲内であるかを確認しましょう。
例として、経理業務を一括してアウトソーシングする場合が挙げられます。事前に業務範囲を確認してないがために、「1~10まで依頼できると思っていたのに9と10の業務は対応できないといわれた」といった事態になりかねません。
したがって、自社が依頼したい業務内容を洗い出したうえで、業者が対応している業務範囲と照らし合わせ、互いの要件が一致しているかを確認することが大切です。
経験・実績が十分あるか確認する
経理アウトソーシングで失敗しないためにも、経験や実績が十分にある業者を選ぶことが大切です。経験・実績が豊富であれば、意図を上手く伝えられなくても業者側がくみ取ってくれたり、よりよい業務フローを提案してくれるなどのメリットが考えられます。
また、経験・実績が十分にあれば、これまでの経験を活かした柔軟な対応も期待できます。そのため、導入実績や事例を業者のホームページなどで確認し、対応してもらう業務への経験・実績の有無を確認しておきましょう。
引継ぎ・業務に関する要望に対応できるか確認する
引継ぎが上手くいかないと余計なコストや業務負担が生じ、経理アウトソーシングの導入が失敗してしまう可能性があります。また、契約後に業務に関する要望が出てくることも考えられるため、引継ぎや業務に関する要望に対応してくれる業者を選ぶことが大切です。
契約後に対応して欲しい業務が追加で見つかり、相談するも対応業務範囲外と断られてしまうと、その分の業務は自社でおこなわなければなりません。したがって、契約後も業務内容に関して柔軟に対応してくれるかを確認しておきましょう。
さらに、引継ぎに自信がない人に向けて、引継ぎに関するサポートを提供している業者もあります。そのため、引継ぎが不安な場合は、必要に応じてサポートを利用するなど、正確かつスムーズな引継ぎがおこなえるようにしましょう。
社労士・税理士と連携がとれているか確認する
経理アウトソーシングの導入が失敗しない業者の選び方として、社労士・税理士と連携がとれているか確認することが大切です。経理業務のなかには、確定申告や各種税金の納付など、社労士や税理士を通さなければ依頼できない業務があります。経理業務を一括してアウトソーシングしたい場合は、社労士や税理士と連携がとれている業者への依頼がおすすめです。
また、社労士・税理士と連携のとれている業者のほうが、専門性に優れているケースがあるので、依頼する業務範囲にかかわらず、社労士・税理士と連携がとれているかを確認しましょう。
業務の可視化が行われているか確認する
業務の可視化が行われているか確認することも、経理アウトソーシングで失敗しない業者の選び方の一つです。経理アウトソーシングを導入すると、経理業務の進捗や経営状況を把握しにくい傾向があるので、自社でも適切な管理をおこなえるよう、業者との連携や定期的な情報共有が必要になります。
しかし、業者でおこなわれている業務が可視化されていなければ、「適切な方法がとられているか」「余計な業務が増えていないか」などを確認できません。
自社のやり方をそのまま引き継ぐことができれば、ある程度の業務フローは把握できるでしょう。ただ、業者側からよりよい業務フローの提案があったり、引継ぎがうまくいっていないといった理由だったりで、業務フローに違いが生じる可能性があります。
したがって、依頼した業務が業者側で可視化され、いつでも進捗や経営状況を把握できる状態にあるかを必ず確認しておきましょう。
サポート体制が整っているか確認する
経理アウトソーシングで失敗しない業者の選び方には、サポート体制が整っているか確認することも挙げられます。経理アウトソーシングでは、業者によって以下のようにさまざまなサポートが提供されています。
- 引継ぎサポート
- システム導入サポート
- 運用アドバイス
- コンサルティング依頼
- 社労士・税理士との連携サポート
利用したいサポートだけでなく、いまは必要なくても今後利用するかもしれないサポートなど、自社に必要なサポートを見極めることが大切です。
その際には、提供されているサポートは業者によって異なるため、自社が必要とするサポートが提供されているかを事前に確認しましょう。
セキュリティ対策がとられているか確認する
セキュリティ対策がとられているか確認することも、経理アウトソーシングで失敗しない業者の選び方の一つです。経理アウトソーシングでは、経理業務を業者に一任する形となるため、社内データや個人情報などを預ける場合があります。しかし、業者のセキュリティ対策が万全でなければ、情報漏洩や悪用などの被害を受けるかもしれません。
したがって、業者を選ぶ際は下記の判断基準を参考に、セキュリティ対策が十分にとられているかを確認しましょう。
- セキュリティに関する第三者機関からの認証の有無
- 機密保持契約締結の可否
- セキュリティ対策に関する質問への返答・姿勢
経理アウトソーシングの失敗を防ぐ秘訣
経理アウトソーシングの失敗を防ぐ秘訣としては、以下の7つが挙げられます。具体的な失敗事例を踏まえたうえで、それらを防ぐための秘訣を把握しておくことで、思わぬトラブルにも対応できるようになるでしょう。
経理アウトソーシング導入の目的を明らかにする
経理アウトソーシングの失敗を防ぐ秘訣の一つに、経理アウトソーシング導入の目的を明らかにすることが挙げられます。導入目的が明確でない場合、目的達成とは関係のない業務まで依頼してしまい、余計なコストがかかったなどの失敗につながりかねません。
このように、目的が明確になっていないと、「自社に最適なのはどのような業者か」「どの業務範囲を依頼すればよいか」などが分からず、導入に失敗するリスクがあります。
したがって、経理アウトソーシングを導入する際は、「コストを削減したい」「業務を効率化させたい」「担当者が不在である」など、事前に導入目的を明確化させ、目的に適した業者を選ぶことが大切です。
企業理念・方針を事前に経理担当者に伝える
企業理念・方針を事前に経理担当者に伝えることも、経理アウトソーシングの失敗を防ぐ秘訣として挙げられます。もともと社内に経理業務の担当者がいる場合、経理アウトソーシングの導入は担当者にとって自分の仕事をとられるというふうに感じてしまう可能性があります。このことから、担当者への説明なしに導入を進めてしまうと、モチベーションの低下や会社への不信感につながりかねません。
そのため、経理アウトソーシングを導入する際には、「なぜアウトソーシングを導入するのか」「どのような理念・方針があるのか」など、担当者自身が納得できるような説明をおこなう責任が会社側にはあります。
また、経理アウトソーシング導入後は、どの部門でどのような業務についてもらうかまで説明し、担当者が異動後も意欲的に働けるような環境を整えることが大切です。
経理アウトソーシングの必要性を社内へ周知する
経理アウトソーシングの失敗を防ぐためにも、必要性を社内へ周知するようにしましょう。経理業務は、経理部門以外の営業部門や広告宣伝部門など、さまざまな部門に関係のある業務です。たとえば、移動や接待などで経費が発生すれば、営業部門であっても経費精算をおこなう必要があります。
このように、経理業務は多くの部門を横断するため、経理アウトソーシングを導入する際は、その必要性を社内全体に周知しなければなりません。
経理アウトソーシングの導入を周知しないまま進めてしまうと、経費精算のフローが分からず経理業務が滞ったり、なかには導入に反対する社員もいるはずです。
社内の混乱や反発を招かないためにも、事前の周知は必要不可欠であり、場合によっては導入後の経費精算に関するマニュアルを作成するなどの対策が求められます。
業務をする担当者とのコミュニケーションを心がける
業務をする担当者とのコミュニケーションを心がけることも経理アウトソーシングの失敗を防ぐ秘訣の一つになります。経理アウトソーシングを導入することで、社内で経理業務をおこなう必要がなくなるので、経理業務の進捗や業務フローの把握は難しくなってしまいます。しかし、業務管理が難しいからといって業者に任せきりにしてしまうと、「経営状況の変化に気づくのが遅れる」「余計な業務が発生していた」などの問題につながりかねません。
たとえば、発生した赤字をタイムリーに把握できれば、当日中に対応を検討することができます。一方で経営状況の把握を怠っている場合、小さいうちに気づいていれば対応できた赤字に気づけず、いつの間にかコントロールできないほどの経営状況に悪化していたといったケースもみられます。
そのため、依頼した業務の担当者とは積極的にコミュニケーションをとることが大切です。担当者とのコミュニケーションがとれていれば、変化に気づきやすくなるうえ、トラブルが起きた場合でもすぐにこちらの意図を伝えることができます。
業者によっては毎月や毎週など、一定のペースでレポートを作成・提出してくれる場合もあるので、担当者との定期的なコミュニケーションを心がけ、業務に関する認識のズレが生じないようにしましょう。
自社に最適な経理アウトソーシング業者を選ぶ
自社に最適な経理アウトソーシング業者を選ぶことも、経理アウトソーシングの失敗を防ぐうえで大切なポイントになります。経理アウトソーシングを導入する業務範囲が企業によって異なると同時に、各業者も強みや特徴が異なります。そのため、自社の目的や依頼に割ける予算などと比較しながら、最適な業者を見極めることが大切です。
中長期的に業務を依頼する場合は、コストも継続的に発生することになるので、ランニングコストも視野に入れながら、費用対効果を得られるような業者を選びましょう。
経理アウトソーシングの失敗を防ぐためには事前準備と下調べが重要
経理アウトソーシングは、業務効率化やコスト削減につながるというメリットが期待できます。しかし、依頼する業者や業務範囲によっては想定していた効果を得られず、失敗に終わったというケースも少なくありません。
このような失敗を防ぐには、事前準備や業者の下調べなどが大切です。自社に最適な業者を見極め、経理業務の効率化を図っていきましょう。
おすすめのお役立ち資料
経理アウトソーシングの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら