経理部門のDXとは?進め方や推進するメリット・おすすめのツールを紹介
DXが注目されてから久しい現在。人手不足、法改正などビジネス環境の変化に対応するためにもDXは重要です。しかし自社においてどのようにDXを進めるべきかわからなかったり、現状に危機感がなかったりといった理由で手をつけていない企業もあるようです。本記事では、経理部門のDXについて、進め方や推進するメリットと解説し、おすすめのツールを紹介します。
目次
経理DXとは?
最新のデジタル技術を駆使して組織のビジネスモデルを改革する取り組みがDXであり、経理DXとは、経理部門や業務フローの中にデジタル技術を取り入れ、非効率な業務の効率化・安定化のことを指します。
経理には請求書作成や決算書作成などの複雑な業務が多く、従業員への負担が多くなったり、属人化してしまったりなどの様々なリスクがあります。
些細なミスが大きな問題に発展してしまうリスクがあるため、従来の経理業務の課題を解決するためにDX化が求められているのです。
▷経理とは?主な仕事内容や業務の流れ・会計や財務との違いをわかりやすく解説
経理にDXに注目が集まっている理由
経理にDXに注目が集まっている理由としては、現在・近い将来の日本が抱える問題や法改正への対処があげられます。
それぞれの理由を4つ具体的に解説します。
2025年の崖が問題視されているため
2025年の崖とは、経済産業省が2018年に公表したレポートの中で指摘した問題のことです。
レポートでは、IT人材の不足と、過去の技術で構築されたレガシーシステムの老朽化が要因となり、企業が市場での競争力を大きく失うことが懸念されています。さらに、これらの問題を解消し、DXを推進しなければ、2025年以降1年ごとに12兆円もの損失が発生するとしているのです。
損失の発生を回避するべく、企業にはレガシーシステムの段階的刷新とDXが求められています。
▷2025年の崖とは?経産省のレポートの要点やDX推進のシナリオをわかりやすく解説
人材不足と属人化を解消するため
経理ではほかの部署と同様に、人材不足や業務の属人化が深刻化しています。
経理業務には、専門的な知識を要する高度な仕事も多く、ルーチン作業や社内外の問い合わせに追われていると、特定の人材に業務が偏ります。属人化してしまうと、負荷に耐えられない人材が離職してしまうことも起こりかねません。
このような人材不足と属人化を解消するためにもDXが有効です。
定型業務や単純作業をデジタル化してDXを進めれば、経理の属人化を防ぎつつ業務の質も担保できます。少ない人数でも業務が安定して回る環境づくりに向けて、DXへの注目が集まっているのです。
▷経理業務が属人化しやすい原因とは?解消する方法やおすすめのソフト
電子帳簿保存法が改正されたため
電子帳簿保存法の改正により、2022年1月以降に電子取引した書類は電子データでの保存が義務になりました。
この法律には2023年12月までの猶予があり、それまでに中小企業は電子書類の管理体制を整えなければいけません。また、今回の改正では紙ベースの取引と電子データの取引で異なる保存の仕方が混在するため、経理業務がさらに煩雑になることが予想されます。
電子帳簿保存法への対応という観点からも、業務のデジタル化による体制整備が求められています。
インボイス制度への対応が求められるため
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、適用税率や税額を記した適格請求書の作成や保存が求められる制度であり、2023年10月から施行が開始されます。
インボイス制度が始まると、企業は取引する相手により適格請求書と従来の請求書の2種類を受け取ることになります。それらを区分けして保存する作業が増えるため、経理の業務負担がさらに大きくなると考えられるのです。
インボイス制度に対応したツールの活用など、経理担当者の負担を減らす施策の検討をする企業が増えています。
▷インボイス制度とは?いつから?変更点や対応すべきことについて解説
DXに向いている経理の業務
DXに向いている経理の業務は、主に3つです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
請求書の発行・受領に関する業務
請求書にまつわる業務は発行、受領いずれにおいても入力や確認、保管などプロセスの中に定型的な作業が多く、煩雑になりがちです。
誤りがあると企業の信頼を損ねる可能性があるため、ミスが起きないよう慎重に業務を進めなければなりません。
このような定型的な要素を含む業務についてはDXによる業務効率化が見込めます。請求書の発行・受領に関する業務のプロセスを自動化すれば、効率と正確性が向上するでしょう。
給与計算に関する業務
給与計算は、個別の従業員に合わせて考慮すべき要素が多く、複雑な計算が必要な業務です。労働時間や日数、基本給、残業手当、休暇手当、賞与、控除(税金・社会保険料など)といった要素がそれぞれの従業員で異なります。労働基準法や所得税法、社会保険など、専門的な知識も求められます。
従業員ごとの給与計算は、経理担当者の業務のなかでも、時間や手間がかかる負担の大きいものです。ただし、毎月の定型的な業務でもあります。
DXの取り組みとして、給与管理システムを勤怠管理・人事労務システムと連携し、データが自動反映される仕組みをつくると作業の効率化や人的ミスの防止になります。
決算に関する業務
決算業務は経理業務の中でも重要度が高く、正確性とスピードが求められます。損益計算書・貸借対照表の作成など専門性の高い業務でもあるため、属人化を引き起こしやすいのが特徴です。
決算業務の課題もまた、他のシステムデータを会計システムに連携するDXの推進により業務改善が可能です。データが自動で反映されるようにすれば、仕訳をシステムごとに都度入力したり、転記したデータの正確性を確認したりする手間が省けます。経理担当者の負担軽減につながるでしょう。
▷経理業務でよくある課題|課題解決の方法や効率化に向けた取り組みを紹介
経理のDXを推進するメリット
経理のDXを推進するメリットは、主に4つあげられます。それぞれについて具体的に解説します。
推進により業務の効率化につながる
経理のDXの導入は、業務効率化に大きく貢献します。DXによって業務の電子化や自動化が進むと、紙ベースの作業や手入力する時間の軽減が可能です。業務効率化されると負担やストレスが軽減するため、経理担当者の生産性向上が期待できるでしょう。
定型業務や単純作業の業務効率化により、企業経営に欠かせないデータ集計や分析などのコア業務に集中する環境も整います。
書類にかかるコストを削減できる
経理業務は請求書や領収書をはじめとしたさまざま書類を扱います。DXを進めればペーパーレス化が実現し、書類にかかるコストの削減が可能です。インク代、郵送費などのコストも削減できるため、企業資金に余裕が生まれるでしょう。
印刷や封入にかかる手間がなくなることから、時間外労働の短縮や経理担当者の業務負担軽減にもつながるメリットがあります。
業務の属人化を防げる
経理部門は、属人化が起きやすい業務です。属人化は、特定の人物しか業務がわからない状況、いわゆる「業務のブラックボックス化」を招きます。このような状況は、企業にとってリスクを伴います。
たとえば、ある業務のやり方を唯一把握している担当者が、急に休職や離職するような事態が起こると、業務が停滞してしまいます。取引が滞ったり、残った従業員の負担が増大したりと、経営活動にも悪影響を及ぼしかねないのです。
しかし、DXを推進すればツールや仕組みが業務を軽減するため、特定の経理担当者が不在でも業務品質を一定に保てます。
優秀な人材の獲得につながる
優秀な人材は成長を望んでおり、効率的で革新的な組織に魅力を感じるでしょう。経理部門のDXにより、経理担当者は定型業務から解放され、より高度な業務に注力できます。このような状況は、キャリアアップを目指す人材にとって魅力的です。
また、業務負担が軽減し、従業員にとって働きやすい労働環境へと改善が進みます。加えて、テレワークを含めた多様な働き方に対応できるようになれば、求職者からは企業が魅力的に見え、採用活動がスムーズになる効果が期待できるでしょう。
▷経理業務を効率化する方法とは?経理業務の課題や事例・効率化させるステップ
経理のDXを推進する際の注意点
経理部門にDXを推進する際には注意点もあります。特に気をつけたい3つの注意点を解説します。
現状の経理業務の課題を明確にする
経理部門にDXを推進する際には、自社の経理業務における課題を明確にすることが重要です。たとえば、手作業によるデータ入力や処理の誤り、時間やコストの増加、情報共有の遅れや不備などが考えられます。
課題を明確にしないとDXを進めるポイントがずれたり、適切ではないツールやシステムを導入したりするリスクがあるでしょう。
まずは自社の問題点が何かを正確に特定してから、何をDX推進の対象にするのか、どのようなツールやシステムを導入するかを検討してください。
関係する部署や取引先へ事前に共有する
経理業務は、社内の関連部署や取引先企業とも深く関わるため、DXを進める際には事前に情報を共有しましょう。
事前の連絡なくDXを進めると、以下のようなことが起こりかねません。
- 取引先に連絡もなく電子データを送付し、相手方を混乱させることで不信感を招いてしまう
- 関連部署に前触れもなく従来の進め方と違う形で処理を進め、現場に不要な仕事を増やしてしまう
DXを推進する人材の確保・育成する
経理部門のDXを推進するには、ITやDXに詳しい人材の確保や育成が必須です。社員がシステムを使えるよう補助したり、導入したツールやシステムの保守管理をしたりする人材がいないと、業務をデジタル化しても社内に浸透しない可能性があります。
そのため、ITやDXに詳しい人材を採用したり、社内で育成するべく教育・研修プログラムを実施したりすることが求められます。人材の確保や育成が難しい場合は、専門業者にサポートを依頼するのも有効です。
経理のDXを推進する際の進め方
経理のDXを推進する際の進め方を3つに分けて解説します。
1.ペーパーレス化と電子印鑑の導入を進める
まずは、ペーパーレス化と電子印鑑の導入を進めましょう。紙帳票のデジタル化の推進は、経理部門のDXの第一歩です。以下のような例を参考にデジタル化を促進しましょう。
- 請求書や領収書、仕入れ伝票、売上伝票などの帳票類をデジタル化
- 電子印鑑を導入し、それを利用した承認方法を採用
- 不要な押印のルール撤廃
- 取引や連絡のオンライン化
ペーパーレス化も進む業務効率化ツールとして、経費精算システムや会計ソフト、ワークフローシステムなどを利用するのもおすすめです。
▷ペーパーレスとは?推進の必要性やメリット・デメリットを徹底解説!
2.業務の自動化やツールの導入を行う
ペーパーレス化を進めたら、業務の自動化をおこないます。以下のような業務が自動化に適しているでしょう。
- 入金消し込み
- 請求書の照合
- 各種書類の処理
- 必要な通知
- 仕訳データの抽出業務
自動化を進めると定型業務にかかっていた工数を削減できるので、決算の早期化や月末に偏りがちな残業の削減が見込めるだけでなく、コア業務にリソースをあてられます。手入力による人為的ミスやデータの改ざん防止にもつながるでしょう。
3.データを連携し経営状況を可視化する
ペーパーレス化やツールを導入して、自動化を進めたら、経営陣や関係部署が会社の経営状況をリアルタイムに把握できるよう経理データを可視化します。データ分析や可視化ツールを導入し、既存ツールとの連携をおこないましょう。
必要なデータがタイムリーに入手できるため、経営陣は迅速な経営判断が可能になります。また、経営活動における課題も見つけやすくなるのです。課題をもとに業務改善をおこなえば、企業の業績アップや生産性の向上につながるでしょう。
経理DXの推進におすすめのERPシステム
ERP(Enterprise Resource Planning System)とは、企業の経営資源を一元的に管理・最適化するための統合型情報システムです。
製造業やサービス業などの業種によらず、企業のあらゆる部門(営業、生産、購買、在庫、人事、経理など)の情報を共有し、効率的な経営の促進を目的としています。ERPシステムの導入により、業務プロセスの効率化やコスト削減、正確な情報に基づく意思決定が可能になるでしょう。
GRANDIT
GRANDITは、中小企業向けのERPシステムで、販売から仕入、在庫、生産、財務までを一元管理できます。
クラウド型で導入コストが低く、操作性しやすいため、初めてERPシステムを利用する企業や従来のシステムからの移行を検討している企業におすすめです。また、カスタマイズが容易なので、独自の業務フローに合わせた運用ができます。
提供元 | GRANDIT株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | 1,400社以上 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
NetSuite
NetSuiteは世界中で利用されているERPシステムで、導入社数は36,000社に及びます。顧客管理システムをはじめとした業務アプリケーション機能を一つのシステムで提供しています。
柔軟なシステム設計ができるので、事業拡大や分社化などにも対応できるのが特徴です。ITインフラを最小限にしたい企業経営者に向いています。
提供元 | 日本オラクル株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | 36,000社を超える世界中の企業が導入 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
経理DXの推進におすすめのクラウド会計システム
クラウド会計システムとは、インターネットを利用して会計業務を効率化・自動化するオンラインの会計ソフトウェアです。
従来のインストール型会計ソフトと異なり、クラウド上でデータを一元管理できます。データはリアルタイムで更新され、どこからでもアクセスできるため、企業の経営者や経理担当者の間でスムーズな情報共有が可能です。
次からはおすすめのクラウド会計システムを2つ紹介します。
マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワードクラウド会計は、オンライン上で利用できる会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードの取引データを自動でインポートし、仕訳処理が簡単におこなえます。
また、専用のスマホアプリも提供しているため、外出先での入力や確認もできます。中小企業や個人事業主で、手軽に会計処理をおこないたい方におすすめです。
提供元 | 株式会社マネーフォワード |
初期費用 |
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料金プラン | スモールビジネス
ビジネス
クラウド会計Plus:要問い合わせ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
弥生会計オンライン
弥生会計オンラインは、シンプルで使いやすい機能が充実しているクラウド型の会計ソフトです。
また、スマホやタブレットに対応するアプリがあるため、外出先でもインターネットを介しての利用が可能です。領収書や請求書の発行ができたり税務署への申告書の提出が簡単にできたりと、ビジネスの効率化に役立ちます。
提供元 | 弥生株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | セルフプラン:28,600円(税込)/年、2,382円(税込)/月 ベーシックプラン:38,720円(税込)/年、3,226円(税込)/月 |
導入実績 | 登録ユーザー数280万突破(2022年9月時点) |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
経理DXの推進におすすめのワークフローシステム
ワークフローシステムとは、ビジネスプロセスの自動化を目的としたソフトウェアシステムです。業務手続きや承認フローを決められたルールにしたがって進行させ、効率的に作業をおこなうように設計されています。
ワークフローシステムは、タスクの割り当てや進行状況の追跡、文書管理などさまざまな機能を提供し、組織内での情報の共有や連携を促進します。
次からは、おすすめのワークフローシステムを2つ紹介します。
Shachihata Cloud
Shachihata Cloudは、シヤチハタ株式会社が提供するワークフローシステムです。社内の承認フローや申請、情報共有などの業務を効率化できます。
また、既存の業務システムとの連携や、柔軟なカスタマイズができるため、企業のニーズに応じた導入が可能です。業務プロセスの改善を目指す企業や、リモートワーク環境を整備したい企業におすすめです。
提供元 | シヤチハタ株式会社 |
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
※初回時は550円(税込)以上での契約が必須 |
導入実績 | 導入数95万件 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
ジョブカンワークフロー
ジョブカンワークフローは、効率的な業務管理を目指すワークフローシステムです。スケジュール管理やタスクの進捗管理、ファイル共有、チャットなど、チーム内の情報共有やタスクの効率化をサポートする機能が充実しています。
また、導入が簡単で初期費用が無料な点も魅力です。リモートワークでのコミュニケーション強化や、タスク管理と進捗確認を一元化したい企業に向いています。
提供元 | 株式会社Donuts |
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
※両プランを申し込む場合は660円(税込)/ユーザ/月 |
導入実績 | シリーズ累計15万社以上 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
経理のDXを推進して業務効率を向上させよう
経理部門のDXを推進すると、デジタルテクノロジーを活用して業務のプロセスを自動化したり、効率化したりできます。また、請求書等の書類の作成・封入・発送などにかかるコストの削減や業務の属人化防止、優秀な人材の獲得といった多くのメリットがあります。
労働人口の減少も進んでいる現在、将来のために工数を減らし、少ない人数でも円滑に業務が回る経理部門の構築が急務です。本記事をDXの推進に役立ててください。
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