経理部門のDX化とは?課題や推進するメリット・おすすめのツールを紹介

2023/07/10 2024/05/29

経理アウトソーシング

経理部門のDX化

人手不足や法改正など、ビジネス環境の変化に対応するためにはDXが重要です。しかし、どのようにDXを進めるべきか悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。本記事では、経理部門のDXを推進するメリットや進め方を解説します。経理のDXに役立つシステムも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

経理DXとは?

DXとは、最新のデジタル技術を駆使して組織のビジネスモデルを改革する取り組みのことです。そのため、経理DXは、経理部門や業務フローの中にデジタル技術を取り入れることで従来の業務を変革し、自動化や効率化を図ることを指します。

経理には請求書作成や決算書作成などの複雑な業務が多く、従業員への負担が大きくなったり、属人化してしまったりなどさまざまなリスクがあります。

些細なミスが大きな問題に発展してしまうことも考えられるため、従来の経理業務の課題を解決するためにDXが求められているのです。

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経理業務の課題

経理業務は、企業のお金の流れを管理する重要な仕事である一方で、さまざまな課題を抱える領域でもあります。ここでは、具体的にどのような状況で経理業務が行われているのかについて見ていきましょう。

DXが進んでおらずアナログな作業が多い

経理は請求書や契約書、給与明細などさまざまな証憑を扱う業務です。これらの多くは紙媒体でやりとりされることが多い書類でもあります。また、ハンコ文化もまだまだ根強く、承認されるまでに多くの時間を要する場合もあるでしょう。

このように、アナログな作業が多くあることから、思うようにDXが進まない部門と言われています。

属人化しやすい

経理は専門的な知識が必要とされる部門であるうえに、少人数で業務を回すことが多いため、属人化しやすい傾向があります。特定の取引先への例外的な対応が求められる場面もあり、これまでの担当者が退職や異動となった場合、業務が滞ってしまうことが考えられます。

属人化している業務ではマニュアルが存在しないことも多いため、引継ぎが困難になってしまうこともあるでしょう。

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リモートワークに対応できていない

経理はリモートワークへの対応が難しい部門のひとつです。請求書や経費精算書など紙媒体での業務が多くあり、書類の内容によっては上長からの承認を得たり、郵送で発送したりといった作業も行う必要があります。

このようにアナログな作業が多く存在することから、出社が必要なケースも多く、リモートワークへの対応が遅れていると考えられます。

経理のDXに注目が集まっている理由

経理のDXに注目が集まっている理由としては、日本が抱える問題や法改正への対応があげられます。ここからは、具体的にどのような理由があるのか解説します。

2025年の崖が問題視されているため

2025年の崖とは、経済産業省が2018年に公表したレポートの中で指摘した問題のことです。

レポートでは、IT人材の不足と過去の技術で構築されたレガシーシステムの老朽化が要因となり、企業が市場での競争力を大きく失うことが懸念されています。これらの問題を解消しDXを推進しなければ、2025年以降1年ごとに12兆円もの損失が発生するとしているのです。

このシナリオ通りに進んでしまうと、多くの企業が危機的状況に陥るだけでなく、国力の衰退にもつながりかねません。損失の発生を回避するには、企業がレガシーシステムを段階的に刷新し、DXを進める必要があると考えられています。

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人材不足と属人化を解消するため

経理では、ほかの部署と同様に人材不足や業務の属人化が深刻化しています。

経理業務には、専門的な知識を要する高度な仕事も多く、ルーチン作業や社内外の問い合わせに追われていると、特定の人材に業務が偏ります。属人化してしまうと、負荷に耐えられない人材が離職してしまうことも起こりかねません。このような人材不足と属人化を解消するためにもDXが有効です。

定型業務や単純作業をデジタル化してDXを進めれば、経理の属人化を防ぎつつ業務の質も担保できます。少ない人数でも業務が安定して回る環境づくりに向けて、DXへの注目が集まっているのです。

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電子帳簿保存法が改正されたため

電子帳簿保存法の改正により、2022年1月以降に電子取引した書類は電子データでの保存が義務になりました。

2024年1月から電子取引のデータ保存が完全義務化されたため、電子データで受け取ったり発行したりした書類は電子データとして保存しておく必要があります。また、受け取ったデータはただ保存すればいいというわけではなく、決められた要件を満たした状態で保存しなければなりません。

電子帳簿保存法への対応という観点からも、業務のデジタル化による体制整備が求められています。

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インボイス制度への対応が求められるため

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、適用税率や税額を記した適格請求書の作成や保存が求められる制度であり、2023年10月から施行が開始されました。

インボイス制度が始まったことで、企業は取引する相手から適格請求書と従来の請求書の2種類を受け取ることになります。それらを区分けして保存する作業が増えたことから、経理の業務負担がさらに大きくなっているのです。

経理担当者の負担を減らすには、インボイス制度に対応したツールの導入を検討する必要があるでしょう。

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経理のDXを推進するメリット

経理業務のDXを推進することで、さまざまな効果が期待できます。ここでは、どのようなメリットが得られるのか詳しく解説します。

業務の自動化・効率化が見込める

経理のDXを進めることで業務が自動化され、効率化にも大きく貢献します。業務の電子化や自動化が進めば、紙ベースの作業や手入力する時間の軽減が可能です。業務が効率化されると負担やストレスが軽減するため、経理担当者の生産性向上も期待できるでしょう。

定型業務や単純作業の業務効率化により、企業経営に欠かせないデータ集計や分析などのコア業務に集中する環境も整います。

経営状況をタイムリーに可視化できる

利用しているシステムに蓄積されたデータを活用することで、経営状況をタイムリーに可視化できるのもメリットです。経営者や役員だけでなく、事業部ごとの責任者や現場の担当者など、それぞれの立場で必要とされる情報の適切な把握が可能になります。

経営判断に求められる数字の算出やレポート作成といった工数削減にもつながるため、より深い分析や戦略策定に注力できるようになるでしょう。

ペーパーレス化が実現する

経理DXの推進によって、ペーパーレス化も実現できます。経費精算の申請や証憑の提出をWeb上で完結できるようにしたり、取引先とのやりとりを電子化したりすることで、必然的に紙の消費が減っていくでしょう。

ペーパーレス化が実現すれば、印刷コストや紙の書類を保管するスペースが不要となるだけでなく、必要な書類の検索も簡単に行えるようになります。

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経理のDXを推進する上での懸念点

経理のDXはメリットが多い一方で、いくつかの懸念点も存在します。

初期費用が発生する

経理のDXを進めるためには、システムやツールの導入が必要になるため、必ず初期費用が発生します。システムやツールを導入する前に、DXによってどれくらいの売り上げアップやコスト削減が見込めるのかを確認することが大切です。

経理業務のオペレーションを見直す必要がある

DXを進めるにあたって業務フローの再構築を行う場合、オペレーションを見直す必要が出てきます。新たにマニュアルを作ったり、それを周知したりと多くの手間と時間を要することもあるでしょう。

成果が可視化しにくい

経理は数値化による目標設定が難しいとされているため、DXを推進しても成果が可視化しにくいという側面があります。成果を確認するには、経理業務の中でも数値化しやすい項目に焦点を充てるなど、新たな評価制度の構築が必要になるでしょう。

DXに向いている経理の業務事例

DXに向いている経理の業務は、主に4つです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

請求書の発行

請求書は取引先の希望に沿った形式で作成する必要があるだけでなく、郵送やFAX、メールなど企業によって送付方法もさまざまです。また、誤りがあると企業の信頼を損ねる可能性があるため、ミスが起きないよう慎重に業務を進めなければならず、経理担当者の大きな負担となります。

このような定型的な要素を含む業務については、DXに向いている業務といえます。請求書の発行に関する業務のプロセスを自動化することで、業務効率化が実現するでしょう。

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給与計算

給与計算は、個別の従業員に合わせて考慮すべき要素が多く、複雑な計算が必要な業務です。勤務時間や基本給、各種手当や控除といった要素がそれぞれの従業員で異なります。また、労働基準法や所得税法、社会保険など専門的な知識も求められます。

従業員ごとの給与計算は、経理担当者の業務のなかでも、時間や手間がかかる負担の大きいものです。

DXの取り組みとして、給与管理システムを勤怠管理・人事労務システムと連携し、データが自動反映される仕組みをつくることで、作業の効率化や人的ミスの防止になります。

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決算業務

決算業務は経理業務の中でも重要度が高く、正確性とスピードが求められます。損益計算書・貸借対照表の作成など専門性の高い業務でもあるため、属人化を引き起こしやすいのが特徴です。

決算業務の課題もまた、他のシステムデータを会計システムに連携することで業務改善が可能です。データが自動で反映されるようにすれば、仕訳をシステムごとに都度入力したり、転記したデータの正確性を確認したりする手間が省け、経理担当者の負担軽減につながるでしょう。

受注・仕入れなどの集計

受注や仕入れなどの集計業務もDXに向いている業務です。すでにExcelなどで管理しているところも多いと思いますが、それによって属人化しているケースも少なくありません。

集計業務のDXには、仕入れや売上などのデータを勘定科目ごとに仕分けして集計できる会計ソフトの導入がおすすめです。これにより、業務の習熟にかかる手間を減らせるだけでなく、取引先が希望する要件にも沿いやすくなります。その結果、維持管理にかかるコストも削減できるでしょう。

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経理のDXを推進する際の進め方

経理のDXを推進する際の進め方を3つに分けて解説します。

経理業務のプロセスを見直し課題を見つける

まずはじめに、経理業務のプロセスの見直しを行いましょう。業務にかかっている工数を洗い出して全体像を把握することで、問題点を明確にすることが可能です。

次に、担当者へのヒアリングを行いながら、システムを導入するにあたっての懸念点や抱えている課題を洗い出していきます。これを行うことで、システムの導入が必要なのか、どのように選定すべきかが判断しやすくなります。

ペーパーレス化・電子印鑑の導入を進める

経理DXを進めるうえで、ペーパーレス化と電子印鑑の導入は欠かせません。紙帳票のデジタル化の推進は、経理部門のDXの第一歩といえます。以下のような例を参考に、デジタル化を促進しましょう。

  • 請求書・領収書・仕入れ伝票・売上伝票などの帳票類をデジタル化
  • 電子印鑑を導入し、それを利用した承認方法を採用
  • 不要な押印のルール撤廃
  • 取引や連絡のオンライン化

ペーパーレス化が進む業務効率化ツールとして、経費精算システムや会計ソフト、ワークフローシステムなどを利用するのもおすすめです。

経理業務をペーパーレス化するメリットは?進め方や役立つツールを解説

業務の自動化やツールの導入を行う

ペーパーレス化を進めたら、業務の自動化を行います。以下のような業務が自動化に適しているでしょう。

  • 入金消し込み
  • 請求書の照合
  • 各種書類の処理
  • 必要な通知
  • 仕訳データの抽出業務

自動化を進めると定型業務にかかっていた工数を削減できるので、決算の早期化や月末に偏りがちな残業の削減が見込めるだけでなく、コア業務にリソースをあてられます。手入力による人的ミスやデータの改ざん防止にもつながるでしょう。

データを連携し経営状況を可視化する

ペーパーレス化やツールを導入して自動化を進めたら、経営陣や関係部署が会社の経営状況をリアルタイムに把握できるよう経理データを可視化します。データ分析や可視化ツールを導入し、既存ツールとの連携を行いましょう。

必要なデータがタイムリーに入手できるため、経営陣は迅速な経営判断が可能になります。また、経営活動における課題も見つけやすくなるのです。課題をもとに業務改善を行えば、企業の業績アップや生産性の向上につながるでしょう。

経理のDX推進に役立つおすすめのシステム

ここからは、経営のDX推進に役立つシステムを紹介します。

ERP

ERPは、ヒト・モノ・カネといった企業のリソースを一元管理し、経営に活かすことを目的としたシステムです。

販売管理・財務管理・人事・給与管理・在庫購買管理・生産管理などの基幹情報の一元管理が行えます。ERPを導入することで、現状の把握や将来的なリソース配分の検討に役立てることが可能です。

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RPA

RPAとは、ルーティン業務を自動化して業務効率化が図れるツールです。データ入力やコピー&ペーストといった反復作業をロボットに任せられるため、経理をはじめとするバックオフィス業務に適しています。

これまでは人の意思決定を必要としない業務のみに活用されていましたが、AIと組み合わせたRPAによって任せられる業務範囲が拡大しています。

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ワークフローシステム

ワークフローシステムとは、各種申請や稟議など、組織内で行われるさまざまな手続きを電子化するシステムです。

このシステムを導入することで、申請から承認までの一連の流れがスムーズに行えるようになるだけでなく、ペーパーレス化も実現できます。また、あらゆる手続きをシステム上で行えるため、リモートワークの推進にもつながるでしょう。

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会計システム

会計システムを導入することで、会計業務を自動で行えるようになり、担当者の負担軽減や人的ミスを減らすことができます。機能はシステムによってさまざまですが、帳簿や決算書などの書類作成や、企業の損益管理やシミュレーションによって経営分析を行えるものなどがあります。

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経費精算システム

経費計算システムは、経費の入力や申請・承認など経費精算に必要な業務を効率化するシステムです。領収書の読み取りや自動仕分け、振込データの作成など一連の作業をサポートするため、煩雑になりがちな経費精算の工数や人的ミスが削減できます。

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AI-OCR

AI-OCRは、AIとOCR技術を組み合わせたシステムです。OCRとは、紙などに記載された文字情報をスキャナやデジタルカメラで読み取り画像としてデータ化する技術を指します。請求書や領収書に記載されている情報を読み取れるため、手入力による手間やミスの軽減にもつながるでしょう。

電子帳票システム

電子帳票システムは、企業との取引で必要となる納品書や発注書などの帳票類を電子データで作成・送付・保存するシステムです。基幹システムなどと連携することで効率的に帳票データを活用できます。帳票の作成や送付といった業務にかかる時間とコストを大幅に削減できるでしょう。

BIツール

BIツールは、組織に蓄積されたデータの分析や可視化を可能にするシステムです。原価や経費分析、業務報告資料の作成などの作業を自動化し、企業における意思決定をサポートします。

経理のDXを推進する上ではシステムの選定が重要

経理のDXを推進することで、人員やコスト、時間といった企業のリソースを削減して生産性や競争力を向上させることができます。

そのためには、自社の課題に合ったシステムを選定することが重要です。本記事で紹介した進め方やシステムなどを参考にし、経理業務のDXを推進していきましょう。

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