経理業務を効率化する方法とは?経理業務の課題や事例・効率化させるステップ

最終更新日時:2023/10/19

経理アウトソーシング

経理業務の効率化

数ある業務の中でも効率化が課題となりやすい経理業務。お金という重要な資源を扱うだけに、非効率に陥ってしまう企業が少なくないのが現状です。そこで本記事では、経理業務における課題や効率化までのステップを確認しながら、経理業務を効率化する方法について解説します。

経理業務の効率化を阻んでいる課題

まず、経理業務の効率化を阻んでいる課題や考えられる問題点を把握しましょう。多くの企業に見られることとして、以下の3つが挙げられます。

業務が属人化しやすい

経理業務は、簿記や会計などの専門的なスキルを必要とする特性上、属人化しやすいという課題があります。スキルや知識、経験を持つ従業員が、長く経理を担当するというケースも少なくありません。

しかし、そのような状況では、担当者しか把握できていない業務の発生や担当者の休職や退職になった場合、代われる人がいないなどの問題が発生してしまいます。

経理業務が属人化しやすい原因とは?解消する方法やおすすめのソフト

作業量が多くなりがち

総務や人事同様、バックオフィスに分類される経理業務は、直接的に利益を生み出す部署ではありません。そのため、配置人員を最小限に抑えようとする傾向があります。

適切な数の人員が確保されていない場合には1人あたりの業務量が増え、負担が大きくなります。オーバーワークでストレスがかかれば、退職や休職ということもあるでしょう。そうなればさらに人員不足になり、1人あたりの業務量が増えるという悪循環になることは否めません。

経理業務には、このような作業量の課題も潜んでいます。

作業に遅延が起こりやすい

経理業務は遅延が起こりやすいという点も課題のひとつです。遅延が起こる要因として考えられることは、2つあります。

ひとつは、「紙でのやり取りが多いこと」です。請求書や納品書、帳簿などを紙で作成し、処理している企業は少なくありません。この場合、書類の作成→チェック→修正→チェック→押印→チェック→郵送といったように、作業に手間がかかる分、遅延が生じます。

もうひとつの遅延の要因は、お金を取り扱うという業務の性質上、慎重にならざるを得えないことです。帳簿や税務申告にミスがあれば、従業員にとっては責任問題ですし、企業は社会的信用を失うことになりかねません。そのような事態を回避しようとすると、どうしても作業に時間がかかってしまいます。

経理業務でよくある課題|課題解決の方法や効率化に向けた取り組みを紹介

経理業務を効率化する方法

経理業務の効率化を阻む様々な課題があるものの、ポイントを抑えていけば経理の効率化を実現することも可能です。

ここでは効率化に向けた6つのポイントを紹介していくので、チェックしてみてください。

会計ソフトの導入

まずは、会計ソフトの導入です。ソフトがあれば、数字を打ち込むだけで、自動的に請求書や見積書などを計算して作成できるため、計算ミスや記入ミスなどのヒューマンエラーがなくなります。また、人手で計算したり書類作成をする時間の短縮も可能です。業務がスムーズに進めば、作業量の多さや遅延という課題解消にもつながるでしょう。

さらに、誰もが同じように使えるソフトの導入は、属人化の防止にも期待できます。

【2023年最新】おすすめの会計ソフト15選徹底比較|失敗しない選び方とソフトの特徴

ペーパーレス化の推進

2022年の電子帳簿保存法改正により、国税に関する帳簿や書類の電子データ保存が推進されることとなりました。この動きに合わせペーパーレス化を進めることも、業務効率化につながります。

紙の書類を作成する場合、印刷したりファイリングしたりといった手間がかかります。紙代、印刷代、郵送する場合は、その費用も必要です。

しかし、データで管理できるなら、それらの作業も費用も必要なくなります。ペーパーレス化は、1人あたりの作業量を減らすだけでなく、経費削減も可能なのです。

ペーパーレスとは?推進の必要性やメリット・デメリットを徹底解説!

キャッシュレス化の推進

現金での精算が多くなるにつれて経理が処理すべき業務内容が多くなってしまうため、金銭のやり取りでは現金を利用せずにキャッシュレス化するようにしましょう。

キャッシュレス化に向けては、法人向けのクレジットカードがおすすめです。いつどこで金銭のやり取りが発生したかが一目で把握するっことができ、また会計ソフトとの連携で記帳の自動化もできます。

書類フォーマットの統一化

見積書、請求書、精算伝票など書類のフォーマットを社内全体で統一することも、経理業務の効率化に有効です。

書類がフォーマット化されていないと、部署によって形式がまちまちになるため、経理担当者の確認に時間がかかります。しかし、フォーマット化されていれば、書類が大量になってもチェックポイントが同じなので、効率的な処理が可能です。情報の記入漏れなど、ヒューマンエラーも抑えられるでしょう。

マルチディスプレイの活用

マルチディスプレイとは、1台のパソコンに複数のディスプレイを接続することです。

1つの画面を複数のディスプレイ全体で大きく表示することもできれば、ディスプレイごとに別の画面を表示することもできます。このようなマルチディスプレイの導入も、経理業務を効率化させる方法のひとつです。

例えば、帳簿をつけるにあたり「請求書」「納品書」「領収書」などの書類を確認するとしましょう。1つのディスプレイでこれらのデータを確認する場合、書類ごとに画面の切り替えが必要です。作業が煩わしくなるだけでなく、余計な手間もかかります。

しかしマルチディスプレイなら、各画面で必要な書類を表示することができます。その分、作業がスムーズになり、業務の効率化が実現できるでしょう。

アウトソーシングの導入

外部に業務委託するアウトソーシングの導入も、経理業務の効率化を実現する方法として挙げられます。アウトソーシングのメリットは、専門的な知識や経験を積んだ人材に業務を依頼できることです。人手不足を補えるだけでなく、仕事の正確さやスピードなど、クオリティにも期待できます。

経理担当者に時間的な余裕が生まれれば、コア業務を担当してもらうことが可能です。従業員のモチベーションも上がり、企業の生産性も向上するでしょう。

経理アウトソーシングとは?メリット・デメリットと外注先を選ぶコツ

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経理業務を効率化させるための手順・ステップ

経理業務を効率化させるためには、現状の課題を洗い出して対策を立てる必要があります。業務効率化の手順について解説していきましょう。

経理業務を可視化する

まずは、日常的に経理業務で行っている作業を可視化しましょう。可視化する際には、「時系列」「行動レベル」で業務を洗い出していくことが重要です。

時系列順に業務を洗い出す

経理で発生する業務を洗い出し、時系列に沿って書き出します。担当者が複数いる場合は、それぞれがプロセスを書き出して、すり合わせをしましょう。抜け漏れなく洗い出すことができます。

この作業のポイントは、細かい業務内容をチェックするのではなく、業務の流れを明確にすることです。書き出すことで、効率化できそうなポイントが浮かび上がることも、あるかもしれません。

行動レベルで業務を洗い出す

時系列で業務内容が洗い出せたら、各作業について具体的な行動レベルに落とし込んでいきます。

例えば時系列でピックアップした「請求書を作成する」という作業では「顧客への納品物の確認」「納品期日の確認」「金額の計算」「振込日と口座の確認」など複数の作業、つまり行動が発生します。それらを丹念に洗い出しましょう。それにより、業務全体が可視化できるようになります。

ECRS(イクルス)の法則で見直す

次に、可視化できた業務をECRS(イクルス)の法則で見直します。ECRSの法則とは、業務の効率化を考える際のフレームワークで、観点は以下のとおりです。

  • E(Eliminate):排除(なくしても問題のない作業はないか)
  • C(Combine):結合(まとめられる作業はないか)
  • R(Rearrange): 再配置(順序を変えることのできる作業はないか)
  • S(Simplify):単純化(工程を少なくできる作業はないか)

業務の可視化・洗い出しを実施した後に、ECRSの観点で業務を見直していくことにより、改善点が見えてきます。

ECRSの原則とは?業務改善フレームワークの活用メリットや成功事例を解説

改善点の解消に向けた働きかけをする

ECRSの観点で業務を洗い出したら改善に向けて実行に移します。改善内容は効率化したい内容によって異なりますが、いずれにしても、「P(Plan):計画」「D(Do):実行」「C(Check):測定・評価」「A(Action):対策・改善」を繰り返していくのが重要です。

経理業務の効率化は行動してすぐに実現できるものではないため、PDCAを回していくことが重要になるでしょう。

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経理業務を効率化するメリット・効果

経理業務の効率化には、従業員だけでなく企業にとっても大きなメリットがあります。主な4つのメリットを見てみましょう。

ヒューマンエラーの防止

ツールを導入して入力や計算などの定型業務を自動化することによって、人為的なミスが起こらなくなるだけでなく、速く正確な処理を実現します。

入力業務や計算業務などは単純作業であるがゆえにヒューマンエラーが発生しやすくなりますが、ツールによって効率化することでヒューマンエラーの防止につながるでしょう。

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経理業務のコスト削減

経理業務を効率化できれば、労働時間や人件費の削減も実現できます。例えば、今まで1日に5時間かかっていたルーティンワークにITツールを導入して作業時間が1日1時間に短縮された場合、浮いた4時間分をコア業務に充てることができます。

さらに、ITツールの導入によりデータでのやり取りが増えれば、紙代や郵送料などの経費削減も可能です。

ITツールは、導入時に費用がかかるため、コストが増加すると思うかもしれません。しかし、長期的に見ると、ITツールを導入したほうが費用対効果が大きくなる可能性があるのです。

意思決定のスピード向上

経営戦略を立てる際、経営陣の意思決定を左右するのが、決算書などの経理書類です。業務効率化により、経理書類の作成がスムーズになることで、経営陣が自社の状況理解が早くなり迅速な経営判断ができます。リアルタイムの経営状況に合わせて、企業の利益向上にも期待できるでしょう。

従業員の満足度向上

従業員の満足度が向上することも、メリットのひとつといってよいでしょう。

経理業務は、気遣いの必要な作業であるにもかかわらず「決算の期日に間に合わせなければならない」「ミスが許されない」など、精神的な負担の多い業務でもあります。適切な対策を施し、業務量だけでなく精神面の負担も軽減できれば、従業員にとっては働きやすい環境になるでしょう。企業への帰属意識や仕事に対するモチベーション向上にも期待できます。

さらに、効率化でコア業務に専念できるようになれば、一人ひとりのパフォーマンス力も高まるでしょう。結果的に、企業全体の生産性向上につながるといっても過言ではありません。

経理アウトソーシングで失敗する原因・事例|失敗しないための秘訣を紹介

経理業務の効率化に成功した企業事例

経理業務の効率化に取り組み、成功した企業の事例を2つ紹介します。ぜひ、参考にしてください。

會澤高圧コンクリート株式会社

會澤高圧コンクリート株式会社は、昭和10年創業という長い歴史を持つコンクリートメーカーです。

効率化前までは、Excelでの精算書作成や会計ソフトでの経理処理などを行っていました。ところがコロナ禍において、テレワークでの経理業務に支障が生じてしまったのです。

加えて、経費精算の電子化や電子帳簿保存法への対応にも迫られました。そのような事情により、経理業務を一元管理できるクラウド型会計ソフトの導入を決断したといいます。

その結果、15拠点において、月平均5時間ほどの業務時間短縮に成功、全社では月に75時間程度、経理業務にかかる時間が削減されるという大きな成果を上げています。

株式会社ラクス

株式会社ラクスは、システム開発や技術者派遣などを行う企業で、サブスクリプションモデルのビジネスを展開しています。

ところが、同企業では複数の料金プランを設定していたため、毎月の請求処理が煩雑になり、膨大な時間と手間がかかるという問題が発生してしまったのです。データの入力ミスや書類紛失のトラブルもあったといいます。

この状況を打開するため、販売管理にITシステムを導入することとなりました。それにより、毎月の請求処理を自動化し、処理にかかる時間は1/3にまで削減されたといいます。

経理業務を効率化して生産性を高められる環境を作ろう

経理業務はルーティンワークが多いこともあり、効率化を実現しやすい業務です。業務の効率化が図れれば、経理業務が抱える数々の課題を解決でき、「経理業務のコスト削減」「意思決定のスピード向上」、ひいては生産性の向上にも期待できます。

業務効率化の実現には、ペーパーレス化、会計ソフトやアウトソーシングの導入など、さまざまな方法があります。自社の課題や現状を洗い出し、適した対策を取り入れていきましょう。

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