人事評価制度の事例9選|成功事例や評価制度に活用される手法を解説

最終更新日時:2024/04/17

人事評価システム

人事評価制度の事例

大手企業を中心に導入が進む「人事評価制度」。さまざまな評価手法が活用されていますが、人事評価制度はなぜ必要とされているのでしょうか。本記事では、人事評価制度の事例9選とあわせて、評価制度に活用される手法や必要とされる背景を解説します。

人事評価制度とは?

人事評価制度とは、従業員の成績や能力、企業に対する貢献度などを一定の基準に基づいて評価する仕組みのことです。評価に基づいて人材を育成するとともに、各社員のスキルや適性を見極め、人材配置などの待遇を最適化する目的があります。

実施頻度は、年1回、半年に1回、四半期に1回と企業によって異なります。評価項目は、成果や能力、情意、行動が中心です。どの項目を重点的に評価するかは企業の方針によって変わります。

人事評価制度とは?目的や導入方法・メリットとデメリットを解説

人事評価制度の作り方|作る際のポイントや手順、成功・失敗事例を解説

人事評価制度の成功事例9選

現在業績を上げている企業の多くが、独自の人事評価制度を導入しています。今回はその中から、9つの成功事例をご紹介しましょう。

自社の人事評価制度をより良くするために、ぜひ参考にしてみてください。

株式会社メルカリ

株式会社メルカリは、2013年に創業したフリマアプリ「メルカリ」を運営する企業です。同社では、現在に至るまでに二度、大きな人事評価制度の改革を行っています。

まず社員の評価に順列を付けず、個々の業績に注目する「ノーレイティング」と「絶対評価」を取り入れたのが、2018年1月の改革です。これにより、原資ありきの「トップダウンな評価」から、あくまで個人のパフォーマンスを重視し相対的な上限を無くした「ボトムアップな評価」を実現しました。

さらに上記の評価軸はそのまま、2021年2月には、より組織としての期待を明確化するアップデートが加えられています。評価制度を運用する際の煩雑さを解消し、従業員の納得感をより高めることが主な目的です。組織が拡大するにつれ評価基準や組織としての目標が伝わりづらくなっていたため、新しく「グレード」と「バリュー」という軸を加えることで、メンバーの活躍により直接的に報いることができるようになりました。

参照元:株式会社株式会社メルカリ「大幅アップデートされたメルカリ人事評価制度の内容と意図

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エーは、ゲームやライブストリーミング、スポーツ・まちづくりやヘルスケア・メディカルなどを幅広く手掛けるインターネット企業です。同社は「人は仕事で成長する」という思想のもと、個人の成長と体験を後押しするための人事評価制度を運用しています。

株式会社ディー・エヌ・エーでは半期ごとに目標を設定し、2カ月目と4カ月目に上司と部下による面談、すなわちチェックインを行い、期末に成果と発揮能力について振り返りをします。このサイクルによって、個々の成果による事業の目標達成と、社員の成長度合いである「発揮能力」をはかることが目的です。

成果はボーナスに、発揮能力は基本給にとそれぞれの反映先が明確なので、社員の納得度が高まる効果もあります。従業員の成長ステップを示し、強みの形成を支援して一人ひとりの成長を促進することで、ディー・エヌ・エーという組織そのものを強くする制度といえるでしょう。

参照元:株式会社ディー・エヌ・エー「従業員とともに

アドビ株式会社

クリエイティブソフトウェアおよび関連サービスを個人・法人や教育機関、学生に向けて提供しているのが、アドビ株式会社です。

同社は、2012年から独自の評価制度「チェックイン(Check-in)」を採用しています。背景には、既存の人事評価制度が時代の趨勢(すうせい)にそぐわないうえ、人事評価に時間を費やすことは非生産的であり、人間関係上のストレスにもなるという問題がありました。

「チェックイン」では、マネージャーと従業員が頻繁に面談を行い、社員の成長など優先事項を決めたうえでフィードバックを行います。以前の評価制度にあった、数値による評価やランク付け、厳格な文書の提出などをカットしたことも大きなポイントです。

その結果、人事評価にかかわる時間を削減できただけではなく、マネージャーと社員の関係性が良くなりました。さらに、社員の仕事に対する意欲や定着率が高まる効果が生まれたそうです。

参照元:株式会社アドビ株式会社「業員の #人事評価 のやり方が時代遅れになっていることを示唆

花王株式会社

花王グループは一般消費者を対象とした「ハイジーン&リビングケア」「ヘルス&ビューティケア」「ライフケア」「化粧品」の4事業のほか、産業界全体をけん引する技術開発として「ケミカル」事業を展開している企業です。創業は1887年と、国内でも有数の長い歴史を持っています。

花王グループは、2021年から「OKR(Objectives and Results)」と呼ばれる目標管理制度を導入しています。その背景にあるのは、中期経営計画「K25(※)」の3つの方針の1つに「社員活力の最大化」を掲げたことです。

花王のOKRでは、社員は「事業貢献」「ESG」「One team & My Dream」の観点から、自分で目標を設定します。目標は「ありたい姿や理想に近づくための高く挑戦的な目標」であり、社内で公開されるのが特徴です。これにより同じ目標を持つ社員同士がつながることができ、上司や同僚ともチャレンジをたたえ合える社内風土の醸成にも期待できます。

OKRの導入に合わせて、「チャレンジ評価制度」も導入しました。これは、社員の挑戦や取り組み、プロセスを今まで以上に評価する仕組みです。自発的に考えて変化を起こす社員を生み出し、社員の成長を促すことで、グループ全体の成長を目指します。

※現在は「K25」の内容を引き継ぎ、さらに先を見据えた中期経営計画「K27」が発表されています。

参照元:花王株式会社「教育制度

カルビー株式会社

カルビー株式会社は1949年の設立以来、スナック菓子やシリアル食品を中心に国内トップクラスのシェアを誇る企業です。

カルビーでは2019年から行っているエンゲージメント・サーベイによって、「仕事の成果やそれを評価する制度が従業員のモチベーションにつながっていない」という課題を発見したといいます。そこで採用されたのが、「バリュー評価」。「Calbee 5values」と名付けられた5つのバリュー、「自発」「利他」「対話」「好奇心」「挑戦」へ向けた行動指針を評価基準とします。

特徴的なのは、若手社員を中心としたワークショップで意見を募り、ボトムアップ方式でこれらのバリューを決定したことです。2019年に策定された「カルビーグループ長期ビジョン(2030ビジョン)」について、「このビジョンを達成するために必要な行動と、そのもとになる価値観とは」という観点で、500を超える案を吟味しました。

これらのバリュー達成へ向けた行動目標も、その都度上司と部下で話し合って決定します。このように従業員の声を積極的に取り入れる評価制度の実施により、誰もが当事者意識を持って自主的に行動できる風土が出来上がりました。

参照元:リクルートマネジメントソリューションズ「評価制度も刷新 持ち味や個性を重んじ全員が活躍する組織に

GMOインターネットグループ株式会社

GMOインターネットグループ株式会社は、「すべての人にインターネット」をコーポレートキャッチに掲げ、世界20カ国以上でインターネット事業を展開しています。

同社は人事評価の透明性と公平性を目的に、「360度ヒアリング」を人事評価制度に取り入れています。これは、被評価者を上長だけではなく、プロジェクトに一緒に携わったメンバーも評価する仕組みです。GMOでは基本的に、仕事上で密接にかかわった相手など、およそ10人前後が1人を評価します。

さらに360度評価の内容を踏まえた上で、最終的な判断は直属の冗長が下すという「ハイブリッド型」の評価を行っているのも特徴です。これにより、被評価者は細かい部分まで自分の行動が認められるという納得感を得ることができ、評価者は部下の新しい一面に気付くことができるなど、透明性が高く信頼性のある人事評価を実現しています。

参照元:NIKKEIリスキリング「「ガラス張りが一番」みんなの給料も丸わかり

株式会社Colorkrew

株式会社Colorkrewは、グループウェアやプラットフォームサービス、HRや総務分野を対象としたツールを手掛けるIT企業です。

同社は「360度評価」を導入していますが、特徴的なのは評価者を被評価者が選択できる点です。評価者は本人とコーチ(直属の指導員)が相談し、2~7人ほど指名でき、評価者のフィードバックを踏まえて評価ミーティングを開催します。最終的には人事プロジェクトが評価を確定させますが、フィードバック内容や昇給に関する情報は全社員に公開するため、透明度が高い制度と言えるでしょう。

目標設定と振り返りは3カ月ごとに行うので、年4回等級変更の機会があります。権威を作らないフラットな信頼関係と頻度の高い振り返りが、社員の成長や改善につながっているようです。

参照元:Colorkrew Blog「360度評価に偏重する評価制度は機能しないという話

株式会社ココナラ

株式会社ココナラは、スキルマーケット「ココナラ」の運営・開発を行う会社です。現在では、「ココナラ法律相談」「ココナラプロ」「ココナラコンサル」など事業を拡大しています。

同社は2017年に人事制度を変更しました。目的は、評価基準の統一と給与決定プロセスの明確化です。

当時、同社の社員は中途採用者が多く、前職の給与を参考に同社での給与が決まっていたため、基準が不明確でした。そこで、それまで3段階だった等級制度を11段階に変更するとともに、グレードを決める軸として「裁量」「コミット範囲」「育成責任」「業務レベル」「ノウハウレベル」の5つを決定しました。

等級制度を変更したことで、人事評価と給与の決定がスムーズになる効果が生まれました。さらに、社員それぞれに合わせた支援プログラムを実施し、グレードを上げるためのサポートも行い、人材育成にもつなげているそうです。

参照元:SELECK「5つの軸で11段階のグレードを定める、ココナラの等級制度

株式会社クラレ

株式会社クラレは、1950年に日本初の国産合成繊維「PVA(ポバール)」の工業化に成功し、現在では樹脂・化学品や繊維などの製造を行う化学メーカーです。

2017年度から、クラレグループグローバル共通の人事評価制度と人材情報システムの段階的な導入を開始しています。同時に、クラレグループグローバルの共通の行動指標「クラレコンピテンシー5x5」を導入しました。

「クラレコンピテンシー5x5」は、業務目標の設定や人材評価、能力開発やキャリア開発において用いられる指標です。評価はMBOとコンピテンシー評価の2つを用い、前者は賞与に、後者は年次昇給に反映されます。

また、これまで国ごとに資格等級が異なっていましたが、整合性を保つために、職務サイズを基本とした基準へと整備してきました。わかりやすく明確な共通指標を設けることで、グローバルに最適化された人材活用につなげています。

参照元:株式会社クラレ「Kurarey Report2019

【最新トレンドあり】人事評価制度に活用される手法

人事評価制度は、社員の人材育成や定着、会社の業績などに大きく影響を与えます。自社に合った人事評価制度を選ぶため、各制度の特徴やメリットを把握しておきましょう。ここでは最新トレンドも含めて、人事評価制度に活用される手法を紹介します。

MBO(目標管理制度)

MBOとは経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した手法で、「Management By Objectives」の略称です。チームや社員ごとに目標を設定し、それぞれの達成度を定量的に評価します。会社の目標とのすり合わせは必要ですが、それぞれの目標はトップダウンではなく、各チームや社員が決める点が特徴の1つです。

メリットとしては、目標が明確なので評価がしやすい点が挙げられます。また、目標設定や目標到達までの管理を社員が行うためで、自主性が育つという長所もあります。

デメリットとしては、チームや社員が自分たちで目標を決めるため、達成しやすい目標を設定する可能性があることです。また、目標以外の仕事を社員がやりたがらなくなる状況も想定されます。

目標管理制度(MBO)とは?メリット・デメリットや実施手順、OKRとの違いをわかりやすく解説

コンピテンシー評価

コンピテンシーとは、業績や成果につながる従業員の行動特性を指し、コンピテンシー評価はこの行動特性を評価軸とする手法です。具体的には、継続的に業績や成果を上げている従業員特有の行動やスキルを洗い出し、そこから評価基準を定めます。

業績や成果につながる行動をとったりスキルを身に付けたりすれば評価されるため、会社の業績向上につながりやすい評価方法と言えるでしょう。

メリットとしては、評価基準が明確化されているため、評価者の主観が入りにくい点が挙げられます。また、会社として評価する行動やスキルを可視化しているので、その基準と照らし合わせながら人材を育成しやすいと言えるでしょう。

デメリットは、一定数のサンプルを集めなければ業績や成果につながる行動やスキルがわからないため、導入に手間や時間がかかる点です。また、経営環境が変われば、業績や成果につながる行動やスキルも変わってきます。そのため、適宜見直しを図る必要があるでしょう。

360度評価

360度評価とは、被評価者の上司や同僚、部下など複数人が評価を行う手法です。

従来の上司のみの単独評価の場合、評価に上司の主観が入り込みやすく、それが被評価者の不満につながることもありました。複数人で評価を行うことで、より客観的で公平な評価を下せる特徴があります。

代表的なメリットは、客観的かつ公平な評価が実現することで、被評価者の納得感が高まる点です。納得感が高ければ、評価者によるフィードバックに基づいた行動変容にもつながりやすく、さらに公平な評価制度を導入している会社への帰属意識も高まります。

デメリットとしては、評価者が増えるため、360度評価の目的や方法の説明に時間を要する点や、評価結果をまとめるのに手間がかかることが挙げられます。また、お互いに評価を行うため、評価者同士で取引をして高評価をつけたり、上司が低評価を怖れて部下への指導が甘くなったりする可能性にも注意が必要です。

360度評価(多面評価)とは?目的やメリット・デメリット、導入ステップを解説

OKR

OKRは「Objectives and Key Results」(目標と主要な成果)を指し、企業の目標と各部署・社員の目標を連動させることで、企業の目標を達成する手法です。1970年代にアメリカでインテルが開始し、その後GoogleやFacebook(現・Meta)などが採用したことで注目されました。

まず組織が1〜3か月で達成を目指す定性的な目標(Objectives)を掲げ、次に定量的な指標を複数用意します。これが「Key Results」で、各部署や社員はこの達成を目指します。

メリットとしては、組織が一丸となって目標達成を目指せるうえ、ビジョンも共有しやすい点が挙げられます。また目標が明確なので、各部署や社員がなすべき行動がわかりやすいと言えるでしょう。

デメリットとしては、OKRは目標を設定する手法なので、プロセスや社員のチャレンジを評価しにくい点があります。そのため、導入している企業は、OKRを自社に合わせてアレンジしたり、他の人事評価手法と併用したりしています。

バリュー評価

バリューとは企業の行動規範や価値観を指し、バリュー評価は社員のバリュー体現度を評価する手法です。社員の業績ではなく、行動を評価する特徴があります。

バリュー体現度は数値化しにくいため、他の社員と相対的に評価する相対評価が多い傾向です。また、上司による単独評価ではなく、複数人で評価するケースが多く見られます。

メリットとしては、社員が企業の方向性に合った行動を取れる点があります。バリューに則った行動が評価されるため、社内の足並みが揃い、組織の一体感が醸成される効果も期待できるでしょう。

デメリットとしては、客観的な数値化が難しいため評価が困難な点が挙げられます。また、組織としてのバリューが設定されていない場合は、まずバリューを設定しなければなりません。そのため、導入に時間がかかる恐れもあります。

ピアボーナス

ピアボーナスは、社員同士が感謝の気持ちを表すために、特別手当やボーナス、ポイントなどを贈り合う制度です。Googleで始まったと言われており、直接金銭のやり取りをするのではなく、ピアボーナス専用のツールを導入して行う方法が多く用いられます。

ピアボーナスの受け取り状況により、他の社員から感謝されている社員が可視化され評価の参考にしやすいという特徴があります。

メリットとしては、社員同士のコミュニケーションが促進される点が挙げられます。他の社員から感謝を示されることで、社員のモチベーションの向上や離職率の低下も期待できるでしょう。

デメリットとしては、ツール導入にコストがかかる点が挙げられます。また、報酬目当てに行動する社員が出て来る恐れもあるため、注意が必要です。

ノーレイティング

ノーレイティングは社員の成果をランク付けせず、評価者によるフィードバックを行い、部署内のコミュニケーションに注力する評価方法です。評価者は社員の能力やパフォーマンスを短期間観察し、1on1などを通じてフィードバックを行います。面談中に評価者と社員が話し合って評価を決めるなど、より柔軟なスタイルを工夫できるのも特徴です。

メリットとしては、コミュニケーションの活性化や、評価内容への納得感が挙げられます。フィードバックが頻繁に行われるので、社員の成長にもつながる効果が期待できるでしょう。

デメリットとしては、フィードバックの頻度が高いため、評価者の負担が大きい点が挙げられます。評価者にマネジメントスキルが備わっていなければ、適切なフィードバックができない可能性も考えられるでしょう。

リアルタイム評価

リアルタイム評価は、月に1回もしくは2週間に1回など、既存の評価制度よりもさらにタイムリーに評価を行う手法です。経営環境や社会情勢が急速に変化する中、年に1回もしくは半期に1回の評価では人材育成が間に合わないという考えの下、行われています。リアルタイムフィードバックとも呼ばれています。

メリットとしては、頻繁に上司と面談を行うため、上司と部下のコミュニケーションが促進され信頼関係構築につながりやすい点が挙げられます。また、被評価者の記憶が鮮明なうちに課題を指摘するため、改善しやすい点もメリットと言えるでしょう。会社の方針が変更になった場合もすぐに対応できるので、柔軟性にも優れています。

デメリットとしては、評価を頻繁に行うため評価者の負担が大幅に増加する点です。部下が多ければ多いほど、面談に時間を要するため、評価者の負担軽減を考える必要があります。

また、評価者がマネージャー兼プレイヤーの場合、自身の業務に追われ面談をおろそかにしてしまう可能性があるので、リアルタイム評価の意義を組織全体に伝え浸透させることが大切です。

人事評価制度の種類まとめ|役割や特徴・制度を運用する際の注意点を解説

人事評価制度を導入する際のステップ

現状の人事評価制度に課題が生じている場合、新たな人事評価制度を導入する必要があるでしょう。ここでは、新たに人事評価制度を導入する際の具体的なステップを解説します。

現状を分析・把握する

最初に行わなければならないのは、組織の現状を分析し把握することです。そのためには、定量分析と定性分析を使い分けましょう。

前者はデータをもとにした分析方法で、離職率や各部署の売上などの推移について考察や比較を行い、課題を抽出します。後者は数値化が難しいデータをもとにした分析方法で、従業員へのヒアリングやアンケートによって寄せられた意見や不満から問題点を洗い出します。

改善策を考えるには、まず会社の目標やビジョンと現状との間にあるギャップを見つけることです。ウィークポイントがはっきりしたら、それを手掛かりにして最適な人事評価制度を探します。

人事評価制度を導入する目的を明確にする

人事評価制度の導入にあたっては、その目的を明確にしなければなりません。評価制度によって問題点を改善したいのか、既存の体制をよりブラッシュアップしたいのか、全く新しい挑戦を始めたいのかなど、導入の目的によってその方針や内容は大きく異なります。

「流行しているから」「何か新しいことを取り入れてみたいから」と曖昧な理由で人事評価制度を導入しては、被評価者の理解を得ることはできません。明確な目的を定め、それをきちんと共有することで、人事評価制度をより効果的に運用していきましょう

評価手法・評価基準を定める

次のステップは、評価手法や評価基準の策定です。評価手法には、MBOやコンピテンシー評価など多様な手法があります。各手法のメリットとデメリットを比較したうえで、導入目的や組織のビジョンに合った制度を選ぶようにしましょう。

評価基準の決定にあたっては、人事評価制度導入の目的と照らし合わせることが大切です。最終目的はひとつであっても、部署や役職によって求められる役割や行動は異なります。評価対象者別に基準を設定するのがおすすめです。

また、制度を運用するためにシステムの構築や導入が必要な場合もあります。コストを算出し、費用対効果を検討しましょう。

評価項目を設定する

評価項目の設定も、人事評価制度導入にあたって欠かせないステップです。評価項目は主に、「職務」「能力」「年功」「業績」「情意」から決定します。

「職務」は社員が担当している仕事内容を評価するもので、他の社員の仕事内容と比較して決めるケースが多くあります。「能力」は、社員の知識やスキル、資格など、「年功」は年齢や勤続年数をもとに判断しますが、「年功」を重視する企業は減少傾向にあると言えるでしょう。「業績」は売上や案件獲得数など、「情意」は勤務態度や意欲などから評価し、どの項目を重視するかは、社員に求める行動や姿勢によって決めていきましょう。

人事評価制度は、公正性が担保されなくてはいけません。業績や売上金額などの定量項目ばかりでは、縁の下の力持ちを適切に評価できませんし、かといって態度や工夫といった質的な項目ばかりでは、客観性に欠ける場合があります。

様々な項目を組み合わせ、公正で適切な評価を心がけましょう。

人事評価シートとは?職種別の例文や書き方・作成する目的を解説

人事評価と人事制度が連動する仕組みを整える

評価は付けて終わりではなく、給与や昇進など人事制度に反映できるように仕組みを整えましょう。

例えば、成果を出した結果として賞与が増えれば社員の意欲は増すうえ、人事評価への納得感も高まります。適切に評価された社員が昇進すれば、周囲の社員も納得できるため、組織の関係性も良くなる効果が見込めます。

人事評価制度と待遇の連動を考える際には、過去の実績を適切に還元し、さらなる活躍へのモチベーションを刺激できるよう工夫しましょう。

社内に周知した上で運用する

新しい人事評価制度を開始する前に、全社員に制度の目的や評価方法、導入スケジュールなどを説明しましょう。制度の変更により、評価者の負担が増える可能性があるため、評価者の協力は欠かせません。

また、社員の制度への理解が不十分だと、公平性に対して不満を持つ恐れもあります。新しい人事評価制度で社員が得られるメリットを適切に伝えることで、導入への理解を求めてください。

しかし、いくら事前に万全な準備を整えていても、運用後に問題が生じる可能性もあります。運用後も定期的に見直しを行い、社員から不満が出ているようであれば原因を探り、迅速に改善しましょう。

人事評価の不満は退職につながる!原因や退職を防ぐポイント・公平な人事評価にする方法

適切な人事評価制度を実施するメリット

人事評価制度の構築や運用は、コストがかかります。しかし、適切な人事評価制度を実施すれば、多くのメリットを享受できるでしょう。代表的なメリットを、以下に紹介します。

企業理念・ビジョンが浸透する

人事評価制度は、企業理念やビジョンに基づいて実施されます。特にバリュー評価は、企業の価値観の体現度によって、評価がなされます。

いくら企業理念やビジョンを策定しても、社員に浸透しなければ意味がなく、会社としての一体感も生まれません。人事評価制度を通じ、企業理念やビジョンに即した行動や貢献度を評価すれば、自然と社員は企業理念やビジョンを意識して業務を行うようになります。

人事評価制度は、社員への企業理念やビジョンの浸透にも効果的と言えるでしょう。

人材の育成につながる

人事評価制度は、等級や役職に応じた役割や能力を明確に定めると同時に、評価する過程で各社員の能力やスキルを可視化します。そのため、上司も本人も、上の等級を目指すために伸ばす必要がある能力やスキルがわかるのです。

結果として、部下の能力開発のために行うべき項目がわかり、研修への参加や資格取得を促したり、新規の業務を担当させたりすることができます。社員本人も昇進への道筋が見えることで、スキルアップへの意欲が湧くでしょう。

公平で透明性がある人事評価制度は、人材育成にも寄与すると言えます。

人材育成とは?大切な考え方や目的・具体的な方法を紹介!

コミュニケーションを促進できる

評価結果は上司から部下に伝えられ、改善点などのフィードバックを行うまでがひとつの流れです。フィードバックの場が定期的に設けられることで、上司と部下のコミュニケーションが促進される効果が期待できます。

また手法によっては、評価段階から上司と部下のコミュニケーションを必要とするものもあり、意見交換の機会をさらに増やすことも可能です。

コミュニケーションが促進されれば、業務上での困りごとや不満も上司に伝えやすくなり、問題への早期介入が実現できます。離職率の低下も見込めるでしょう。

従業員のモチベーション向上が期待できる

アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグは二要因論で、仕事への不満につながる要因を「衛生要因」、満足感につながる要因を「動機付け要因」としました。それぞれを適切に取り除き、適切に満たすことで、仕事へのモチベーションをより高めることができるのです。

衛生要因とは、給与や労働条件、人間関係など仕事の環境に関わる要因で、満たされていないと不満が募ります。ただし、満たされたからといって、モチベーションが上がるわけではありません。動機付け要因は、上司からの承認や成長、やりがいや目標達成で、満たされるとモチベーションが上がります。

公平性が確保された人事評価制度は、フィードバックなどを通じて社員の承認欲求が満たされます。また、目標が明確に設定され、目標を達成することでやりがいや成長も実感できます。その結果、社員のモチベーションが向上する効果が見込まれるでしょう。

従業員のスキルが可視され最適配置ができる

人事評価を行うということは、各社員のスキルを基準に基づいて判断するということです。普段の業務の中では見えづらい、社員の強みや長所も明らかになります。

こうした情報を蓄積しデータベース化すれば、人事異動の際に役立つでしょう。新規プロジェクトの発足や体制変更など、人材配置を見直す際に、データベースを使えば、迅速に適材適所の配置が実現できます。

事例を参考に自社にあった人事評価制度を構築しよう

人事評価制度の種類は多く、それぞれにメリット・デメリットがあります。導入すべき人事評価制度に迷っているのであれば、本記事を参考に、自社に合った制度構築を目指してみてください。

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