人事評価シートとは?職種別の例文や書き方・作成する目的を解説

最終更新日時:2024/04/12

人事評価システム

人事評価シートとは

人事評価制度を公平に保つために必要な、「人事評価シート」。既に導入している企業も多いですが、どのような内容を書けばよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。本記事では人事評価シートとは何か、書き方や職種別の例文と併せて解説します。

この記事の要約

・人事評価シートは、人事評価を適切かつ公平に行うために評価を記載する書類のこと
・公平性を保つことのほかに、人事評価の質向上や組織風土の形成するための目的がある

人事評価シートとは?

人事評価シートとは、人事評価を適切に行うために従業員の評価を記載する書類です。

具体的には、従業員の目標に対して能力・業績・情意という3つの視点から評価項目を割り振り、部下の自己評価と上司からの評価を通じてスコア化します。

この人事評価シートを用いてフィードバックなどを行い、従業員の意識改善やキャリアの発展につなげることができます。

人事評価シートを作成する目的

人事評価シートは、従業員の実力を客観的に把握する以外にも、複数の作成目的があります。ここでは具体的に4つを紹介します。

人事評価の公平性を担保するため

人事評価シートを作成する1つ目の目的は、人事評価の公平性を担保することです。人事評価は上司の価値観と部下の自己評価が関与する性質上、評価の偏りが生じやすいという課題があります。

そこで、部下や上司の主観を排除して公平な評価とするためには、明確な基準が必要です。この点において、人事評価シートは評価項目を統一することで評価の公平性を維持することに役立ちます。

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人事評価の質を向上させるため

人事評価シートには、人事評価の質を向上させるという目的もあります。評価の項目や基準が明確化されていない場合、評価者の主観に基づいた評価になることは避けられません。また、目立たないけれど貢献度の高い業務に気付かれないなど、抜け漏れも発生しやすくなるでしょう。

この点についても、人事評価シートを導入することで、評価の項目や基準が統一され、一貫性や整合性を持った質の高い人事評価につながります。

従業員の成長を促進するため

従業員の成長を促すことも、人事評価シートの目的です。従業員が人事評価シートを通じて自分自身の強み・弱みを把握できるようになると、何を伸ばすべきか・改善すべきかが明確になり、目標を立てやすくなります。

このように、今後の成長を促すための指針としても人事評価シートは有用なのです。

組織風土を形成・浸透させるため

人事評価シートを作成する目的の最後が、組織風土を形成・浸透させることです。人事評価シートによる評価の項目や基準の開示は、会社からの意思表示ともいえます。評価の項目や基準を明確にしておくことで、会社は従業員に期待する能力や成果を間接的に伝えることができます。

従業員が人事評価シートの基盤となっている「求める人材像」への理解を深めていくなかで、組織風土の形成・浸透を期待できるでしょう。

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人事評価シートにおける評価基準・項目

人事評価シートの評価軸は、能力評価・業績評価・情意評価の3つに分かれています。ここではそれぞれについて紹介します。

能力評価

能力評価は、従業員が業務を遂行するうえで必要なスキルを評価するための項目です。

業務におけるスキルは、大別するとポータブルスキルとテクニカルスキルの2つに分類できます。

概要具体例
ポータブルスキルあらゆる業務で活用できる汎用性の高いスキル
  • 課題解決能力
  • コミュニケーション能力
  • スケジュール管理能力
テクニカルスキル特定の業界・職種で活用できる専門性の高いスキル
  • プログラミングスキル
  • デザインスキル
  • 商品企画スキル

能力評価の評価基準はスキルの有無だけでなく、業務に対してそのスキルを有効活用できているかという点も含まれます。この2つの観点で従業員のスキルレベルを判断するのが一般的です。

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業績評価

業績評価は、従業員の目標達成レベルを評価するための項目です。数値によって定量的に測定できる目標を設定し、その達成度やプロセスを評価します。

業績評価の具体的な指標としては、一般的に業務目標達成度と課題目標達成度の2種類が用いられます。

概要具体例
業務目標達成度組織目標に連動する個人の業務目標の達成度
  • 売上金額
  • 受注件数
  • コンバージョン数
課題目標達成度従業員のレベルに応じた個別目標の達成度
  • 新規開拓件数
  • NPSスコア
  • 作業完了時間

業績評価の評価基準には目標の達成度やプロセスに加え、目標そのものの難易度や企業への貢献度も加味されます。

情意評価

情意評価は、従業員の業務に対する姿勢やモチベーションを評価するための項目です。

組織内での活動に必要な資質を評価する傾向にあり、一般的には積極性・協調性・規律性・責任性の4つの軸で評価します。

評価内容評価指標
積極性上昇志向を持って業務に取り組めているか
  • 新たな業務領域への挑戦
  • 習得した知識・スキル
協調性チームワークを発揮できているか
  • 相手を理解する姿勢
  • 協働プロジェクト実績
規律性社内ルールや慣習を守っているか
  • 就業規則の遵守度
  • 勤怠実績
責任性責任感を持って業務をやり遂げられるか
  • プロジェクト完了率
  • トラブル発生時の対応

情意評価は数値によって定量化できず、評価者の主観が入りやすいため、360度評価を取り入れるなど、客観性を保つための対策が重要です。

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【上司・部下】人事評価シートの書き方

人事評価シートはいかに主観的な表現を避け、簡潔明瞭に書くかが大切です。ここでは、上司・部下のそれぞれの立場からの人事評価シートの書き方について解説します。

【上司】評価者側の人事評価シートの書き方

人事評価における上司の役割は、評価結果を伝えることだけでなく、次に結びつけるための布石を打つことです。そこで、上司が記入する人事評価シートには具体的には以下の2つの要素が求められます。

  • 具体性のある根拠を用いて客観的に評価する
  • 絶対評価・相対評価を使い分ける

それぞれについて詳しく見てみましょう。

具体性のある根拠を用いて客観的に評価する

人事評価においては、結果に対する客観的な根拠提示が重要です。根拠が明確でない評価は部下の不信感を招き、信頼関係の悪化につながるリスクがあります。

一方で、マイナスポイントだけを伝えると部下のモチベーションが下がってしまうため、評価している点と改善すべき点の両方を伝えることを心がけましょう。

絶対評価・相対評価を使い分ける

絶対評価と相対評価をバランスよく使い分けることも重要です。

絶対評価ではノルマの達成率を客観的に判断でき、相対評価ではチーム内での競争意識の醸成が期待できます。絶対評価と相対評価は片方だけでは評価の適正が担保できず、評価結果の納得感が得られにくいでしょう。そこで絶対評価と相対評価を使い分け、それぞれのメリットを取り入れ、デメリットを補完し合うことが大切です。

【部下】自己評価側の人事評価シートの書き方

自己評価は評価基準が難しいものの、過小評価・過大評価ともに自己成長の妨げになります。そこで、以下の2点に気をつけて、自分自身の業務を適切に振り返ることが重要です。

  • 数値を用いて具体的・簡潔に記載する
  • 振り返りだけではなく改善点を記載する

それぞれ詳しく見てみましょう。

数値を用いて具体的・簡潔に記載する

目標の達成度は数値を用いて具体的かつ簡潔に記載するのが大切です。数値によって成果を明確に示せば、より正確な評価を期待できるようになるでしょう。

振り返りだけではなく改善点を記載する

自己評価ではなるべく良い部分を見せようと、意識的にマイナスな内容を避ける傾向にあります。

一方の企業は従業員に対して持続的な成長を求めているため、今回の成果を基に、より成長するためには何が必要なのかを自ら記載する姿勢はプラスに働きます。

成果に対する改善点を考え、具体的なアクションプランを提示することで、上司とも建設的なコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。人事評価制度とは?目的や導入方法・メリットとデメリットを解説

【上司・部下別】人事評価シートの例文

ここでは、部下と上司の評価コメントについて、職種別の例文を紹介します。

事務職の例文

【部下】

システムへのデータ入力をより効率的に行うために、専用のフォーマットを作成しました。これによって入力ミス・漏れの発生率が5%まで下がり、前年度と比較して1案件あたりの作業時間を1時間短縮できるようになりました。今後はこのフォーマットをチームで共有し、部署全体での作業効率アップを図りたいと思います。

【上司】

業務の課題点に着目し、新しいフォーマット作成に取り組んだことは素晴らしいです。成果もきちんと表れているので、ぜひチームに共有していただければと思います。ほかのメンバーが使うことで、見やすさやわかりやすさに課題が見つかる可能性もあるため、メンバーの意見も取り入れながら、より良いフォーマットを作っていってください。

営業職の例文

【部下】

今年度は売上目標に対して、120%の着地となりました。一方で、リピート数は3社減少しています。新規開拓に注力した結果、既存顧客の接点確保に時間が割けていなかったためだと思います。来年度はバランス感を重視しながら、既存顧客のリピート獲得にも注力していきます。

【上司】

目標値を大きく上回り、チームの中でも存在感が増してきたと感じています。リピート数の減少は残念ですが、NPSスコアやコメントを分析することで原因が見えてくると思います。この機会に、お客様に評価されている点とそうではない点を整理し、既存顧客との信頼関係を深めていきましょう。

技術職の例文

【部下】

メンバーの業務進行度に応じて柔軟にタスクを調整し、フォローにも都度入ることで、システムを遅延ゼロでリリースできました。一方で、メンバーごとに技術レベルの差があることで、タスクの調整難易度が上がっている状態です。来期は技術レベルの底上げに取り組み、スキルの均一化を図りたいです。

【上司】

迅速かつ柔軟な対応によってシステムが当初の予定通りリリースできたのは、Aさんのおかげです。その反面、Aさんの負担が大きいのが気になっています。残業時間も増えてきているので、一人で抱え込まないためにもメンバーの研修・育成が欠かせません。来期は研修・育成を実施し、少しでも負担が軽減できる状態を作り出すことに期待しています。

製造業の例文

【部下】

今期は5M+1Eの視点での要因分析・改善実施を通じて、チーム全員で良品率の向上に努めました。結果として良品率99%を達成しています。今後もこの状態を継続できるように、日々の改善に取り組みたいと思います。

【上司】

前期比で良品率が向上したのは素晴らしいです。現在採用を強化しているので、これから新しい社員が続々と入ってくると思います。継続的な改善活動に加え、新入社員へのルールの浸透も重要です。新しい意見も積極的に取り入れながら、より良い状態を目指していきましょう。

マーケティング職の例文

【部下】

ナーチャリング施策の見直しにより、ホットリード供給数が前期比1.2倍の着地となりました。一方で、インサイドセールスのアポ獲得率は月毎にムラがあります。担当者起因なのか、見込み顧客の課題起因なのかによって供給方法を見直す必要があるため、来期は原因の分析と改善の実行に注力したいです。

【上司】

施策の改善が、見事にホットリードの増加に結びついていますね。インサイドセールスのアポ獲得率については、スコアリングやホットリードの定義を見直す必要性が出てくるかもしれません。購買意欲が増した状態で適切にパスできれば我々の介在価値も高まりますので、部署間で適切に情報を共有できる方法も検討してみてください。

人事評価シートを作成し企業の成長につなげよう

人事評価シートは、人事評価の公平性を担保するうえで重要なツールです。

適切な運用ができると人事制度の質が向上するだけでなく、従業員の持続的な成長も期待できるようになるでしょう。本記事を参考に人事評価シートを作成し、企業の成長につなげてください。

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