人事評価エラーとは?種類や及ぼす影響・対策方法をわかりやすく解説

最終更新日時:2024/03/26

人事評価システム

人事評価エラー

評価者の価値観などによって無意識の内に起こる「人事評価エラー」。公平・公正さが求められる人事評価の精度に悪影響を及ぼすため適切な対策が必要です。本記事では、人事評価エラーとはどのような現象か、評価エラーの種類や考えられる影響、対策方法をわかりやすく解説します。

この記事の要約

・人事評価エラーとは、評価者の主観によって評価の公平性が失われることであり、無意識なバイアスが影響でエラーが起きてしまう
・人事評価エラーが起きることで、被評価者のモチベーション低下や信頼性の悪化、生産性の低下などのリスクが生まれる

人事評価エラーとは?

人事評価エラーとは、評価者の主観や私情によって評価の公平性が失われることです。被評価者との関係性や考え方の違いなどから、評価者に無意識的なバイアスが生まれることで人事評価エラーにつながります。

評価の公平性が失われると社員はモチベーションを保てず、離職を誘発する可能性もゼロではありません。

したがって、評価の透明性を担保するための対策を講じ、人事評価エラーの予防に取り組むことが重要です。

人事評価エラーの種類

人事評価エラーは、さまざまな心理的要因によって発生します。

単独で起こることもあれば、複数の心理作用が重なって人事評価エラーにつながることもあるため、エラーの要因となる心理作用を理解することが大切です。

ハロー効果

ハロー効果とは、被評価者の特徴的な部分に意識が集中した結果、その他の部分を蔑ろにしてしまうことです。

人事評価エラーにおいては、被評価者の長所や短所、過去の成果などから思い込みが生まれ、誤った評価をすることが挙げられます。

ハロー効果とは?意味や具体例・関連する人事評価エラーについてわかりやすく解説

中心化傾向

中心化傾向とは、被評価者のパフォーマンスに関わらず、中央値に集中した評価を行ってしまうことです。

これは、評価者が自身の評価に自信を持てない場合や、周囲への過度な配慮によって起こりやすくなります。具体的には、5段階評価を行う際に中央値である3ばかりに集中してしまうといったことが挙げられます。

寛大化傾向

寛大化傾向とは、実際の評価基準よりも甘めな評価をしてしまうことです。

これは部下からの反発を恐れたり、よく思われたいという心理から起こりやすくなります。被評価者をひいき目に見たり、一生懸命頑張っているからと実力以上の評価を付けてしまい、適切な評価ができていない状態を指します。

逆算化傾向

逆算化傾向とは、評価結果を先に決めたあとに、帳尻を合わせるように評価を調整してしまうことです。

たとえば、部下を昇格させたいときや減給は避けてあげたいといった目的がある場合に、求める結果になるよう評価を歪めてしまう行為が挙げられます。

論理誤差

論理誤差とは、事実ではなく推論にもとづいて物事を判断してしまう心理的偏向の一種です。

具体的には、高学歴の部下に対しては「まじめに仕事に取り組んでいて職務遂行能力が高い」と評価する一方で、大学中退者に対しては「学校を中退しているのだから、仕事を投げ出してしまうに違いない」といった思い込みで評価をしてしまうことが挙げられます。

対比誤差

対比誤差とは、評価者自身や第三者の能力などと比較して絶対評価を蔑ろにしてしまうことです。

たとえば、自分の得意分野は厳しく評価するのに対し、苦手分野については甘く評価するといったことが考えられます。

期末誤差

期末誤差とは、人事評価を行う直前の出来事に評価が引っ張られてしまうことです。

同じミスをした従業員が二人いた場合に、ミスが発生した時期によって評価が異なるといったことが挙げられます。このような評価を行ってしまうと、期末だけ頑張ればいいという従業員が出てくる可能性もあるでしょう。

極端化傾向

極端化傾向とは、中心化傾向と対をなす現象で、極端に高いまたは低い評価をつけることです。

評価が中央値に偏ることを気にしすぎた結果、最高評価もしくは最低評価しか付けないといったケースが考えられます。

厳格化傾向

厳格化傾向とは、評価結果が全体的に厳しくなる傾向のことです。

被評価者に対する期待値が高すぎる、長所よりも短所ばかりが目についてしまうなどがきっかけとなって発生します。

親近効果

親近効果とは、被評価者との共通点が見つかった際、親近感から評価が甘くなってしまうことです。

地元や趣味が同じなどの共通点から、被評価者を必要以上に好意的に捉えてしまうことで発生しやすくなります。

アンカリング

アンカリングとは、最初の印象が強く残っていることで、後の評価に影響を与えることです。

たとえば、部下に自己評価を記入させた際、その評価が基準となり適切な評価が行えなくなってしまうことが挙げられます。

アンカリング効果とは?具体例や活用方法・フレーミング効果との違い

人事評価エラーが及ぼす影響について

人事評価エラーが完全に排除できないものだとしても、そのリスクを軽視してはいけません。ここでは、人事評価エラーが及ぼす影響について見ていきましょう。

エンゲージメントの低下につながる

人事評価エラーは、人事評価の公平性が失われていることを被評価者が実感してしまい、不安や不満のトリガーとなることがあります。

これにより仕事に対するやりがいが見出せなくなり、社員のエンゲージメントが低下します。その結果、離職率の増加や業績の低迷につながることが考えられるでしょう。

勤務意欲が低下し、生産性にも悪影響を及ぼす

被評価者にとって評価結果が納得のできないものだと、努力が報われないと感じて仕事に対するモチベーションを失います。

これは業務の効率性や品質の低下を誘発する原因になるだけでなく、社員の主体的な行動が減り、チームワークの悪化につながることもあるでしょう。

評価者と被評価者の信頼関係が悪化する

評価の正当性を感じられなくなると、被評価者は評価者に対して不信感を抱きます。

この状態に陥った場合、評価者の言動に対して被評価者が懐疑的な態度を示すようになるかもしれません。また、次第にコミュニケーションが減っていくことも考えられ、意見交換やフィードバックの機会が失われます。

結果として評価者との関係が悪化するだけでなく、最悪の場合離職してしまうこともあるでしょう。

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人事評価エラーを引き起こす3つのバイアスとは?

人事評価エラーは、バイアスという無意識化での思い込みが原因で発生します。ここからは、人事評価で起こりやすい3つのバイアスの特徴を紹介します。

認知バイアス

認知バイアスとは、直観や経験則から先入観が生まれた結果、認識が偏ってしまうことです。

人間の脳は意思決定の際にかかる負荷を軽減し、素早い判断をくだすために情報処理の過程をショートカットしようとします。たとえば、相手がよろこぶと思って行ったことが実は迷惑に感じられていたり、自分に都合のよい情報ばかりを信じてしまうなどの行動は、認知バイアスによるものです。

認知バイアスは脳の機能によって起こるものであり、完全になくすことはできません。ただし、人事評価で認知バイアスが発生すると、偏見や差別にもとづいた評価が行われてしまい、公平性を保てなくなるため注意が必要です。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分自身の願望や仮説を裏付ける情報を盲信してしまうことです。

  • B型は好奇心旺盛だから積極的にチャレンジするはず
  • 人事評価の良い結果は信じる反面、悪い結果を信じられない

自分にとって都合の良い情報を集めてしまうため、情報の出所を精査したり、複数の情報を比較したりすることが大切です。

後知恵バイアス

後知恵バイアスとは、結果が出たタイミングでその出来事が予測可能だったと考える心理的傾向です。

  • この取り組みは失敗すると思っていた
  • だからあのとき言ったじゃないか

このように、自分や誰かの意思決定を振り返ったときに起こりやすいのが特徴です。

後知恵バイアスが起きると、物事の本質を見ずに誤った判断をしてしまうことがあります。とくに職場では、後知恵バイアスによって失敗を責める文化が根付いてしまい、イノベーションの妨げになるリスクもあります。

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人事評価エラーの対策方法

人事評価エラーを予防するためには、評価に関与する人の認識を整理し、公平かつ透明性ある状態を作り出すことが大切です。ここからは、人事評価エラーの対策方法を紹介します。

評価基準を明確に設定する

人事評価エラーの発生要因の1つとして挙げられるのが、評価者ごとに判断が異なる点です。これを予防するためには、評価基準の明確化が求められます。

評価基準が明確になると、評価者によって判断が分かれるケースが減り、公平性や客観性が保ちやすくなります。

結果として、どのような基準で自身が評価されたのかを理解しやすくなり、納得感も高まるでしょう。

評価基準について評価者同士ですり合わせをする

人事評価エラーの発生率を下げるには、評価基準を改めるだけでは不十分です。

刷新した評価基準をすべての評価者に周知し、認識のすり合わせを行うことで、適切な評価が行えるようになります。これにより評価基準が均一化され、人事評価の公平性を保ちやすくなるでしょう。

評価者研修を実施する

評価者研修を実施することで、評価者が評価に対する実践的なテクニックを習得できます。

ただし、1度の周知や会議では適切な評価方法を浸透させることは難しいでしょう。複数回の研修を通じて、コミュニケーションスキルや効果的なフィードバックの方法などのトレーニングを行うことをおすすめします。

エラーは「起こり得ること」だと認識する

人間が評価を行う以上、ヒューマンエラーはどうしても発生します。そのため、人事評価エラーが絶対に起きない状態を作り出すことは難しいでしょう。

大切なのは、人事評価エラーが発生した際にそれを自覚し、適切なアクションを取ることです。人事評価エラーを認識することで、評価者は自らの主観や偏見に気づき、客観的な評価を目指すための努力ができるようになるでしょう。

事実に基づいて評価する

人事評価では主観や偏見を排除し、事実に基づいた評価が求められます。そのために必要なのは、被評価者と定期的なコミュニケーションを取り、目標に対する進捗や行動履歴を把握することです。

具体的には1on1ミーティングなどで定期的な振り返りの機会をつくり、状況の把握を行うと良いでしょう。

1on1ミーティングとは?目的やメリット・注目されている背景、進め方を解説

複数の評価者で評価する

人事評価エラーのリスクを低減するためには、異なる立場や視点を持つ評価者の介入が効果的です。具体的には被評価者の取り組みに対して360度評価を行い、上司・部下・同僚などの視点を取り入れることが挙げられます。

また、現場のマネジメント責任者や事業責任者など、役割の異なる評価者による2段階評価も有効です。

フィードバック面談を実施する

評価の結果が出たタイミングで、フィードバック面談を実施しましょう。この際、一方的に評価結果を通知するのではなく、期待していることや評価しているポイントを伝えながら、今後の取り組みを一緒に考えることが大切です。

これにより被評価者との関係性に溝が生まれることを防ぎ、モチベーションを下げることなく次のアクションにつなげやすくなります。

人事評価制度とは?目的や導入方法・メリットとデメリットを解説

評価項目や基準を明確にし人事評価エラーを減らそう

本記事では、人事評価エラーの種類や考えられる影響、対策方法などを解説しました。人事評価エラーを防ぐためには、評価基準を明確化するだけでなく、主観や偏見を排除するための取り組みが欠かせません。

この機会に自社の人事評価を見直し、社員にとって納得感のある結果を通知できる体制をつくっていきましょう。

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