新卒採用の目的とは?メリット・デメリットやフロー、中途採用との違いを解説
新卒採用とは、企業が行う採用活動のひとつで、卒業を見込んでいる大学生や高校生を採用する方法です。毎年度同様の時期に実施されますが、企業にとってどのような目的があるのでしょうか。本記事では、企業が行う新卒採用について、実施する目的やメリット・デメリットなどを解説します。
目次
新卒採用の目的とは?
新卒採用とは、卒業間もない学生を企業が採用する制度のことで、主な目的としては優秀な人材の確保と企業文化の承継にあります。若手社員を入れ続けることで、バランスの取れた年齢構成を維持できます。新卒者をいちから育てて企業文化を引き継ぐことは、企業価値の維持や発展に欠かせないといえるでしょう。
なお、厚生労働省は2010年11月から「新卒応募資格を卒業後3年以内の者」に拡大する方針を打ち出しました。これにより、就職浪人生や既卒者も新卒枠で応募可能となり、幅広い人材確保が可能になっています。
[出典:厚生労働省「青少年雇用機会確保指針のご案内」]
新卒採用のトレンド
近年の新卒採用市場は、企業側に厳しく、学生優位の状態が続いています。これは、人口減少で学生数が減る一方で、あらゆる業界で採用ニーズが高まっているためです。結果として、採用活動の早期化が進み、内定開始時期が年々早まる傾向にあります。
学生に企業を知ってもらい、選考に進んでもらうためには、企業が早めに動き出す必要があるといえるでしょう。
新卒採用と中途採用の違いとは?
企業が人材を確保する方法としては、主に新卒採用と中途採用の2つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、企業に合った方法を選択することが重要です。ここからは、新卒採用と中途採用の違いについて見ていきましょう。
採用目的
新卒採用の主な目的は、企業文化の承継と若手人材の確保です。企業は新入社員に会社の考え方を教えることで、将来の幹部候補として育成します。一方中途採用は、即戦力の確保が主な目的です。特定の専門スキルを持つ人材を外部から補充するケースなどが考えられます。
採用スケジュール
新卒採用では、入社前年の春から始まるのが一般的です。そのタイミングで説明会や面接などが進められますが、大企業など一部の企業では採用活動が前倒しされる傾向にあります。
一方、中途採用の時期は企業により異なります。基本的に欠員や増員が必要になったときに行われるため、採用時期を厳密に決めている企業はないでしょう。募集から内定までのスピードは新卒に比べて早いことが多く、数週間から1ヶ月程度とされています。
▷中途採用に適した募集時期・採用時期について|状況に合わせた採用戦略も解説
採用対象者
新卒採用の対象は、卒業予定の学生や卒業後3年以内の既卒者です。一方、中途採用は転職希望者全般が対象となり、年齢や経験年数を問わず広く門戸が開かれています。さまざまな業界で人手不足が深刻化していることもあり、採用対象者を広げる企業が多くなっている傾向にあります。
採用手法
新卒採用では、企業と学生の相互理解を深めるため、会社説明会やインターンシップを活用する企業が多い傾向にあります。一方、中途採用は求人媒体や人材紹介を利用するのが主流で、ヘッドハンティングによる個別アプローチも活発化しています。
▷新卒採用の手法について|トレンドやメリット・デメリット、適した手法を選ぶポイント
採用コスト
採用コストについては、中途採用の方が新卒採用よりも多くかかるとされています。ただし、新卒採用であっても求人広告の掲載やイベントを開催する際の費用は高額になるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
▷中途採用とは?新卒採用との違いやメリット・デメリット、採用活動を円滑にするコツ
新卒採用を実施するメリット
新卒採用は、企業にとって多くのメリットがあります。ここでは、新卒採用を実施するメリットを紹介します。
社風や企業理念が浸透しやすい
新卒者は社会人経験がないため、自社の価値観を共有しやすいのがメリットです。中途採用者の場合、前職と比べてしまい企業文化になじめないというケースがあります。一方新卒者は、特定の企業や業界での経験がないことから、社風や企業文化に馴染みやすい人材であるといえるでしょう。
企業の活性化につながる
新卒者は柔軟な発想を持っていることが多く、新しいアイデアを生み出すためには必要な人材といえます。若手社員を定期的に補充し続けることで、組織に活力が生まれ、業務の活性化や変革が進みやすくなるでしょう。また、優秀な新人を幹部候補として計画的に育成できるため、企業の持続的な成長につながります。
採用コストを削減できる
新卒採用では、ある程度まとまった人数を一括で採用できるため、効率的に採用活動を行えます。複数の選考を行う必要がある一方で、年間を通して個別に中途採用を行うよりも、採用にかかるコストを抑えられるでしょう。
スケジュールやコストの目安が立てやすい
新卒採用は春に一斉に動き出し、内々定から内定まで一連の流れが決まっています。そのため、選考の日程や採用計画を立てやすく、必要な採用活動の範囲も把握しやすくなります。また、例年の採用実績から採用にかかる概算コストを見積もりやすいのもメリットのひとつです。
新卒採用の実施によるデメリット
新卒採用にはメリットもある一方で、いくつかのデメリットも存在します。どのようなデメリットが考えられるのかを見ていきましょう。
採用から教育までコストがかかる
新卒者は社会人経験がないため、業務に必要な専門知識やスキルはもちろん、社会人としての基本的なマナーや心構えなど、ゼロから教育を行う必要があります。そのため、研修の実施や先輩社員のフォロー体制の構築など、適切な教育環境を整備するコストがかかります。採用人数が多ければ多いほど、その負担は大きくなるでしょう。
ミスマッチが起こりやすい
入社前の企業イメージと実際の業務内容が異なることで、入社後にミスマッチが起きるケースがあります。これは、応募者に就労経験がないことから、会社の実態を正しく理解してもらえないのが理由のひとつです。また、単に企業とのミスマッチだけでなく、朝早い出勤や長時間労働など、社会人生活自体に適応できない新卒者もいます。
景気変動の影響を受けやすい
景気が良ければ優秀な学生の人気が高まり、いわゆる売り手市場になってしまいます。とくに新卒採用者は、大手企業や知名度の高い企業に流れやすくなる傾向が強く、中小企業やベンチャー企業は人材の確保が難しいでしょう。
新卒採用を成功に導く採用フロー
新卒採用で失敗しないためには、基本的な手順を理解して適切に進めていくことが大切です。ここからは、新卒採用を成功に導くための採用フローを紹介します。
採用目的やターゲットを明確にする
まずは自社の中長期ビジョンと事業計画を改めて確認し、それに基づいて新卒採用の目的を明確にします。なぜ中途採用ではいけないのか、新卒採用を行う必要性について考えてみるとよいでしょう。
そのうえで、どのような人材をどの程度の規模で採用するのかを具体化することが必要です。目指す人物像や重視するスキルなど、入社後に活躍できそうな人物をイメージしながらターゲットを明確に設定しましょう。
採用活動の計画を立てる
次に、採用活動のスケジュールを決めていきます。とくに新卒採用は、採用広報活動や会社説明会などさまざまなプロセスがあるため、大まかな年間スケジュールを組んでおくことが大切です。
また、目標通りに採用活動を行うには、最適な採用手法を選ぶ必要があります。ひとつだけに絞る必要はないため、自社に合う手法をいくつか組み合わせるのがよいでしょう。
新入社員の受け入れ体制を整える
内定が出た後は、新入社員を受け入れる準備をします。研修プログラムの用意や、先輩社員によるフォロー体制の整備、新人が働きやすい環境づくりなど、入社後のケアを行うことが重要です。十分な準備を怠ると、ミスマッチや早期離職のリスクが高まるため、事前に各部署の幹部や社員などに協力を要請しておきましょう。
選考を実施する
事前の計画に従って、適切な選考を行います。まずはじめに書類選考を行い、適性検査や面接などを経て内定を出すのが一般的です。評価を行う際は公平性を保ち、採用基準に沿って自社が必要とする人材を見極めましょう。
基本的に学生は複数の企業に応募しているため、内定者に対しては個別に連絡し、入社の意思があるのかを確認します。この際、採用理由や選考での評価を詳しく伝えることで、入社前のモチベーションの向上につながるでしょう。
内定者のフォローと振り返り
内定者が決定したら、内定者のフォロー体制を強化しましょう。内定者との綿密なコミュニケーションを心がけることで、入社への不安感を解消したり、入社後の帰属意識を育むことができます。
また、次年度の採用活動に向けた振り返りも欠かせません。うまくいった点は次年度にも活かし、反省点があれば改善につなげていく必要があります。そうしたPDCAサイクルを回すことで、より良い採用活動ができるようになるでしょう。
▷新卒採用が難しい理由とは?求めている人材を採用するための対処法を解説
新卒採用が適した企業の特徴は?
新卒採用は、企業によって向き不向きがあるものです。ここでは、どのような企業が新卒採用に適しているのか、その特徴を紹介します。
企業文化を早めに浸透させたい企業
企業文化を早く浸透させたいと考えている企業は、新卒採用に向いているといえます。新卒採用者は社会人経験がないため、入社時から企業の価値観や行動様式といった企業文化を浸透させやすいのがメリットです。自社独自のカルチャーを次世代に浸透させることで組織の活性化を図りたいと考えている企業は、新卒採用を検討してみましょう。
成長するための土台づくりに取り組む企業
優秀な新卒者を計画的に採用し、将来の幹部候補として育成していくことは、企業の持続的な成長に欠かせません。現状とくに問題がなくても、市場の変化に対応できなければ、企業としての競争力が低下してしまいます。長期的な視点に立って組織を強化していくには、新卒採用が有効な手段となります。新卒者を採用することで、新しいアイデアを生み出すきっかけになるだけでなく、既存社員のモチベーションアップ向上も期待できるため、企業の活性化につながるでしょう。
多くの人材を獲得する必要がある企業
事業拡大や組織の拡大基調にある企業は、多くの人材を確保する必要があります。中途採用では採用人数にかぎりがあるため、一度に大量の人員を補充する際は、一定の人数をまとめて採用できる新卒採用がおすすめです。
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新卒採用の主な採用手法
新卒採用では、さまざまな採用手法が活用されています。ここからは、数ある採用手法のなかでもとくに利用されている手法を4つ紹介します。
就職サイト
インターネット上の就職情報サイトを活用する手法です。企業が掲載している求人情報のなかから、学生が興味のある企業を検索して応募します。就職情報サイトのメリットは、利用者が多く一度に多くの学生にアプローチできる点です。しかし、大手企業に応募が集中する傾向にあるため、知名度の低い企業には向かない方法ともいえます。
インターンシップ
インターンシップとは、学生が一定期間企業で実際に業務に従事する仕組みであり、学生は企業の実情を肌で感じ取れ、業務内容を深く理解できます。企業にとっては、自社の認知度の向上や学生との相互理解が深められ、採用後のミスマッチを防げるのがメリットです。ただし、長期間にわたって実施する場合、受け入れのための手間やコストが負担となる場合もあります。
リファラル採用
既存社員の紹介によって学生を採用する手法です。自社の社員が知り合いの優秀な学生を推薦するため、ほかの手法と比べてコストを抑えられるのが特徴です。また、選考ステップの簡略化がしやすく、採用活動の工数削減も期待できます。ただし、社員のエンゲージメントが低い場合は、紹介してくれる社員が少なくなることが考えられるでしょう。
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ダイレクトリクルーティング
企業自らが直接求職者にアプローチする方法です。企業が求める条件で人材をピックアップし、関心を抱いた学生に絞って採用活動を進められるため、採用後のミスマッチを減らす効果が期待できます。一方、候補者の選定や効果的なスカウト文の作成など、採用担当者の負担が大きくなる点はデメリットといえるでしょう。
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「学生に選ばれる企業へ...」新卒採用を強化しよう
本記事では、新卒採用の目的やメリット・デメリット、実施する際の手順などを紹介しました。新卒採用は、企業の将来を左右する重要な取り組みです。さまざまな手法を組み合わせながら、攻めの姿勢で臨みましょう。
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