【例文つき】採用稟議書とは?必要性や承認される書き方と作成のポイント
採用活動をスムーズに進めるために必要な「採用稟議書」。採用経験の浅い担当者にとっては「何を書くのが正解なのか」「どうすればスムーズに承認されるのか」など、疑問や課題が多いのではないでしょうか。本記事では、採用稟議書とは何か、必要性や承認される書き方を解説します。
・採用稟議書とは、採用活動の方針などについて経営者や関係する部署から承認を得るための書類
・募集の開始と人材を採用するタイミングで採用稟議書が必要になる
目次
採用稟議書とは?
採用稟議書とは、採用活動の方針について、経営者や関係部署からの承認を得るための書類です。
そもそも稟議書とは、担当者の権限では決定できない事柄について、上長から決裁を得るために用いられる書類を指します。そのため、物品購入や外部契約など、さまざまな場面で用いられます。
採用活動に関する例を挙げると、採用人数や採用コストは会社の経営に深く関わる事柄であり、採用担当者の一存では決められません。そこで稟議書に提案内容を記載し、担当上長以上に回覧して承認を得るのです。
採用稟議書を作成する目的は、採用計画や募集要項、予算などの情報を、複数いる関係者と共有・確認することです。提案内容が適切であるかを多角的に検討することで、採用活動の最適化を図ることができるでしょう。
採用稟議書が必要なタイミングとは?
採用稟議書は、以下のタイミングで必要となります。
- 募集を開始する時
- 人材を採用する時
なぜ、上記のタイミングで採用稟議書が必要となるのかを見ていきましょう。
募集を開始する時
新たに人材を募集する場合、求人広告を出したり、説明会や面接を実施したりと、金銭的・人的コストが発生します。そのため、社内での予算調整や他部署からの協力が必要となります。したがって、採用活動を始める前に稟議書を作成し、関係者からの承認を得ておかなければなりません。
募集開始時の採用稟議書には、採用コストの妥当性を検討する目的のほか、採用活動に関する情報を社内で共有する目的もあります。募集要項や採用目的がしっかり共有されることで、選考基準が統一され、自社にマッチした人材を採用しやすくなるでしょう。
人材を採用する時
採用者を決定し、内定を出す際にも採用稟議書が必要です。
このタイミングでの採用稟議書の大きな目的は、採用ミスの防止です。万が一、誤って内定を出してしまったとしても、正当な理由がある場合を除き、企業は内定の取り消しができません。そのため、内定を出す前に、採用する人材に間違いがないかを慎重に確認する必要があるのです。採用稟議書を提出し、複数の上長の視点から、採用者の最終確認を行ってもらいましょう。
また、稟議書によって採用者の情報を社内で共有しておくことで、入社後の適切な人材配置や、教育計画の策定にも役立てることができます。
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【例文あり】採用稟議書の書き方
「採用稟議書がなかなか承認されない」「そもそも採用稟議書の書き方がわからない」と悩んでいる方へ、承認される採用稟議書の書き方を、例文とともに紹介します。人材募集時と採用決定時に分けてポイントを解説するので、採用稟議書の作成に役立ててください。
人材募集時の採用稟議書に記載すべき項目
人材募集時の採用稟議書には、以下の項目を記載します。
- 採用人数
- 雇用形態
- 募集職種
- 募集期間
- 入社予定日
- 採用目的
- 募集要項
- 選考方法
- 採用予算
- 給与形態
たとえば、エンジニアを中途採用したい場合、以下のような稟議書を作成します。
採用稟議書 申請日:令和〇年〇月〇日 申請者:〇〇〇〇 件名:〇〇部門の中途採用について表記の件について、ご承認いただきたくお願い申し上げます。 1.採用目標 ・採用予定人数:〇名 ・雇用形態:正社員 ・募集職種:エンジニア ・:募集期間:令和〇年〇月~〇月 ・入社予定日:令和〇年〇月〇日 2.採用目的・〇〇事業の拡大に伴う業務の増加に対し、現在のエンジニアだけでは対応し切れず、エンジニア不足が課題です。 ・〇〇事業に関連する開発経験者を採用することで、人手不足解消に加え、経験者の知見を活かし、事業のさらなる成長につなげたいと考えています。 3.募集要項 ・学歴:大卒以上 ・経験:〇〇に関する開発経験3年以上 ・資格:〇〇、〇〇 ・その他:コミュニケーションスキルが高いこと、協調性があること 4.選考方法 ・書類選考:履歴書、職務経歴書 ・一次面接:人事部長、〇〇部長 ・最終面接:社長 5.採用予算 ・〇〇万円 6.給与体系 ・月収〇〇万円~〇〇万円 ・賞与年2回 ・各種手当(通勤手当、住宅手当等) |
人材募集時の採用稟議書には、どのような人材を採用したいのか、採用にどれほどのコストがかかるのかを明確に記載することが大切です。同時に、なぜ採用活動が必要であるかを理解してもらうために、採用目的も簡潔に記しましょう。
採用決定時の採用稟議書に記載すべき項目
次に、採用決定時の採用稟議書には、以下の項目を記載します。
採用稟議書 申請日:令和〇年〇月〇日 申請者:〇〇〇〇 件名:〇〇部門の中途採用者決定について 〇〇部門への中途採用者を決定しましたので、ご報告いたします。 1.採用者情報 ・名前:〇〇 ・経歴:△△大学卒業。株式会社×××で5年間、エンジニアとして〇〇の開発に従事。プロジェクトリーダーも務めてきた。 ・保有資格:〇〇〇 2.採用理由・書類選考では、開発実績が豊富で高い技術力を有していることに加え、リーダー経験もあることから、今後の事業発展に貢献できる人材だと判断しました。 ・面接では、これまでの経験や今後のビジョンを明確に説明しており、〇〇開発における熱意が感じられました。コミュニケーションスキルも高く、他の社員と協力して開発を行える人材だと思います。 ・なお、募集時の稟議書に記載した条件はすべて満たしています。 3.採用条件 ・正社員 ・月収〇〇万円 ・賞与年2回 ・各種手当(通勤手当、住宅手当等) 4.入社日 ・令和〇年〇月〇日 |
採用決定時の稟議書は、募集時の稟議書と整合性が取れている必要があります。募集時の稟議書に示した条件と照らし合わせ、すべてを満たしているかを十分確認しましょう。
また、採用決定時の稟議書には、採用者の情報だけでなく、なぜその人材が選ばれたのかがわかるよう、採用理由も明記します。
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採用稟議書の承認をスムーズにもらうポイント
採用稟議書は複数人の上長に回覧する必要があるため、できる限りスムーズに承認を得たいものです。承認作業が円滑に進むように、以下の3つのポイントに気を付けましょう。
- 必要な情報を過不足なく記載する
- 採用の必要性を明確に記載する
- 承認までのスケジュール調整・管理をしておく
それぞれのポイントを詳しく解説します。
必要な情報を過不足なく記載する
採用稟議書は、必要な情報を過不足なく記載し、複数の承認者が共通認識を得られる内容にしなければなりません。
必要項目の記載漏れや重複があると、稟議内容が承認者に正しく伝わらず、認識に相違が生じるリスクが高まります。不承認だった稟議書は修正後に再度回覧しなければならず、採用スケジュールにも影響が及ぶ可能性があるでしょう。スムーズに承認してもらうためにも、承認者が知りたい情報を正しく、漏れなく記載する必要があるのです。
必要な情報としては、募集要項や採用コストのほか、稟議書で承認を得る理由や目的なども示しましょう。また、応募者の履歴書や職務経歴書などの資料がある場合は、忘れずに添付します。
さらに、記載内容だけでなく、文章の読みやすさも意識したいポイントです。わかりやすく簡潔に書くことを心掛け、誰が読んでも理解しやすい稟議書を作成しましょう。
採用の必要性を明確に記載する
採用稟議書には、採用計画や募集要項だけでなく、採用の必要性を明確に記載する必要があります。
採用活動は企業にとって時間もコストもかかるものです。採用の必要性が理解されないままでは、稟議書はなかなか承認されません。組織の現状や課題を明らかにし、なぜ採用活動を行う必要があるのかを示しましょう。
この際のポイントは、各承認者の視点に立ち、人材を採用することでどのような効果を得られるのかを伝えることです。採用を行うメリットだけでなく、採用しない場合のデメリットやリスクも記載することで、採用の必要性を訴えることができます。
採用するメリットとしては、人手不足解消による業務改善や新規事業の発足、既存事業の拡大、組織風土の改革など、さまざまな要素が考えられるでしょう。人材を採用することで、会社がどのように成長できるのかを想定し、承認者へ伝えましょう。
承認までのスケジュール調整・管理をしておく
スムーズな承認のためには、採用稟議書の提出から承認までのスケジュールを管理することも重要です。
採用活動に関しては、採用担当部署の上長だけでなく、関係部署の上長や経営陣など、複数人の承認を得なければなりません。そのため、稟議書提出から承認までには時間がかかります。採用活動を予定通りにスタートするためには、採用稟議書の承認フローに基づいてスケジュールの管理・調整をすることが大切です。
承認スケジュールを作成するほか、事前に承認者に情報を共有したり、稟議書の確認をリマインドするなどして、承認作業が滞りなく進む体制を整えましょう。
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採用稟議書を作成するメリット・デメリット
採用稟議書の作成には、メリットとデメリットの両面があります。具体的に、どのようなメリット・デメリットがあるかを見ていきましょう。
メリット:会議を行う手間を省ける
採用稟議書の大きなメリットは、会議を行う手間を省けることです。
社内で決裁を行う際は、会議を開いて議論や検討を行うことが多いでしょう。しかし、会議はそれ自体に時間がかかるのに加え、準備段階でも日程調整や会議室の確保などの面倒な手間が発生します。
その点、文書によって決裁を行える採用稟議書であれば、上記の工程を省略できます。承認者にとっても、自分の都合が良いタイミングで提案内容を確認できる点はメリットでしょう。稟議書の作成に関しても、テンプレートを用意しておけば簡単です。すなわち、採用稟議書の活用は、業務の効率化につながるのです。
ただし、採用コストが例年を上回る場合や採用プロセスを大幅に変更する場合などは、稟議書ではなく会議の場で直接意見を交わしての決裁のほうが適しているかもしれません。状況に応じて最適な方法を選択しましょう。
メリット:採用に関する認識を統一できる
採用に関する認識を社内で統一できる点も採用稟議書のメリットです。
選考過程には、経営陣だけでなく、現場の責任者が関わる場合もあります。その際、経営陣側と現場側で認識のズレがあると、選考基準が定まらず、適切な人材選びができません。
どのような目的で採用活動を行うのか、どのような人材を求めているのかなどを社内で共有することで、一貫性のある採用活動を行うことができるのです。
採用決定後も、内定者の情報が正確に共有されることで、どのような教育やフォローが必要なのかが明確になり、各部門も受け入れ体制を整えやすくなるでしょう。
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デメリット:合意が取れるまでに時間がかかる
採用稟議書のデメリットは、合意が取れるまでに時間がかかることです。承認者の数にも左右されますが、採用稟議書の提出から最終的な承認までの日数の目安は、数日から2週間程度です。しかし、承認者が出張で不在の場合や繁忙期で手が回らない場合などは、さらに長い時間を要する可能性があります。
募集開始前の採用稟議書がなかなか承認されなければ、採用活動の開始時期が遅れ、予定していた時期の採用が間に合わなくなる恐れがあります。
また、採用決定時の稟議書承認が遅れてしまうと、せっかく見つかった人材を逃すリスクが高まります。求職者は複数の採用試験を同時並行で受けている場合が多く、採用稟議書の承認を待つ間に、採用したいと思っていた人材が他社への入社を決めてしまうことがあるためです。
こうした事態を防ぐためにも、採用稟議書は余裕を持って作成・提出しましょう。
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採用稟議書を作成しスムーズな採用活動を実現しよう
本記事では、採用稟議書の必要性や、作成方法などを解説しました。採用稟議書を作成することで、社内の情報共有が正確に行われるのに加え、採用ミスの防止という効果も得られます。
ただし、採用稟議書をスムーズに承認してもらうためには、必要事項を漏れなく記載し、時間に余裕を持って提出することが大切です。採用活動を円滑に進められるよう、ぜひ本記事を参考に、承認される採用稟議書を作成してください。
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