【テンプレートあり】採用ペルソナとは?作り方と設計する流れ・注意点を解説
採用活動を成功させるためには「採用ペルソナ」の設計が重要です。採用活動が難航している企業はペルソナを適切に設計できていない場合が多いため、ペルソナをしっかりと設計してから採用活動に挑みましょう。本記事では、採用ペルソナについて、重要性や必要な要素、作り方・設計の流れ、注意点などを解説します。
目次
採用ペルソナとは?
「ペルソナ」とは、サービスや商品の顧客モデルを指すマーケティング用語で、採用活動においては、企業が最も採用したい理想の人物像を表します。
ペルソナを設定する際は、性別や年齢、学歴やスキルだけではなく、家族構成やライフスタイルといった細部についても綿密につくり上げなければなりません。そのため労力はかかりますが、具体性に富んだ採用ペルソナを社内で共有することで、自社の求める人物像と採用候補者の人物像のズレを防げます。
さらに、採用ペルソナを活用できる採用手法を用いることで、自社に合った人材を効率的に採用できる効果も見込まれます。
ペルソナとターゲットの違い
採用活動では「採用ターゲット」という言葉も頻繁に使われますが、採用ペルソナと採用ターゲットには違いがあります。
採用ターゲットとは、特定の人物ではなく、年代や性別、スキルや学歴など特定の属性を持つ層を指します。年代や性別などを絞り込む点は共通していますが、採用ペルソナほど詳細には設計しません。したがって、採用ターゲットを社内で共有した場合、経営陣・人事部・現場がそれぞれ想定する人物像にズレが生じる可能性があります。
一方の採用ペルソナは、実際にそのような人物がいると仮定したうえで、趣味やライフスタイル、キャリアプランなどの詳細をつくり込んでいくため、具体的な人物像をイメージしやすいという特徴があります。つくり込まれた採用ペルソナであれば、求める人材像にズレが生じにくくなるのです。
採用ペルソナ | 採用ターゲット | |
解像度 | 詳細 | 大まか |
設計方法 | 実際にそのような人物がいると仮定したうえで、詳細な人物像をつくり上げる。 | 年代や性別、経歴など属性を絞り込みながら設計していく。 |
具体例 | 30代男性で大学時代は機械工学を専攻。卒業後は機械メーカーに就職。年収500万円で、さらなる年収増を目指している。趣味はバイク。 | 30代男性でメーカーに勤務。年収500万円。 |
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採用ペルソナを設計する重要性
採用ペルソナを設計すると早期離職率の低下の効果を見込めるため、非常に重要です。
厚生労働省の「新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率」によると、2020年時点で高卒者の離職率は37%、大卒者の離職率は32.2%に上ります。せっかく採用しても、早期離職されてしまえば、採用や育成にかけたコストが無駄になるだけでなく、人材不足によって現場の負担も増えてしまうでしょう。
そこで役に立つのが、採用ペルソナなのです。採用ペルソナを設計することで、自社が求める人物像が明確化されます。その結果、採用活動の精度が上がり、自社に合った人材を採用できる可能性が高まります。自社に合った人材であれば入社後にミスマッチが生じる可能性は低く、早期離職を防ぐ効果を見込めるのです。
[出典:厚生労働省「新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率」]
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採用ペルソナの設計に必要な要素
採用ペルソナの設計には、必要な要素が複数あります。ここでは具体的な要素についてご紹介するので、設計の参考にしてください。
基本情報
採用ペルソナを設計するにあたり、欠かせないのが年齢・性別・学歴・年収・居住地などの基本情報です。例えば、若手社員と中堅以上の社員では、採用方法は異なるでしょう。また、現在の年収や居住地は、報酬の決定に必要です。
経験・資格・スキル
入社後に任せる仕事の内容や範囲によって、求める経験は異なります。
例えば人事部で人材を求めている場合、単に人事部での勤務経験があるかどうかではなく、さらに絞り込み、採用と人材育成のどちらの経験を求めているのかを明確にしましょう。
勤務にあたり、特定の資格などが求められる職場や職種であれば、資格やスキルの有無も考慮しなければなりません。
価値観・人柄
価値観や人柄は入社後の定着に関わるため、採用ペルソナの設計には欠かせません。安定志向の人材と上昇志向の人材では、マッチする企業が大きく異なります。
チームワークが要求される職場では、コミュニケーションが不得手な人材はチームになじめずに離職してしまう恐れがあるでしょう。こうしたミスマッチを防止するためにも、価値観や人柄についてもよく考えるようにしてください。
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採用ペルソナの作り方・設計の流れ
ここからは、採用ペルソナの作り方・設計の流れをご紹介します。これから採用活動を開始する企業の担当者の方は、ぜひご一読ください。
採用の目的を再確認する
採用ペルソナを設計するにあたり、まずは採用の目的を再確認しましょう。欠員の補充と新規事業立ち上げでは、必要とされる人材のスキルや経験が異なります。
欠員を補充する場合は、退職者と同じスキルや経験を持つ人材を採用したほうが業務の停滞を防げるでしょう。一方、新規事業を立ち上げる場合は、その分野の経験者やチャレンジ精神のある人材が求められます。
採用の目的次第で応募者に求めるスキルや経験などの優先順位が変わるため、必ず確認しましょう。
企業の採用に関わる情報を整理する
自社の採用に関わる情報をしっかり整理することも、採用ペルソナの設計には不可欠です。例えば、採用ペルソナの一環として応募者の価値観を設計する場合、自社の価値観と統一しておかなければ入社後にミスマッチが生じてしまうでしょう。
納得できる採用ペルソナを設計するためにも、以下の項目について整理しましょう。
- 企業理念
- ビジョン
- 事業内容
- 社風、企業風土
- 募集職種
- 仕事内容
- 働き方
- 今後の展望
社内へヒアリングしペルソナを設定する目的を明確にする
続いては、配属予定の部署にヒアリングを実施し、採用ペルソナを設計する目的を明らかにしましょう。
配属予定の部署に「どんな人材を必要としているのか」を尋ねることで、必要な経験やスキルが分かります。また、現場で活躍している社員を参考に採用ペルソナを設計すれば、入社後に活躍しそうな人材を採用できるでしょう。
いくら詳細に採用ペルソナを設計しても、現場の意向とズレがあれば、せっかくのスキルを発揮してもらえない恐れがあります。必ず現場とのすり合わせを行うようにしましょう。
採用要素に優先順位をつける
現場の意見を反映しながら採用ペルソナの要件を洗い出したあとは、優先順位をつけるステップです。この際、要素を「MUST(必須要件)」「WANT(あると望ましい要件)「NEGATIVE(望ましくない要件)」の3種類に分けると、面接などで判断がしやすくなります。
例えば、業務経験が求められる職種であれば、業務経験は「MUST」に分類されます。一方、資格が必要ではあるものの、入社後に取得できる体制を整備しているのであれば、資格は「WANT」に分類されるでしょう。
「MUST」が多すぎるとマッチする人材が見つからず、一人も採用できない事態になりかねません。理想を高くしすぎないことがポイントといえます。
採用ペルソナを設定する
採用要素の優先順位をつけ終えたら、採用の目的や自社の採用情報を踏まえつつ、求める人物像をつくり上げていきます。
例えば、チームリーダーとなる人材を求めているのであれば、前職でチームをまとめ上げた経験や、学生時代に部活やサークルでリーダーを務めた経験が採用ペルソナに含まれます。
採用ペルソナの具体的な項目を以下に挙げたので、各項目を検討してください。
社会的特徴 |
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会社的特徴 |
|
心理的特徴 |
|
設定した採用ペルソナが企業・採用市場に適しているか確認する
採用ペルソナを設計したら、自社の状況や採用市場とマッチしているかを確認しましょう。
例えば、配属予定の部署では資格を必要としない業務を任せようと考えているのに対し、採用ペルソナで「資格を保有」と設定してしまった場合、採用の間口を狭めてしまうだけでしょう。経営陣や現場の意向と、設計した採用ペルソナにズレが生じていないかを確認してください。
人材獲得競争が激しさを増す昨今、応募者に求める要件が増えれば、採用は困難になります。「経験者」を想定した採用ペルソナで応募が見込めないのであれば、思い切って「未経験」に変更し、入社後に未経験者をフォローできる体制を整備しましょう。
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採用ペルソナの設定例・テンプレート
ここでは、採用ペルソナの記載項目と設計例をご紹介しますので、自社で設計する際にお役立てください。
新卒採用を行う際の採用ペルソナ例
新卒採用を行う際は、学生時代の部活やサークルでの経験や役割、企業に求めるものなどを中心に採用ペルソナを設計しましょう。
- 性別:男性
- 年齢:22歳
- 地域:東京
- 趣味:登山
- 部活・サークル:登山サークルでリーダーを務める
- 家族構成:両親と兄1人
- 性格:目標に向かってコツコツと努力するタイプ。人をまとめ上げるのが得意。
- 経験・資格:簿記3級
- 企業に求めるもの:経営に携わる仕事を希望
中途採用を行う際の採用ペルソナ例
中途採用のために採用ペルソナを作成する際は、前職での経験や今後のキャリアプランなどを具体的に設計し、自社の求める人物像とのズレが起きないように心がけましょう。
- 性別:女性
- 年齢:30代
- 地域:東京
- 未既婚:既婚
- 年収:400万円
- 趣味:英会話
- 家族構成:夫と保育園に通う息子
- 性格:チャレンジ精神がある
- 経験・資格:貿易実務に10年携わる
- 企業に求めるもの:時短勤務制度
- キャリアプラン:将来はマネジメント職を希望
採用ペルソナを設計する際の注意点
採用ペルソナを設計するにあたって、注意すべき点をお伝えします。留意しながら設計してください。
採用ペルソナの要素は細かく設定しすぎない
採用ペルソナを設計する際は、要素を細かく設計しすぎないようにしましょう。細かく設計しすぎると、採用ペルソナにマッチした人材が見つからず、採用が困難になります。
例えば、「味噌ラーメンより醤油ラーメンが好き」というペルソナ設計をしたとしても、実務には、ほとんど関係がないでしょう。採用ペルソナを設計する目的は、あくまでも自社が求める人物像を明確にし、採用につなげることです。目的を忘れないようにしてください。
採用ペルソナは必ず2つ以上など複数設計する
採用ペルソナは、必ず2つ以上設計するようにしましょう。採用ペルソナが1つしかないと、該当する応募者と出会えず、採用できない恐れがあります。また、単一の採用ペルソナに該当する応募者のみを採用すると、組織内の多様性が失われてしまうでしょう。
さまざまな事業を展開している企業の場合、各事業によって求められる人物像は異なります。そのため、職種や配属予定部署ごとに採用ペルソナを設計するとよいでしょう。
人事担当者だけではなく現場社員にも設計に参加してもらう
採用ペルソナを設計する際は、配属予定部署の現場社員にも参加してもらうようにしましょう。現場で求められるスキルや資格、経験は、人事担当者よりも現場社員のほうが理解している場合が多いためです。また、どのような人柄の人材なら部署やチームになじめるかについても、現場社員の意見を取り入れたほうが、入社後すぐに活躍できる確率が高まります。
人事担当者のみで設計すると、現場社員の意向とズレが生じ、現場社員による面接で不採用となる恐れがあります。仮に入社してもミスマッチが生じ、早期離職につながるかもしれません。
また、設計した採用ペルソナは社内で共有しましょう。採用に関わる社員や部署で共有することで、選考過程で確認すべきポイントにズレが生じず、一貫した視点で選考ができます。
働き方に対する価値観の変化を考慮する
時代や社会情勢の変化に影響を受け、労働者の働き方に関する価値観は変化するものです。そこで、採用ペルソナ設計時には価値観の変化を考慮しましょう。
例えば、勤務地や時間に制約のない働き方を希望する人は増えています。そうしたなかで出社を原則とする採用ペルソナを設計すると、当てはまる人材が見つからず、採用が困難になる可能性があります。
もちろん、自社の現状と合わない採用ペルソナを無理に設計しても、入社後にミスマッチが生じてしまいます。そのため、自社の労働環境を整えつつ、採用ペルソナも変化させていくようにしましょう。
採用活動のたびに設計したペルソナを見直す
採用ペルソナは一度設計したら終わりではなく、採用活動のたびに見直しましょう。採用市場や自社の状況、自社が求める人材は常に変化します。そのため、同じ採用ペルソナを使い続けていると、採用市場の現実や本当に求めている人物像と採用ペルソナにギャップが生じてしまうのです。
また、採用活動がスムーズに進まなかった場合も見直しが必要です。経営陣や現場の意見を聞き、採用市場の現状と比較しながら、採用ペルソナを修正しましょう。
▷一人当たりの採用コストの平均とは?内訳や計算方法・削減するポイント
求める人材をペルソナへ反映させ採用活動の成功につなげよう
採用ペルソナは採用活動を成功させるうえで重要な役割を果たします。自社が求める人物像を採用ペルソナに詳細に反映させ、自社に最適な人材の確保を目指しましょう。
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