採用と内定の違いとは?通知書の種類ごとの違い・トラブルの原因と回避策
「採用」と「内定」は、定義があいまいなことから混同されやすい言葉です。とくに新卒者はトラブル回避のためにも双方の違いを明らかにし、よく理解する必要があります。本記事では、採用と内定の違いとは何かを、トラブルの事例や回避策などとあわせて詳しく解説します。
目次
採用と内定の違いとは?
採用と内定には、どのような違いがあるのでしょうか。また、内定と内々定も混同されやすい傾向にある言葉です。まずはこれら3つの違いについて解説します。
採用は「選考に合格した状態」
採用とは、求職者がすべての選考に合格した状態を指します。
言い換えれば、企業側が求職者に「入社してほしい」と雇用の意思を表示しているだけであり、求職者はまだ入社に合意していない状態です。
正式な入社の決定や雇用契約の締結を行うためには、採用通知の後に求職者の承諾を得る必要があります。
内定は「入社意思が確認できた状態」
「内定」とは、「企業から雇用の意思表示がなされた状態」を指す言葉として認識されがちですが、厳密には異なります。
法的観点では「求職者側も合意した状態」または「労働契約を締結した状態」を指す用語とされています。つまり、労働契約を締結した場合はその時点で法的拘束力が生じ、合理的な理由がない限り取り消しはできません。
企業側の「内定取り消し」と、求職者側の「内定辞退」も条件や扱いが異なるため、正しく理解しておく必要があります。
内々定は「内定を約束すること」
「内々定」は、「内定を約束すること」であり、この時点では労働契約は締結していないことを意味します。
内々定は新卒採用で行われるのが一般的で、政府が新卒採用時に定めている「正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降」というルールに起因しています。
つまり、企業側としては早期に内定を出したくても、新卒採用のルール上できないことがあるのです。このような場合に、労働契約が締結できる期日が到来するまでの間「内々定」という形で内定を予約・約束するのが通例となっています。
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内定時に送付する通知書の種類と違い
内定時に送付する通知書には「採用通知書」「内定通知書」「労働条件通知書」の3つがあります。ここからは、それぞれどのような違いがあるのか見ていきましょう。
採用通知書とは?
採用通知書とは、企業がその求職者の採用を決定したこと、または採用する意思があることを通知する書類です。
採用通知書はあくまで企業側の意思を表示するものであり、求職者側の意思とは無関係に発行されます。したがって、採用通知書を送付したからといって求職者が必ずしも入社するとは限らない点には注意が必要です。
メール通知と書留での書類送付がおすすめ
採用通知はスピードと正確性が求められるため、メール通知と書留による書類送付の併用がおすすめです。
求職者は他社の選考も受けている可能性があり、すでに採用通知が届いていることも考えられます。そのため、最終選考の結果が出たらすぐにメールで通知を行いましょう。それと同時に、書留で書類を郵送するのが理想です。
なお、採用通知には以下の3点を記載するとよいでしょう。
- 応募・選考に参加してくれたことに対するお礼
- すべての選考に合格し、採用の意思があること
- 入社までの手続きとその流れ
内定通知書とは?
内定通知書とは、求職者から入社の合意が得られていることを前提に発行する書類であり、法的には発行した時点で労働契約を締結したものとみなされます。
内定通知書を発行した時点で法的拘束力が発生するため、企業側も合理的な理由がない限り内定を取り消すことはできません。
「内定=採用の意思表示」と誤って解釈している場合が多く、内定を取り消そうとして問題に発展するケースがあるため十分注意しましょう。
内定通知書に記載すべき項目
内定通知書は、求職者が入社することを前提に発行される書類のため、以下の項目を記載する必要があります。
- 発行年月日
- 発行企業名・代表者名
- 応募に対するお礼
- 採用が内定(=入社が決定)したこと
- 入社予定日
- 予定勤務先
- 雇用条件
- 内定取り消し、内定辞退に関する内容
また、内定通知書とは別に送付状を添付し、以下の項目を記載するのが一般的です。
- 同封する書類の種類と通数
- 書類に署名・捺印を求める内容
- 返送期限
- 本件に関する問い合わせ先
労働条件通知書とは?
労働条件通知書は、企業が採用する相手に対して発行・交付することが義務付けられている書類です。
この書類は、労働基準法第15条第1項の「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」という義務に基づいています。
労働条件通知書は、自社で雇用する場合、雇用形態にかかわらずすべての従業員に発行しなければなりません。前述の法律上の義務のほか、行き違いやトラブルを防止し、安心して入社してもらうことを目的としています。
発行するタイミングについては具体的に規定されていませんが、採用が決まり次第なるべく早めに通知するのが望ましいでしょう。なお、労働条件通知書には、絶対的明示事項として以下の10項目が指定されています。
- 契約期間と更新の有無・基準
- 就業場所
- 従事すべき業務の内容
- 始業と終業の時刻、休憩時間
- 休日
- 休暇
- 賃金の決定方法
- 賃金の支払時期・支払方法
- 退職に関する事項
- 昇給に関する事項
また、2024年4月から労働条件明示のルールが改正されるため、新たに以下の内容を明示する必要があります。
- 就業場所や業務の変更の範囲
- 更新上限の有無と内容
- 無期転換申込機会・無期転換後の労働条件
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採用通知メールのテンプレート
ここでは、新卒者向け・中途採用者向けに分けて、採用通知をメールで送る際のテンプレートを紹介します。
新卒者向けのテンプレート
件名:【◯◯株式会社】選考結果のご連絡 |
◯◯様 株式会社◯◯採用担当の◯◯です。 先日は弊社の最終選考にお越しいただき、誠にありがとうございました。 慎重かつ厳正に選考いたしました結果、◯◯様の採用が決定いたしましたので、取り急ぎご連絡いたします。 つきましては、入社手続きに関する必要書類を本日付けで郵送いたしました。 ◯◯様のお手元に到着後、書面をご確認いただき、署名捺印のうえ返信用封筒にて期日までにご返送くださいますようお願い申し上げます。 --------------------------------- ▶郵送書類 ・採用通知書:1通 ・労働条件通知書:1通 ・内定承諾書:1通 ・誓約書:1通 ・返信用封筒:1通 ▶提出期日 令和◯年◯◯月◯◯日 ※注意事項 期日までに必要書類を提出いただけなかった場合、提出物の不備や虚偽の記載があったことが判明した場合は、採用を取り消しさせていただくことがございます。 あらかじめご了承ください。 --------------------------------- なお、今後のスケジュールは以下の通りとなります。 ・入社書類提出期限 令和◯年◯◯月◯◯日 ・内定者懇親会 令和◯年◯◯月◯◯日 ・内定式 令和◯年◯◯月◯◯日 ・入社式 令和◯年◯◯月◯◯日 各イベントの詳細につきましては、別途メールにてお知らせいたします。 本件についてご不明点等ございましたら、下記連絡先へお問い合わせください。 ◯◯様とお会いできることを、社員一同心待ちにしております。 どうぞよろしくお願い申し上げます。 --------------------------------- 株式会社 ◯◯◯◯部◯◯課 (担当者名) 代表電話:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ 携帯番号:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ e-mail:◯◯◯@◯◯◯.co.jp |
中途採用者向けのテンプレート
件名:【◯◯株式会社】選考結果のご連絡 |
◯◯様 株式会社◯◯採用担当の◯◯です。 先日は弊社の最終選考にお越しいただき、誠にありがとうございました。 慎重かつ厳正に選考いたしました結果、◯◯様の採用が決定いたしましたので、取り急ぎご連絡いたします。 つきましては、入社手続きに関する必要書類を本日付けで郵送いたしました。 ◯◯様のお手元に到着後、書面をご確認いただき、署名捺印のうえ返信用封筒にて期日までにご返送くださいますようお願い申し上げます。 --------------------------------- ▶郵送書類 ・採用通知書:1通 ・内定承諾書:1通 ・誓約書:1通 ・返信用封筒:1通 ▶提出期日 令和◯年◯◯月◯◯日 ※注意事項 期日までに必要書類を提出いただけなかった場合、提出物の不備や虚偽の記載があったことが判明した場合は、採用を取り消しさせていただくことがございます。 あらかじめご了承ください。 --------------------------------- なお、今後のスケジュールは以下の通りとなります。 ・入社書類提出期限 令和◯年◯◯月◯◯日 ・内定者面談 令和◯年◯◯月◯◯日 ・入社説明会 令和◯年◯◯月◯◯日 各イベントの詳細につきましては、別途メールにてお知らせいたします。 本件についてご不明点等ございましたら、下記連絡先へお問い合わせください。 ◯◯様とともに働けることを、社員一同心待ちにしております。 どうぞよろしくお願い申し上げます。 --------------------------------- 株式会社◯◯ ◯◯部◯◯課 (担当者名) 代表電話:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ 携帯番号:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ e-mail:◯◯◯@◯◯◯.co.jp |
内定通知書のテンプレート
続いて、新卒者向け・中途採用者向けに分けて、書面で内定通知書を作成する場合のテンプレートを紹介します。
なお、ここで紹介する内定通知書の他に、同封書類の種類や通数、補足事項などを記載した送付状を同封するのが一般的です。
新卒者向けのテンプレート
令和◯年◯月◯日 ◯◯ ◯◯様 株式会社◯◯ 代表取締役 ◯◯ ◯◯ 内定通知書 拝啓 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 この度は弊社の採用試験へご参加いただき、誠にありがとうございました。 慎重かつ厳正に選考いたしました結果、◯◯様の採用が決定いたしましたので、ご連絡いたします。 つきましては、同封した内定承諾書をご確認いただき、ご署名・ご捺印のうえ返信用封筒にて、下記期日までにご返信くださいますようお願いいたします。 ただし、次のいずれかの事由に該当する場合は、内定を取り消しさせていただくことがございますので、あらかじめご了承ください。 ・期日までに内定承諾書をご返信いただけなかった場合 ・提出書類に虚偽があったことが判明した場合 ・在籍中の学校を予定通り卒業できないことが決まった場合 ・怪我・病気などにより、就業が困難と認められる場合 ・反社会的行為、暴力団および暴力団関係者と関わりがあると判明した場合 ・当社の社会的評価を著しく損なうような言動 ・行動があった場合・内定時に予測不可能な経営悪化、事業の再編などが行なわれた場合 ・そのほか各事項に準ずることや、やむを得ない事由があるとき 敬具 記 ▶入社予定日:令和◯年◯月◯日 ▶同封書類 ・内定承諾書:1通 ・労働条件通知書:1通 ・誓約書:1通・返信用封筒:1通 ▶提出書類 内定承諾書 令和◯年◯◯月◯◯日 必着 ▶入社までのスケジュール ・入社書類提出期限 令和◯年◯◯月◯◯日 ・内定者懇親会 令和◯年◯◯月◯◯日 ・内定式 令和◯年◯◯月◯◯日 ・入社式 令和◯年◯◯月◯◯日 ※各イベントの詳細につきましては、別途メールにてお知らせいたします。 ※本件についてご不明点等ございましたら、下記連絡先へお問い合わせください。 以上 ▶本件に関するお問い合わせ先 株式会社◯◯ ◯◯部◯◯課 (担当者名) 代表電話:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ 携帯番号:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ e-mail:◯◯◯@◯◯◯.co.jp 令和◯年◯月◯日 ◯◯ ◯◯様 株式会社◯◯ 代表取締役 ◯◯ ◯◯ |
内定通知書 拝啓 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 この度は弊社の採用試験へご参加いただき、誠にありがとうございました。 慎重かつ厳正に選考いたしました結果、◯◯様の採用が決定いたしましたので、ご連絡いたします。 つきましては、同封した内定承諾書をご確認いただき、ご署名・ご捺印のうえ返信用封筒にて、下記期日までにご返信くださいますようお願いいたします。 ただし、次のいずれかの事由に該当する場合は、内定を取り消しさせていただくことがございますので、あらかじめご了承ください。 ・期日までに内定承諾書をご返信いただけなかった場合 ・提出書類に虚偽があったことが判明した場合 ・怪我・病気などにより、就業が困難と認められる場合・反社会的行為、暴力団および暴力団関係者と関わりがあると判明した場合 ・当社の社会的評価を著しく損なうような言動 ・行動があった場合 ・内定時に予測不可能な経営悪化、事業の再編などが行なわれた場合 ・そのほか各事項に準ずることや、やむを得ない事由があるとき 敬具 記 ▶入社予定日:令和◯年◯月◯日 ▶同封書類 ・内定承諾書:1通 ・労働条件通知書:1通 ・誓約書:1通 ・返信用封筒:1通 ▶提出書類 内定承諾書 令和◯年◯◯月◯◯日 必着 ▶入社までのスケジュール ・入社書類提出期限 令和◯年◯◯月◯◯日 ・内定者面談 令和◯年◯◯月◯◯日 ・入社説明会 令和◯年◯◯月◯◯日 ※各イベントの詳細につきましては、別途メールにてお知らせいたします。 ※本件についてご不明点等ございましたら、下記連絡先へお問い合わせください。 以上 ▶本件に関するお問い合わせ先 株式会社◯◯ ◯◯部◯◯課 (担当者名) 代表電話:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ 携帯番号:◯◯◯ − ◯◯◯ − ◯◯◯◯ e-mail:◯◯◯@◯◯◯.co.jp |
採用・内定に関するトラブルの事例と回避策
採用・内定に関して起こりがちなトラブル事例と、その回避策を紹介します。
企業・求職者間での認識の違い
企業と求職者間での認識の違いが原因で、トラブルが発生する場合があります。
とくに多いのは「内定」や「採用」などの用語に対する認識のズレです。求職者は入社を前提とした内定だと思っていたにもかかわらず、企業側は正式な内定とは考えていなかったというケースが挙げられます。
また、入社前に聞いていた話と入社後の実態が異なっていたというトラブルも起こりがちです。言った言わないの水掛け論になったり、さらに大きなトラブルに発展したりするため注意が必要です。
このようなトラブルを防止する意味でも、内定通知書や労働条件通知書などを発行し、後から見返せる形で提示するのが望ましいでしょう。
内定取り消し
一度出した内定を、企業側が安易に取り消してしまう行為も散見されます。
法的には「内定」は「労働契約を締結している」とみなしますが、企業側にその認識が欠けているケースがほとんどです。企業都合による内定取り消しは一方的な契約破棄にあたるため、合理的な理由がない限り無効となります。
このようなトラブルを避ける意味でも、内定通知書などに内定取り消し事由を明記しておきましょう。
内定辞退
求職者側の都合で内定を辞退する行為も、トラブルに発展するケースがあります。これも会社側が労働者に認められている権利を正しく理解していないことが原因である場合がほとんどです。
民法上、労働者には「退職の自由」が認められていて、入社予定日の2週間以上前に申し出れば内定辞退が可能です。これは、既存の従業員が退職する際の「労働契約の解除」と同様の扱いになります。
一方で、入社予定日まで2週間未満のタイミングで内定辞退を申し出た場合は、求職者側に合理的な理由がない限り、損害賠償責任を負わなければならない可能性があります。
内定辞退における扱いは「内定辞退を申し出たタイミング」によって異なることを覚えておきましょう。
採用と内定の違いを理解しトラブルを未然に防ごう
人によって認識がズレがちな採用と内定。とくに「内定=労働契約を締結した状態」という本来の意味を理解していない場合が多く、トラブルの元になる傾向にあります。
このようなトラブルを避けるためには、採用・内定の意味を正しく理解するとともに、内定通知書など後から見返せる形に残すことや、書類に内定取り消し事由を明記しておくことが重要です。
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