配賦の意味とは?基準の設定方法や種類・メリットとデメリットについて解説

最終更新日時:2024/01/24

販売管理システム

配賦とは

配賦とは、特定の基準によって費用を各部門に配分することであり、正確な原価計算を行うための重要な処理です。しかし、配賦の具体的な設定方法や流れを知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、配賦の意味やメリット・デメリットなど、設定に必要な知識について解説しています。

この記事の要約

・配賦とは、複数の部署にまたがって発生する間接費用を各部署に分配すること
・配賦は、大きく分類すると部門別配賦、製品別配賦の2つに分けられる

配賦の意味とは?

配賦(はいふ)とは、「割り振ること」を意味する言葉です。ビジネスシーンにおいては、複数の部署にまたがって発生する「間接費用」を、各部署に分配する処理を指します。

間接費用とは、バックオフィス部門の人件費やオフィスの水道光熱費、備品購入費など、製品・サービスの生産に直接的に関係のない費用です。しかし、間接費用は円滑な生産活動を裏で支えているものであり、事業の運営には必要不可欠です。そのため、原価計算を正確に行うためには、直接費用に加えて、間接費用を考慮した計算をしなければなりません。

配賦を行う際、各部署にどのような割合で費用を割り振るかは、会社で基準を定めることになります。配分方法はさまざまありますが、部署の規模や作業時間などに応じて設定されることが多い傾向です。

割賦・按分との違い

配賦と似た言葉として、「割賦(かっぷ)」と「按分(あんぶん)」があります。

「割賦」とは、月賦や年賦のように、税金や商品の代金などを複数回に分けて支払うことを意味する言葉です。「賦」には「分ける」という意味があり、配賦も割賦も、お金を分けるという意味では同じです。しかし、配賦は会社の経費計算のための処理であるのに対し、割賦は代金の支払い方法を指します。

続いて「按分」とは、「特定の基準に沿って、物や費用などを分けること」を意味する言葉です。たとえば、「経費を按分する」という使い方をします。配賦と似ていますが、按分はあくまでも「分けること」です。一方、配賦は正確には「分けたものを配ること」という意味を持ち、この点において按分と異なります。

配賦の目的

配賦の目的は以下の2つです。

  • 部門間の費用負担を平等にするため
  • 各部門に会社全体の利益・費用を意識させるため

それぞれ詳しく解説します。

部門間の費用負担を平等にするため

配賦の大きな目的は、部門間における費用負担の平等性を確保することです。

たとえば、2つの部署があり、両部署が共有で使用している設備があったとします。設備の諸費用を計上する際、どちらかの部署だけが費用を負担するのでは公平ではありません。経費の偏りによって一方の部署に赤字が発生するなど、正しい経費計算ができなくなってしまうでしょう。

このような事態を防ぐため、配賦によって間接費用を分配し、部門間での費用負担を平等にします。

各部門に会社全体の利益・費用を意識させるため

配賦には、各部門に会社全体の利益・費用を意識させる目的もあります。

生産に関わる費用は各現場で把握しやすいですが、間接的な費用はどれほど発生しているのか分かりにくいものです。しかし、いくら製品の売上があったとしても、バックオフィスでの経費やオフィスの維持費が高ければ、会社としての利益は少なくなります。会社全体として利益を上げるためには、直接費用と間接費用の両方を把握したうえで、対策を考えなければなりません。

配賦を行うことで、間接費用を含めてどれほどの費用が発生しているのかを各部門が正確に知ることができます。それにともない、意識的に生産性や利益の向上施策に取り組めるようになるでしょう。

配賦の主な種類

配賦は大きく以下の2種類に分けられます。

  • 部門別配賦
  • 製品別配賦

それぞれの特徴を説明します。

部門別配賦

部門別配賦とは、直接部門に対して、間接部門で生じた費用を分配する手法です。間接部門とは、総務や経理などのバックオフィスを支える部署、直接部門とは、製造や販売などの生産活動に直結する部署を指します。費用を部門単位で分配する点が特徴の手法です。

部門別配賦は、さらに以下の3種類に分けられます。

  • 直接配賦法
  • 階梯式配賦法
  • 相互配賦法

詳しく解説していきます。

直接配賦法

直接配賦法とは、間接部門で生じたすべての費用を、直接部門に分配する手法です。どの部門に何割分配するかは、会社が定めた基準に従います。間接部門には分配されない点が特徴で、部門別配賦のなかでも計算がシンプルで簡単な方法といえます。

ただし、間接部門同士における費用のやり取りを考えないため、費用の実情を正確に把握することは難しくなります。

階梯式配賦法

階梯式(かいていしき)配賦法とは、優先順位が高い間接部門の費用から順番に分配する手法です。

たとえば、間接部門a・間接部門b・直接部門c・直接部門dがあり、aの優先順位が高いとします。このとき、以下のステップで費用を分配します。

  1. 間接部門aの費用→b・c・dに配賦
  2. 間接部門bの費用→c・dに配賦

間接部門の優先順位は、費用額の多さや他部門への影響力などによって設定されます。直接配賦法と異なり、配賦過程で他の間接部門にも費用が分配される点が特徴です。しかし、最終的に間接部門の費用はすべて直接部門へ分配されます。

間接部門間での費用のやり取りを含めた配賦方法であり、費用の実態をより正しく把握できます。

相互配賦法

相互配賦法とは、間接部門で発生した費用を、二段階に分けて配賦する方法です。

まず一次配賦では、各間接部門が、すべての部門に対して費用を分配します。このとき、間接部門間の相互的なやり取りも含めるため、間接部門に対しても費用が分配されます。

続いて二次配賦では、一次配賦で間接部門に分配された費用を、直接部門のみに分配します。二次配賦のやり方については、直接配賦法と同様です。

相互配賦法は特に、社内で直接部門と間接部門が明確に区別されている企業に最適な方法です。

製品別配賦

製品別配賦とは、製品・サービスの生産過程で発生した費用を直接費用と間接費用に分け、各製品・サービスに対して間接費用を分配する手法です。製品・サービスへの配賦率は会社で定められ、作業時間や工程数、人員数などに応じて決められます。

製品別配賦は、特に製品ごとに利益管理を行っている会社に適した配賦方法です。部門ごとの複雑な計算処理がいらず、効率的に配賦を行うことができます。

配賦を実施するメリット

配賦を実施するメリットは以下の3つです。

  • 原価計算の精度が上がる
  • 会社の利益に対する意識が高まる
  • コストの最適化がしやすい

配賦を行うことで、会社の利益向上が期待できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

原価計算の精度が上がる

配賦を行うことで、原価計算の精度を高めることができます。

製品を製造・販売するために必要なのは、原材料費だけではありません。たとえば、オフィスの運営費用やバックオフィス部門の費用なども生産活動のなかに含まれています。したがって、より精密に原価計算を行うためには、これらの間接費用を含める必要があるのです。

配賦によって間接費用を分配することで、各部門で発生した費用をより正確に把握できるため、原価計算の精度を高められるでしょう。

会社の利益に対する意識が高まる

配賦は、会社の利益に対する社員の意識向上にも効果的です。

配賦の実施により、間接費用を含めてどれほどのコストが発生しているかが可視化できるようになります。社員が組織の実情を知ることで、「想像以上に間接費用が発生しているから、利益を上げるためにはもっと生産性を高めなければ」などと、経営状態に対する関心を自発的に高めることも期待できます。

配賦を行うことで、自分が所属する部門の利益だけでなく、会社全体の利益を意識できるようになり、コストや生産性に対する課題意識を醸成できるでしょう。

コストの最適化がしやすい

コストの最適化がしやすいことも、配賦の利点です。

配賦は、費用を均一に割り振るのではなく、部門の規模や人員数、作業時間などを踏まえたうえで配分します。各部門に見合った費用配分ができるため、コストの最適化がしやすくなるのです。

また各部門の経費をより詳細かつ正確に把握できるため、利益の計算も行いやすくなるでしょう。

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配賦の実施によるデメリット

配賦を実施することで、以下のデメリットが生じる場合があります。

  • 平等性のある配分が難しい
  • 黒字と赤字が逆転するリスクがある

デメリットを十分に理解したうえで、配賦を行いましょう。

平等性のある配分が難しい

配賦基準は、部門の規模や人員数、作業間など、さまざまな観点を配慮したうえで設定されますが、全員が納得できる配分をすることは難しいでしょう。

どの部門も、できる限りコストを抑えたいと考えてるものですが、場合によっては配賦を行うことで負担が増大する場合があります。不平感があると社員に不満が生じ、モチベーションやエンゲージメントの低下を招く恐れもあるため注意が必要です。

配賦基準を設定する際には、各部署の意見を聞きながら、部署間の平等性を保てるように努めましょう。

黒字と赤字が逆転するリスクがある

黒字部門が赤字に転じるリスクもあります。もし利益が出ている部門だったとしても、配賦比率の大きさによって費用負担が増大し、経費が利益を上回る可能性があるためです。

配賦比率は経費計算に大きな影響を与えます。上記のような事態を防ぐためにも、比率を設定する際には、慎重な検討が必要です。

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配賦の基準を設定する方法

配賦の基準は、会社によって独自に設定されると説明してきました。では、配賦の基準はどのように設定すればよいのでしょうか。そこで、次は配賦基準設定の流れを紹介します。

配賦基準を設定する際は、以下のステップで行うとよいでしょう。

  1. 配賦の基準を定める
  2. 費用負担の割合を決める
  3. 各部門の負担金額を算出する

それぞれのポイントを詳しく解説します。

1.配賦の基準を定める

まずは、適切な配賦基準を設定しましょう。配賦の基準は、部署の規模や売上、作業時間、人員数などを基に決めます。ただし、何を基準とするかによって配賦の割合が変化する場合があります。また、基準が複雑だと計算をする際にミスが発生し、正しい数字を算出できなくなる可能性が高まるため注意が必要です。

配賦の基準を決める際は、各部門の担当者とも話し合い、部門間で不平等にならないよう慎重に設定しましょう。

2.費用負担の割合を決める

配賦の基準が決まったら、費用負担の割合すなわち「配賦率」を決めましょう。

たとえば、人員数を基準に配賦率を決めるとします。100人中、X部門40人、Y部門35人、Z部門25人とすると、配賦率はX部門40%、Y部門35%、Z部門25%と設定できます。

3.各部門の負担金額を算出する

配賦基準と配賦率が決まったら、各部門の費用金額すなわち「配賦額」を算出します。

配賦額は、間接費用に配賦率をかけることで算出できます。たとえば、間接費用500万円、配賦率30%であれば、配賦額は500万円×30%=150万円となります。

すべての部署の配賦額が算出できたら、計算ミスや配賦漏れがないかを十分確認しましょう。

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配賦の実施効果を高めるポイント

配賦の実施効果を高めるためには、以下の2つのポイントを押さえるとよいでしょう。

  • 企業規模が大きくなったタイミングで導入する
  • ERPの利用を検討する

それぞれ詳しく解説します。

企業規模が大きくなったタイミングで導入する

配賦は、企業規模が大きくなったタイミングで導入することをおすすめします。

会社の規模が大きくなると、部門数や製品数は増えていきます。それにともない、間接費用の配分は複雑化します。各部門のコストや利益を把握することも難しくなっていくでしょう。

経費を正しく管理するためにも、配賦を活用し、適切な計上を行いましょう。

ERPの利用を検討する

配賦の基準を決める際は、部門ごとのデータを集計・分析する必要があります。また配賦率や配賦額の計算を人の手で行うのも労力がかかります。

そこで役立つのがERPです。ERPとは、企業の管理業務を一元化するシステムです。ERPでは、会計管理から人事管理まで幅広いデータを管理できます。複雑になりがちな計算業務も自動で行えるため、業務の手間を省くことができ、効率良く費用分配を行えるでしょう。

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配賦とは共通費用を各部門に割り当てる処理

配賦について詳しく解説しました。配賦とは、正確な原価計算を行うために部門間の共有費用を各部門に割り当てる処理です。コストの最適化を実現するため、ERPなどのシステムも活用しながら、配賦に取り組みましょう。

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