ワークライフハーモニーとは?ジェフ・ベゾスの哲学から生まれた新たな概念

2022/7/1 2022/07/01

ワークライフバランス

ワークライフハーモニー・仕事と生活の調和

「ワーク」と「ライフ」は、バランスを取るものではなく融合させるものであるとするワークライフハーモニー。この概念は、世界的なテクノロジー企業であるAmazonのCEO、ジェフ・ベゾス氏の発言によって広まりました。では、仕事と生活の調和を実現するためには、いったいどのような取り組みが必要となるのでしょうか。本記事では、ワークライフハーモニーの意味や、このような言葉が生まれた背景について解説します。

ワークライフハーモニーとは?

ワークライフハーモニーとは、仕事(work)と生活(life)を統合する考え方のことを言います。

従来、私たちは、仕事と生活のバランスをとるのが重要であると考えてきました。そこには、暗黙のうちに、仕事と生活を切り離すべきであるという規範的な判断が入り込んでいます。しかし、仕事と生活を区別して、バランスを取ることなどできるのでしょうか。

ワークライフハーモニーは、仕事と生活のバランスという考え方ではなく、仕事と生活のどちらも充実させられるように、互いの統合・融合を目指す考え方なのです。

なお、日本では、生活は「プライベート」と呼ばれることもあり、仕事とプライベートのバランスという意味で、ワークライフバランスという言葉が使われていますが、生活がプライベートに変わっただけで同じものを意味しています。

ジェフ・ベゾス氏の提言

ワークライフハーモニーという言葉が注目を集めたのは2016年6月のことです。

具体的には、Amazon社のCEOであるジェフリー・プレストン・ベゾス氏が、とあるカンファレンスで「人生を仕事と生活を両立させるものとして捉えてはいけない」「(Amazonの)社員にはワークライフバランスではなく、ワークライフハーモニーを大切にしてほしい」と語ったことがきっかけだと言われています。

加えてベゾス氏は、「仕事と生活のバランスを見つけようとするのは、その2つの間の厳しいトレードオフを暗示することになる。やめるべきだ」とも言っています。仕事と仕事以外の生活を区分けして競合関係に置くのではなく、「円環のようなもの」として包括的に考えた関係性を築くようにアドバイスしたのです。

つまりは、生活が幸せであれば、仕事にも大きなエネルギーを注げるようになり、逆に仕事が充実すれば、家庭や生活にもポジティブなエネルギーが注がれる。だからこそ、仕事と生活を分けて考えるのではなく、それを融合(harmony)し、最適な状態を目指すべきだとしたのです。

ワークライフハーモニーを含む、これらのベゾス氏の言葉は「Invent and Wander」という書籍の中にも記されています。

ワークライフバランスに感じる違和感や違い

ワークライフバランスという考え方とワークライフハーモニーという考え方は似ているように見えますが、厳密には異なる意味を持っています。

ワークライフバランスは、「仕事の時間」とそれ以外の時間である「プライベート」を分けて考え、それぞれの比重をどう管理するかといった点に焦点があてられています。

そのため、ワークライフバランスでは、「仕事」と「プライベート」のどちらかに比重を置きすぎると、どちらかが圧迫される、あるいは、成り立たないといった概念が根底にあることになり、「バランス」を取ろうとすれば、どちらの欲求も完全に満たすことができないジレンマを抱えることにもなるのです。

一方のワークライフハーモニーは、「ライフ」を「プライベート」ではなく、「人生」として捉え、仕事を人生の一部として調和させ、最適な生き方を目指す考え方とされています。

例えば、フレックスタイム制の在宅ワークであれば、仕事の最中に必要に応じて家事や用事を済ませ、集中できる時間帯に仕事を再開して業務をこなすといったワークスタイルが実現します。

このような「仕事」と「生活」どちらの欲求や効率も満たしつつ働けるスタイルは、まさにワークライフハーモニーといえるでしょう。

ワークライフハーモニーとは、生活と仕事を対立させるのではなく、人生において「仕事」を効率的かつ生産的に調和させ、どちらかを犠牲にすることなく、最大限のパフォーマンスの発揮を目指すものなのです。

ダイバーシティで実現できるワークライフハーモニー

では、ワークライフハーモニーを実現するには、どうしたら良いのでしょうか。まず、組織においてワークライフハーモニーを実現するのであれば、体制や意識の改革が不可欠となるでしょう。

そこでここでは、企業の意識改革を実行する際の重要なキーワードとなる「ダイバーシティ」について解説していきます。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティとは、「多様性」を意味する言葉ですが、ビジネスシーンにおいては、組織に多様な属性や価値観、経験をもつ人材を集め、価値観や考え方の多様性を企業の成長へと発展させようとする取り組みとして使われています。

しかし、昨今では、ダイバーシティという言葉の意味が広がっており、働き手の多様化という意味だけではなく、働き方の多様化も含まれるようになっています。

実際、経済産業省では、ダイバーシティ経営を以下のように定義しています。

多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営

[出典:経済産業省「ダイバーシティ経営の推進について」]

このことからわかるように、現代社会では、働き手の多様性を確保するだけではなく、多様な働き方を認め、その能力が最大限発揮できる機会を提供することが求められるようになっているのです。

ワークライフハーモニーはダイバーシティで実現可能

仕事と生活をどのようなサイクルで循環させていくかは、個人の仕事観や価値観、ライフステージなどによっても変わってくるでしょう。

そのため、従業員一人ひとりが最適なワークライフハーモニーを実現するには、それらの違いを受け入れるダイバーシティが不可欠となります。

つまり、働き方の多様化を受け入れられる組織体制と、個人の仕事観や価値観を認める企業風土が必要なのです。

毎日オフィスで定時勤務する生活では、仕事における「場所」と「時間」の物理的な制約が大きいため、仕事と生活を統合することは難しいでしょう。しかし、働く時間や場所を選べる働き方ができれば、仕事を生活の一部として融合させることが可能です。

このようなことから「ワークライフハーモニー」と「働き方」は密接な関係にあり、ダイバーシティもまた、ワークライフハーモニーの実現に大きく影響するといえるのです。

仕事とプライベート環境の調和が大切

くり返しになりますが、ワークライフハーモニーは、仕事を人生の一部として融合させる考え方を意味しています。

「仕事とプライベートを区別してバランスをとる」「仕事の比重を減らして、プライベートの時間を確保する」このようなワークライフバランスをベースとしたこの考え方に基づき、ノー残業デーなどの取り組みを導入した企業も多いのではないでしょう。

しかし、この取り組みは一定の成果をあげた一方で、必要な業務時間を強制的に削ることになり効率が下がったり、緊急性の高い業務を持ち帰ることになってしまったりといった「一律」で「画一的」が故のデメリットがありました。

まさに「仕事」と「プライベート」どちらかのバランスを取ろうとした弊害といえるでしょう。

仕事と生活の在り方は、従業員それぞれの価値観やライフスタイルのもと「個性」があり、どのように調和することがベストなのかも、個人によって異なることを認識しておく必要があるのです。

ブラック労働になるリスクもある?

ワークライフバランスを重視しすぎると、仕事とプライベートを区別しなければならなくなり、仕事の時間内に片付けられないものがプライベートな時間へとひっそりと持ち込まれてしまうという問題があります。いわゆる「サービス残業」です。

では、このようなブラック労働は、ワークライフバランスからワークライフハーモニーへと考え方を変えれば防ぐことができるでしょうか。答えはNoです。

ワークライフハーモニーのように、仕事とプライベートの垣根を取り払ってしまえば、場合によっては、仕事によってプライベートが侵食されてしまう可能性が増大してしまうとも考えられます。

ワークライフハーモニーという働き方をブラック労働にしないようにするためには、企業と個人の双方がワークライフハーモニーの目的を正しく理解したうえで、適切な目標管理や業務管理といったマネジメント体制を整える必要があるでしょう。

ワークライフハーモニー実現のために企業や個人ができること

ワークライフハーモニーの実現に向け、企業においては、まず柔軟な働き方ができる組織体制の構築が求められることになります。

具体的には、テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な労働形態の導入のほか、育休産休制度や介護休暇などの拡充・制度を利用しやすい企業風土の醸成といった取り組みが挙げられるでしょう。

さらに、役員の女性比率の向上といった「働き手の多様化」を実現する取り組みも重要な意味を持っています。

こうした取り組みは、働き方改革の一環としてすでに推進している企業も少なくありません。したがって、働き方改革の延長に、ワークライフハーモニーという考え方の一部があると考えることもできるでしょう。

ワークライフハーモニーにおいて重要なことは、従業員一人ひとりが自身に合った働き方が選べるという点にあります。

企業が個人の仕事とプライベートを半ば強制的に区別する時代から、個人が仕事とプライベートを自由に都合する時代へ、この考え方の移行こそが、ワークライフハーモニーを実現するためのポイントとなるでしょう。

ワークライフハーモニーが実現したらどうなる?

ワークライフハーモニーが実現するとどうなるでしょうか。以下では、ワークライフハーモニーがもたらす効果について説明していきます。

仕事とプライベートが充実する

ワークライフハーモニーは、そもそも、仕事とプライベートを調和させる働き方を表す言葉です。仕事もプライベートの双方を充実させ、かつ、相互にポジティブなシナジーを生み出すことが目的であるとされています。

そのため、先のベゾス氏の発言にもあるように、ワークライフハーモニーの実現は、仕事が充実して入れば家庭や生活にもポジティブなエネルギーが生まれ、家庭や生活に幸せを感じることができれば、仕事へのエネルギーも増すといった相乗効果により、人生そのものの充実感の向上が期待できるのです。

企業の成長につながる

ここまでご説明してきたように、ワークライフハーモニーの実現は、柔軟な働き方の実現のうえで成り立つものであると考えることができます。

柔軟な働き方は、実質的に日々の時間の余裕をもたらし、そのような余裕は生活全体の充実感へとつながっていきます。このような充実感は、仕事に対するモチベーションや組織へのエンゲージメント強化といった効果も期待できるのです。

その結果、生産性の向上や積極的なアイデアの創出といった、仕事への主体的な関わりによる効果や従業員自身の成長も望めるはずです。

ワークライフハーモニーは働き方そのものを変革させる概念

本記事では、ワークライフハーモニーが示す考え方やワークライフバランスとの違い、実現することによって得られるメリットのほか、デメリットについても解説しました。

先にもお伝えしたように、ワークライフハーモニーは、「仕事」を「生活」の一部として捉え、従業員一人ひとりにおいて自身のライフスタイルに最も合った働き方が選択できる柔軟な働き方のうえで成り立つ概念であり取り組みです。

しかし、これらワークライフハーモニーの実現を、生産性や業務効率の向上、イノベーションの創出といった企業が求める目的へとつなげていくには、雇用する側とされる側の正しい理解が必要です。

その理解なく実行に移してしまった場合には、自由の意味を履き違えた、単なる「無法地帯」となってしまうこともあるかもしれません。

そのため、ワークライフハーモニーを実現するには、まず組織における目的意識の統一が求められることを認識しておく必要があるのです。

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