ダブルバインドとは?意味や具体例・かわし方、活用する際のポイント
相手を混乱させるコミュニケーションとされる「ダブルバインド」。ダブルバインドとは、具体的にどのような行動を指すのでしょうか。ダブルバインドとは何か、メリット・デメリットを、かわし方、活用する際のポイントとあわせて解説します。
目次
ダブルバインドの意味とは?
ダブルバインド(double bind)とは、矛盾した2つのメッセージによって相手を混乱させてしまうコミュニケーションを指す言葉です。日本語では「二重拘束」と表現されます。
たとえば幼い頃、親から「好きなものを選んでいい」と許可されたにも関わらず、いざ自分がほしいものを選ぶと「これは値段が高いからだめ」などと禁止された経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。このように、相反するメッセージを相手に与えるのがダブルバインドです。
ダブルバインドは、ビジネスシーンや教育現場、家庭など、さまざまなシーンで見受けられます。特に、上司と部下、子供と親などの関係において発生しやすく、いずれもダブルバインドを受ける側は強いストレスを受けることがあります。
否定的ダブルバインド・肯定的ダブルバインドについて
ダブルバインドには、「否定的ダブルバインド」と「肯定的ダブルバインド」の2種類があります。どちらも受け手に2つのメッセージを提示しますが、与える影響はまったく異なります。
肯定的ダブルバインド
肯定的ダブルバインドは、受け手にとってメリットが大きい点が特徴です。
たとえば子供に対して「次の休日は遊園地と水族館どちらに行きたい?」と訪ねるのは肯定的ダブルバインドに該当します。休日に外出することは親にとってコントロールされていますが、子供にとってはどちらもうれしい選択肢が与えられます。選択肢のなかから好きなものを選べるため、子供側のメリットも大きいのです。
肯定的ダブルバインドは受け手の意思を尊重しながらも、行動をある程度コントロールできる手法といえます。
否定的ダブルバインド
一方、否定的ダブルバインドは、受け手側のデメリットが大きくなります。
たとえば上司に「何か問題が発生したら相談するように」と言われていたとします。もし問題が発生した際に相談しなかったら「なぜ相談しなかったんだ」と怒られることが予想されます。しかし、いざ相談しても「こんなことで相談するな」と怒られてしまう場合があります。このように、どの選択をしても受け手にデメリットが発生するのが否定的ダブルバインドです。
否定的ダブルバインドは受け手がどのような言動をしても否定されるため、混乱を招き、精神的なストレスが大きくかかります。
否定的ダブルバインドと肯定的ダブルバインドは受け手に与える影響が大きく異なります。特に注意しなければならないのは、自分で意識していなくても、否定的ダブルバインドを行ってしまっている場合があることです。相手に悪影響を与えないためにも、日々の言動を振り返る必要があります。
ダブルバインドの具体例
ダブルバインドは日常生活のあらゆる場面で発生する可能性があります。実際に、どのような発言がダブルバインドに該当するのかをみていきましょう。
子育てでみられるダブルバインド
子育てのシーンにおいてダブルバインドはよく発生します。
たとえば悪さをした子供に対して、大人はよく「怒らないから正直に話しなさい」と言います。しかし子供が正直に内容を話すと「なぜそんなことをしたのだ!」と怒ってしまうケースが少なくありません。これは典型的なダブルバインドといえます。
また子供が将来の選択をしなければならない際、「好きな道に進みなさい」と言っておきながら、心配から「その道は辞めなさい」などと否定することもダブルバインドに該当します。
家庭だけでなく、学校のなかでもダブルバインドは発生します。たとえば教師は生徒に対して「個性を大事にしなさい」と言いますが、1人だけ違う行動をしていると「周囲に合わせなさい」と指導されます。これも生徒にストレスを与えるダブルバインドとなります。
頻繁にダブルバインドを受ける子供は、自分の意見を毎回否定されるために、自己肯定感を育むことが難しくなります。それにともない自主性を持った行動もできなくなってしまうでしょう。加えて、いつも矛盾する言葉を投げかけられるため、親や教師の言葉を信頼できなくなる恐れもあります。
職場でみられるダブルバインド
職場においてもダブルバインドはしばしば発生します。
たとえば、「困ったことがあったら相談して」と言われたのに、相談したら「自分で考えろ」と言われてしまうのは典型的な例です。また「あなたにこの仕事は任せた」と言われたのにもかかわらず、いざ自分で仕事を進めていると「なぜ報告しないんだ」と怒られたり、進捗を監視されたりすることもダブルバインドに該当するでしょう。
このほか、ある上司の指示にしたがって仕事をしていたら、別の上司から「このやり方は違う」と板挟みになる場合もありますが、これも受け手にとってはダブルバインドです。
ダブルバインドをしている側には、自分の言動がダブルバインドになっているという自覚がないかもしれません。しかし受け手は矛盾した指令によって身動きがとれなくなってしまいます。上司から部下へのダブルバインドは、部下の生産性やパフォーマンスの低下、さらには精神的なストレスによる離職につながるリスクが高まる恐れがあります。
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ダブルバインドのメリット
ダブルバインドには次のメリットがあります。
- 選択肢を絞ることができる
- 自分がしてほしい行動を相手にとってもらえる
否定的ダブルバインドも肯定的ダブルバインドも、相手の言動がコントロールしやすい点が大きなメリットです。
特に肯定的ダブルバインドは、ビジネスのセールスにおいても用いられます。たとえば「もし弊社のサービスを導入するならばAとBどちらにしますか?」のような問いかけをすることで、顧客にサービスを導入したシーンを想像させることができます。また選択肢が絞られるために、顧客も比較検討がしやすくなり、結果として契約につなげやすくなるのです。
ダブルバインドは効果的に活用することで、自分にも相手にもメリットを与えられます。
ダブルバインドのデメリット
ダブルバインドには、主に受け側に次のデメリットがあります。
- 自由な言動ができなくなる
- 自信を喪失する
- 心身に不調が生じる
特に否定的ダブルバインドの場合、受け手はどの言動を選択しても否定されます。その結果、自分の言動に対して自信が持てず、自主的な行動ができなくなってしまうのです。日々ダブルバインドを受けるとストレスもたまり、心身の不調に陥る恐れもあります。
ダブルバインドは適切に活用しなければ深刻なデメリットを相手に与えるため、注意が必要です。
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ダブルバインドのかわし方
もしダブルバインドを受けた際にはどのように対処すればよいのでしょうか。ダブルバインドのかわし方として、以下の3つが挙げられます。
- 自分を否定しない
- 相手を観察する
- 相手との関係を断つ
それぞれ詳しく説明します。
自分を否定しない
ダブルバインドを受けたとしても、自分自身を否定しないことが重要です。ダブルバインドを受けると「自分が劣っているから怒られたのだ…」「自分に非があったのかもしれない…」など、自分を責めて落ち込んでしまいがちです。
しかしながら自己否定を繰り返してしまうと、さらにネガティブな思考回路となり、ダブルバインドの悪循環から抜け出せなくなってしまいます。最悪の場合、心身に不調が生じる恐れもあるでしょう。
相手にとっては自分のためを思っての言動かもしれませんが、自分が傷付いたことに違いはありません。まずは「自分は悲しい」「自分は怒っている」という感情を認識すると同時に、自分が悪いから傷付いたのではなく、ダブルバインドによって傷付いたのだと認識しましょう。
相手を観察する
ダブルバインドを受けた際には、相手の表情や言葉遣い、状況などをよく観察し、現状を正しく認識しましょう。
相手が意図的にダブルバインドをしているとは限りません。もしかしたら忙しく切羽詰まっていたために、ダブルバインドとなる発言をしてしまっている場合もあるでしょう。
相手の言動がダブルバインドであると認識し、さらに相手の状況を知ることで、精神的に余裕を持って相手と向き合うことができます。
相手との関係を断つ
深刻なダブルバインドによって悩まされている際は、相手との関係を断つことも選択肢の一つです。
職場であれば別の上司に相談して距離を置いたり、場合によっては転職をしたりという選択ができるでしょう。しかし、親子関係の場合は関係を断つことが難しい場合もあります。そのときには一人で悩まずに、公的な相談窓口に相談することがおすすめです。
自分ではダブルバインドを受けているのか判断ができない場合もあります。相手の対応によって精神的な負担を感じたときには、一度、第三者に相談してみましょう。
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ダブルバインドを活用する際のポイントとは?
ダブルバインドは適切に活用することで、受け手の円滑な意思決定を促すことができるコミュニケーション手法です。ダブルバインドを活用する際には、以下の3つのポイントをおさえましょう。
- 信頼関係が既に構築されている相手に活用する
- 厳選した選択肢を提示する
- ダブルバインドを多用しない
それぞれ詳しく説明します。
信頼関係が既に構築されている相手に活用する
ダブルバインドは基本的に、既に信頼関係が構築されている相手に対して行います。
ダブルバインドは、相手を脅している印象や、コントロールしている印象を与えてしまうものです。もし信頼関係が十分に築けていないままダブルバインドを行ってしまうと、不信感を抱かれてしまったり、過度に混乱させてしまったりする恐れがあります。
お互いのことをよく知り信頼関係を築いている状態において、ダブルバインドは正しく効果を発揮します。
厳選した選択肢を提示する
ダブルバインドを行う際には選択肢を厳選することが大切です。あまりにも選択肢が多いと、受け手はどれを選べばいいのか混乱してしまいます。選択肢は厳選し、さらに選択肢の間で矛盾が発生していないかを十分に確認しましょう。
ちなみに、自分が望む選択をしてもらうテクニックとして、「親近効果」というものがあります。親近効果とは、一番最後に出された選択肢が印象に残りやすいという心理テクニックです。特にセールスなどにおいて効果的に活用することで、自分が求める結果が得やすくなるでしょう。
しかしながら相手と良好な関係性を築くためには、ダブルバインドを行う際に選択を強要しないようにすることが大切です。たとえば「AとBのどちらにする?」という問いかけだけではなく、「あなたはどう思う?」と尋ねるなど、相手の意見を十分に尊重しましょう。
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ダブルバインドを多用しない
たとえ肯定的なダブルバインドであったとしても、多用は避けましょう。
肯定的ダブルバインドは相手に選択を求めるものです。常にダブルバインドを行ってしまうと、相手に優柔不断な印象を与えてしまいます。
またダブルバインドは、コントロールされているような印象を与えるため、不信感を抱かれる可能性もあります。相手の気持ちをよく考え、本当に必要な場面において活用しましょう。
ダブルバインドのメリット・デメリットを理解し上手に活用しよう
ダブルバインドの概要やメリット・デメリットについて解説しました。ダブルバインドは相手を管理しやすいというメリットがある一方、精神的なストレスをかけてしまう恐れもあります。よく理解し、適切に活用しましょう。
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