業務標準化とは?進め方や事例・メリットとデメリットを解説
業務に携わる従業員が増えると、担当者によって業務の成果に差が生まれかねません。業務の品質を一定に保つには、社内での業務標準化が重要です。本記事では、業務標準化とはどのような取り組みか、進め方から事例やメリット・デメリットまで解説します。
目次
業務標準化の目的とは?
業務標準化とは、作業方法を統一し、誰が作業する場合でも理解できるようにするための考え方です。
たとえば、新製品開発プロセスに業務標準化を導入する場合、アイデアの生成から製品の実装までの手順が明確になります。業務の詳細なフローチャートを作成し、参照可能なマニュアルが用意されれば、誰でもプロセスを追いやすくなります。
業務標準化の目的は、業務の効率化や品質の向上を図ることです。人によっては業務に向き不向きがあり、同じ業務内容でも得意な人と苦手な人が行う場合では、成果物の品質に違いが生じます。業務標準化を図ることで、誰が業務を遂行しても、一定の品質を保った成果物の作成ができます。
業務標準化の種類
業務標準化には、「タスクの標準化」と「業務フローの標準化」に大きく分けられます。ここでは、それぞれの特徴を詳しく解説します。
タスクの標準化
タスクの標準化とは、従業員によって作業内容や成果物に差が生じないように、どのような作業をおこなうか明確にすることです。特定の業務を誰が担当しても理解できるよう、マニュアルの共有や訓練を実施することで、成果物や業務の質を一定に保てるように調整します。
カスタマーサポートの対応マニュアルを例として挙げてみましょう。一つひとつの問い合わせに対する対応が明記されていれば、担当者に関わらず一貫した対応が可能です。その結果、タスクの標準化は業務の効率化と一貫性を保ち、全体の生産性が向上するでしょう。
業務フローの標準化
業務フローの標準化とは、普段特定の業務を担当する従業員が抜ても別の従業員がどのような流れで遂行すればよいのか速やかに理解できる状態です。
別の従業員が迅速に理解するためには、詳細で分かりやすい業務フローを作成し、組織全体で認識を統一して業務を進める必要があるでしょう。業務フローの標準化により、業務担当者が不在の場合も引き継ぎがスムーズになり、担当者が変更になっても、作業が止まることなく継続できます。
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業務標準化に取り組むメリット
業務標準化に取り組むことによって様々なメリットがあります。ここでは大きく4つに分けてメリットを紹介していきます。
品質向上・業務の効率化が見込める
業務標準化により、作業や成果物の品質向上や業務の効率化が見込めます。普段実施する作業の内容や手順が明確化されれば、適切な手順で効率的に業務を遂行できます。そのため、これまで生じていた業務の無駄や非効率な手順の削減が可能です。
業務の効率化ができれば、作業の漏れや作業担当者による品質の差をなくすことができ、業務の品質向上も期待できます。品質の高い成果物を納品すれば、顧客からの信頼度が高まるだけでなく、顧客満足度の向上による業績への好影響にもなるでしょう。
社員の負担を軽減する
業務が属人化している企業では、特定の業務が一定の社員に偏ってしまうケースが多くあります。作業量が偏ると負担の大きい従業員の作業が進まず、業務全体の遅れになり顧客からのクレームにつながることも考えられるでしょう。また、一部従業員の残業が続けば、ワークライフバランスに影響を及ぼし、従業員の離職につながる可能性も考えられます。
業務フローの標準化を行い作業内容を誰もが対応できるようにすれば、特定の従業員に作業量が偏るのを防ぎ、社員の負担を軽減できます。
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部署間の連携が活発になる
業務がマニュアル化され作業フローが明確になれば、誰がいつどのような業務を実施しているか、情報の集約がしやすくなります。
煩雑な業務においても、進捗状況を可視化することで部署間の連携や引き継ぎが円滑におこなえるほか、突発的なトラブル発生時にも迅速な対応が可能です。「自分は作業がわからないから誰かにやってもらおう」といった状況にはならず、ボトルネックがある場合は速やかに把握し、企業として生産性向上のための戦略立案もできます。
組織内でチーム同士が連携することで、職場内のコミュニケーションが円滑に進むため、従業員の定着率向上にもつながるでしょう。
定量的な分析が可能になる
特定の人にしか分からない属人化された業務は、フローが共有されておらず、定性分析で評価しなければならないケースが多くなります。
しかし業務が標準化されている場合、客観的な数字を基に定量的な分析での評価が可能です。目標が具体化されれば、属人化した作業の担当者がどのような業務を行っているのかが明確になります。
人事評価における評価基準も明確になるため、従業員と人事の両者が納得する環境を構築できるでしょう。
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業務標準化に取り組むデメリット
さまざまなメリットがある業務標準化ですがデメリットもあります。
モチベーションの低下
業務標準化では、これまで実施してきた作業をマニュアル化し作業の効率化が図れます。しかし、マニュアル化されることで誰でもできる標準化された作業は、創造性に欠けてしまい単純な作業に陥りやすくなります。
誰でもできる業務はマンネリ化しやすく従業員のモチベーション低下につながる可能性があるため、注意しなければなりません。
業務の種類によっては不向き
業務標準化は、高度な専門性が必要な業務を行う際には不向きな場合があります。専門的な知識やスキルが必要で難易度が高い業務は、誰でもできる作業への標準化が難しいためです。
また、業務の影響範囲が局所的な場合や、業務内容が変更になる頻度が多い作業も標準化による効果が低いため業務標準化には不向きといえるでしょう。
標準後の業務改善が困難
業務が標準化されると、ルーティンワークになるため、業務改善が困難になる場合があります。マニュアルに沿った業務を実施する組織では、従業員から「このようにすれば効率が良くなるのでは」などと自発的な改善案の提示が難しくなる傾向にあります。
マニュアル化された作業は作業の意図や目的が把握しづらいため、どのように改善すべきか、改善による業務への影響が可視化できないなどの理由から、業務改善が困難になる場合があるでしょう。
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業務標準化の取り組みの進め方
業務標準化は、以下の手順で進めていきます。
- 現状の把握・業務内容を洗い出す
- 標準化する業務を選定する
- マニュアルと業務フローを策定する
- 運用〜改善
1.現状の把握・業務内容を洗い出す
まずは、業務標準化するための現状把握や業務内容の洗い出しを行います。
職場の業務について、業務の目的や組織内での位置付け・他部署との関係性や顧客への影響など、業務の全体像を把握します。そして、業務の手順やフロー・顧客や別部署へ納品する成果物・成果物の保つべき品質などを具体的に洗い出しましょう。
この際、成果物の品質に差があることなど現状の課題や問題意識、今後の懸念点や不安な点も一緒に洗い出してください。業務マニュアルや手順書・業務フロー図などが手元にある場合は、活用して洗い出すのもおすすめです。
2.標準化する業務を選定する
現状の業務内容や課題について整理できたら、標準化すべき業務を選定します。初めからすべての業務を標準化するのではなく、洗い出した業務の情報や課題をもとに優先順位をつけて取り組むようにしましょう。
たとえば、属人化が著しい業務や担当者によって作業品質に差が生まれている業務、作業に無駄や時間が生じている業務などの優先度が高いといえます。最終的には、全業務の標準化が望ましいですが、成果の出やすい部分から改善することで成功体験につながるため、担当者のモチベーション向上にもつながるでしょう。
3.マニュアルと業務フローを策定する
標準化する業務の優先度を決めたら、業務に対するマニュアルと業務フローを策定していきます。
初めから完璧なマニュアルの作成を考えると挫折してしまうため、簡潔な業務フローを作成し徐々にブラッシュアップしてください。マニュアルや業務フローを策定する際は、職場のメンバーがすぐに参照でき、今後も手順の見直しが継続できる体制を整える必要があります。
業務の担当者が忙しい場合は、マニュアル作成の担当者を新たに設け、少しずつ時間を取りヒアリングしながらマニュアルと業務フローを完成させることをおすすめします。
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4.運用〜改善
標準化した手順を、マニュアルや業務フローで従業員に共有する体制を整えたら、実際のマニュアル運用方法を以下のような形で決めます。
新入社員や転入者への共有方法
- 誰が(マニュアル作成担当者など)
- いつ(研修時など)
- どのように(マニュアルの参照方法、更新の運用方法など)
マニュアルの更新方法
- 誰が(各部署の担当者が2週間交代で担当するなど)
- いつ(変更があれば随時更新、なければ半年に一度見直すルールを設けるなど)
- どのように(マニュアルの修正箇所を部署間でヒアリングし、反映させるなど)
また、運用を開始して終わりではなく、マニュアルを用いた業務の問題点や改善点を元に、マニュアルの内容をブラッシュアップしましょう。
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業務標準化の取り組みによる成功事例
業務標準化に実際に取り組み、生産性や品質を向上させた事例はいくつもあります。ここでは、2つ紹介するので今後業務標準化を取り組みたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
かなもり歯科クリニック
かなもり歯科クリニックは、クリニック全体で高品質な医療を提供するためのマニュアル整備が課題でした。
そこでマニュアル作成ツールを利用し、「治療の準備方法」や「事務処理」、「器具の活用方法」などのマニュアルを作成しています。また、撮影した画像を貼付し、業務フローの詳細を提示するなどの取り組みも行いました。
その結果、新人教育のコストを削減し、従業員の業務に対する理解を深めることに成功しました。また、産休取得後の非常勤従業員も復帰まえに遠隔でマニュアルを確認することで、円滑な復帰ができるようになりました。
経済産業省 大臣官房 会計課
経済産業省の大臣官房の会計課には、以下の課題がありました。
- 紙ベースでの手続きが主流であったため、無駄なコストが発生していた
- 同じ内容の書類を複数回提出する必要があり、官民双方に大きな負荷がかかっていた
上記課題を解決するために、みずほ総研株式会社と協力し、業務標準化プロジェクトを実施しました。
具体的には、紙で実施している作業の内容分析や各業務の業務量の試算・課題の抽出・業務標準化後の状況を明確化しています。その結果、どのようなシステムを活用すべきか、各業務をどのようなフローで実施するかを適切に策定できました。
▷業務効率化の成功事例10選!事例から学ぶ成功のコツや役立つツール
業務標準化におすすめのツール
本格的に業務標準化を行うには、ツールの利用がおすすめです。ここでは特におすすめのツールを5つ紹介します。
Ranabase
Ranabaseは、業務の流れを簡単に可視化できる業務標準化ツールです。業務の見える化や業務における課題や疑問点への気づき、改善点を洗い出し徐々に業務改善を行う機能が多数搭載されています。
また、業務標準化の目的に合わせた進め方とテンプレートが提供されているため、業務標準化をより効率的に行えます。30日間の無料期間が設けられているため、利用してから自社に適しているか確認できる点も魅力です。
提供元 | 株式会社ユニリタ |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
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機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
octpath
octpathは、BPMツールダウンロード数がトップクラスを誇る業務標準化ツールです。提供されたフローに従って作業を進めるだけで、業務のミス防止から作業状況の可視化まで行えます。
作業プロセスの自動開始機能・作業結果やデータの自動連携など業務標準化に必要な機能が搭載されているため、業務の生産性や品質の向上につなげられるでしょう。15日の無料期間があるため、無料期間に実際に利用し、自社に適しているか検討してみてください。
提供元 | 株式会社アクロリア |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
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機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
Teachme Biz
Teachme Bizは、マニュアル作成や共有から組織に根づく運用まで、誰でも簡単にできる業務標準化サービスです。マニュアルをステップ化できるほか、画像編集や動画からの画像切り取りなども簡単に行えるため、初めて業務標準化に取り組む企業でも安心して利用できます。
また、閲覧・検索ログなどの分析も可能で、業務の生産性向上や品質向上に活用可能です。
提供元 | 株式会社スタディスト |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
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機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
Questetra BPM Suite
Questetra BPM Suiteは、クラウド型の業務プロセス管理システムです。ループや分流といった複雑な構造を持つワークフローにおいても、マウス操作のみで簡単にシステム化できるため、業務標準化に慣れていない人におすすめです。
進捗管理やブラウザモデリングが行えるほか、OAuth2 APIにより外部システムからのデータ連携や設定連携にも対応しています。日時報告や稟議などさまざまな業務のテンプレートが豊富にあるため、業務効率化にもつながるでしょう。
提供元 | 株式会社クエステトラ |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | ■月次支払いプラン
■年次支払いプラン
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機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
Create! JobStation
Create! JobStationは、社内の定型業務を“いつでも、誰でも、同じように”遂行する業務標準化ツールです。ツールの導入により、業務全体の可視化や特定の人にしかわからない業務の属人化解消が可能です。
業務標準化に必要な一般的な機能が備わっているほか、APIによる外部システムとの連携も可能で拡張性の高い点が魅力です。1ヶ月間無料トライアルが設けられているため、実際に利用して導入の検討ができます。
提供元 | インフォテック株式会社 |
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
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機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
業務標準化とは生産性や品質を向上させる取り組み
業務標準化とは、生産性や品質を向上させる取り組みであり、企業における業務の生産性や品質に差が生じるのを防ぐ目的があります。とくに、属人化した業務は、担当者が抜けてしまうと作業が滞ってしまいます。そこで、業務標準化により作業全体の流れを可視化したりマニュアル制作を適切に行ったりすることで、誰が業務を遂行しても生産性や品質に差が生じないようにできます。
ただし、高度な専門性が必要な業務は、業務標準化すると逆効果になる可能性があるため注意が必要です。また本格的に業務標準化を行うには、ツールの導入がおすすめです。本記事を参考に成功事例なども確認し、社内の業務標準化に活かしてください。
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