デジタルヒューマンとは?メリット・デメリットや事例・作り方
少子高齢化により様々な業界が人材不足に悩まされている中、注目を集めているのがデジタルヒューマンです。人間と同じような接客や顧客対応ができ、企業の悩みを解決してくれると期待されています。この記事では、デジタルヒューマンを導入する上でのメリットやデメリット、導入事例を紹介していきます。
目次
デジタルヒューマンとは?
デジタルヒューマンは、人間そっくりの姿で、人間と同じような動きをする3Dアバターです。AIの会話機能を組み合わせたものが多く、顧客の質問に答えたり、情報提供をしたりといったやり取りができます。
問い合わせへの対応ではチャットボットが使用されているものの、人間らしさを持ち合わせたデジタルヒューマンは、チャットボットにはない温もりや感情を表現でき、声をかけるだけでコミュニケーションが可能です。
デジタルヒューマンのコミュニケーション方法
デジタルヒューマンには、コミュニケーションが一方向のタイプと双方向のタイプがあります。
商品紹介や情報提供など、会話をする必要のない場面で利用するなら、一方向のデジタルヒューマンがよいでしょう。
ECサイトの接客、商業施設の受付など、顧客の求めに応じた対応に適しているのは、双方向のコミュニケーションができるタイプです。
デジタルヒューマンが活用されるシーン
一方向のコミュニケーション・双方向のコミュニケーションの特性を活かし、デジタルヒューマンは次のような立場で幅広く活用されています。
- バーチャルモデル
- 受付スタッフ
- コンシェルジュ
- 車内の見守り
- ツアーガイド
- 接客
- 心臓病のコーチ
たとえばバーチャルモデルは、ブランドのコレクション情報の発信などに利用されています。ファッションリーダー的存在としてブランドの価値を伝える立場であれば、コミュニケーションが一方向でも十分に役割を果たせるでしょう。
受付や接客には、双方向のコミュニケーションが必要になります。活用シーンの最後に挙げた「心臓病のコーチ」も、そのひとつといえるでしょう。
心臓病患者にとって、自身の体の異変は生死にもかかわることです。とはいえ、異変があったとき、必ず医師が対応できるとは限りません。しかし、すぐに相談できるデジタルヒューマンがそばにいれば、安心です。親身に話を聞いてもらえれば、不安も払拭できるでしょう。
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デジタルヒューマンを導入するメリット
デジタルヒューマンの導入には、どのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つのメリットを紹介します。
人手不足を解消できる
少子高齢化が進む日本では、労働人口が減少を続け、社会全体が人手不足に陥っています。
そこで期待できるのが、デジタルヒューマンです。
企業の受付、ショップの問い合わせなど、人間でなくても対応できる部署にデジタルヒューマンを配置すれば、人手が不要になります。
また、人間の場合は休みも必要ですが、デジタルヒューマンは、24時間365日、休まずに働くことが可能です。もちろん、退職することもありません。総合的に見て、顧客満足度の向上にもつながるといえるでしょう。
教育の手間・費用を省ける
人材を採用する場合、育成には時間も費用もかかります。
しかし、デジタルヒューマンは、一から育成する必要がありません。AI機能により、必要な情報の自動アップデートも可能です。
人にかける育成の時間と費用が省けることは、デジタルヒューマンならではのメリットです。
多言語に対応できる
デジタルヒューマンは、多言語対応も可能です。
グローバル化が進む昨今、多言語に柔軟に対応できる環境を整えておくことにより、ビジネスチャンスの拡大につながります。この点も、デジタルヒューマン活用のメリットといえます。
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デジタルヒューマンを導入するデメリット
メリットがある一方で、デジタルヒューマンの導入にはデメリットもあります。主な2点を確認しておきましょう。
制作に一定のクオリティが求められる
デメリットのひとつは、デジタルヒューマンの制作には、一定のクオリティが求められることです。
デジタルヒューマンは、姿勢、表情などのすべてが人間と同じように動かさなければなりません。中途半端に人間に似せただけでは、アニメーションと変わらないだけでなく、不気味さや違和感につながることもあります。不気味さが顧客離れにつながる可能性も、否定できません。
最近は、デジタルヒューマンの制作ができるアプリなども開発されていますが、満足のいく仕上がりのためには、相応の知識や技術が必要です。この点はデメリットであると同時に、今後の開発課題といえるでしょう。
費用がかかる
2つ目のデメリットは、費用がかかることです。
デジタルヒューマンは新しい技術であり、動画、プログラミング、CGなどの幅広い知識も必要です。制作に対応できる企業も多くはないため、制作にかなり高額の費用がかかる点は、デメリットといえます。
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デジタルヒューマンの導入事例
デメリットがあるとはいえ、メリットを生かしてデジタルヒューマンを導入し、成果を上げている企業もあります。具体事例を見てみましょう。
【導入事例1】サザンクロス社
サザンクロス社は、ニュージーランドで健康保険業務を手がける企業です。
ヘルスケア分野では、共感や気遣いを重視したコミュニケーションが重要であるといわれています。その点を重視する同社は、常に人々の相談に乗れ、必要な情報を提供する存在としてデジタルヒューマンを設置しました。
目指したのは、さまざまな民族が暮らすニュージーランドにおいて、誰もが気軽に会話できる存在です。
このデジタルヒューマンは、知りたいことがあればいつでも相談でき、健康保険についてベストな判断をくだせるパートナーとして活躍しています。
【導入事例2】ノエル・リーミング・ニューマーケット
ノエル・リーミング・ニューマーケットは、ニュージーランド最大の家電小売り店を展開する企業です。同社は、その旗艦店にデジタルヒューマンを「社員として採用する」と発表しました。
目的は、顧客に店舗の最新情報を伝えたり、買い物の手伝いをしたりすることです。また、これまでにない新たな体験を顧客に提供することも目指しています。
さらに、デジタルヒューマンを通して顧客のニーズを調査し、販売の拡大を図ることも狙いのひとつです。
【導入事例3】UBS
スイス最大の銀行、UBSでは、同社のチーフエコノミストであるダニエル・カルトのデジタルヒューマンを導入しました。実在の人物に代わるデジタルヒューマンを設置するという試みです。
デジタルダニエルは、リアルダニエルに代わり24時間いつでも、複数の顧客と会うことができます。問い合わせに答えるだけであれば、チャットボットでも可能です。しかし同社は「会った」という実感が重要であるといいます。
デジタルダニエルは、UBSが持つ膨大な財務予測データにもアクセス可能です。結果、リアルダニエルと遜色なく、富裕顧客への対応も実現しています。
【導入事例4】Salasai
ファッション企業のSalasaiは、2020年秋冬コレクションのモデルとして、デジタルヒューマンを起用しました。モデルをこなすだけでなく、顧客と直接対話をしたり、ファッションについてアドバイスをするなど、ファッション界のインフルエンサーとなることも目指したといいます。
人間のファッションモデルの場合、いつでもどこにでも登場するというわけにはいきません。同社のデジタルヒューマンは、その点も補完し、顧客にとって身近な存在になることも目指しています。
【導入事例5】UBank
UBankはオーストラリアの大手オンライン銀行で、住宅ローンのアシスタントとしてデジタルヒューマンを設置しました。
顧客が、住宅ローンを組むという大きな決断をするには、専門家の細やかなサポートやケアが欠かせません。同社のデジタルヒューマンは、いつでも気軽に質問でき、最適な情報を提供する存在です。笑顔、性格ともに親しみやすいデザインで、24時間365日、顧客のサポートにあたるデジタルヒューマンは、オンライン銀行の認識を覆す存在としても、注目されています。
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デジタルヒューマンを導入し自社の成長につなげよう
まるで人間のような役割を果たすデジタルヒューマンは、まだ新しい技術です。しかし、そのメリットに着目して導入し、成果につなげる企業も現れました。
制作には、費用のほか知識や技術が必要というデメリットもありますが、アプリなどが開発され、ハードルは下がりつつあります。自社にとってメリットがあるのなら、思い切って導入を検討することも方法です。デジタルヒューマンを、自社の成長につなげていきましょう。
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