デジタルツインとは?注目される背景や活用メリットを簡単に解説!

記事更新日:2022/08/21

デジタル化

デジタルツイン

デジタルツインとはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。本記事では、デジタルツインが注目される背景や9つのメリット、デジタルツインを支える技術を紹介します。デジタルツインの活用事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

デジタルツインとは?

デジタルツインとは、IoTやAIなどの技術を活用して現実(フィジカル)空間の情報を取得し、仮想空間(サイバー空間)内に現実(フィジカル)空間の環境を双子(ツイン)のように再現した仮想モデルを指します。

デジタルツインは 2002 年に米ミシガン大学のマイケル・グリーブスによって広く提唱された概念であり、現実世界と対になる双子(ツイン)をデジタル空間上に構築し、モニタリングやシミュレーションを可能にする仕組みである。

[引用:総務省情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室(委託先:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)「デジタルツインの現状に関する調査研究の請負 成果報告書」]

シミュレーションとの違い

現実を模したデジタルツインによって、解析や予測、分析などシミュレーションをすることができます。

つまりデジタルツインはシミュレーション機能も内包しているため、デジタルツインとシミュレーションの違いを論ずることに大きな意味はありません。

もっとも、デジタルツインは一般的なシミュレーションに比べてシミュレーションモデルが現実とリンクするという点に違いがあります。

メタバースとの違い

デジタルツインとメタバースの違いは、仮想空間(サイバー空間)がある点では共通していますが、その空間が現実を模しているかどうかが異なります。

具体的には、現実を模したものがデジタルツインで、実際には存在しない空間を模したものがメタバースです。

なお、メタバースの具体例としてはMinecraft(マインクラフト)やFortnite(フォートナイト)、The Sandbox(サンドボックス)、ZEPETO(ゼペット)が挙げられます。

デジタルツインが注目される背景

デジタルツインが注目されている背景には、IoTやAI(人工知能)などの基盤技術が発達してきたことが挙げられます。そもそもデジタルツインは、IoTセンサーなどでフィジカル空間の情報を取得し、そのデータをもとに、AI(人工知能)がデータを分析するものです。

IoTやAIなどの基盤技術が発達したことでデジタルツインの活用が可能となり、業務効率化などさまざまなメリットを受けられるようになりました。従来は製造業を中心に活用されてきましたが、近年ではより広範な領域で活用され始めています。

DXにおいてデジタルツインは重要?

企業が求められている変革、デジタル・トランスフォーメーション(DX)においてもデジタルツインは有効です

実際、経済産業省が2022年4月8日に公表した「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」では、DX取組事例集としてデジタルツインを活用する事例が紹介されています。

これまで実施してきた机上検討やシミュレーション、広島工業大学と共同で開発予定のデジタルツイン技術も活用し、順次 DX 工場での実証実験を進めて行く予定だ。

[引用:経済産業省「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」]

紹介事例によると、作業のデジタル化を通じて一連のプロセスや人員配置、工程を最適に組み替えることを目指しているといいます。その分析において、デジタルツインの活用を見込んでいるようです。

デジタルツインを活用する9つのメリット

デジタルツインを活用するメリットは非常に多くありますが、ここでは次の9つを紹介します。

  1. 遠隔で監視や指示出しができるようになる
  2. 現場作業が効率化される
  3. スマート保安がしやすくなる
  4. 故障予測ができる
  5. 製品の不具合を特定し品質が向上する
  6. コストやリスクの削減につながる
  7. きめ細やかなアフターフォローができる
  8. スペースの制限を受けない
  9. コストや人員を最適化できる

(1)遠隔で監視や指示出しができるようになる

デジタルツインを活用すれば、遠隔地で監視をしたり、指示を出したりできるようになります。これまで現地への訪問が必要だった作業が不要となるため、効率化が可能です。

(2)現場作業が効率化される

デジタルツインを活用するメリットとしてよく挙げられるのが、現場作業の効率化です。工程を可視化できるのはもちろん、生産工程のプロセスを変更するのも、実際に機械設備を移動する手間やコストをかけることなくシミュレーションできます。

(3)スマート保安がしやすくなる

デジタルツインを活用すれば、スマート保安を実現しやすくなります。スマート保安とは、技術革新やデジタル化などに対応した産業保安に関する主体的・挑戦的な取り組みのことです。

巡視におけるドローンの活用や、IoT・AI による常時監視・異常検知など、新技術の開発・実証・導入に向けた先進的な取組を進める

[引用:経済産業省「スマート保安推進のための基本方針」]

上記はスマート保安推進の基本方針ですが、IoTやAIによる常時監視・異常検知と記されているとおり、まさにデジタルツイン技術の活用が求められていると言っても過言ではないでしょう。

(4)故障予測ができる

機械設備などにおいて、高精度な故障予測ができるのもデジタルツイン活用のメリットです。デジタルツインでは稼働中の設備に関するデータをリアルタイムに取得しているため、蓄積データと照らし合わせることなどによって、故障時期の予測ができます。

最適なタイミングで部品の交換を行うなどにより、ダウンタイムを最小限に抑えることができるでしょう。

(5)製品の不具合を特定し品質が向上する

デジタルツインは、製造工程だけでなく開発や設計、品質保証の分野でも役立ちます。具体的には、デジタルツインで取得したデータを適用しつつ、AIによるデータ解析その他の解析技術を用いることによって製品の不具合を早期に特定。

不具合への対策案もデジタルツインでシミュレーションを実行することにより、素早い開発や問題解決が可能です。

(6)コストやリスクの削減につながる

デジタルツインの活用により、コストやリスクの削減も可能です。例えば、製品の不具合を特定するだけでなく、対策案もデジタルツインでシミュレーションすることが可能であるのは先ほど紹介しました。

従来、対策案が有効かどうかの検証は、試作品を多数準備して行っていることが多かったはずです。しかしデジタルツインでは、試作品レスでその場でシミュレーションすることができます。

そのため、試作品を準備することにかかるコストや労力、そして作業上のリスクも抑えることができるでしょう。

(7)きめ細やかなアフターフォローができる

デジタルツインを活用すれば、きめ細やかなアフターフォローも可能になります。

具体的には、販売後の製品についてもセンサーから使用状況に関するデータを取得することで、それぞれのユーザーの不満などを的確に察知することが可能です。また、設備における故障予測と同様、故障の予兆を捉えることもできます。

(8)スペースの制限を受けない

デジタルツインは、サイバー空間でシミュレーションを実施します。そのため、フィジカル空間で問題となることのあるスペースの制限を受けない点がメリットです。

(9)コストや人員を最適化できる

デジタルツインでシミュレーションを行った結果をもとに、コストや人員を最適化することができます。仮に人員が過剰であれば人件費コストも過剰となってしまいますが、過小であっても計画通りに作業が進みません。

そこでデジタルツインを活用することにより、最適な人員数、あるいは人員配置を求めることができます。

デジタルツインに外せない5つの技術

デジタルツインに外せない技術、すなわちデジタルツインの基盤となっている5つの技術を紹介します。

  1. IoT
  2. CAEによるシミュレーション
  3. AI
  4. 5G
  5. AR・VR

(1)IoT

デジタルツインは、フィジカル空間のデータを取得しなければ構築できません。そのために必要な技術がIoTです。IoTはInternet of Thingsの略称であり、日本語では「モノのインターネット」と表現されています。

ここでいう「モノ」とはパソコンやスマートフォンだけでなく、例えば冷蔵庫やドアの鍵などさまざまなモノを指します。これらのモノがインターネットに接続する仕組みや概念がIoTです。

データ利活用において、IoT機器(デバイス)はデータの収集と送信を行う位置付けにあります。デジタルツインでもフィジカル空間のデータの収集と送信をしなければサイバー空間に双子(ツイン)を作ることはできません。したがって、IoTはデジタルツインに欠かせない技術です。

データ利活用の4段階
[出典:総務省「ICTスキル総合習得教材」]

(2)CAEによるシミュレーション

デジタルツインでは、CAEによるシミュレーションも大いに活用されています。そもそもCAE(Computer Aided Engineering)とは、仮想的に試作や試験を行う技術のことです。

デジタルツインでは試作品を作らずともシミュレーションができますが、まさにこのCAEが用いられています。

(3)AI

デジタルツインはIoTセンサーによってフィジカル空間のデータを取得した後、クラウドなどのサーバーに情報が集約されます。その後、蓄積されたデータを分析しますが、その分析に使われている技術がAI(人工知能)です。

統合されたデータは情報基盤において機械学習・人工知能等の解析技術によってモデル構築・データ処理がなされ、時系列変化の予測等に活用される。

[引用:総務省「デジタルツインの現状に関する調査研究の請負 成果報告書」]

AIはArtificial Intelligenceを略したもので、日本語では人工知能と表現されます。従来は収集したデータを人が分析することが一般的でしたが、近年ではAI(人工知能)によって分析するケースも増えてきました。

(4)5G

2020年3月から日本で商用開始された第5世代移動通信システム(5G)は、IoT時代のICT基盤、すなわちデジタルツインの基盤となることも期待されています。5Gは低遅延で超高速・大容量、多数同時接続が可能という革新性を持つ技術です。

(5)AR・VR

デジタルツインで分析やシミュレーションした結果は、ARやVRにフィードバックされることがあります。例えば、ARやVRによって、森林や湖などの自然環境体験を実現したり、体験型の教育を実現したりすることが想定されています。

  • VR:Virtual Realityの略称で、仮想空間にいるような没入感が体験できる技術のこと
  • AR:Augmented Realityの略称で、現実空間に画像等の情報を重ねて映し出し、目前の環境に情報を付加した体験ができる技術のこと

デジタルツインの活用事例

デジタルツインの事例を7つ紹介しますので、デジタルツインの活用を検討するうえでぜひお役立てください。

(1)富士通テレコムネットワークス

富士通テレコムネットワークスは、光中継システムや光伝送装置などのネットワーク機器を製造しています。栃木県小山市にある小山工場では、インテリジェントダッシュボードによって約150項目もの生産データを一元的に可視化。

生産や品質に関する情報だけでなく、エネルギーの監視も実施しています。異常発生時には要因を絞り込んで早期解決ができているとのことです。なお、2021年3月30日には小山工場内でローカル5Gのネットワーク運用を開始しました。

(2)ロボコム・アンド・エフエイコム

ロボコム・アンド・エフエイコムの南相馬工場は、次世代型モノづくりの基幹となる最先端のデジタルファクトリーとして設立されました。南相馬工場の特徴は次のとおりです。

  • 変種変量・短納期生産対応
  • ロボット活用全自動生産ライン
  • 製造計画シミュレーション技術
  • 統合EMSによる集中制御
  • 最先端ネットワークセキュリティ
  • エネルギーマネジメントシステム

生産システムのすべてがデジタル化されているため、変種変量の受注を短納期で生産することを可能としています。

(3)鹿島建設

鹿島建設は2020年5月11日、日本で初めて建物における企画・設計から施工、維持管理、運営までの全フェーズでBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)によるデジタルツインを実現したことを同社プレスリリースにて発表しました。

具体的には、企画・設計フェーズではビル風シミュレーションによる周辺環境への影響評価を、施工フェーズでは工事プロセスのデジタル化や進捗管理を実施。維持管理フェーズでは日常点検情報を集積して得られた知見を開発にフィードバックしているとのことです。

(4)富士通

富士通は、台湾で実施されている共創コンセプト「スマートダム」でもデジタルツインを活用しています。デジタルツインの対象となったのは、台湾の台中市にある湖山ダムです。

地形やダムの形状、水位のほか、上流河川情報やダム放出量水位などもリアルタイムで確認できる仕組みが開発されました。これにより水位の高精度予測が可能となり、災害対応に役立てることが可能です。

なお、このデジタルツインではドローンで上空から撮影した映像を5G通信によってリアルタイムに確認することもできます。

(5)シンガポール政府

シンガポール政府は、国家プロジェクトとして「バーチャルシンガポール」を推進しました。東京23区と同程度の国土を有するシンガポールですが、これをすべてデジタルで再現するという大きなスケールです。

シンガポールのデジタルツインは、フランスのダッソー・システムズ社が提供する「3DEXPERIENCity」システムを利用。都市計画をはじめ、行政や民間、研究機関に提供してさまざまな課題解決が期待されています。

(6)東京海上日動火災保険

東京海上日動火災保険は、Smart City(スマート・シティ) 実現に向けた地震や水災などの大規模災害予測を行うソリューションの提供に向け、NTTコミュニケーションズなどと協業を開始したことを2021年8月31日に発表しました。

デジタルツインでは、各社が保有するデータや災害予測モデルを連携して高精度の災害予測シミュレーションを行います。なお東京海上ホールディングスは、2019年11月に国立研究開発法人防災科学技術研究所と包括的連携協定の締結を発表していました。

(7)ダイキン

エアコンなど空調製品を手掛けるダイキン工業は、工場IoTプラットフォームと称してデジタルツインの活用を進めました。具体的には、工場内の全設備をネットワークでつなぎ情報収集を行うことはもちろん、日本と海外拠点の間でもリアルタイムで生産データの共有を実現しています。

デジタルツインを理解して最新のIT動向にキャッチアップ

デジタルツインは、IoTやAIなどの技術を活用して現実(フィジカル)空間の情報を取得し、仮想空間(サイバー空間)内に現実(フィジカル)空間の環境を双子(ツイン)のように再現した仮想モデルです。

企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進の面でもデジタルツインは活用できます。デジタルツインはIoTやAI、5Gなどの基盤技術の発展によりできることは増えていきますので、このようなIT動向のキャッチアップが必要です。

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