デジタル化のメリット・デメリットとは?解決できる課題や問題点について
昨今様々な企業がデジタル化への取り組みを強化しており、経済産業省をはじめとした省庁でも取り組みが進んできています。デジタル化は様々なメリットがあるように思えますが、逆にデメリットはあるのか気になる方も多いはずです。この記事ではデジタル化のメリット・デメリットを解説していきます。
監修者 福本大一 株式会社kubellパートナー アシスタント事業本部|ユニット長 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatwork株式会社(現:株式会社kubell)に入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。
目次
デジタル化とは?
一般にデジタル化とは、アナログデータをデジタルデータに変換することと考えられていますが、デジタル化には、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の、大きく分けて2つの意味があります。ここではこれらについて解説していきます。
デジタイゼーション
デジタイゼーションとは、アナログで行なってきた業務をデジタル化することを意味します。「デジタル化」と聞くと、多くの方はこのデジタイゼーションをイメージすることが多いでしょう。主としてデジタイゼーションは、業務の一部をデジタル化することで業務を効率化することを目的としています。
デジタライゼーション
デジタライゼーションは、個別の業務や製造プロセスをデジタル化させることを意味します。デジタイゼーションをさらに進化させたものをデジタライゼーションと位置付けています。デジタライゼーションは、各部署の業務改善や生産性の向上などに繋がります。
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デジタル化によって得られる11のメリット
デジタル化を実行することで、数々のメリットを得ることができます。ここでは11のメリットについて解説します。
- 企業競争力や顧客満足度を上げられる
- 業務効率化・生産性向上の実現
- リモートワーク等の多様な働き方に対応
- 面倒な手続きが簡素化される
- 災害など不測の事態に備えられる(事業継続性の確保)
- データの保管や共有がスムーズに行える
- 人手不足を緩和できる
- ペーパーレス化の推進につながる
- 売上・利益増加につながる
- 交通費や印刷代などのコスト削減
- 人材の流出を防ぐ・優秀な人材を採用しやすくする
(1)企業競争力や顧客満足度を上げられる
デジタル化を成功させることで、生産性と業務効率をアップすることができ、このことによって普段、生産や業務に追われていた従業員が、他の仕事へ注力することも可能となります。
業務にゆとりが生まれることで、新規開発などに向けた仕事に力を注ぐことができれば、企業競争力を向上させることにも繋がります。
(2)業務効率化・生産性向上の実現
業務のデジタル化を実現させることで、業務効率化や生産性の向上を図ることが可能です。例えば、人の手で行っていた作業をデジタル化することで、人的ミスの削減や作業の効率アップなどが見込めます。
また、製造部門にAI機能を搭載したロボットを導入することでルーティン的な業務を任せられるので、コア業務やクリエイティブ作業にリソースを割くことができ、人員削減や生産性向上に繋げることも可能です。
単純作業が少なくなってクリエイティブ作業が多くなると、従業員のやりがいアップや満足度向上も見込めるので、離職率の防止にもつながります。
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(3)リモートワーク等の多様な働き方に対応
デジタル化は多様な働き方の手助けもしてくれます。特に近年、リモートワークに注目が集まっています。リモートワークにデジタル化は欠かせません。
リモートワークを実現させるには、WEB会議などのコミュニケーションツールを導入し、紙の資料などをデジタル化する必要があります。それゆえにデジタル化の環境を整える必要性が生じます。
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(4)面倒な手続きが簡素化される
経費精算や契約書の作成、様々な書類の登録などをデジタル化することで、手続きを簡素化することができます。今まで、紙ベースで行っていた作業をパソコンで行うことで効率が上がり、管理もスムーズに行えます。
オンライン上で書類の提出ができれば、そのために出社することも不要になり、従業員の余計な負担の削減が可能です。
(5)災害など不測の事態に備えられる(事業継続性の確保)
デジタル化を進めることによって災害や不測の事態に備えるBCP対策にも直結します。データをデジタル化してクラウド上で保管ができれば、例え拠点が被災しても大切なデータは保護されます。
また、クラウドはセキュリティー面もしっかりと保証されているため、デジタル化はBCP対策にも有効といえるでしょう。
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(6)データの保管や共有がスムーズに行える
文書などをデジタル化することで、データをパソコンなどに保管することや情報共有が可能となります。さらに社外から社内のシステムへのアクセスが可能となれば、テレワークなども実施でき、働き方の多様化にも繋がります。
働き方の選択肢が多くなるほど遠方の優秀な人材も確保しやすくなり、会社全体の生産性向上も見込めるでしょう。
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(7)人手不足を緩和できる
労働人口の減少が問題となっている日本ですが、あらゆる業界で人手不足が深刻です。例えば業務を効率化させるツールの導入でデジタル化を実現できれば、人手不足の緩和に繋がります。
また、製造現場においては、AI機能を搭載したロボットを導入することなどで生産性の向上を期待することもできます。このようにデジタル化は人手不足の緩和に寄与する有効的な方法といえるでしょう。
(8)ペーパーレス化の推進につながる
デジタル化することで、今まで紙ベースで保管していた文書などをパソコンやクラウド上で保存できるようになります。デジタル化はペーパーレス化にも繋がるのです。
また、ペーパーレス化することで、テレワークなどの多様な働き方も可能となり、相乗効果を得られます。
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(9)売上・利益増加につながる
デジタル化は売上・利益の増加にも繋がります。例えば、顧客の購買履歴データを一元管理できるデジタルツールを導入し、来店動向や購入単価などの情報を把握することで、最適なタイミングで販促活動を行うことで効率をアップし、売上を上げる基盤を構築することもできます。
(10)交通費や印刷代などのコスト削減
デジタルツールの導入でWEB会議を実施できれば、出張などの移動を減らすことが可能となり、交通費の削減が見込めます。また、会議で必要になる書類をパソコン上で共有すれば印刷代の削減にもつながります
ペーパーレス化への取り組みを公式HPなどで発信すれば、周囲に取り組みの宣伝ができてさらなる相乗効果も生まれるようになります。
(11)人材の流出を防ぐ・優秀な人材を採用しやすくする
近年、働き方改革に注目が集まっているように、働きやすい環境を整備することで、優秀な人材を集められることが期待できます。そのような環境を実現させるために、デジタル化は必須といえるでしょう。
デジタル化によって、テレワークをはじめとする働き方改革や、仕事がしやすい職場環境を実現できれば、従業員のエンゲージメントも高まることが予想されます。デジタル化は、人材の流出を防ぎ、優秀な人材を確保するための鍵であるといっても過言ではないでしょう。
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デジタル化する際の5つのデメリット
メリットばかりのデジタル化にも、デメリットはあります。ここではデジタル化のデメリットについて5点解説します。
- システム導入によるコストが発生する
- セキュリティ面のリスクが不安
- システム障害等のトラブル発生の可能性がある
- 専門的なIT人材が必要
- 導入時に検討項目が多く時間がかかる
(1)システム導入によるコストが発生する
デジタル化のためには、ツールの購入や、導入・ランニングコストなどの費用が発生します。デジタル化は成功した時のメリットが大きい分、初期投資などのコストが必要となることも念頭に置いて、導入の検討を行いましょう。
少しでもコストを抑えたいと考えている場合には、システムごとの費用を算出して自社の予算に適したシステムを見つけましょう。
費用を割り出す場合には、定額料金だけではなくて人数が増えた際の追加費用やオプション料金なども合わせてチェックしておくようにしましょう。
(2)セキュリティ面のリスクが不安
ここで、日本政策金融公庫 総合研究所が2021年に公表した「中小企業に求められるサイバー セキュリティ対策の強化」の内容を見てみましょう。
同研究所が実施したインターネットアンケートによると、自社のセキュリティ対策が遅れていると認識する中小企業は「遅れている」「やや遅れている」を合わせて5割を超えています。
デジタル化には、セキュリティ面のリスクが生じます。顧客情報や企業の機密情報など外部に流出してしまうと、社にとって大きな損失となり、時には大問題に発展してしまうこともあります。
デジタル化を行うにあたって、セキュリティを強化するための対策はもちろん、セキュリティに関する従業員教育も徹底しなければなりません。
(3)システム障害等のトラブル発生の可能性がある
デジタル化をする際には、システム障害などのトラブルが起きる可能性があることも認識しておく必要があります。
トラブルが発生したとき、データにアクセスできずに作業が滞ったり、製造が停止するなどの問題に直面することもあるかもしれません。万が一の時のために、データをバックアップしたりマニュアルを作成しておくなどの対策を、事前に考案しておきましょう。
(4)専門的なIT人材が必要
デジタル化を成功させるには専門的なIT人材が必要です。社内の業務を改善するためにITツールを導入しても、現場で利用されなければ「宝の持ち腐れ」状態といえます。
そういった状態を避けるべく、デジタル化を進める際には専門的なIT知識を持つIT人材の存在が不可欠です。デジタル化を進める際は、現場でツールを使用し、定着させるIT人材の登用が求められます。
▷デジタル人材とは?必要なスキル・担う役割・育成や採用のポイントを解説
(5)導入時に検討項目が多く時間がかかる
デジタル化を導入するためには、さまざまな検討項目があり時間がかかります。また、デジタル化にはITツールなどを導入するためのコストも発生しますが、この点を想定しておかなければ、デジタル化することのメリットを見出せない可能性もあります。
自社にとって、デジタル化がメリットとなるのかを吟味する必要があります。この点は、デジタル化を実施する前にしっかりと検討しましょう。
[出典:日本政策金融公庫 総合研究所「中小企業に求められるサイバー セキュリティ対策の強化」]
▷デジタル化を推進する方法と成功させるためのポイントを徹底解説
デジタル化で解決できる課題事例
デジタル化を実行することで解決できる課題は多くあります。今回はその事例を5つ挙げるので、ぜひ参考にしてください。
稟議書等の決裁にスピード感がない
稟議書や申請書など関係部署の決裁が遅く、仕事が滞る場合があります。書類の決裁をデジタル化することで、オンライン上で処理ができ、迅速な業務に繋がります。デジタル化によって、文書の処理業務は大きく効率アップするでしょう。
メールでのやり取りが多くて面倒・時間がかかる
メールでのやりとりは時間がかかるものです。ある程度、形式を整えて送信するメールは簡単にコミュニケーションを取るツールとしては向いていないといえるでしょう。
チャットツールを導入すれば、気軽にコミュニケーションを取ることができます。チャットの特性として、会話をするように短文でやり取りすることを強みとしているため、やり取りの手軽さや時間短縮のためにはチャットツールの利用がおすすめです。
交通費や印刷代などの小さなコストが積み上がっている
交通費や印刷代などのコスト削減もデジタル化で解決することが可能です。
例えば、営業担当者が交渉のために遠方へ出張したり、東京本社で行う定例会など負担が大きな交通費や、会議用の紙ベースの資料を用意するための印刷費や用紙代など、小さなコストも積み上がって大きな額になるものです。
Web会議システムやオンライン商談ツールの導入で、移動にかかる交通費や会議・商談に必要な紙の資料と印刷費をコストカットします。さらに、移動や準備に要する時間も不要となるなど、メリットは少なくありません。
手書きのタイムカードによる勤怠管理が限界
紙ベースや手書きのタイムカードは、管理が手間で書き間違いなどが起きる懸念もありますが、勤怠管理システムを導入することで、管理が楽になります。デジタル化することで、PC上やタブレット上からの勤怠管理も可能となり、テレワークを実施する際も重宝します。
ハンコを押すためだけにわざわざ出社している
リモートワークが推奨されたときに問題となったのが、従業員がハンコを押すためだけに出社する「ハンコ出社」です。この課題もデジタル化を行い、社外から社内のシステムに連携できるようにすることで簡単に解決することができます。
電子印鑑ツールを利用することでハンコの押印や決済が必要な書類はオンライン上で全て管理することができるようになるため、外出先で書類を確認し、決済できるようになります。
▷デジタル化の事例15選!ビジネスシーンや身近な例から学ぶ成功の鍵とは
デジタル化を進める際の取り組みのポイント
デジタル化を成功させるためのポイントをしっかりとおさえないといけません。ここではデジタル化成功の秘訣を5つ解説します。
経営層を巻き込んだチームを作る
デジタル化を進めるには経営層を巻き込んだチームの結成が早道になります。その理由としては、デジタル化を実行するにあたっては大きなコストがかかるため、経営層の判断が必要だからです。
また、デジタル化することでの業務負担などへの懸念から、従業員の反発は多少なりとも起きるものです。それを抑制させる意味合いでも経営層の力を期待できるメンバー構成は理想です。
デジタル化の目的を明確にする
デジタル化を進めるにあたって目的を明確にすることが大切です。例えば、デジタル化のシステムを導入することで、目先の業務改善に留まらず、業務改善を行うことができます。
例えば、人手不足の解消、職場環境を良好にする、そして優秀な人材を取り込むといったものが上げられるでしょう。つまり、先を見据えた目的を持つことで、より大きなメリットを見出せるのです。
現在の課題を確認した上でツールを選ぶ
デジタル化は、現在の課題を確認した上でツールを選ぶ必要があります。「時代の流れだから」とコストをかけて何となくデジタル化をしても、課題をしっかりと把握できていなければ、意味のない取り組みとなってしまいかねません。
例えば、社員の離職率を下げるために、多様な働き方ができるデジタル化を推進する場合は、チャットツールやWeb会議システムを導入してテレワークを実施するなど、課題と目的を明確にしたうえでデジタル化を進めていきましょう。
▷【最新】ビジネスで活用すべきおすすめデジタルツール10選!
ロードマップを作成する
デジタル化にはロードマップが必要です。ツールを導入したからと言って、すぐに解決するわけではありません。
具体的にどのようにデジタル技術を活用していくのか、現場でしっかりと利用されているか、どれだけ効果がでているか、作業が定着しているかなどの流れをしっかりと押さえて進めましょう。
ロードマップの目標は、デジタル技術の利用を定着させ、メリットを見出し続けることにあるのです。
従業員の使いやすさを重要視する
デジタル技術を利用するのは現場の従業員なので、導入する際は第一に従業員の使いやすさを重視しましょう。導入したにも関わらず利用されなければ意味がなく、費用だけがかかってしまうリスクを招きます。
操作画面が見にくくないか・操作性が複雑ではないか・利用しない機能が多く搭載されていないかなど、基本的な部分からチェックしておくようにしましょう。
実際に利用してみたいとの声がある場合には、無料トライアル期間があるサービスを利用してみるのも効果的です。トライアル期間を通じて使いやすければそのまま導入、使いづらい場合には他のサービスを試すなどミスマッチのないサービスを導入できます
デジタル化が進まない原因
デジタル化を進めようと思っても簡単に進むものではなく、進める上で取り組みを阻む様々な要因があります。ここでは進められない原因について紹介していくのでチェックしてみてくださいね。
デジタル化を促進する人材を確保できない
デジタル化を進める上では取り組みへの熱意だけで進めるのは難しく、知見やスキルがある人が必須であり、デジタル化を促進する人材を確保できないのが問題となっております。
市場全体でみてもデジタル人材の人口は少なく、会社間で取り合いになってしまうため、体制作りからハードルが高くなってしまっているのが現状です。スムーズに進めるためにも、まずはデジタル人材を確保して体制を整えておくようにしましょう。
▷デジタル社会に必要な人材と組織とは?現状と実現に向けた課題を解説
会社全体でデジタル化の重要性を感じられていない
経営層や幹部、全社的にデジタル化の重要性に気づいていない場合は協力が得られにくく、デジタル化を進めるのが難しくなります。
デジタル化を進める上ではシステム導入のためのコストがかかり、社内での協力がないとそもそもシステム化が進みません。また、仮に導入できたとしてもともに協力してくれる人材がいないと促進は難しくなるでしょう。
既存のシステムややり方から脱却できない
設立から歴史のある企業の場合、アナログ的な手法が社内に浸透しており、わざわざ費用をかけてデジタル化に移行することをよく思わないケースも多いです。
慣れ親しんだ方法からの移行ができず、様々なシステムを導入したとしても中々浸透せずに形骸化してしまうリスクも考えられます。費用ばかりがかさんでしまい、導入が無駄になってしまうので社内のニーズ調査や周知を入念に実施しておきましょう。
メリット・デメリットを把握してデジタル化の推進へ
今回はデジタル化に当たってのメリット・デメリットを解説しました。デジタル化には、たくさんのメリットがあり、これからの時代、デジタル化なしで企業が生き残ることは難しいといっても過言ではないでしょう。
デジタル化のメリットとデメリットを把握した上で、自社にあったデジタル技術を導入することが大切です。社会や企業、そして働く人のより良い未来のために生まれたデジタル化。この恩恵を十分に受けることができるデジタルツールをぜひ探してみましょう。
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