集団浅慮(グループシンク)とは?具体例・原因・対策をわかりやすく解説

最終更新日時:2023/06/21

ダイバーシティ

集団浅慮(グループシンク)とは

会社のミーティングや会議で、意見が偏ってしまうといった経験はないでしょうか。それは、集団浅慮(グループシンク)と呼ばれる現象が原因で起こっているかもしれません。本記事では、集団浅慮(グループシンク)とは何か、具体例から原因や対策までをわかりやすく解説します。

集団浅慮(グループシンク)とは?

グループシンクとは、特定のテーマに対して組織内の合意形成を図る際、批判的な意見やリスク評価が欠如した状態に陥り、誤った結論を導き出すことを指します。

合意形成を急ぎすぎると、幅広い視点から状況を判断することが難しくなり、集団にとって不合理な決定に至る可能性が高まります。

また、グループシンクが発生すると、自分たちが下した決定に過度な自信を持つようになり、外部からの情報や不都合な情報を無視する傾向が高まるので、注意してください。

仮にグループシンクが進んだ状態で、「自分たちの出した結論が間違っていた」と認識しても、打てる対策は限られており、組織の立て直しに多大な時間を必要とします。

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日本は集団浅慮(グループシンク)に陥りやすい?

日本人だけが他国と比べて、グループシンクに陥りやすいわけではありません。同調圧力が世界で最も強いと指摘する声もありますが、否定的な見解を示す調査結果が発表されています。

アメリカ人の心理学者ソロモン・アッシュは、用意した7人のサクラが間違った回答をしても、2つの図を比べて同じ長さの線を被験者が選択し続けられるかといった実験を行いました。

実験によると周囲と同調せず正しい選択をできたアメリカ人は27%でした。一方、日本人に対しても複数の大学で調査を行いましたが、調査結果はアメリカ人とほぼ変わらない26%でした。つまり、約7割以上のアメリカ人と日本人が、間違った回答をしたことになります。

上記の実験結果をみると日本人だけでなく、アメリカ人も周囲を意識して行動していることがわかりました。また、2017年に国立青少年教育振興機構が実施した調査結果を見ると、日本人が諸外国と比べて、特別同調圧力が強いわけではない実態を把握できます。

日本・アメリカ・中国・韓国の高校生を対象にそれぞれ700〜1,600人規模で、友人への同調に関して調査を実施しました。下記の表は、「友達に合わせていないと心配になる」との質問内容に対し、「そうだ」と「まあそうだ」の肯定的な回答をした方の割合になります。

全体男子女子
日本35.536.334.8
アメリカ55.449.560.9
中国31.930.533.3
韓国25.126.523.6

日本が世界で最も同調圧力の強い国であれば、この質問に対し肯定的な反応を示す高校生が他の3カ国と比べ、突出して多くなるはずでしょう。ですが、最も数値が高かったのはアメリカでした。

日本は中国をやや上回る数値を残しましたが、それほど大きな差はありません。「アメリカは個人主義が強い国で、他人に無関心」、「日本は集団主義が強い国で、同調圧力が強い」とのパブリックイメージを覆す結果となりました。

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集団浅慮(グループシンク)の代表的な症状

グループシンクに陥った場合の症状を下記にまとめました。組織やチームがグループシンクに陥ると、下した結論へ固執する傾向が強くなり、周囲からのアドバイスや注意を聞き入れなくなります。

また、自分たちの弱みや競合の存在など、リスク要因を過小評価する傾向が強い一方、自分たちの強みや特徴を過大評価する傾向にあります。

<グループシンクが発生した場合の代表的な症状>

  • 自分たちは正しい方向に進んでいると思い込み、極端な楽観主義や幻想を抱く
  • 道徳や倫理を無視する
  • 周囲からの意見やアドバイスを無視する
  • リスク要因を過小評価する
  • 自分たちの強みや特徴を過大評価する
  • 自分たちにとって都合の悪い意見や情報を遮断する
  • 批判的な意見を出そうとする存在に圧力を掛ける
  • 過半数の反対意見が出ても全員一致だと思い込む

集団浅慮(グループシンク)が起きる原因

グループシンクが発生する原因としては、以下の5つが考えられます。

  • 集団に固執する
  • 一部の人物の権力が強い
  • 集団に過度なストレスがかかっている
  • 外部と隔絶されている
  • 損得感情が介入する

一つひとつ内容をみていきましょう。

集団に固執する

チームや組織の集団凝集性が高まると、多様性が生まれにくくなり、自分たちの意見に固執しやすくなります。集団凝集性は同じチームに所属するメンバー同士の団結度合いを指し、組織への帰属意識を高める要因の一つです。

生産性向上や離職率低下といったメリットが望める一方、グループシンクに陥りやすい点がデメリットとして挙げられます。集団凝集性の高いチームは集団規模が小さく、新しいメンバーが入りにくいため、多様性が生まれにくい組織形態となります。

外部からの意見・情報・価値観を排除する傾向も強く、客観的に見て誤った結論を下していたとしても、自分たちが出した結論に絶対的な信頼を置いており、早期の軌道修正ができません。

一部の人物の権力が強い

優れたリーダーシップを持つリーダーは周囲の人間を引っ張り、組織の合意形成をスムーズに進める貴重な存在です。しかし、リーダーの権力が大きすぎると、反対意見を言いにくくなり、組織内から多様性が消失します。

リーダーの独断的な考えや決断に周囲が振り回され、組織として誤った方向に進んでいる場合でも、立て直しができません。また、専門家の意見を反映する意識が強すぎると、自分たちで考える意識が低くなり、組織としての価値が低下します。

集団に過度なストレスがかかっている

組織の内外部から強いストレスが掛かっている場合、グループシンクに陥りやすくなります。ノルマ達成やトラブルへ対処する時間が限られている場合、組織内での合意形成=最優先事項となるため、結論の中身に関して十分に吟味されません。

多様な視点からの意見やリスク評価が抜け落ちやすく、組織が間違った方向に進む可能性が高くなります。また、大きなストレスを抱えたメンバーが意思決定の場に参加した場合、プレッシャーから解放されるため、意思決定を急ぐ傾向が高くなります。

外部と隔絶されている

集団凝集性の高いチームは、長い時間を共有してきたメンバーと数多くの成功体験を積み重ねているケースも多く、自分たちで出した結論に自信を持っています。

仲間意識が強くなるほど「自分たちのチームは絶対的」との思い込みが生まれやすく、外部の存在を軽視し、意見や忠告を遮断する傾向にあります。また、外部とのかかわりが薄い仕事内容の場合、他社と情報交換をする機会が乏しく、視野が狭くなりがちです。

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損得感情が介入する

意思決定によって利害関係が発生する場合、合意形成の場に参加したメンバーが自身にとって多くの利益が得られるよう、利己的な立場に立った意見を出しても不思議ではありません。

損得勘定を重視したメンバーが多く集まるほど、自分自身にとって有益をもたらすかどうかが重視されるため、合意内容自体の検討や吟味が甘くなります。組織にとって有益をもたらすかどうかは重視されないため、組織全体が間違った方向に進む可能性が高くなるのです。

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集団浅慮(グループシンク)を避ける対策

グループシンクを回避する対策は主に5つあります。

リーダーの意識を改善する

影響力の強いリーダーは、組織内の多様性を消失させるリスクも秘めているため、サポート役に徹するのも一つの方法です。リーダーシップを発揮して周囲を引っ張るのではなく、メンバーを支える意識への転換を図ります。

メンバー間のコミュニケーションが活性化し、様々な視点から意見が出るよう、常に中立的な立場を取るよう心掛けてください。

意見しやすい環境を用意する

メンバー同士の積極的なコミュニケーションを引き出すためには、互いに異なる視点での意見が出ても受け入れる姿勢が重要です。自分の出した意見がメンバーから否定されたり、批判を受けたりすると、次から発言をしにくくなります。

気持ちよく意見交換ができるよう、自分と異なる価値観に基づいた意見が出たとしても、発言したメンバーを尊重する気持ちを持つことが大切です。

グループを小さく分ける

参加メンバーを6人程度の小さなグループに分け、意見交換を行う方法も一つの選択肢です。大人数での議論と違い、一人ひとり発言できる場を確保できる点が特徴です。

また、基本的に自由な形でコミュニケーションを交わしていくため、新たなアイデアや幅広い視点での意見が生まれやすい点もメリットとして挙げられます。参加者の積極性を引き出すためにも、相手の意見を否定しない雰囲気作りが重要になります。

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外部の意見を取り入れる

外部との接触機会が少なく、閉鎖的な集団はグループシンクに陥りやすい傾向にあります。視野の拡大や多様な価値観を持つためには、外部からの意見を柔軟に受け入れられる体制作りが重要です。

異なる属性や価値観を持つ外部の人間と接触を図り、積極的にコミュニケーションを取りましょう。

反対意見にも耳を傾ける

グループシンクを防ぐためには、批判的な意見を聞き入れることも重要です。結論に至った点に見落としがなかったか、正確なリスク評価ができていたかなど、結論内容を振り返る上で、反対意見は判断材料として活用できます。

ただし、反対意見を発言するには勇気が必要です。メンバーに過度な負担をかけないためにも、意見交換を始める前に反対意見を述べる役を決めておくと、プレッシャーや不安を軽減できます。

集団浅慮(グループシンク)の事例

グループシンクの代表的な事例として、アメリカで起きた2つの事件を紹介します。

一人ひとりのメンバーが優れた能力を持っていても、組織内外からの圧力・ストレス・プレッシャーが掛かると、組織全体で間違った方向に進むことを表した事件になります。

ピッグス湾事件

1961年に発生したピッグス湾事件は、グループシンクによって発生した代表的な事例とされています。

ピッグス湾事件は当時のアメリカ大統領J.F.ケネディが、キューバのカストロ政権を打倒し、アメリカが思いのまま操れる政権の復興に向け、キューバのピッグス湾侵攻に踏み切った作戦です。

ピッグス湾侵攻は、ケネディが就任する前に大統領を務めていたアイゼンハワーが、CIAと秘密裏に計画していた軍事作戦です。作戦計画立案の場には、CIA長官・諜報機関の高官・共産圏の事情に詳しい専門家など、様々なメンバーが集まっていました。

ですが、ピッグス湾侵攻は、キューバから亡命した反革命傭兵わずか2000人に強く依存しており、航空支援や補給体制にも不安要素を抱えていました。集まったメンバーからは、反対意見やリスク管理についての意見がいくつも挙げられます。

ですが、グループシンクによる内部圧力や情報遮断が発生し、次第に反対意見を言えない環境が構築されます。参加メンバーにCIAや権威ある専門家が多く在籍していた影響もあり、ケネディ大統領が出席する会議の場では、肯定的な意見ばかりが飛び交いました。

周囲からの後押しを受けて、ピッグス湾侵攻を決断したケネディ大統領でしたが、作戦は大失敗に終わります。不安視されていた航空支援や補給体制が機能せず、バックアップ対策も立てられていなかったため、キューバ軍に上陸部隊が包囲される結果となりました。

作戦が失敗に終わった結果、キューバは自立に向けた動きを加速させ、キューバ危機や東西冷戦の緊張が高まる自体に発展しました。

チャレンジャー号爆発事故

1986年に発生したNASAのスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故も、グループシンクが原因で発生した事故だと考えられています。チャレンジャー号の打ち上げ失敗事故は、極度のプレッシャーやストレスがメンバーに掛かっていた点が原因です。

当時、チャレンジャー号の打ち上げプロジェクトではトラブルが続いており、打ち上げ延期となった場合は、予算縮小や計画の見直しが検討されていました。焦ったメンバーは、スペースシャトルを構成するOリングでの不具合を把握していたにもかかわらず、打ち上げを強行します。

NASAには、問題解決に向けて関係者全員で議論するとの基本ルールがあったにもかかわらず、成果を優先するため、リスクに関する意見交換を十分行いませんでした。打ち上げを強行した結果、発射直後に大爆発が発生し、乗組員7人が亡くなっています。

集団浅慮(グループシンク)とは集団心理により非合理な選択をしてしまう状態

グループシンクは、集団凝集性の高い組織や一部のリーダーに権力が集中する場合に多く発生します。どんなに優れた人材を集めた組織だったとしても、多くのプレッシャーやストレスが掛かった場合、間違った結論を出してしまう場合があります。

グループシンクが起きると、自分たちが出した結論に過度な自信を抱き、外部からの意見を聞き入れません。また、リスクを過小評価する傾向にあり、自分たちにとって都合の悪い情報から目を背けます。

仮に内部から批判的な意見が出たとしても圧力を掛けて封じるため、現実を直視した時点では軌道修正が困難な状態に陥っています。グループシンクが起きないよう、今回挙げた対策方法を参考に、多様性に富んだ組織作りを目指してください。

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