フューチャーセッションとは?ダイバーシティ実現への効果や実施方法
現代社会では問題の複雑化により、ひとつの視点での考え方では課題の解決が難しくなっています。そのため、フューチャーセッションのような話し合いの場が重要です。本記事では、フューチャーセッションとはどのような目的があるのか、効果や実施方法と合わせて解説します。
目次
フューチャーセッションとは?
フューチャーセッションは特定の社会問題に対し、参加者がこれまでの仕事や人生で培ってきた知識を交わし合い、新たなアイデアや価値創出を目指していく話し合いのことです。スウェーデンのレイフ・エドビンソン氏によって、提唱されたものです。
従来のような話し合いでは、自身の専門領域を超えた意見が出る機会が少なく、意見の幅が拡がらないため、議論が手詰まりになるケースが散見されていました。こうした現状を打破するためにも、フューチャーセッションへ取り組む企業や自治体が増えてきています。
なお、フューチャーセッションのポイントは、「共創」と「未来志向」です。
共創
「共創」では、普段の生活では関わらない業種や組織に所属している人たちと信頼関係を築き、特定の社会問題解決に向けアイデアや意見交換を行います。
主催者側には議論が活性化するよう、企業・自治体・教育機関など、様々なコミュニティに所属している人を参加者として招くことが求められます。
未来志向
「未来志向」に関しては、視点を未来に置きながら現在を考察するスタンスを取る点が特徴です。
通常、過去や現在で得た経験から未来について語るケースが一般的ですが、過去の経験則に基づく意見が多くなるため、既存の社会モデルを超える画期的なアイデアは出にくくなります。
なお、より柔軟な視点からの提案や協調行動の活性化につながるように、フューチャーセッションでは物事の視点は未来を軸に置かれています。
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フューチャーセッションとダイバーシティの実現
フューチャーセッションは特定の社会問題解決に向け、新たな価値観やアイデアを出すために実施される話し合いであり、ダイバーシティを実現するための方法の一つだと言えます。
ダイバーシティは人種・性別・国籍など、個人間で異なる属性の多様性を認め合う社会文化のことを指します。
英語での意味合いでは、宗教的・性的マイノリティの救済といった意味で、ダイバーシティが使われてきました。しかし、近年は人材や働き方の多様化など、ビジネス用語として使用される頻度が増加しています。
労働人口の不足・グローバル化への対応・価値観の多様化などによって、組織内の多様性や新たな企業価値創造が求められているため、ビジネスの場においてダイバーシティへの注目度が高まっています。
ダイバーシティは、デモグラフィー・タスク・オピニオン型の3種類に分類できます(下表参照)。一人ひとりの内面的・外見的多様性の違いを互いに認め合う企業文化を育成しない限り、ダイバーシティを実現できません。
表:各ダイバーシティの比較
デモグラフィー型 | タスク型 | オピニオン型 | |
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概要 |
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実例 |
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メリット |
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デメリット |
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フューチャーセッションがもたらす効果
日常生活では関われない人同士を参加者として効率的に集められるのが、フューチャーセッションの一番のメリットです。多様な立場にある人々を集め、様々なアイデアや意見を交わすことで、参加者は新たな知見や価値観を発見できます。
また、フューチャーセッションに参加しているのは、社会問題に関心がある人が多いため、積極性や自発性が見込まれる点も大きな特徴です。
さらに、参加者同士で信頼関係が構築されれば、地域活性化や少子高齢化対策など、特定の社会問題解決に向けた新たな協調行動の活発化が期待できます。
フューチャーセッションが人々の日常生活で身近な存在になれば、より良い社会に向けた動きの増加が期待できます。
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フューチャーセッションのやり方
フューチャーセッションを実施する場合、以下の手順で開催に向けた準備を進めていきます。
- テーマを設定する
- 参加者を集める
- 関係性を構築する
- アウトプットを行う
順番に内容をみていきましょう。
テーマを設定する
まずはテーマを設定し、どのような話し合いをするのか決めた後に論点である「軸」を定めることが重要です。
例えば、女性のキャリアアップ支援をテーマにする場合、企業へ求める改善事項を話し合うのか、社会インフラ改善について話し合うのかで、議論の方向性が異なってきます。
また、良いテーマの条件としては、フレッシュ・ポジティブ・オープンなど、議論の時間が楽しくなる要素が入っているテーマが、望ましいとされています。
<良いトークテーマの条件>
- 問題の当事者が熱意や積極性を持っている
- 多様な立場の人を参加者として招き入れられる
- 今までに考える機会が少なく、フレッシュさがある
- 考える時間が楽しくなるポジティブさがある
- 幅広い知識や考えを生みやすいオープンさがある
- 議論の範囲が明確化されている
参加者を集める
活発な意見交換につなげるためにも、多種多様なコミュニティに所属している人を選出しましょう。
例えば、今後の働き方に関するテーマで話し合う場合、会社員・公務員・フリーランスなど、立場や働き方への価値観が異なる人々の参加が重要になります。
幅広い視点からの意見交換が期待でき、現在の労働環境の問題や改善点が浮き彫りになります。
関係性を構築する
参加者同士の緊張感緩和や関係性強化に向け、一人ひとりが意見を主張しやすい環境作りが重要です。参加者同士が自然にコミュニケーションを図るためには、少人数でのディスカッション形式で、議論を進めていくスタイルが推奨されます。
参加者へ「意見をしっかりと聴いてもらえる」「話しやすい」と安心感を与えることで、スムーズなコミュニケーションや参加者同士の信頼関係構築へつなげられます。
アウトプットを行う
フューチャーセッションで交わした意見やアイデアを仮説の段階に留めるのではなく、すぐに活動内容に反映してアプトプットすることも重要です。スピード感を持って対応することで、アイデアが具現化するだけでなく、議論中の集中力も高まります。
ビジネスでは新商品・新サービスを開発する際、簡単な試作品を作り、フィードバックで得た内容を修正作業に反映するプロトタイピングが、多くの企業で採用されています。プロトタイピングは改善点や欠陥を早期に発見でき、実現性を高められる点が特徴です。
フューチャーセッションの場でも同様に、アウトプットをすぐに行うことで、新たなアイデアの創出や課題の早期発見につなげられます。
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フューチャーセッションとは問題解決に向けた話し合いの場
フューチャーセッションは、女性のキャリアアップ・企業の人材多様化・自由な働き方の実現など、特定の社会問題解決に向けて実施する話し合いです。様々な立場にある多様な参加者を招き、幅広い視点での意見交換や斬新なアイデアの提示が期待されています。
フューチャーセッションは、社会や組織の多様化を目指すダイバーシティ実現に向けての重要な方法の一つです。特に企業内における人材の多様化を目指すためには、内面的・外面的な違いを認め合う企業文化の形成が不可欠です。
従業員同士の信頼関係を構築する手段として、フューチャーセッションへの注目が集まりつつあり、日本でも少しずつ認知度が高まっています。これからフューチャーセッションを開催する場合には、今回の記事で挙げた方法を参考に準備を進めてみてください。
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