MAツールのトラッキングの仕組みやCookieの役割について解説
MA(マーケティングオートメーション)ツールの「トラッキング」とは、web上での個人の動きを追跡することです。ただし、個人情報保護の観点から規制があるという問題点もあるので注意しなければなりません。この記事では、MAツールのトラッキングの仕組みやCookieの役割、規制・注意点について解説します。
目次
MAツールのトラッキング機能の仕組みとCookieの役割
MAツールを使用する際には、トラッキング機能における「Cookie」の役割について理解を深めておくことが大切です。近年のビジネスシーンでは、高いITリテラシーに加え、個人情報利用について細心の注意を払うことが求められています。
また、そもそもCookieとは何か、MAツールにおいてCookieはどのような役割を持っているのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。ここではまず、MAツールが持つトラッキング機能について解説し、Cookieが果たす重要な役割をご紹介します。
(1)トラッキング機能とはweb上での個人の動きを追跡すること
MAツールの活用により、webサイトやSNS、メール開封などの点において個人の行動を追跡することが可能です。そして、こうした追跡機能をビジネスに活かしていくことがマーケティング施策の効果を最大化するために重要になります。
この追跡機能のことを、トラッキング機能といいます。リードがどのようなページに興味を持っているのか細かくチェックできるのが大きなポイントです。高機能なMAツールでは、複数のサイトにまたがってユーザーの行動を解析することが可能です。
(2)MAツールのトラッキングの仕組み
では、そもそもMAツールはどのような仕組みによってユーザー一人ひとりの行動を具体的に追跡できるのでしょうか。これには「Cookie」が密接に関係してきます。
Cookieの具体的な特徴については後述しますが、MAツールでは、Cookieを利用することで個人のトラッキングが可能です。
(3)Cookieの役割・種類について
Cookieは、MAツールにおいて見込み顧客の既存リストとトラッキングデータを紐付ける際に活用されます。
そもそもCookieって何?簡単な仕組みを解説
Cookieとは、簡単にいうとwebサイト訪問時に一時的に保管される訪問履歴・ログのようなものです。どこのページを閲覧したのかという履歴、ログインの際に必要なIDやパスワードなどの個人情報なども、Cookieによって一時的にブラウザや端末に保管されています。
MAツールは、もともと作成してあるリードのリストをチェックし、トラッキング情報と紐づけを行います。これにより、誰がどのページに関心を示しているのかわかる仕組みです。
また、Cookieには2種類あります。ここからは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
#1: 1st Party Cookie
主にwebサイトのアクセス履歴、ページの閲覧履歴などを保管するのが「1st Party Cookie」です。わかりやすい例として、ログイン情報やネットショッピングにおけるカートに入れた商品の情報が挙げられます。
以前利用したサイトを訪れたときすぐにログインできたり、カートに入れたまま買っていない商品がそのままになっていたりするのは、Cookieによって情報が残っているためです。
#2: 3rd Party Cookie
第三者から発行されるという特徴があるのが「3rd Party Cookie」です。主にプロバイダーが個人のサイト・メディアのアクセス情報を集め、そこから一人ひとりの興味関心を解析していくのが大きな特徴です。
ネット広告の多くは、自分の興味・関心に合わせた内容のものが表示されるようになっています。これは、3rd Party Cookieが活用されているためです。
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MAツールで個人解析が必要な理由
MAツールでは、トラッキング機能を利用して一人ひとりのユーザーの行動や興味・関心を深堀りしていくことが重要です。ここからは、個人解析の必要性・重要性について具体的にご紹介します。
(1)見込み顧客の自社サービスへの関心度を測るため
最も重要なのは、自社商品やサービスにユーザーがどれだけ関心を持っているのか的確に測れる点です。
Cookieを活用したトラッキング機能では、商品やサービスのページの訪問履歴を細かく確認できます。一人のユーザーが特定のサービスを頻繁にチェックしている場合、関心度が非常に高いといえるでしょう。
こうしたリードとしての温度感の高さは購入につながる動機として非常に重要なので、営業の優先度が高くなるのです。
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(2)見込み顧客のニーズを見極めるため
トラッキング機能によって一人ひとりのページ閲覧履歴がわかれば、それに応じてニーズも明らかになってきます。
どれだけ細かく販促や営業の戦略を立てたとしても、戦略通りに進まないことも少なくありません。商品・サービスを提供する側が判断するユーザーのニーズと、ユーザー側が考えるニーズにはズレが生じることも珍しくないためです。
そこで、個人のニーズ解析を行うことにより、誤った認識で営業活動を進めてしまうリスクを防げます。ニーズのズレを遂次修正し、ときには商品開発や改善に活かしながら利益の最大化を目指せることが、MAツールによる個人解析の重要性です。
MAツールでCookieの活用を増やす方法
ここからは、Cookieの活用を最大化するために、Cookieの取得を増やすためのMAツールでできる施策を解説します。具体的には以下のような施策があります。
- メールマガジンの登録
- 展示会といったイベントでリストを獲得
- パラメータ付きのリンクを送信
- MAツールでお問い合わせフォームを作成
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
(1)メールマガジンの登録
自社サービスや商品のPRを行うために発行するメールマガジンでは、登録のためのフォームに入力を行ってもらえれば、その時点からトラッキングが可能です。
例えば、アンケート調査フォームの場合、入力しなければならない内容が多いため時間と手間がかかるため離脱されてしまい、数を集められないことも少なくありません。
そのため、登録を促すのであれば、メールアドレスを入れるのみで完結する、あるいは最低限の情報しか取得しないメルマガ登録フォーム、資料ダウンロードフォームなどが望ましいといえるでしょう。
(2)イベントでリストを獲得
展示会やフェアなどのイベントでは、多くの企業と名刺交換を行うタイミングがあります。そこで、獲得した名刺を顧客リストとして活用し、まずはお礼や挨拶のメールを送ることで接点を作ることが可能です。
その際に、メール内にて自社サービスや商品のリンクへの誘導を行うことでCookieを取得し、トラッキングを可能にします。
(3)パラメータ付きリンクの送信
名刺交換で接点ができた顧客に対して自社サービスへの誘導を行う場合、アクセス解析につなげるためのURLパラメータを設定してリンクを送信するのが一般的です。
URLパラメータ(パラメータ付きURL・リンク)は、どこからアクセスしたのかという流入経路が把握できるのが大きな特徴です。お礼メールやメールマガジンなどでURLパラメータを送れば、メールを通じてサービスや商品に興味を持ってくれているかどうかがわかるため、見込み顧客の関心度や効果の高い集客チャネルがより詳しく把握できるようになる仕組みです。
(4)連動したお問い合わせフォームを利用
お問い合わせフォームから解析につなげる方法も重要です。MAツールでは解析に連動したお問い合わせフォームを作成できます。そして、問い合わせが送信されることにより、ユーザーのトラッキングが可能となる仕組みです。
なお、問い合わせフォームを作成する際にも、入力の必須項目はできるだけ少なめに設定したほうが効果的です。メルマガ登録フォームと同様に、少ない情報で問い合わせ送信できるほうが気軽なので、ユーザーの入力を促しやすくなるためです。
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Cookieを用いたMAツールのトラッキング機能の問題点
MAツールでは、Cookieを活用した個人のトラッキングが可能なので非常に便利です。ただし、一方で問題点があることも指摘されています。なぜなら、Cookieの情報は個人情報に関係する可能性があり、プライバシー保護の観点で問題があるためです。
ここからは、現在指摘されている問題点を解説します。
(1)サードパーティCookieの利用には規制がある
個人の興味に合わせて配信される仕組みを持つ3rd Party Cookieですが、利用には規制が存在します。Cookie情報についてはさまざまな意見や見方があり、世界の一部の地域では、Cookieはほぼ個人を特定できる情報と同じものと扱われることもあるのです。
そのため、プライバシー保護の観点から、3rd Party Cookieの利用には近年さまざまな規制が敷かれてきているのが現状です。
有名な例として2017年、Apple社がユーザーのプライバシーを侵害しないための対策として、ブラウザ内における個人の行動データの収集の規制を行っています。
(2)サードパーティCookieは2022年までにGoogle上で廃止予定
Google社でも、3rd Party Cookieの利用には規制がかかると発表。GoogleのブラウザであるChromeでは、3rd Party Cookieのサポートは2022年までに廃止されるとされています。
したがって今後、新たなトラッキング手法を見いだすこと、それに順応することが喫緊の課題だといえるでしょう。各企業は個人情報の扱いについて、コンプライアンス違反にならないようさまざまな対策を講じ、適切なマーケティング手法を実践していかなければなりません。
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MAツールのトラッキングを利用する場合の注意点
MAツールでトラッキング機能を活用して個人の行動データをチェックし、それらを営業や販促活動に活かしていくためには、コンプライアンス違反にならないよう注意が必要です。
利便性の高い機能やサービスは、活用方法やガイドラインを間違えると、多くのリスクが伴います。そこで、以下の点について対策が必要です。
- 各種法令に注意する
- 利用用途を明らかにしておく
- セキュリティ体制を強化する
ここからは、それぞれについて重要な点を解説します。
(1)個人情報保護法・特定電子メール法を遵守する
MAツールでは、Cookieという個人情報に近いデリケートな情報を扱います。そのため、個人情報保護法、特定電子メール法などに抵触しないよう、法令遵守を徹底していかなければなりません。
個人情報保護法は、民間団体が個人情報を扱ううえで注意しなければならない点をまとめた法律です。各事業者は、適切な個人情報の保管方法、利用目的などを定め、情報流出が起こらないように注意を払っていく必要があります。
特定電子メール法は、主に迷惑メールを規制するために制定された法律です。MA(マーケティングオートメーション)においては、メルマガやお礼メールを配信するにあたって、迷惑メールに該当するような内容を送信しないように十分注意しなければなりません。
また、オプトインの導入やオプトアウトの設置について、また違反した際の罰則についても定められているので必ずメール配信の際はチェックが必要です。
(2)個人情報の利用目的を明記する
コンプライアンス遵守のためには、個人情報の利用目的・用途をわかりやすく明示しておくことが欠かせません。この点は上記の個人情報保護法でも定められており、個人を特定できる情報を収集してビジネスを行う場合は、「どのように個人情報を使うのか」を明確にしておくことが重要です。
そこで、webサイトに必須なのが、「プライバシーポリシー」です。個人情報の利用目的を明らかにし、ユーザーにはプライバシーポリシーを読んで承認した上で、情報送信を行ってもらわなければなりません。
(3)セキュリティを堅固にする
近年、さまざまな場所で個人情報が扱われ、ビジネスに活用されています。そのため、情報流出のリスクの芽があらゆるところに潜んでいるといっても過言ではありません。
MAツールにおいても例外ではなく、万が一MAツールで扱う顧客情報が流出してしまえば、企業にとって重大な信用問題に発展し、損失やイメージ毀損、訴訟問題につながりかねないのです。
そこで、MAツールでトラッキング機能を活用していく際には、セキュリティ体制を強化することが重要です。ツールへログインするためのIDやパスワードの情報は細心の注意を払って管理しなければなりません。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年頃からはリモート環境で業務を行う機会が急増しました。別端末・別ネットワークからのシステムログインにはセキュリティリスクが伴うため、誰がいつログインしたのかなどのログ管理やデバイス管理は徹底して行うことが重要です。
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MAツールにおけるCookieの役割を理解して活用しよう
Cookieによる個人解析は、商品やサービスの関心度や顧客一人ひとりのニーズをチェックする際に大きく役立ちます。MAツールのトラッキング機能を活用することにより、各ビジネスにおける利益の最大化・営業や販促業務の効率化につなげることが可能です。
しかし、Cookieの利用には課題もあり、プライバシー保護の観点から問題視されている部分があることは否定できません。また今後は、Cookieの利用が制限・廃止していく流れになるので、新たなトラッキング手法も常に考慮しておくべきでしょう。
個人情報とセキュリティへの意識をより高め、効率的なMAツールの活用を行っていくことをおすすめします。
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