マネジメントとコントロールの違いとは?それぞれの定義と求められるスキル
マネジメントとコントロールは日本語に置き換えるとどちらも「管理」という意味を含む言葉です。しかし、ビジネスにおいてそれぞれの言葉の意味合いは大きく異なるのです。この記事ではマネジメントとコントロールの定義や目的、違いを解説。また、現状日本でマネジメントが求められる理由や、必要なスキルを紹介します。
目次
マネジメントの定義
マネジメント(management)という言葉を直訳すると「管理」や「経営」を指す言葉です。
もともとは経営学者P.F.ドラッカーの「マネジメント」という書籍で記された、「組織に成果をあげさせるための道具・機能・機関」という定義が解釈され、広まりました。
現在のビジネスシーンには、「組織の成果獲得・拡大を目的とし、達成のために目標を立てて経営資源や資産、リスクなどを運営・管理する手法」という意味合いです。
マネジメント業務を担当するマネージャーも、ドラッカーによる定義では「組織の成果に責任を持つ者」とされています。なお、マネージャーには以下のような役割があります。
- 目標設定
- 計画の立案
- 戦略の策定
- 経営資源(ヒト・モノ・カネ)の配分
- リスク管理
- 組織全体やチームの評価 など
マネジメントの目的
マネジメントの目的は、端的に言うと「組織の成果を上げること」であり、その内訳は「目標に沿った組織運営」といえます。経営資源を効率的に運営し、組織の発展を促して、最終的に目標を達成することを目指しています。
特徴的なのが、マネジメントでは、とくに「ヒト」の能力向上を推進する点です。もっとも管理が難しいといわれる「ヒト」の能力を最大限に引き出し、部下が能力を発揮できる環境を整えることで、組織全体の生産性向上を目指すのです。
組織におけるマネジメントの種類
マネジメントはマネージャーの果たす役割・担当する組織の規模によって3つの種類に分けられます。それぞれ見ていきましょう。
1.トップマネジメント
トップマネジメントとは最高経営者や経営陣のことを指す言葉です。会長・社長・副社長・常務・専務・各組織の執行役員等が当てはまります。
トップマネジメントは組織全体をカバーします。具体的には、組織の方向性や経営理念の決定、体制構築、ステークスホルダーとの関係維持、組織全体のリスクマネジメントなどがトップマネジメントの役割です。
2.ミドルマネジメント
ミドルマネジメントとはいわゆる中間管理職、支店長・工場長・部長・課長・係長等のことをいいます。
ミドルマネジメントは、文字通り中間に位置する立場として、トップマネジメントと、次に紹介するローアーマネジメントに対して果たす役割があります。
トップマネジメントに対してはサポート。ローアーマネジメントに対しては適切に組織の運営方針や指示・命令、戦略的判断を伝達し、指揮監督します。またローアーマネジメントの意見をトップマネジメントに伝えるのもミドルマネジメントの役割です。
経営陣と現場をむすぶ役割を果たすため、組織が大きくなればなるほど重要な立場となります。
3.ローアーマネジメント
ローアーマネジメントは別名監督者層ともいわれ、係長・主任・現場のリーダーなどが該当します。
ミドルマネジメントによる情報共有や指導を受け、方針や戦略的判断を現場の業務遂行に反映させ、必要な指揮監督をする役割です。トップマネジメントの目的を達成する実働部隊ともいえるでしょう。
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コントロールとは?
コントロール(control)もまた、英語を直訳すると「管理」を指す言葉です。一般的にさまざまな場面において、主に以下の2つの意味のどちらかとして用いられます。
- 目的の状態を作るために統制・加減・調節すること
- 制御すること、こちらの意図するように動かすこと
前者はマネジメントとも類似した意味を持ちますが、後者は「押さえつける」「支配する」といったネガティブな印象を与える場合もあります。このこともあり、コントロールはとりわけ人材のマネジメントにおいて使用されてはいません。
マネジメントとコントロールの違いとは?
マネジメントとコントロールは「管理する」という意味において共通する点もあります。コントロールの表す「統制・加減・調整する」という能力はマネジメントにおいて必要な要素に1つです。
しかし、組織におけるマネジメントは、単に管理のみならず、「相手の意思を尊重し、自己成長をサポートする」といった意味を内包している点でコントロールと異なります。
マネジメントにおいてコントロールという言葉を用いるのは、支配的なネガティブイメージを含んでしまうリスクがある点も注意が必要です。
日本でマネジメントが求められている理由
日本でマネジメントが求められているのは、企業における今後の持続的な発展に、「ヒト」に着目した管理体制が不可欠であるためです。
日本の組織管理体制は従来年功序列制の縦の関係からなっており、コントロールする管理が十分機能していた時代もありました。
しかし、ITの進展、グローバル化、少子高齢化など、企業の置かれている環境は変化を続けてきました。労働人口を確保すべく非正規雇用の従業員が増え、競争力の維持・向上のため多様な働き方の受容推進が推奨されています。
こうした変化の波の中、働く人々の価値観も変容し、新たな管理手法が必要になったのです。
マネジメントは、価値観の異なる従業員が、組織の成果の最大化という同じ目的を目指すために注目されることとなった管理手法なのです。
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マネジメントに必要なスキル
マネジメントに必要なスキルとして、主に以下の4つが挙げられます。
- 目標・意思決定スキル
- コミュニケーションスキル
- スケジュール管理スキル
- 課題解決スキル
それぞれのスキルの特徴や身につけるメリット、身につけていない場合のリスクを解説します。
目標・意思決定スキル
目標・意思決定スキルとは、組織の目標や取り組みの方向性を決定するスキルです。
マネジメントでは、目標設定や意思決定の必要な場面が多くあります。さまざまな意見が飛び交う中で、それらを取りまとめ、あらゆる側面から判断し、決定しなければなりません。
目標・意思決定スキルが高いと組織に明確な方向性を示せます。全員で同じ方向を向いて業務に取り組めるため、成果の最大化に寄与するでしょう。目標・意思決定ができないと、部下の間で不安や不信感が生まれ、組織の統率力が弱まるリスクがあります。
コミュニケーションスキル
周囲と良好な人間関係を築くコミュニケーションスキルは、組織運営に欠かせません。
マネジメントの現場では、部下の意見を聞き出したり、組織の目標に向けて意識の統率を図ったり、自分の考えを的確に伝えたりと、対話の必要な場面が多くあります。コミュニケーションスキルが低いと、部下に情報格差が生まれたり、統率が図れなかったりと、組織がうまく機能しなくなる恐れがあるでしょう。
しかし、コミュニケーションスキルが高ければ、相手との信頼関係を構築でき、意見の抽出や交換しやすくなります。日常から円滑なコミュニケーションを心がけていると、部下は報告・連絡・相談をしやすく、情報を遅滞なく得られるので安心して仕事ができます。組織の意識の統率もしやすく、円滑な運営ができるでしょう。
スケジュール管理スキル
組織目標の達成や成果向上につながるように業務スケジュールをコントロールするスケジュール管理スキルもマネージャーには重要です。
マネージャーは、組織の状況を把握しながらプロジェクトを予定通りに進めなければなりません。
スケジュール管理スキルが高ければ、タスクにかかる時間を正確に見積もれます。また、やるべきことを把握し優先順位をつけられるため、無理のない計画を立て、業務をスムーズに進められるでしょう。
スケジュール管理スキルの低さがもたらすリスクは、プロジェクトにおいて甚大です。「進捗管理が甘く納期を守れない」「タスクの処理漏れが起きる」といったことが頻発し、致命的なミスを起こしかねません。
課題解決スキル
課題解決スキルとは、ビジネス上の課題や問題を分析し、適切なアクションが取れる能力を指します。課題を解決するには、物事を客観的な視点で見ながらロジカルに考え、根拠のある指示を出すことが重要です。的確な指示を出せれば周囲からの信頼感を得やすく、円滑な組織運営に貢献します。
課題解決スキルが身についていないと、組織内の課題の発見が遅れたり、解決策を見つけ出すのに時間がかかったりといったリスクがあります。解決が遅れることで業績にも影響を及ぼす可能性があるでしょう。的を射ていない指示が続くと、周囲からの不信感が大きくなり、チームの人間関係が悪化することも考えられます。
▷マネジメント能力がない上司の特徴|職場への影響や対策・末路
コントロールとの違いを理解しマネジメントスキルを向上させよう
マネジメントが単なる管理ではなく、相手の自主性を尊重して成果への自発的な行動を促すことに対し、コントロールには「統制・加減・調節」のほかに「制御」という支配的とも取れる意味があります。そのため、コントロールは現在の人材マネジメントの現場にはそぐわない言葉です。
マネジメントは目まぐるしく変化し、多様な働き方の従業員が集まる現代の企業において必要不可欠な管理手法です。「ヒト」の成長を促すマネジメントスキルを高め、組織の成果の最大化に貢献しましょう。
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