タイムマネジメントとは?具体例ややり方・優先順位の付け方を解説
ビジネスに大きな変化をもたらす働き方改革。残業時間の削減によって、限られた時間で成果をあげることが求められています。こうした状況を受け、企業では業務効率化の実現に向けた、さまざまな取り組みが進められています。本記事では、業務効率化に役立つタイムマネジメントについて、具体例や導入の手順をみていきましょう。
目次
タイムマネジメントとは?
タイムマネジメントは、限られた時間をうまく活用し、生産性を上げることを意味します。
組織や個人が掲げた目標達成のためには、時間の使い方を改善してタスクを効率よくこなすスキルが求められます。ビジネスにおけるタイムマネジメントとは、時間単位での生産性を向上させることが目的です。
これまでビジネスシーンでは、「スケジュール管理」という言葉が多用されていました。
スケジュール管理は、自身で「今日の○時から1時間○の仕事をこなす」などと決め、予定を滞りなくこなすことを目的としています。一方タイムマネジメントは、時間の制約の中で生産性を向上させるための手法です。時間を最大限に有効活用するため、行動や思考をマネジメントしていくものといえるでしょう。
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タイムマネジメントの目的
タイムマネジメントの主な目的は、組織や個人が成果を上げるために、仕事へ注力できるようにすることです。
仕事で結果を残すには、自身の仕事をコントロールする、タイムマネジメントスキルが求められます。タイムマネジメントが適切に行えている場合、業務に振り回されることもないため、タスクを順調にこなすことが可能です。その結果、仕事の成果にもつなげられるでしょう。
また、タイムマネジメントを取り入れることで、労働時間の是正にもつながります。ただし、単に労働時間を減らすためではなく、限られた時間のなかで集中するべき業務を選択し、それを遂行していくことが重要です。
タイムマネジメントが必要とされる理由
タイムマネジメントが必要とされる大きな理由は、以下の2つが挙げられます。
- 働き方の変化に適応するため
- 労働人口の減少
現代では、テレワークの導入が進んだことにより、働き方に変化が起きています。とくに、テレワークの場合はプライベートと仕事の区別がつきにくく、適切な時間管理ができないと生産性が低下するリスクがあるのです。
このような変化に適応していくためにも、タイムマネジメントが重要な要素となります。
もう一つの理由は、少子高齢化による労働人口の減少です。数年前と比較すると、従業員の数が減り、1人あたりの業務量が増加している企業も増えています。
少ない人数で業務を限られた時間内にこなすためにも、それぞれがタイムマネジメントスキルを習得することが重要です。
[出典:総務省「令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少」]
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タイムマネジメントを導入するメリット
タイムマネジメントを導入するメリットは、以下のとおりです。
- 業務効率化が期待できる
- 残業時間が削減されてコストカットにつながる
- 従業員の働きやすい環境が整う
それぞれ詳しく解説します。
業務効率化が期待できる
タイムマネジメントは、業務の優先順位を明確にし、重要な業務に注力できます。そのため、効率的に業務に取り組むことができ、生産性を向上させることが可能です。
スケジュール管理のように、目の前にある業務をこなすだけでは、業務の効率化を図ることは難しいでしょう。タイムマネジメントを導入することで、従来よりも目的を達成できる可能性も高まります。
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残業時間が削減されてコストカットにつながる
タイムマネジメントにより、従業員一人当たりの作業効率が向上するため、残業時間の削減やコストカットにつながります。
残業時間が発生する原因の一つに、「先延ばし癖」が挙げられます。この癖を直すには、タイムマネジメントを取り入れるのが有効です。
タイムマネジメントの導入により、業務時間における無駄を省き、残業時間を削減することが可能です。また、従業員に支払う残業コストも減らせます。
従業員の働きやすい環境が整う
タイムマネジメントを導入すると、仕事とプライベートの両立がしやすくなります。これは、従業員の作業効率を向上させることで、残業時間を減らすことが可能になるためです。その結果、仕事以外に使える時間が増え、プライベートの時間も確保しやすくなります。
また、ワークエンゲージメントを向上させられる点もタイムマネジメントの大きなメリットです。ワークエンゲージメントは、仕事に対するポジティブなモチベーションがあることを指します。
仕事とプライベートが両立できれば、従業員の満足度も向上し、仕事へのモチベーションをより高めることができるでしょう。
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タイムマネジメント導入の手順
タイムマネジメントは、以下の手順で簡単に導入できます。
- 業務を洗い出す
- 業務の優先順位を付ける
- 業務の目標設定をする
- 業務を細分化する
- QCDRSに注意し実行・業務を振り返る
それぞれ詳しくみていきましょう。
【手順1.】業務を洗い出す
まずはじめに、自身がどのような業務を行っているか、洗い出す必要があります。
タイムマネジメントの目的の一つは、業務の効率化です。これを達成するには、仕事に費やしている時間を把握しなければなりません。
業務の洗い出しを行う際は、ロジックツリーの活用がおすすめです。ロジックツリーとは、さまざまな問題を木と木の枝で分解していき、原因や解決法を発見するための手法です。
ロジックツリーを作成することにより、それぞれの業務とそれにかかる時間を可視化できます。そのため、いま取り組むべきことや、今後やりたいことの優先順位が付けやすくなるでしょう。
もちろん、PCやノートに書き出すのも一つの方法です。しかし、ロジックツリーを用いることで、業務の洗い出しをより効率的に行えます。
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【手順2.】業務の優先順位を付ける
業務の洗い出しを終えたら、重要・緊急マトリクスへの振り分けを行い、業務の優先順位をつけていきましょう。
このマトリクスでは、以下のように業務を4つのカテゴリに分けます。
1.重要かつ緊急な業務 | 2.重要だが緊急ではない業務 |
3.重要ではないが緊急な業務 | 4.重要でも緊急でもない業務 |
マトリクスを使用することで、どの業務に優先的に時間を割くべきかを判断できます。また、どの業務を後回しにするか、誰かに任せるべきか、ということの明確化も可能です。
業務の優先順位を付ける際には、以下の方法もおすすめです。
- パレートの法則
- アイゼンハワーマトリクス
- フィジビリティスタディ
いずれも優先順位づけに役立つフレームワークです。ぜひ活用してみてください。
【手順3.】業務の目標設定をする
業務に優先順位を付けたら、どのくらいの達成度で行うかについて、目標を設定することも重要です。
この場合、単に「プレゼンテーション資料を仕上げる」という目標を設定するのではありません。「○日のPM2時までに6割を完成させ、一度課長へレビューをお願いする」など、具体性のある目標を立てましょう。
業務の目標設定には、SMARTの法則と呼ばれるフレームワークの利用がおすすめです。
SMARTの法則とは、以下5つの成功因子で構成されている、目標設定方法です。
- Specific:明確性
- Measurable:計量性
- Assignable:割当設定
- Realistic:実現可能性
- Time-related:期限設定
5つの成功因子に沿って設定していくことで、より効果的な目標設定ができるでしょう。
【手順4.】業務を細分化する
それぞれの業務の目標設定が完了したら、業務の細分化を行います。
業務の細分化には、HIROENと呼ばれるフレームワークの活用がおすすめです。
HIROENとは、業務を分解して6つのタスクに分け、それぞれの頭文字を並べて総称したフレームワークです。
- 聞く (Hear)
- 伝える (Inform)
- 依頼する (Request)
- 作業する (Operate)
- 調べる (Examine)
- 交渉する (Negotiate)
HIROENを活用するには、あらかじめSMARTの法則で業務の目標を具体的に設定しておく必要があります。
具体的な目標を設定し、HIROENで具体的な業務を洗い出すことで、業務の漏れや所要時間の見通しが立ちやすくなるでしょう。
【手順5.】QCDRSに注意し実行・業務を振り返る
業務の細分化が完了したら、QCDRSに注意しつつ実行・業務の振り返りを行いましょう。
QCDRSは、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)・リスク(Risk)・セールス(Sales)の頭文字を取ったものです。これらをバランスよく意識することで、業務の効率性と結果によい影響を与えます。
QCDRSは、どれかひとつでも欠けてしまってはいけません。すべての単語を意識して業務を実行したり、プロジェクトの評価を行うことがおすすめです。その結果、改善点を見つけられ、より効率的なタイムマネジメントの実現が可能となります。
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タイムマネジメントを成功させるポイント
タイムマネジメントを成功させるには、以下4つのポイントを意識するのが重要です。
- 目標設定を適切に行う
- 優先順位の高い業務は早い時間帯に処理する
- 情報共有を積極的に行う
- スケジュールを詰め込み過ぎない
それぞれ詳しく解説します。
目標設定を適切に行う
タイムマネジメントを成功に導くために、目標設定を行う必要があります。
目標設定が明確になっていないと、どのようにタイムマネジメントを進めていくべきか分かりません。
とくに、どの程度の業務量か予測できない場合、目標を設定するのが難しいこともあるでしょう。目標設定をしておくことで、全体の方針を明確にさせられます。
また、従業員によって能力や稼働状況は異なるため、個々がこなせる業務量を見極める必要があります。目標が大きすぎる場合は、モチベーションの低下にもつながるため、実現可能な目標を設定するようにしましょう。
優先順位の高い業務は早い時間帯に処理する
優先順位の高い業務は先延ばしせず、早い時間帯に処理するようにしましょう。
脳科学者の茂木健一郎氏によると、朝目覚めてからの3時間は、脳が最も効率よく働く「ゴールデンタイム」と報告されています。そのため、午前中はとくに集中力を要する業務を遂行するのに最適な時間帯といえるでしょう。
業務では、電話や会議などが突発的に流れ込んでくる可能性もあります。優先順位の高い業務は、集中しやすい朝の時間に終わらせておくのがおすすめです。
情報共有を積極的に行う
タイムマネジメントを成功させるには、積極的な情報共有も必要不可欠です。情報共有が適切に行えていない組織は、柔軟性に欠け、業務の効率化を図ることができません。
周囲との情報共有を日常的に行うことで、認識の違いによるトラブルが発生しにくくなります。また、他の従業員との業務の状況を把握しておけば、ミスを未然に防ぐことが可能です。業務に遅れが生じている場合は、従業員同士でのカバーもしやすくなるでしょう。
組織の情報共有を行いたい場合は、ビジネスチャットなどのITツールの活用がおすすめです。ビジネスチャットを用いれば、タスク管理機能などを利用して業務状況を確認できます。そのため、メールや口頭よりも、正確かつ効率的な情報共有が可能になります。
情報共有を積極的に行うことで、業務における認識のズレを低減し、組織内での円滑なやり取りが行えるようになるでしょう。
スケジュールを詰め込み過ぎない
タイムマネジメントでは、スケジュールを詰め込みすぎないことも重要です。スケジュールに余裕があれば、精神的なゆとりが生まれます。
逆に、スケジュールを詰め込みすぎると、焦りから業務でのミスが多発してしまう可能性もあるでしょう。
スケジュールに余裕をもたせておくと、ミスを防ぐことにつながり、業務上でミスがないかの確認にも時間を割くことができます。その結果、質の高い成果物を納品できるようになるでしょう。
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タイムマネジメントを導入する際の注意点
タイムマネジメントを導入する際は、以下3つの点に注意しましょう。
- 実現可能な範囲で行う
- タスクを先延ばしにしない
- 感覚に頼ってタスクの優先度を決めない
それぞれ詳しく解説します。
実現可能な範囲で行う
タイムマネジメントを実施する場合、実現可能な範囲で行うことが重要です。
あまりに非現実的なタイムマネジメントを実施すると、当人の負担が増大してしまいます。最初の段階から業務効率を劇的に向上させようとせず、自身が実施可能な範囲から少しづつ取り組む姿勢が大事です。
タスクを先延ばしにしない
簡単なタスクを先延ばしにしないことも、重要なポイントです。タイムマネジメントでは、優先順位の高い業務に焦点を当てて実施していくため、雑務のような小さなタスクを後回しにする傾向にあります。
タイムマネジメントによる業務の効率化は大事ですが、優先順位の高い業務にのみとらわれると、優先度の低い業務を忘れてしまうケースも考えられます。
タスク漏れを抑えるためには、雑務のような優先度の低いタスクを一括して処理する時間を設けるとよいです。先延ばしによるリスクを低減させるためにも、早い段階で優先度の低いタスクを完遂しておきましょう。
感覚に頼ってタスクの優先度を決めない
タスクを緊急度と重要度のマトリクスで分類する際、感覚に頼って優先度を決めるのは避けましょう。
優先順位の判断を誤ると、一番重要な業務が後回しになってしまうことがあります。それにより、タイムマネジメントで想定していた結果が得られないこともあるでしょう。
タイムマネジメントでは、適切な業務の洗い出しを行い、緊急度や重要度を考慮しながら優先順位を決めていく必要があります。
タイムマネジメントを導入して業務効率をあげよう
働き方改革により、残業時間の削減が求められ、限られた時間で成果を出すことが必要となっています。
これを実現するためには、業務を効率的に進められるタイムマネジメントの導入がおすすめです。業務効率化はもちろん、ストレスの軽減やワークライフバランスの改善にもつながります。
しかし、なんとなく取り入れてしまうと、思っていた効果が得られないリスクもあるため、紹介した方法や手順を参考にして、タイムマネジメントを日々の業務に取り入れていきましょう。
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