ピープルマネジメントとは?注目される背景や効果・成功のコツを紹介
価値観の多様化により、時代の変化に合わせたマネジメント手法が求められています。そこで、新時代の手法として注目を集めているのがピープルマネジメントです。当記事では、ピープルマネジメントとは何か、注目されている背景から導入効果や成功のコツまで紹介します。
目次
ピープルマネジメントの役割とは?
ピープルマネジメントとは、社員一人ひとりの成功や成長にコミットするマネジメント手法です。パフォーマンスの評価とフィードバック、キャリアパスの設定などを行ったり、モチベーションの向上を図ったりして、個人が能力を発揮できるようにします。
一人ひとりの能力を高めて、組織全体の成果を高めることがピープルマネジメントの目的です。
従来のマネジメントとの違い
従来は、社員が持つスキルや経験をもとに、個々がパフォーマンスを発揮できる配置や人材育成を行うタレントマネジメントが主流でした。タレントマネジメントは社員の情報をデータ化して、パフォーマンスや数値を重視するものです。
一方、ピープルマネジメントは社員一人ひとりの能力や役割、人間性を最大限に活かすことを重視します。社員それぞれの特性や強みを理解し、真摯に向き合うことでモチベーションやエンゲージメントを向上させ、最大限の成果を目指すことが目的です。
スピードや柔軟性が求められる現代のビジネス環境では、多様性が求められ、個々が自主的に思考し行動できる組織が強いとされています。そのため、一人ひとりの成長やエンゲージメントを重視するピープルマネジメントが重要とされています。
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クルト・レヴィンの法則との関係
ピープルマネジメントとクルト・レヴィンの法則は、関係性があります。クルト・レヴィンとはドイツの心理学者で、「人の行動は個人の特性と環境の相互作用によって変化する」と論じています。
レヴィンはこの法則を「B=f(P.E)」と表しました。「B=f(P.E)」の具体的な内容は、以下の通りです。
- B=Behavior(行動)
- f=Function(関数)
- P=Personality(人間性、個性、人格、性格、価値観など)
- E=Environment (周囲の状況、人間関係、風土など)
クルト・レヴィンの法則のとおり、ピープルマネジメントの実施で個々の行動を変えれば、周囲の状況や会社そのものもよい方向に進むと考えられます。
ピープルマネジメントに注目が集まる背景
ピープルマネジメントに注目が集まる背景は、主に以下の3つが考えられます。
- 新しい価値観によって働き方が多様化しているため
- 雇用が流動化しているため
- ビジネス環境の技術が進化しているため
新しい価値観によって働き方が多様化しているため
ピープルマネジメントに注目が集まる背景の一つに、新しい価値観を持つ働き手が増え、働き方が多様化していることがあげられます。
今後の働き手となる世代は、従来とは異なる価値観を持っているため、今までのマネジメント手法の育成は難しいと考えられます。ピープルマネジメントなら新しい価値観を持つ働き手の育成に適しているほか、すでに雇用されている社員の個々の良さを引き出すことが可能です。
お互いに高いエンゲージメントを維持し、社内全体をよい環境にしながら業務を進められるため、ピープルマネジメントに注目が集まっています。
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雇用が流動化しているため
ピープルマネジメントに注目が集まる背景には、雇用の流動化があります。
近年は終身雇用が崩壊したことをきっかけに、流動的な働き方をする人が増えました。やりがいがある仕事に就いたり自分の能力を活かせる企業に転職したりと、一つの会社に留まる人材は減少しています。
ピープルマネジメントは個々に寄り添い、モチベーションやエンゲージメントを向上させるマネジメント手法のため、企業の定着率アップにつながることが期待されています。
ビジネス環境や技術が進化しているため
近年は、ビジネス環境や技術が目まぐるしく進化しています。
たとえば、リモートワークによる働き方が主流になったことが代表例です。直接人と会って交流する機会が自然と減少し、社員同士の関係が希薄になりつつあるでしょう。また、人工知能やロボットを使って作業が自動化され、やりがいがある仕事に取り組みたい人も増えています。
このようにビジネス環境や技術が進化している状況を踏まえ、適切なマネジメント手法を取り入れないと、思うような効果は得られにくいです。ピープルマネジメントは社員と向き合い関係性を強化したり、仕事に対するモチベーションを高めたりするため、現代に適したマネジメント手法として注目を集めています。
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ピープルマネジメントの活用による効果
ピープルマネジメントを活用すると、以下のような効果が期待できます。
- 自立した社員を育成できる
- 社員の帰属意識が向上する
- 個人に寄り添った育成を行える
自立した社員を育成できる
ピープルマネジメントの活用で期待できる効果は、自立した社員を育成できることです。
個別に細やかなフィードバックをすると、社員は自分の目標や成果に対する進捗度合いを把握できます。進捗度合いがわかることでモチベーションが上がり、自らの業務に積極的に取り組みやすくなるでしょう。
このように自立した社員の育成は、モチベーションを高い状態に保ったまま業務に取り組む社員を増やすことにつながります。
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社員の帰属意識が向上する
ピープルマネジメントは、社員の帰属意識を向上させる効果が期待できます。
上司が一人ひとりと深く向き合うことで、社員との距離が近くなります。次第に信頼度が高まり、エンゲージメントが向上するでしょう。
エンゲージメントが向上すると帰属意識も高まるため、社員満足度の向上や離職率の低減、業績向上などの効果も期待できます。
個人に寄り添った育成を行える
ピープルマネジメントを活用すると、個人に寄り添った育成を行うことが可能です。
ほかのマネジメント手法の場合、一人ひとりと対話する機会はそう多くはありません。ピープルマネジメントは一人ひとりにコミットメントし、成功に導くために対話を繰り返します。
そのため、個人の特性に合わせて成長を促しやすくなるでしょう。目標達成やパフォーマンスの向上など、目に見える成果を上げやすい効果が期待できます。
ピープルマネジメントで注意するべき課題
ピープルマネジメントを活用する効果は大きいですが、実際の導入には課題もあります。ここからは主な課題について紹介していきます。
コミュニケーション能力が必要になる
ピープルマネジメントにおける課題として、高レベルのコミュニケーション力が必要な点があげられます。
社員のモチベーションやエンゲージメントを向上するには、一人ひとりと綿密なコミュニケーションを図らなければなりません。普段からざっくばらんに話しやすい雰囲気や環境があればよいですが、そうでない場合は対話の中で社員から深い話を聞き出す必要があります。
上司はコミュニケーション能力を高める研修や外部講習を受けて、スキルアップを図ることが求められるでしょう。
導入から成果が出るまで時間がかかる
ピープルマネジメントの導入から成果が出るまでには、一定の時間がかかると理解しておきましょう。短期的な成果を求めて導入を焦ると、社員が不信感を抱く原因になります。
不信感を抱く社員が増えると企業全体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、急激な変化をもたらすのはよくありません。したがって、ピープルマネジメントは社員の様子を見ながら計画的に導入を進めていきましょう。
ピープルマネジメントに関する継続的な教育を取り入れて、慣れ親しむ機会を作るのもおすすめです。
社員の公平な評価や可視化が難しい
社員の公平な評価や目標達成度の可視化が難しい点は、ピープルマネジメントの課題の一つです。
社員一人ひとりに寄り添い、親身になってマネジメントを進めるという性質上、上司の感情が評価に反映される可能性があります。個人的な感情で評価を左右しないよう、十分に注意する必要があるでしょう。また、社員の目標などはすべて数値化できるとは限らないため、個別で進捗状況を確認しなければなりません。
社員の評価や目標達成度の可視化については、マネジメントツールをうまく活用すると管理しやすくなります。
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ピープルマネジメントを成功に導くためのコツ
ピープルマネジメントを成功に導くためのコツについて紹介していきます。
各社員の意見や考え方を尊重する
ピープルマネジメントを成功させるには、社員の意見や考えを尊重することが重要です。
ピープルマネジメントでは、社員一人ひとりと深く関わり、相手からの信頼を得る必要があります。そのため、まずは部下の悩みや考えにじっくり耳を傾けて、自分の意見を一方的に話したり、社員の話を遮ったりするのはやめましょう。
また、相手が話し終わるのを待つことや、話を聴き終わった後に相手の意見や考えを否定しないこと、尊重しながら話を進めることを意識してください。
オープン・クエスチョンの活用を意識する
オープンクエスチョンとは、「はい」や「いいえ」などの一言ではなく自由に回答できる質問のことです。オープンクエスチョンの活用を意識して対話を進めると、社員の悩みや考えを引き出しやすくなります。
オープンクエスチョンをうまく織り交ぜながらコミュニケーションを図り、相手との距離を少しずつでも縮めることを意識してください。
定期的に社員の状態を確認する
ピープルマネジメントを行う場合は、定期的にコミュニケーションをとって社員との信頼関係を構築できるようにしましょう。
「業務進捗はどうか」「何か困っていることや悩み事はないか」などを定期的にヒアリングすることで、社員のモチベーション向上や心理的安全性の確保につながります。
結果としてのびのびと働ける環境になるため、ピープルマネジメントの成功につながるでしょう。
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ピープルマネジメントに役立つツール
ピープルマネジメントに役立つマネジメントツールを5つ紹介します。
HiManager
HiManegerは、パフォーマンスマネジメントに必要な機能がオールインワンで使えるサービスです。
パフォーマンス向上や目標達成、エンゲージメント、社員の現状分析を行う機能が豊富に搭載されています。ツールを活用したマネジメントのほか、コンサルティングも依頼することが可能です。
提供元 | ハイマネージャー株式会社 |
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
※年間契約 |
機能・特徴 | 1on1の内容を記録可能、10の質問に答えるだけでエンゲージメントを簡単に集計、目標に対するアクション・進捗状況を簡単に把握できるほか |
URL | 公式サイト |
TeamUp
TeamUpは、1on1の定着を支援するクラウド型ツールです。1on1で話したい項目をテンプレート登録したり、ログの共有社を設定したりできます。
予定の調整もTeamUpで行えるので、決まった頻度で設定すれば、1on1の定着につながりやすくなるでしょう。スマートフォンなどさまざまな端末からアクセスできるので、テレワークにも適しています。
提供元 | チームアップ株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入企業数 | 150社以上の導入実績 |
機能・特徴 | 部下が考えていることを事前に上司に伝える機能がある、ログ記入用のファイル作成や予定の調整を一括設定で完了できる、大事な情報を適切な範囲で共有できるほか |
URL | 公式サイト |
WAKUAS
WAKUASは、OKRと1on1を結びつけたマネジメントができるツールです。
WAKUASにはOKRの共有機能があり、内容を確認しながら1on1を行えます。サポートメニューも豊富で、プランによってはOKRワークショップや1on1研修を受けられます。
提供元 | 株式会社アジャイルHR |
初期費用 |
|
料金プラン | WAKUAS 1on1プラン
WAKUAS パフォーマンスプラン
WAKUAS コンディションプラン
|
機能・特徴 | OKRの共有機能がある、チーム全体で応援し合えるフィードバックリクエスト、高いセキュリティ機能ほか |
URL | 公式サイト |
KAKEAI
KAKEAIは、企業規模や業種に関わらず利用できる1on1支援ツールです。
事前に話したい内容を記載してから1on1ができるので、当日の対話をスムーズに進められます。また、1on1中の内容をメモに残したり、対話中に決まったタスクをToDoに残したりすることが可能です。
GoogleやSlackなどの外部ツールとも連携ができます。
提供元 | 株式会社KAKEAI |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 1on1機能がある、多岐にわたる業種・職種・規模での導入実績あり、1on1を改善する複数の特許を取得済み、カスタマイズも可能ほか |
URL | 公式サイト |
Wistant
マネジメント実行支援ツールのWistantは、マネジメントの状態を可視化する機能や、実行すべきマネジメントのアクションを表示する機能が搭載されています。
一人ひとりに対して何を行うべきかが明確になるため、マネジメントに取り組みやすいでしょう。目標設定・管理やフィードバックに関する機能も充実しています。
提供元 | 株式会社フルート |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
|
導入企業数 | 350社以上(※2023年10月時点) |
機能・特徴 | マネジメントの状態をスコア化して改善ポイントを明確にできる、メンバーの状態や行うべきアクションを確認できる、外部ツールとの連携が可能ほか |
URL | 公式サイト |
ピープルマネジメントとは何かを理解して上手に活用しよう
ピープルマネジメントは、社員一人ひとりにコミットメントしたマネジメント手法です。近年は、社員の強みや経験を活かし、適切な部署への配置や人材育成計画を立てるタレントマネジメントが主流でした。
しかし、新しい価値観を持つ働き手が増えていることや雇用が流動化していること、ビジネス環境や技術の進化といった背景があり、ピープルマネジメントに注目が集まっています。今後は社員一人ひとりのモチベーションやエンゲージメントを向上し、企業をよい方向に導くピープルマネジメントが主流になると考えられるでしょう。
本記事で紹介したピープルマネジメントの成功のコツや課題、おすすめのツールをぜひ参考にしながら、自社への導入を検討してください。
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