人材確保等支援助成金とは?9つのコースごとの申請方法や受給要件

2023/11/21 2023/11/21

組織・マネジメント

人材保確保等支援助成金

現在9つのコースからなる「人材確保等支援助成金」。受給希望者の中には、どうすれば受給できるのか、そもそもどのような助成金なのか、疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。本記事では、人材確保等支援助成金の概要やコースごとの申請方法、受給要件などを解説します。

人材確保等支援助成金とは?

人材確保等支援助成金とは、人材の確保・定着を目的として、労働環境の向上などを図る事業者・事業協同組合などを支援する制度です。

労働環境を改善したいと考えつつも、資金的な問題で積極的に取り組めない組織も存在します。このような組織を支援するために、取り組む内容や分野によって9つのコースが用意されています。

申請しただけで助成金の全額支給を受けることはできず、実際の取り組みによってあらかじめ設定されている条件を満たす必要があります。

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人材確保等支援助成金の申請方法・受給要件【コース別】

ここからは、人材確保等支援助成金で設定されている9つのコースについて、具体的な申請方法や受給要件を解説します。

1.雇用管理制度助成コース

雇用管理制度助成コースとは、社内制度を整備して離職率低下に取り組んだ場合に57〜72万円の助成を受けられるコースです。

令和4年4月1日より受付を中止しており、再開予定は未定です。令和4年3月31日までに計画を提出している申請のみが手続き可能となっている点に注意しましょう。

該当する制度は以下のようなものがあげられます。

  • 諸手当に関する制度
  • 研修制度
  • 健康管理・健康づくり制度
  • メンター制度
  • 短時間正社員制度(保育事業主のみ)

申請する場合は「雇用管理制度整備計画」を作成し、提出期間内に本社の所在地を管轄する都道府県労働局に提出する必要があります。

計画期間末日の翌日から12か月後までの離職率を「評価時離職率」として計算し、計画認定時に目標値を達成して達成助成を受けられます。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」]

2.介護福祉機器助成コース

介護福祉機器助成コースとは、介護事業主が介護福祉機器の導入などを通じて離職率の低下に取り組んだ場合に助成を受けられるコースです。

要件を満たすことで150万円を上限に、助成対象に要した費用の20%、賃金要件を満たした場合は35%が支給されます。

助成対象となる医療機器は以下の4種類です。

  • 移動・昇降用リフト(立位補助器、非装着型移乗介助機器を含む。)
  • 装着型移乗介助機器
  • 体位変換支援機器
  • 特殊浴槽

申請する場合は「介護福祉機器の導入・運用計画」を作成し、管轄の労働局長の認定を受ける必要があります。

その後、導入・運用計画終了から12か月後までの離職率をあらかじめ設定されている基準以下に低下させると達成助成を受けられます。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)」]

3.中小企業団体助成コース

中小企業団体助成コースとは、事業主団体がその構成員である中小企業者に対して、労働環境の向上を図る事業を行う場合に助成を受けられるコースです。

要件を満たすことで実施に要した経費の2/3が支給されますが、上限金額は規模によって600〜1,000万円の間で変動します。

助成対象となる事業は以下の4種類です。

  • 計画策定・調査事業
  • 安定的雇用確保事業
  • 職場定着事業
  • モデル事業普及活動事業

申請する場合は「雇用管理の改善計画」を策定し、都道府県知事の認定を受ける必要があります。

その後、実施期間中に計画した事業を実施し、経費の支払いが完了した中小企業に対して助成金が支給されます。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」]

4.人事評価改善等助成コース

人事評価改善等助成コースとは、生産性向上につながる人事評価制度を整備し、定期昇給のみに依存しない効果的な賃金制度を設けた事業主が、最大80万円の助成を受けられるコースです。

ただし、同コースは令和4年〜5年度は受付を休止しており、今後再開されるかどうかは厚生労働省の通達を待つ形になるため注意が必要です。

申請する場合は「人事評価制度等整備計画」を作成し、管轄の労働局の認定を受ける必要があります。

その後、計画に基づいて評価制度の整備と運用を行い、賃金を増加して引き下げないこと、離職率を規定以下に低下させることが支給の条件となっています。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」]

5.建設キャリアアップシステム等普及促進コース

建設キャリアアップシステム等普及促進コースとは、建設事業主や建設事業主団体などが、建設労働者の雇用の改善・技能の向上などを図る取り組みを行った場合に助成を受けられるコースです。

このコースはさらに以下12のコースに細分されています。

  • 若年・女性建設労働者トライアルコース
  • 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(事業主経費助成)
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(事業主団体経費助成)
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(推進活動経費助成)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(作業員宿舎等経費助成)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(女性専用作業員施設設置経費助成)
  • 建設労働者認定訓練コース(経費助成)
  • 建設労働者認定訓練コース(賃金助成)
  • 建設労働者技能実習コース(経費助成)
  • 建設労働者技能実習コース(賃金助成)

申請方法や支給要領は各コースによって異なるため、詳細を知りたい場合は以下の厚生労働省のページを参照してみてください。

[出典:厚生労働省「建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」]

6.若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コースとは、若年および女性労働者の入職や定着を図る事業を行った建設事業主や、建設工事の作業における訓練を推進した職業訓練法人に対して助成を行うコースです。

これらの取り組みに要した費用のうち、中小建設事業主は支給対象経費の3/5、中小建設事業主以外の建設事業主は9/20が助成金額です。中小建設事業主団体の場合は2/3、中小建設事業主団体以外の建設事業主団体の場合は1/2が支給されます。

申請する場合は、必要書類一式を主たる事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出する必要があります。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金のご案内」]

7.作業員宿舎等設置助成コース

作業員宿舎等設置助成コースとは、以下3つのケースに該当する場合に助成を受けられるコースです。

  1. 被災三県に所在する作業員宿舎、作業員施設、賃貸住宅を賃借した中小建設事業主
  2. 自ら施工管理する建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した中小元方建設事業主
  3. 認定訓練の実施に必要な施設や設備の設置又は整備を行った広域的職業訓練を実施する職業訓練法人

また、助成金額はそれぞれ以下の通りです。

  • 1の場合:支給対象経費の2/3
  • 2の場合:支給対象経費の3/5(賃金要件が認められる場合は3/4)
  • 3の場合:支給対象経費の1/2

なお、この助成を受けるための設置基準が設けられており、基準を満たしていない場合や助成対象外の条件に該当する場合は助成を受けられないため注意が必要です。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金のご案内」]

8.外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人労働者就労環境整備助成コースとは、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組んだ事業主に対して、経費の一部が支給されるコースです。

賃金要件を満たしている場合は72万円を上限として経費の2/3を、要件を満たしていない場合でも57万円を上限として経費の1/2が支給されます。

取り組みには必須メニューと選択メニューを実施する必要があり、支給対象となる経費は以下のようなものが挙げられています。

  • 通訳費
  • 翻訳機器導入費(上限10万円)
  • 翻訳料
  • 弁護士、社会保険労務士などへの委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限る)
  • 社内標識類の設置・改修費(多言語の標識類に限る)

申請する場合は「就労環境整備計画」を作成し、本社の所在地を管轄する都道府県労働局に提出する必要があります。

実施後は一定期間日本人の離職率が上昇していないことに加えて、終了から12か月経過するまでの間、外国人労働者の離職率が10%以下であれば支給対象となります。ただし、外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は、離職者数が1人以下であることが条件となるため注意が必要です。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金 外国人労働者就労環境整備助成コースのご案内」]

9.テレワークコース

テレワークコースとは、良質なテレワーク制度を導入・実施することにより、人材確保や雇用管理改善などの観点から効果をあげた中小企業事業主が助成を受けられるコースです。

受給額は1企業あたり100万円またはテレワーク1人あたり20万円のうち低いほうを上限として、対象経費の30%が支給されます。対象となる経費は以下の通りです。

  • 就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • テレワーク用通信機器等の導入・運用
  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修
  • テレワーク用端末(PC・タブレット・スマートフォン)のレンタル・リース費用

申請する場合は「テレワーク実施計画」を作成し、管轄の労働局に提出して認定を受ける必要があります。

その後、期間中に規定の離職率に関する目標を達成すること、テレワーク実施者が規定人数以上である場合に支給されます。

テレワークの歴史が浅いこともあり、同コースは令和3〜5年にかけて毎年何かしら改正されているため、申請前に条件をよく確認しましょう。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」]

人材育成プログラムとは?作り方や参考にすべき事例・注意点を紹介

人材確保等支援助成金を申請する際の流れ

人材確保等支援助成金の申請は、以下の流れで行うのが一般的です。

  1. 人材確保等支援助成金計画書の作成
  2. 各都道府県労働局の職業安定部職業対策課へ提出
  3. 就業規則等に人材確保等支援助成金制度を規定する
  4. 計画書に沿って事業を実施する
  5. 目標や離職率などが達成できているか確認する
  6. 助成金の支給申請をする(期間終了後2か月以内)
  7. 審査基準を満たしていた場合、助成金が支給される

助成金の支給には、期間内に各コースで設定された目標を達成する必要があります。目標はコースによって異なるため、計画書の作成・提出の段階で確認しておきましょう。

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人材確保等支援助成金申請に関する注意点とは?

人材確保等支援助成金申請を行う場合に、理解しておくべき注意点を4つ解説します。

計画書の提出には期限がある

人材確保等支援助成金の申請には各種計画書の作成が義務付けられており、それぞれ提出期限がある点に注意が必要です。

ほとんどの制度では計画実施期間に応じた提出日が設定されているほか、助成金の種類によっては「実施前◯か月前までに提出」といった期限が設けられている場合もあります。

期限内に提出ができなかった場合、計画の開始を数か月先延ばししなければならないため、提出期限をしっかり確認して対応しましょう。

事業設立直後は受給できない

事業設立直後(創業直後)は受給できない点にも注意が必要です。

理由としては、どの制度も前会計年度と実施後を比較して支給要件を満たしているかを判定する必要があるためです。そのため、実施前の離職率データが取れない場合は対象外となってしまいます。

該当する場合は今年度の経過を記録しておき、次年度以降に申請するとよいでしょう。

労働環境の改善・継続運用の証が必要

助成金を受給するためには、労働環境の改善と継続運用の証が必要となります。

助成金を受給したいがために形だけ取り組んでも要件を満たすことができないうえ、本来の目的は継続的な離職率の低下である点を忘れてはいけません。

助成金を申請する場合は受給を最終目標とするのではなく、長期的な組織改善を目的として計画を立て、根本的な解決のために助成金として援助を受けるというスタンスで臨みましょう。

助成が廃止される可能性がある

現在運用されている助成が将来的に廃止される可能性がある点も念頭に置いておく必要があります。実際に、過去に以下の助成が廃止または一部廃止されています。

  • 設備改善等支援コース(2021年3月31日で廃止)
  • 働き方改革支援コース(2021年3月31日で廃止)
  • 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース(2021年3月31日で廃止)
  • 人事評価改善等助成コース(2021年3月31日で一部廃止)
  • 介護福祉機器助成コース(2021年3月31日で一部廃止)

一部またはコースそのものが廃止される助成がある一方で、「テレワークコース」のように新設されるコースもあります。

このような制度は社会情勢や政府の予算など、さまざまな要素の影響を受けて廃止・新設されていることを理解しておく必要があるでしょう。

「申請に向けて準備していたものの、いざ申請しようとしたら廃止されてしまっていた」ということが無いように、利用を検討している助成が有効かどうかは必ず確認しておかなければなりません。

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人材確保等支援助成金を活用し労働環境を改善しよう

人材の確保・定着・離職率の低下などを目的として、条件を満たした企業を資金的に援助する人材確保等支援助成金は、さまざまな角度から取り組めるように幅広いコースが用意されています。

ただし、助成金の支給には各種期限や条件が定められており、全額支給を受けるには施策に対する具体的な効果を示す必要もあるため注意が必要です。

労働環境を改善したいと考えつつも、資金的な理由で困難な場合は積極的に利用を検討するとよいでしょう。

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