マネジメントスキルとは?身につけ方や高める方法を解説
組織の発展や成果の最大化に欠かせないのがマネジメントです。マネージャー職の職務として、マネジメントスキルの向上は大きな課題です。本記事ではマネジメントスキルを形作る6つの項目から、身につけ方、高める方法、役立つ資格を紹介。マネジメントにおいて押さえたい大切なことも解説します。
目次
マネジメントスキルとは?
マネジメントスキルは管理能力と訳される言葉で、ビジネスシーンにおいて企業や部署などの組織やプロジェクトを管理する能力です。具体的には人材や資金などの経営資源を有効活用しつつ、目標の達成とリスク管理を両立するうえで必要となるスキルです。
マネジメントスキルと混同しやすい言葉にリーダーシップがあります。リーダーシップは統率力と訳され、組織を前進させるために人々の意欲を高め、成長を後押しするスキルです。このことから、リーダーシップは対人関係において使われる言葉といえます。
一方、マネジメントスキルはヒト・モノ・カネ・情報という経営資源全体を管理することで組織の目標達成を目指すスキルを指す言葉です。
リーダーシップは対人、マネジメントスキルは経営資源の全てに重きを置いているといえるでしょう。
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マネジメントスキルを形作る6つの必須項目
経営資源を有効活用し、組織の目標を達成するという目的から、マネジメントスキルは複数の要素で構成されています。
ここでは主な要素である6つの項目について、詳しく解説します。
1.意思決定スキル
マネージャーは企業や上司の持つ組織全体の方針に沿って、プロジェクトの目標達成のために最適な行動計画を決めなければいけません。
そこで求められるのが、チームの進むべき方向性を明確にする意思決定スキルです。マネージャーが方向性を定め、示すことにより、チームメンバーが安心して業務を遂行できる環境を整えられます。
行動計画を策定・修正する際には、さまざまな意見が出てくるでしょう。プロジェクトのチームメンバーの意見が対立することも珍しくありません。そのような状況下でマネージャーが企業や上司の方針に基づいて判断を下すことで、チームの協調性を保ち、その意識を統率できるのです。
2.コーチングスキル
プロジェクトの目標を達成するためには、チームメンバーの能力開発やパフォーマンスの向上が求められます。それらを支援する目的で必要となるのが、コーチングスキルです。
コーチングスキルは、それぞれの人が持つ能力を引き出し、発揮させるものです。具体的には傾聴力、質問力、承認力、メタ認知力を中心に構成されています。チームメンバーとの対話を通じてスキルを引き出し、チームメンバーが自発的に課題を解決できるようサポートするためのスキルなのです。
コーチングスキルを用いて接することにより、個別のチームメンバーのパフォーマンスが高まります。結果としてチーム全体の成果の最大化につながることから、コーチングスキルはマネジメントスキルに必須の要素といえるでしょう。
3.コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、マネジメントスキルに欠かせない要素の一つです。特にチームメンバーとの信頼関係を築くことは、タスクの進捗状況や課題の把握だけでなく、個々のメンバーのモチベーションにも大きな影響を与えます。
コミュニケーションを円滑に取れるマネージャーのもとでは、チームメンバーは職場に心理的安全性を感じられます。心理的安全性とは、他人のリアクションを恐れたり、プレッシャーを感じたりすることなく、自分の意見をオープンにできる状況を指す言葉です。心理的安全性のある職場では、チーム内での意見交換が活発になり、モチベーションやパフォーマンスの向上につながるのです。
4.スケジュール管理スキル
それぞれのタスクを効率的に進め、プロジェクトの目標を達成するためには、スケジュール管理スキルが不可欠です。
スケジュール管理スキルとは、タスクを計画し、実行・完了するまでの時間とリソースを管理する能力です。具体的なアクションとしては優先順位の決定、タスクの割り当て、デッドラインの設定などが挙げられます。
マネージャーは自身だけでなく、チームメンバーも含む広範囲のタスクを管理する必要があります。チームメンバーのタスク管理から遅延や問題の発生に速やかに気づき、スケジュールに沿うよう予算・人数・工数等を調整することもマネージャーの役割なのです。
スケジュール管理スキルは、高いとより短い期間で大きな成果をあげられるので、マネジメントスキルにおいて重要な要素の1つといえるでしょう。
5.課題解決スキル
プロジェクトの進行中に、予期せぬトラブルが発生することもあるでしょう。そのようなときに役立つのが課題解決スキルです。
課題解決スキルには、客観的かつ合理的な判断が求められます。そのためロジカルシンキング(論理的思考)が重要です。論理的思考を用いて課題を分解し、データ分析や仮説検証を通じて、原因や再発防止策の根拠を見つけていきます。
論理的思考に基づいた課題解決スキルを身につけることで、課題を正確に把握し、より適切な対応を判断できるようになります。円滑なマネジメントスキルにおいて必須の要素です。
6.テクニカルスキル
マネージャーはチームの拠り所としての役割を担っています。だからこそ、特定分野の知識や技術といったテクニカルスキルの有無は、チームのパフォーマンスを左右するでしょう。
マネージャーにテクニカルスキルがあれば、チームメンバーへのより細やかなサポートをおこなえます。メンバーのスキルの習得や、技術的な課題に対するアドバイス、場合によってはマネージャー自ら業務に介入してフォローに回るといった対応もできるでしょう。
マネージャーのテクニカルスキルに基づいたサポートにより、チームの求心力も高まり、円滑なチーム運営を実現できます。
▷マネジメントに向いている人とは?スキルがある人の特徴やスキルを身につけるコツ
マネジメントに必要なスキルの身につけ方
マネジメントスキルの有無は、プロジェクトの成果を左右する要因の1つです。マネジメントスキルの身につけ方として有効な4つの方法を紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
マネジメントに関する研修・セミナーを受講する
マネジメントスキルを体系的に身につけられる方法としておすすめなのは、研修やセミナーの受講です。研修やセミナーを通して、現場で役に立つマネジメントの基礎知識から実践的なテクニックまで幅広く習得できるでしょう。
研修やセミナーは管理職に向けて社内で用意しても良いですし、外部機関の利用も可能です。
先輩マネージャーがいる場合には、定期的な情報交換をおこなうのも良いでしょう。先輩マネージャーから得られる情報は、より現場に即した知識をインプットする機会となります。学術的な理論やテクニックの実際が、よりリアルに感じられるのでおすすめです。
「ポジションチェンジ」という考え方を取り入れる
「ポジションチェンジ」とは神経言語プログラミング(NLP)という心理学で用いられる手法の一種です。ポジションチェンジの考え方は立場によって視点や求めるものが変わってくることを示しています。顧客や上司、部下の立場に成り代わってそれぞれの視点で考えるであろうことを導き出す思考法です。
商材の納期について考えるときを例にとってみましょう。自社にとっては納期のギリギリに納品しようと考えがちです。しかし、顧客の視点に立ったとき、納期にこだわらず、少しでも早く納めてもらい、検品等に時間をかけたいと考えることも想定できます。
このようにさまざまな立場に視点を変える訓練をすることで、それぞれの言い分を想定する力がつくため、マネジメントスキルの向上に役立つでしょう。
コミュニケーションスキルを磨く
マネジメントにおいてコミュニケーションから得られる情報は重要です。必要となるコミュニケーションスキルは以下のように細分化できます。
- 上司・顧客・部下と良好な人間関係を構築・維持する
- 自分の考えや想いを伝え、チームの統率を図る
- 相手を認め、その考えを傾聴する
- それぞれの考えや意見を調整する
コミュニケーションスキルを身につけるには、挨拶などの声掛けは当然として、対象の相手を観察することが大切です。相手の癖や仕事に対する行動傾向を把握したり、それぞれの人間関係を知っておいたりすることが、円滑なコミュニケーションに役立つでしょう。
リスク管理の基礎知識を学ぶ
リスク管理はマネージャーの重要な業務の一つです。マネージャーは円滑なプロジェクトの遂行のために、リスクの予測や対策の検討を怠れません。マネジメントスキルを身につける際には、リスク管理の基礎知識習得にも注力しましょう。
リスクマネジメントにおいて最低限必要なポイントは以下の通りです。
- プロジェクトのあらゆる面においてリスクの洗い出しをおこなうこと
- リスクの発見やトラブル発生時はマネージャーが率先して解決に取り組むこと
- 情報の開示をチームメンバーに徹底させること
これらの点に注意しながら、リスク管理の知識習得に励むことがマネジメントスキルの向上に役立ちます。
▷プロジェクト管理におけるリスク管理の鉄則!基礎知識や実行内容
さらにマネジメントスキルを高める方法
マネジメントスキルを身につけた後、さらに高める方法を2つ紹介します。
経営に関する知識を深める
経営に関する知識を勉強することは、マネジメントスキルを扱ううえで大切な要素です。経営の知識を持つことで、組織全体の戦略や方針を理解し、適切な判断ができるようになります。
また、経営の知識があれば、組織の強みや弱みを分析して、課題の解決に役立てるなど、より多角的な視点で行動を起こせるようになります。さらに顧客や取引先とどのような関係を構築すべきかという判断も明確化するため、プロジェクトの目標達成へのさらなる貢献が期待できるでしょう。
コミュニケーションスキルのさらなる向上に努める
コミュニケーションスキルはとくにマネジメントスキルの根幹となる要素です。課題解決スキルやコーチングスキルなど、ほかのスキルの土台にもなっています。
コミュニケーションスキルを向上させる方法としては以下の3つがあげられます。
方法 | 内容 |
ペーシング | 相手の言動時の行動(話すスピード・間の取り方など)を観察・分析し、相手のペースに合わせることで信頼関係を構築する方法 |
ノンバーバルコミュニケーション | 表情やしぐさ、服装、持ち物などの非言語情報を活用するコミュニケーションの方法 |
アクノレッジメント(承認) | 相手の成長や成果といった変化を見つけ、それを相手に伝え、認めることで信頼関係を構築する方法 |
▷マネジメントの種類一覧|必要なスキルや役割・ポイントを解説!
マネジメントスキルを高められるおすすめの資格
マネジメントスキルを高めるには、関連する資格を取得するのもひとつの手立てです。資格を取得するために学んだ知識は、現場でも大いに役立つでしょう。
ここでは数ある資格のなかで、マネジメントスキル向上に活かせるものを5つご紹介します。
社会保険労務士
社会保険労務士(社労士)は、資格取得により、労務管理や人事制度に関する専門知識を身につけられます。職場や人材に対してより多角的な視点で物事を考えられるようになる点において、マネジメントスキルの向上に有効です。
社会保険労務士の合格率は令和4年の5.3%と低く、取得難易度の高い資格です。独学で資格取得を目指した場合の目安は1000時間といわれています。
プロジェクトマネージャ試験(PM)
システム開発部門やIT関連企業に属するマネージャーのマネジメントスキルを高める資格として、プロジェクトマネージャ試験(PM)もおすすめできます。
資格取得により、システム開発における基本的な技術だけでなく、プロジェクト計画の策定や目標設定および修正、チームのパフォーマンスの向上などに関する知識を得られます。
プロジェクトマネージャ試験(PM)は情報処理技術者試験の4段階のレベルのうち、最高ランク(レベル4)であり、令和4年度秋期の合格率は14.1%です。実務経験者でも半年の準備期間が必要といわれており、専門性や責任性の大きい高度情報処理技術者試験に区分されていることからも、高難易度の試験といえるでしょう。
メンタルヘルス・マネジメント検定
チームメンバーとの信頼関係を構築するうえで有用な資格が、メンタルヘルス・マネジメント検定です。厚生労働省が認定するメンタルヘルス対策の知識を得られるので、職場でのストレスや心の健康に関するリスクを予防し、部下の生産性や満足度を向上させることができます。
メンタルヘルス・マネジメント検定の合格率は、令和4年11月実施分がⅠ種(マスターコース)が17.6%でした。Ⅱ種(ラインケアコース)が54.1%(令和5年3月実施分)、Ⅲ種(セルフケアコース)が79.3%(令和5年3月実施分)となっています。
平均勉強時間はⅡ種(ラインケアコース)が30〜50時間程度、Ⅲ種(セルフケアコース)が10〜20時間程度といわれています。他と比べると取得しやすい資格といえるでしょう。
ビジネスマネジャー検定
マネジメントに必要な知識を総合的に学習するなら、ビジネスマネジャー検定がおすすめです。人と組織、業務、リスクの観点からマネジメントスキルの土台を形成し、網羅的な知識を得ることができます。
ビジネスマネジャー検定の合格率は、2022年度第15回・第16回の平均が39.1%です。平均勉強時間は2週間程度と言われており、公式テキストの要点を押さえることで、合格基準を満たせるようです。
中小企業診断士
企業の戦略理解を深め、より経営に近い視点でマネジメントスキルを磨きたい場合は、中小企業診断士の取得がおすすめです。
この資格を取得すると、経営状況を的確に把握し、改善に向けたアドバイスを行えるだけの知識が身につきます。経営戦略に合致したマネジメントスタイルの確立も可能となるでしょう。
中小企業診断士の合格率は令和4年度の試験において、1次試験が28.9%、2次試験が18.7%です。合格に必要な勉強時間は1000時間程度といわれています。
知識を詰め込むだけでは不十分で、2次試験の記述式に対応できるだけの理解力も求められます。
▷マネジメントに役立つおすすめの資格8選|求められるスキルも紹介!
マネジメントで大切なこと・成功の秘訣
ここでは、マネジメントを行ううえで大切なこと・成功の秘訣について、具体的なポイントを3つ紹介します。
自分のやり方を押し付けない
自分のやり方を押し付けることは、チームメンバーの意見やアイデアをなおざりにし、チームの創造性や生産性を低下させる可能性があります。
また、マネージャーからの一方的なコミュニケーションが続くと、チームメンバーが自分たちで考えることを放棄してしまう事態を招きかねません。結果として自主性を奪い、成長の機会を損ねかねない状況に陥ります。
過度の押し付けによる一方的なコミュニケーションは長期的に考えると、チームの成長や発展を阻害する要因にもなり得るのです。
そのため、マネジメントにおいてはチームメンバーの意見やアイデアを尊重し、共同で問題解決することが重要です。
忍耐強く成長を見守る
マネージャーが目を配るべきことは山ほどありますが、チームやそれぞれのメンバーを見守ることも欠かせない業務です。
過度な口出しを控え、チームメンバーの成長を忍耐強く見守り、必要なときにのみ適切なサポートや指導を行いましょう。そうすることで、チームメンバーに自信をもたせ、結果としてメンバーやチーム全体のパフォーマンス向上にもつながるのです。
マネージャーはコーチングスキルなどを活用して、チーム全体のモチベーションを高めていきましょう。
小さなことでも情報を共有し合う
情報の共有は、チームメンバーの状況や進捗を把握し、協力して課題を解決するうえで重要です。この領域においては、マネージャーのチーム作りやコミュニケーションスキルが求められます。
円滑な情報共有は、マネジメントにおいて以下のようなメリットをもたらします。
- 意思決定の精度が向上する
- リスク回避につながる
- 業務を効率的に進められる
マネージャーがチームメンバーと積極的にコミュニケーションを取り、情報共有を促進することは、チームのパフォーマンスの向上にも貢献するでしょう。
マネジメントスキルの重要性や高め方を押さえておこう
マネジメントスキルは組織運営プロジェクトを円滑に進め、目標の達成と最大限の成果を生むうえで重要なスキルです。マネジメントスキルは6つの項目から構成されています。
マネージャーに就いた際にはマネジメントスキルを身につけて日々向上させることにより、より良い成果を得られるようになるでしょう。
身につけ方・高め方には、研修やセミナーの利用・資格の取得のほか、コミュニケーションスキルを磨いたり、経営に関する知識を習得したりといった努力が必要です。
本記事を参考に、マネジメントスキルを高め、組織や担当プロジェクトの成果の最大化を目指しましょう。
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