マイクロマネジメントとは?組織・部下に及ぼす影響や改善策を解説

最終更新日時:2023/08/28

組織・マネジメント

マイクロマネジメントとは

昨今問題になっている、「マイクロマネジメント」。部下に対する過干渉をさす言葉ですが、なぜマイクロマネジメントが発生してしまうのでしょうか。本記事では、マイクロマネジメントの概要やマクロマネジメントとの違い、組織・部下に及ぼす影響について解説します。

マイクロマネジメントとは?

マイクロマネジメントとは、上司が部下の仕事を逐一チェックしたり細かく指示を出したりするなど、過度に干渉するマネジメントスタイルのことをいいます。基本的には「細かい管理」というより、「行き過ぎた管理」といったネガティブなイメージで使用されます。

マイクロマネジメントが行われると、部下は上司の顔色をうかがったり自分の仕事に自信が持てなくなったりするなど、モチベーションや主体性の低下を招きかねません。その結果、キャリア形成の阻害や優秀な社員の離職などの問題が発生し、組織全体のパフォーマンスが悪化するおそれもあります。

マイクロマネジメントの具体例

マイクロマネジメントの具体例としては以下のような内容が挙げられます。

  • 業務の進め方を細かく指示する
  • 自分のやり方を強制する
  • 進捗状況について何度も報告を求める
  • メールやチャットの返信は10分以内など期限を設ける
  • メール・チャット・電話でのやり取りや言い回しを細かく確認・指摘する
  • 作成した書類を細かく確認・指摘する
  • 起こったミスに対する原因・背景・対策などを細かく確認する

状況に応じてマイクロマネジメントが必要な場面もありますが、基本的には部下の管理には不向きなマネジメントスタイルといえるでしょう。部下にさまざまな悪影響をもたらす可能性があるため、マネジメントスタイルを適宜見直し、マイクロマネジメントに陥っている場合は必要な対策や支援を講じることが大切です。

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マイクロマネジメントとマクロマネジメントの違いとは?

マクロマネジメントとは、部下に干渉し過ぎないマネジメントのことで、マイクロマネジメントの対義語として使用されます。

基本的にマクロマネジメントでは、組織の方向性を示したうえで、具体的な業務の進め方については部下に任せます。部下の主体性が尊重されるため、モチベーションや想像力、自律性を高められる点がメリットです。

一方で、マクロマネジメントでは部下に業務上の判断を任せることから、部下から「適切なサポートを受けられない」などの不満が発生する可能性もあります。マクロマネジメントを適切に行うには、部下の役割と担当業務を明確にしたうえで、俯瞰的視点で業務の進捗や目標の達成状況を管理し、必要に応じてサポートを行うことが大切です。

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マイクロマネジメントが増えている理由

近年、マイクロマネジメントを行う管理職が増えており、組織や部下への悪影響が問題視されています。ここでは、マイクロマネジメントが増加している理由について詳しくみていきましょう。

働き方が多様化しているため

マイクロマネジメントが増えている背景には、働き方の多様化によりワークスタイルの自由度が高まり、テレワークの普及や労働時間の削減が進んだことが挙げられます。

テレワークの場合、従来のオフィス出勤と比べて部下の様子を確認することが困難になり、業務の進捗や部下の仕事ぶりが見えにくくなっています。また、コミュニケーションの問題や、オフィスのような環境が整わないことから、生産性の低下に悩んでいる企業は少なくありません。

しかし、どのような状況であっても、上司は部下に対して求められた結果を出すよう導かなければならないため、結果として、過干渉になってしまうケースも多いようです。

また、ダイバーシティの普及により、年齢・性別・人種などの属性や経歴、価値観が異なる多様な人材が一緒に働くようになったことも、マイクロマネジメントが増えた要因として挙げられます。人材が多様化することで情報共有やコミュニケーションがスムーズにいかず、結果的に部下一人ひとりの行動を細かく管理する管理職が増えているのです。

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管理職の精神的な不安が強いため

管理職自身が「部下に指示内容は正確に伝わっているか」「ミスやトラブルは発生していないか」といった不安が強い場合も、マイクロマネジメントに陥りやすいといえます。部下のミスによって自身の管理監督責任を問われたり、評価を下げられたりすることへの恐れから、過度な状況確認や進捗報告の要求を行ってしまう傾向がみられます。

また、自己顕示欲の強さや管理職として評価されたいという思いから、自身の考え方や仕事の進め方を部下に押しつけてしまっているケースも少なくありません。

マイクロマネジメントをしてしまう上司の特徴

マイクロマネジメントをしてしまう上司によくみられる特徴として、以下のような点が挙げられます。

部下の意見や希望を聞かない

マイクロマネジメントをしてしまう上司には、部下の意見や希望に聞く耳を持たない傾向があります。部下を信用しておらず、自分がすべて正しいと思い込んでいることから、自分より良い意見は出ないと勘違いしていることが原因です。

このような上司は部下に自分のやり方や価値観を押しつけがちであるため、部下の主体性が育たず、チーム全体の成長も阻害されてしまいます。その結果、生産性の低下や優秀な社員の離職などの事態を招いてしまうのです。

ミーティングの回数が多く時間も長い

マイクロマネジメントをしてしまう上司は、業務の進捗について部下に何度も確認したり、頻繁に報告させたりするため、ミーティングの回数が多くなる傾向があります。さらに、部下の業務に対して詳細かつ執拗にフィードバックを行うため、1回のミーティング時間が長くなりがちです。

また、フィードバックや指示の内容が必要以上に細かく、その内容も指摘ばかりで部下を褒めることが少ないのも特徴の一つです。些細な指摘が常態化すると、部下は上司への報告や相談を控えるようになり、相互の信頼関係が損なわれてしまうおそれがあります。

不必要な細かいルールを作る

業務効率や成果に直結しない、不必要な細かいルールを作るのも、マイクロマネジメントをしてしまう上司に多くみられる特徴の一つです。ルールの具体的な例としては、以下のような内容が挙げられます。

  • メールやチャットは10分以内に返信する
  • 在宅勤務中は30分に1回の報告を求める
  • 在宅勤務中はWebカメラを必ずつけておく

過度に細かいルールを設けるのは、上司が部下を信用していないのが原因です。「業務が滞っているのではないか」「さぼっているのではないか」と不安になるあまり、ルールを作って部下の行動を把握・コントロールしようとするのです。

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マイクロマネジメントが組織・部下に及ぼす影響

マイクロマネジメントはデメリットが大きく、組織や部下にさまざまな影響を及ぼします。ここでは、悪影響の代表例について詳しく解説していきます。

部下の意欲・やる気が低下する

マイクロマネジメントが行われているとき、部下は常に上司の監視下に置かれているため、精神的抑圧状態が続きます。そのため、自分の考えや判断に自信が持てず、上司から信頼されていないというマイナス感情を抱きやすくなってしまいます。

上司の指示に従うだけで、自身のアイデアや意見が活かされない職場環境では、部下の意欲ややる気は低下してしまうでしょう。部下個人はもちろん、組織全体のモチベーションも下がってしまい、生産性の低下や離職率の悪化などの問題を招きかねません。

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組織の成長鈍化・衰退リスクが高まる

マイクロマネジメント下に置かれている人材は、上司の指示によって動くことが多く、自分で考えて行動するという機会を奪われています。そのため、自発的な行動をとれない「指示待ち人間」になってしまい、次世代の組織を担う自律型の人材に育たないケースがみられます。

また、部下の業務へ過度に介入することにより、上司自身も組織やプロジェクトの状況を俯瞰的視点で把握できなくなる可能性もあります。管理職としての本来の役割や業務を全うできなくなるため、組織の成長を鈍化させ、衰退させるリスクも高まってしまうでしょう。

部下のメンタルヘルスが悪化する

マイクロマネジメントによって精神的抑圧状態が続くことで、部下のメンタルヘルスが悪化するケースもみられます。上司からの過度な監視や指摘によって、不安が増大したり自己肯定感が失われたりして、過剰なストレスがかかってしまうためです。

マイクロマネジメントをパワハラやモラハラと受け止められた場合は、訴訟に発展する可能性もあります。そのため、マイクロマネジメントにならないよう注意するだけでなく、部下のメンタルヘルスケアに取り組むことも大切です。

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マイクロマネジメントの改善策

マイクロマネジメントによるデメリットや問題が発生している場合は、組織のマネジメント体質を変えなければなりません。マイクロマネジメントの改善策について紹介していきます。

部下への接し方を変える

マイクロマネジメントを改善するうえで重要なのは、部下自身の考える力を引き出すことです。上司は指示や指摘をするばかりでなく、部下が自ら考えて動けるように導かなければなりません。具体的な方法としては、オープンクエスチョンやSMARTの法則の活用がおすすめです。

オープンクエスチョンとは、「はい・いいえ」では答えられない質問のことで、部下の自由な回答を引き出せるようになります。その結果、部下の考え方や傾向を把握できるため、過度に干渉することなく事前に失敗しそうなことに気づいたりフォローしたりすることが可能です。

SMARTの法則とは、「Specific(具体性)」「Measurable(計量性)」「Achievable(達成可能性)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限)」の5つの頭文字から構成された、目標設定方法の一つです。明確かつ達成可能な目標を設定できるため、部下が自走しながら業務を進めることが可能となります。

部下をマネジメントする秘訣!必要なスキルや方法・注意点

一方的な思い込みを改める

マイクロマネジメントになってしまう原因として、上司が部下に対して「このくらいはできるだろう」といった思い込みを持っている点が挙げられます。そのため、上司から部下に対する一方的な思い込みを改めることが、マイクロマネジメントを改善する第一歩です。

部下の得意・不得意を理解し、自身の固定観念や価値観を押しつけないよう、部下に寄り添ったマネジメントスタイルを心がけましょう。

進捗状況の報告・確認方法をルール化する

進捗状況の報告・確認方法をルール化することは、マイクロマネジメントから脱するために重要なポイントの一つです。報告のタイミングや確認方法を定めることで、無駄な報告・確認を減らせるため、上司・部下ともに負担が軽減されます。

たとえば、「終業時に1日の業務内容を報告する」とあらかじめ決まっていれば、部下は上司に干渉されることなく業務に集中できます。また、上司も細かく状況を確認する必要がなくなり、本来のマネジメント業務に注力できるでしょう。

部下に裁量権を与える

部下に裁量権を与え、上司が部下に干渉する機会を減らすことも、マイクロマネジメントの改善に役立ちます。業務上必要な判断を部下に任せるほかにも、部下が自由に発言できる場を設けるといったことも有効です。

裁量権を与えられた部下は「上司から信頼されている」という自信につながるうえ、自らで判断する機会が増えるため、自分で考えて動ける人材へと成長することも期待できます。

管理職としての役割を見直す

部下の管理や監視に注力せず、管理職として何をすべきか、本来の役割を見直すことが大切です。本来、管理職は部下の管理にくわえて、チームや組織としての業務管理・人材育成・業務改善・理念や目標の設定と共有など、さまざまな役割を担っています。

これらの役割を大きく分けると、下記の4つに分けられます。

  • 戦略マネジメント
  • ビジョンマネジメント
  • PDCAマネジメント
  • メンバーマネジメント

管理職は4つのマネジメント・役割にバランスよく取り組み、管理職本来の役割を果たせるよう心がけましょう。

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マイクロマネジメントを活用するシーンを選ぶ

マイクロマネジメントは極力回避したほうがよいマネジメントスタイルですが、デメリットばかりではありません。

たとえば、入社まもない社員の場合は、行動を細かく把握し、都度指示・指摘するマイクロマネジメントが効果的です。新規プロジェクト立ち上げの際も、マイクロマネジメントにより仕事の進め方やプロジェクトの方向性を現場に浸透させることで、初期段階以降は部下のみで自走できるようになります。

マイクロマネジメントが適しているケースは限定的であるものの、活用するシーンを正しく選べば有効であることを理解しておきましょう。

適切な改善策を講じマイクロマネジメントが及ぼす影響を回避しよう

マイクロマネジメントでは、上司が部下に干渉し過ぎることで、部下のモチベーション低下や成長の阻害、メンタルヘルスの悪化などを招くおそれがあります。

部下の主体性を育み、組織を成長させるためには、マイクロマネジメントが及ぼす影響を回避しなければなりません。本記事で紹介した改善策を実践して、マイクロマネジメントから脱却し、部下のモチベーション向上や成長を促進していきましょう。

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