カンパニー型組織とは?メリット・デメリットや事業部制との違い・事例について

最終更新日時:2023/11/28

組織・マネジメント

カンパニー組織とは

組織形態にはさまざまな種類がありますが、その一つである「カンパニー型組織」が注目されています。日本では大手企業が導入したことを皮切りに導入企業が増加していますが、カンパニー型組織とはどのような組織なのでしょうか。本記事では、カンパニー型組織とは何か、事業部制との違いやメリット・デメリットを、事例とあわせて解説します。

この記事の要約

・カンパニー型組織とは社内の事業をカンパニーとして、分社化する組織形態のこと
・組織ごとに、人事権や投資権などの経営に関する権限が付与されており、独立採算制がとられている

カンパニー型組織とは?

カンパニー型組織とは、社内に存在する各事業を「カンパニー」として、社内分社化させる組織形態です。別名、社内カンパニー制とも呼ばれます。たとえば、ある企業のなかにIT、エネルギー、金融の3事業があるならば、ITカンパニー、エネルギーカンパニー、金融カンパニーというように、3つの「カンパニー」に分け、それぞれが独立した形で組織を運営していきます。

日本では1994年、ソニーグループ株式会社が初めてカンパニー制を導入しました。カンパニー型組織は、各カンパニーで独立採算制がとられている点が大きな特徴です。各カンパニーには、大元である本社の経営資源が分配され、人事権や投資権などの経営に関する権限が付与されます。カンパニーごとに人事や経理、営業、開発などの組織機能が備わっており、それぞれが一つの会社のように運営されます。

カンパニー型組織と似た組織形態との違い

カンパニー型組織と似た組織形態として、「事業部型組織」と「持ち株会社」の2つがあります。まずは、それぞれの違いを詳しく説明します。

事業部型組織との違い

事業部型組織とは、各事業を「事業部」に分けて、それぞれの事業部に運営権限を付与する組織形態です。各事業部のなかには、営業や開発などの機能がそれぞれ備わっています。意思決定を迅速化することで収益の最大化を図ることが事業部型組織の大きな目的です。

カンパニー型組織とよく似た組織形態ですが、付与される権限の大きさに大きな違いがあります。カンパニー型組織と異なり、事業部型組織では独立採算制がとられていません。そのため、会計管理や人事決定など、経営に関する重要な意思決定は大元である本社が行います。

そのほかの面においても本社から承認を得なければならない場合が多く、カンパニー型組織と比べて組織運用に対する権限が小さいといえます。

持ち株会社との違い

持ち株会社とは、子会社の株式を保有している会社を指し、別名ホールディングカンパニーとも呼ばれます。各子会社の経営権限は子会社側にありますが、株式を持つことによって組織全体を統制する組織形態です。

カンパニー型組織との大きな違いは、傘下の組織が法律的に独立しているかどうかです。持ち株会社における子会社は、法律的にそれぞれ別法人として独立しています。対してカンパニー型組織では、各カンパニーは大元である本社と同じ法人として扱われます。持ち株会社へ展開する準備段階としてカンパニー型組織を構築するケースも珍しくありません。

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カンパニー型組織のメリット

カンパニー型組織は、収益の最大化や組織の成長促進を目的に形成されます。特にカンパニー型組織には以下の4つのメリットがあります。

  • 意思決定のスピードをあげられる
  • リーダー候補となる人材を育成できる
  • 責任の所在を明確にできる
  • 競争力を強化できる

それぞれのメリットを詳しく説明します。

意思決定のスピードをあげられる

カンパニー型組織は、意思決定のスピードを上げられるというメリットがあります。その理由は、それぞれのカンパニーに対して組織運営の裁量権が与えられているためです。事業の方針や戦略決定はもちろん、収支管理や人事配置、投資などに関しても、本社側の決定を待つ必要はありません。カンパニー単位で経営の意思決定ができるため、スピーディーに施策を進めることができます。

特に市場の変化が激しい昨今、市場競争に負けないためにはスピーディーな対応が求められます。意思決定のスピードが上がることで、変化に対して迅速に対応しながら顧客ニーズを満たすことができるため、収益の向上にもつながるでしょう。

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リーダー候補となる人材を育成できる

カンパニー型組織にはリーダー候補の育成機能もあります。カンパニーは独立した法人でないとはいえ、一つの会社としての機能を兼ね備えています。そのためカンパニーのリーダーは、ヒト・モノ・カネといった経営資源のマネジメントや経営戦略の構築など、企業の経営者としてのスキルを磨くことができるのです。

会社経営のスキルを実践的に身に付けた人材は、ゆくゆく組織全体をけん引するリーダー候補となり得るでしょう。また経営スキルの高い人材が組織に多数いることで、組織全体の成長も期待できます。

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責任の所在を明確にできる

企業でトラブルが発生した際、部署間および経営者と現場間などで責任のなすり付け合いが発生することは少なくありません。責任の所在が不明確では適切な対処ができず、対応が遅れてしまいます。

しかし、カンパニー型組織では事業が明確に区別されており、事業の運営や経営資源の管理まで、すべて各カンパニーの責任のもと遂行されます。また一般的な企業のトップは、多数の事業を統括する必要がありますが、カンパニーのリーダーは基本的に一つの事業を管理しているため、責任所在が明確になります。

責任の所在が明確であれば、トラブルが起きた際にも迅速に対応できるため、問題の早期解決につながります。

競争力を強化できる

カンパニー型組織は、組織内の競争力の強化にもつながります。なぜなら、それぞれの事業がカンパニーとして独立することで、互いにライバルとして刺激し合いながら収益の向上を目指せるためです。

カンパニーごとの競争力を高めることは、最終的に組織全体の市場における競争力強化にもつながります。このようにカンパニー型組織には、組織の成長を加速できるメリットがあります。

カンパニー型組織のデメリット

カンパニー型組織にはさまざまなメリットがある一方、以下のデメリットもあります。

  • 企業全体のコミュニケーションの機会が減少する
  • カンパニー機能の重複により経営資源の無駄が発生する
  • 不正行為が起きる可能性がある

デメリットを十分に理解したうえで、対策を考えておく必要があります。

企業全体のコミュニケーションの機会が減少する

カンパニー型組織では、事業ごとに独立して運営が行われます。その結果、事業間における交流が減り、企業全体としてのコミュニケーション機会および成長機会が減少する恐れがあります。

社内コミュニケーションは組織成長に欠かせない要素です。たとえば事業間でのコミュニケーションが活発に行われると、シナジー効果により、新事業の展開につながる可能性があります。また社員同士のナレッジ共有も促進され、スキルや生産性の向上にもつながるでしょう。

組織の成長を鈍化させないためにも、カンパニー間のコミュニケーションが失われないよう、社内イベントなどの交流機会を設けるといった対策を講じる必要があります。

カンパニー機能の重複により経営資源の無駄が発生する

カンパニー型組織では、カンパニーごとに営業や開発などの組織運営機能が存在します。すなわち、一般的には1つの企業に1つしか存在しないような人事や経理に関してもカンパニーごとに存在するのです。その結果、社内で機能が重複し、経営資源の無駄が発生する場合があります。

たとえば採用活動で考えてみましょう。これまで本社で一括して行っていた採用活動を、カンパニーごとに行うことになると、組織全体でみた採用コストはカンパニーの数だけ増大することになります。採用を担当する人員も増やさなければならないでしょう。

このようにカンパニー型組織では、組織内の機能が重複し、無駄なコストが発生する場合があります。

不正行為が起きる可能性がある

カンパニー型組織では、不正行為が発生する可能性も否めません。カンパニー同士が競争力を高めて利益を追求するあまり、不正行為が横行したり、トラブルの隠ぺいが行われる可能性があります。また本社の目も届きにくいことも、不正リスクが高まる要因の一つでしょう。

カンパニーで不正行為が行われると、組織全体としての信頼喪失や損害につながります。不正防止策を事前に講じ、健全な組織運営を管理する必要があるでしょう。

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カンパニー型組織の企業事例

ここからは実際にカンパニー型組織の企業事例を4つ紹介します。成功事例を参考にしながら、自社の組織運営に役立ててください。

楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社は2016年、顧客ニーズに迅速に対応できる組織を目指すために社内カンパニー制を導入しました。同社では、「楽天市場」「楽天トラベル」「楽天モバイル」「楽天銀行」など、多岐にわたる分野で事業を展開しています。新体制では、以下の13のカンパニーを設立し、責任の明確化やイノベーションの創出を図りました。

  • Eコマースカンパニー
  • ライフ&レジャーカンパニー
  • 通信&エナジーカンパニー
  • インベストメント&VCカンパニー
  • 新サービス開発カンパニー
  • デジタルコンテンツカンパニー
  • オープンEC・AD・アフィリエイトカンパニー
  • 教育&人材カンパニー
  • スポーツカンパニー
  • カード&ペイメントカンパニー
  • 証券カンパニー
  • 銀行カンパニー
  • 保険カンパニー

さらに2018年には各カンパニーのシナジーを最大化するため、カンパニー同士を統合。以下の5カンパニー体制を構築しました。

  • フィンテックグループカンパニー
  • コマースグループカンパニー
  • コミュニケーションズ&エナジーカンパニー
  • メディアビジネスカンパニー
  • インベストメント&インキュベーションカンパニー

同社では、変化に対応できる機動力の向上によって、グローバル規模での競争力を高めています。

[出典:楽天グループ株式会社「楽天、グループ内カンパニー制の新体制を発表」「楽天、意思決定のさらなる迅速化に向けてカンパニー体制を強化」]

株式会社みずほフィナンシャルグループ

株式会社みずほフィナンシャルグループは2016年にカンパニー制を導入しました。同社は当初、「個人」「中小企業」など対象顧客別に10のユニットを設置していました。新体制ではさらに顧客第一の事業運営を強化することを目的に、顧客セグメントを再編し、5つのカンパニーを設定。さらに2023年には再び組織の編成を見直し、現在は以下のカンパニーが設置されています。

  • リテール・事業法人
  • コーポレート&インベストメントバンキングカンパニー
  • グローバルコーポレート&インベストメントバンキングカンパニー
  • グローバルマーケッツ
  • アセットマネジメント

また、専門性の強化とカンパニー間を横断した機能活用を目指し、以下の2つのユニットも設定しています。

  • グローバルトランザクション
  • リサーチ&コンサルティング

本部をコンパクト化することによって迅速な意思決定を促し、現場の機動力向上および収益性の追求を目指しています。

[出典:株式会社みずほフィナンシャルグループ「カンパニー制の導入」「組織の見直しについて」]

シャープ株式会社

シャープ株式会社では2015年にカンパニー制を導入し、以下の5つのカンパニーを設置しました。

  • コンシューマーエレクトロニクス
  • エネルギーソリューション
  • ビジネスソリューション
  • 電子デバイス
  • ディスプレイデバイス

同社では2014年度の連結業績において営業赤字に転じ、営業利益の悪化が課題となっていました。そこで、2015〜2017年度中期経営計画の基本戦略の一つとして事業体制の再構築を立案。成長分野へのリソース集中や不採算事業からの撤廃によって、安定的かつ付加価値の高い事業構造の確立を目指しました。

[出典:シャープ株式会社「2015~2017年度中期経営計画」]

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、同社がモットーとして掲げる「もっといいクルマづくり」を促進するため、2016年にカンパニー制を導入しています。新体制では、製品群ごとに以下の7カンパニーを設定しました。

  • 先進技術開発カンパニー
  • Toyota Compact Car Company
  • Mid-size Vehicle Company
  • CV Company
  • Lexus International Co.
  • パワートレーンカンパニー
  • コネクティッドカンパニー

製品ごとにカンパニーを設置することにより、開発から製造まで一貫した運用が可能となりました。各カンパニー間での競争を促し、互いに切磋琢磨しながら付加価値の高い製品を目指しています。

[出典:トヨタ自動車株式会社「トヨタ自動車、新体制を公表」]

カンパニー型組織を取り入れる際の注意点

カンパニー制度を導入する際には、以下の4つのポイントに注意する必要があります。

  • 各カンパニーの独立性を確保する
  • 人事に関する管理・評価制度を統一する
  • カンパニー同士の相乗効果を意識する
  • カンパニー型組織の必要性を周知する

カンパニー型組織の効果を最大限に発揮するためにも、各ポイントをしっかりおさえましょう。

各カンパニーの独立性を確保する

カンパニー型組織においては、各カンパニーの独立性を確保することが非常に大切です。

カンパニー型組織は、各カンパニーに裁量権があることによってスピーディーな意思決定ができる点が利点です。しかしながら、本社側がカンパニーの運営に介入してしまうと、意思決定のスピードが低下し、カンパニー型組織の良さを活かせなくなってしまいます。

カンパニー型組織の強みを発揮して収益を最大化するためにも、各カンパニーの独立性を確保し、迅速かつ柔軟な組織運営を促しましょう。

人事に関する管理・評価制度を統一する

カンパニー型組織へ移行する前に、組織全体としての人事管理や評価制度を統一する必要があるでしょう。

カンパニー型組織では各カンパニーに人事権が与えられており、独自に人事管理を行うことができます。しかしながら、カンパニーはそれぞれ独立しているとはいえ、同じ企業です。カンパニーによって評価基準や管理体制が異なっていると、社員の不満を招く可能性があります。

たとえば同様の成果を出しているのにもかかわらず、Aカンパニーでは評価される一方、Bカンパニーでは評価されないとなると、Bカンパニーの社員はモチベーションが低下してしまうでしょう。組織に対する不平不満が募るとエンゲージメントが低下し、離職のリスクも高まってしまいます。

どのカンパニーの社員もモチベーション高く保ち、切磋琢磨しながら働けるよう、組織全体としての人事制度や評価基準を定めておくことが大切です。

カンパニー同士の相乗効果を意識する

ビジネスでは、複数の部署や事業の力を掛け合わせることによって相乗効果が生まれ、1つの部署では成しえない成果を得られる場合がしばしばあります。したがって、組織の利益を最大化させるために、カンパニー同士の相乗効果を意識しながら組織を運営するとよいでしょう。

しかしながらカンパニー型組織では、自カンパニーの利益ばかりを追求し、他カンパニーへの関心が薄れやすくなります。カンパニー同士が敵対して交流を拒んでしまっては、組織全体としての成長が鈍化してしまう恐れがあるでしょう。カンパニー同士、同じ会社の仲間としての意識を持つことが大切です。

カンパニー同士の相乗効果を発揮させるためには、全カンパニーに共有する企業理念を共有したうえで、定期的に交流の機会を設けるなどの施策が有効です。

カンパニー型組織の必要性を周知する

カンパニー型組織へ移行する前には、社員に対して目的を説明し、カンパニー組織の必要性を周知しましょう。

突然組織の形態を変えてしまうと、社員は混乱してしまいます。これまでと体制が変わることに対する不安や不満も生じる可能性も否めません。なぜカンパニー型組織にする必要があるのか、カンパニー型組織にすることでどのようなメリットが得られるのかなどを共有し、理解を得たうえで制度を導入しましょう。

また各カンパニーのトップに立つ人物には、組織経営のスキルが求められてきます。運用後に混乱しないよう、事前に研修を行うなどのサポートも必要になるでしょう。

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カンパニー型組織の事例を参考に自社のあるべき姿を考えよう

本記事ではカンパニー型組織の概要や事例を紹介しました。カンパニー型組織は適切に運用することで、各事業の収益向上および組織全体の成長が期待できます。今回紹介した企業事例などを参考にしながら、自社の在り方を考えてみましょう。

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