組織力とは?強化するための取り組みや組織力が高い企業の特徴・事例を解説

最終更新日時:2023/11/17

組織・マネジメント

組織力とは

企業経営を取り巻く時代や環境のさまざまな変化から必要性が叫ばれる、「組織力の強化」。企業が持続的に発展するためには組織力の強化が不可欠ですが、どのように取り組めばよいのでしょうか。本記事では、組織力を強化する方法、必要とされる背景や成功事例等を解説します。

組織力とは?

組織力とは、組織に属するメンバーが団結することで発揮される力を意味します。

各企業には目標が設定されていますが、誰か1人の力で達成できるものではありません。どんなに能力が高い社員が集まっていたとしても、各々が別の方向性で進んでいては、一つの目標を達成することはできないでしょう。組織のメンバーが団結し、互いの能力を掛け合わせることで、企業としての大きな目標が達成できます。

つまり、企業が目標を成し遂げ、成長するためには、組織力の強化が不可欠であるのです。

チームワークとの違いとは?

「チームワーク」を日本語で解釈すると、「チームで行う共同作業」という意味になります。また、チームワークは、メンバーが共同作業をするうえでの団結力という意味で使用されることもある言葉です。

一方、「組織力」は「メンバーが団結することで発揮される力」を意味します。したがってチームワークとは、組織力を構成する一つの要素であり、良好なチームワークが組織力向上につながるといえるでしょう。

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組織力の強化が必要とされる背景

昨今は、今まで以上に組織力強化の重要性が叫ばれています。その大きな理由として、2つの社会的背景があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

VUCA時代に適応するため

組織力の強化が叫ばれるようになった背景の一つに、VUCA時代の到来が挙げられます。

「VUCA」とは、予測が困難で不確実性の高い時代を意味する造語で、以下の頭文字から名付けられました。

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

たとえば最近では、大災害の発生や疫病の流行など、未曽有の事態が次々と発生しており、世界中で先の見えない状況が続いています。ビジネスにおいては、AIの発展やグローバル化などの影響を受けて、市場ニーズが複雑化。さらに日本では、終身雇用の崩壊やテレワークの普及によって、働き方も大きく変わりました。

VUCA時代において、企業は今後も予測不能な事態に対応していかなければなりません。しかし組織力が低ければ、社内の方向性が揃わず、会社としての対応がどんどん遅れてしまいます。

時代の変化に飲み込まれることなく存続し続けるためには、組織力を強化し、変化に対してスピーディに対応する必要があるのです。

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働き方が多様化しているため

近年、働き方は多様化しました。終身雇用は崩壊し、転職者数が増加。ダイバーシティ経営が進んでいることに加え、副業やフリーランスといった働き方も拡大しています。また新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの企業がテレワークを取り入れ、働く場所も制限されなくなりました。

個人の働き方やキャリア形成が自由化したからこそ、組織としての一体感を高めることが難しくなっています。たとえば、テレワークの導入によって社員同士の関係が希薄化してしまったという会社は少なくありません。組織力が弱く社員のエンゲージメントが低い状態であれば、 優秀な人材の離職を招く恐れもあります。

これからの時代において組織が成長するためには、個々の能力を最大限に活かせる環境を整えると同時に、社員のエンゲージメントを高め、組織力を強化することが不可欠であるのです。

組織力が高い企業の特徴

では、組織力が高い企業には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、主な5つの特徴について詳しく説明します。

企業の目指す姿を全社員が理解している

組織力が強い企業は、企業の目指す姿を全社員が理解している傾向にあります。なぜなら、会社の目標が共有されていることで、社員全員が同じベクトルに向かって仕事に取り組めるためです。

未曽有の事態に遭遇した際にも、会社の目指すべき姿を理解していることで、どのような行動をとればよいか社員が自主的に判断でき、スピーディな対応ができます。また目標が明確化していることで、自分の業務に意義を見出すことができるため、モチベーションの向上につながるでしょう。

心理的安全性が確保されている

心理的安全性が確保されている会社は、組織力も強くなりやすい傾向にあります。

心理的安全性とは、職場において自分の意見を安心して発言できる状態を意味します。心理的安全性が高い組織では、周りと異なる意見を発しても、不当な扱いを受ける心配がありません。コミュニケーションが活発になることで、新たなアイディアが生まれる可能性も高まるため、心理的安全性の確保は組織にとって重要とされています。

また互いに話しやすい環境であれば、悩みや問題が発生した際にも助け合うことができます。その結果、社員同士の協調性が育まれて、組織力が高まるのです。

人材育成制度・人事評価制度が確立している

人材育成制度や人事評価制度が確立されているかどうかも、組織力に大きく影響しています。その理由は、人材育成や人事評価は、社員の生産性およびエンゲージメント向上に直結するためです。

たとえば人材育成制度が充実している会社であれば、社員が積極的にスキルアップに挑戦できます。社員がスキルを身に付け、個々の生産性が高まることで、組織全体の成長にもつながるでしょう。

人材育成制度の例としては、以下のものがあります。

  • 業務研修
  • リーダー研修
  • メンター制度
  • 資格取得補助

また人事評価制度が確立されていると、社員は自分の仕事を正当に評価してもらえます。その結果、会社に対してのエンゲージメントが高まり、より積極的に仕事に向き合えるようになるでしょう。

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人材配置が最適化されている

人材配置が最適化されている状況とは、社員一人ひとりのスキルや適性、希望に応じた配置がなされている状態を指します。

人にはそれぞれ得意・不得意があり、自分に適した環境であるほうが高いパフォーマンスを発揮できます。したがって個々のスキルや能力を発揮できる人材配置を行うことは、生産性の向上につながります。さらに、「自分の能力を発揮して会社に貢献ができている」という意識が生まれるため、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントの向上も期待できます。

組織力を強化するためには、個々のパフォーマンスを最大限に発揮できる人材配置が重要な要素となるのです。

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ミスをカバーしあう企業風土ができている

組織力が強い組織では、ミスをカバーし合う風土が形成されています。ミスを個人のせいにするのではなく、チーム全体の問題と捉え、互いにサポートし合っているのです。

ミスをするたびに非難される環境では、社員は失敗を恐れて新たな挑戦ができなくなったり、良いパフォーマンスを発揮できなくなったりしてしまいます。また、叱られることを避けようと問題を隠ぺいしてしまい、トラブルが深刻化する場合もあります。

社員同士が助け合う風土を形成し、信頼関係を築くことが大切です。

組織力を強化するための具体的な取り組み例

組織力を強化するためには、どのような取り組みを行えばよいのでしょうか。具体的な5つの取り組みについて、効果を高めるためのポイントを説明します。

現状を把握し企業の課題を明確にする

まずは現状を把握して、企業の課題を明確化しましょう。解決すべき課題が分かっていなければ、適切な対策を取ることができません。現在の組織力はどれほどなのか、成長を妨げている要因はないのかなど、課題をしっかり把握することが重要です。

課題を特定する方法として効果的なのは、組織サーベイの実施です。組織サーベイとは、従業員に対するアンケート調査のことで、データを集計し、数値で定量的に可視化できます。企業理念の浸透度、エンゲージメント、従業員満足度などを多角的に調査し、課題を特定しましょう。

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企業の目指すべき姿を明確にし社内へ周知する

企業の目指すべき姿を明確化し、社員へ共有することも大切です。会社が目指すべき方向を示すことで、社員全員が一丸となって、目標達成に向けた行動を取ることができます。

企業理念やミッションは、策定していても社員に浸透していなければ意味がありません。また抽象的な表現の目標では、意図が正しく伝わっていないこともあります。分かりやすく明瞭な言葉で、具体的な目標を提示することがポイントです。

目標が社員に齟齬なく浸透するまでは、朝礼やチームミーティング、全社会議などで何度も繰り返し伝え、粘り強く周知を図りましょう。

コミュニケーションが活性化・円滑化するような仕組みを作る

組織力向上のためには、社内コミュニケーションの活性化が不可欠です。コミュニケーション活性化に向けた施策としては、以下のようなものがあります。

  • 1on1の実施
  • ピアボーナスの導入
  • 社内イベントの開催

定期的な1on1の実施は、部下が抱える課題の早期解決ができることに加え、上司と部下の良好な関係性の構築につながります。また、社員同士が互いに賞賛・評価するピアボーナスは、信頼関係を深め、エンゲージメントを高める効果があります。互いに認め合い、助け合える関係作りを目指しましょう。

さらに、社内イベントなどを通じて縦・横・斜めの交流ができることで、組織全体としての団結力がさらに向上します。組織力向上において、コミュニケーション施策は重要な役割を果たすといえるでしょう。

社員の自主性・自律性が養われる体制を整える

組織力を最大化するためには、社員一人ひとりが組織の一員であるという意識を持ち、高いパフォーマンスを発揮しなければなりません。そのため、社員の自主性や自律性を養い、エンゲージメントを高める体制を整える必要があります。

社員のエンゲージメント向上については、EVPという言葉が注目されています。EVP(Employee Value Proposition)とは、「企業が社員に提供できる価値」という意味を持つ言葉です。特に人材確保が難化しつつある昨今において、優秀な人材を確保するために「企業側が社員に何を提供できるのか」が重要視されています。

EVPの施策としては、以下のようなものがあります。

  • 企業理念の設定
  • 評価制度の設定
  • 福利厚生の整備
  • キャリア支援

特にキャリア支援として、資格取得補助やリスキリング支援など、社員の挑戦を後押しする制度や体制の構築は、社員の主体的な成長への大きな効果が期待できるでしょう。

経営・マネジメント層の統率力を向上させる

組織力の強化には、経営・マネジメント層の統率力向上も不可欠です。組織のトップに立つ人材に統率力がなければ、部下たちはついてきません。さらに適切なマネジメントができなければ、モチベーションや生産性の低下を引き起こす可能性もあるでしょう。

経営・マネジメント層は、部下のやる気を引き起こす発言力、相談ごとに向き合える傾聴力などを身に付ける必要があります。組織力を高めるためには、経営・マネジメント層に対しても、マネジメント研修を行うなどのサポートが必要です。

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組織力強化に成功した企業事例

最後に、組織力強化に成功した企業の事例を3つ紹介します。ぜひ組織改革の参考にしてください。

ヤフー株式会社

LINEヤフー株式会社(旧ヤフー株式会社)では、上司と部下との1on1に力を入れています。

LINEヤフー株式会社での1on1は、「週に1度30分間、場所を確保し、部下の話を聞く」ことが特徴です。短いスパンで定期的に1on1に取り組むことで、部下の抱える悩みや意見をくみ取り、成長の後押しをする狙いがあります。

1on1を導入するにあたっては、外部専門家の力を借りながらカリキュラムを作り上げ、同時に管理職層の1on1スキルアップを図ることにも注力したそうです。

現在は社内に1on1の文化が浸透しており、組織力の強化につながっています。

[出典:LINEヤフー株式会社「『1on1ミーティング』で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション」]

株式会社日立ソリューションズ

株式会社日立ソリューションズでは、組織力強化に向けてコミュニケーション施策に力を入れています。そのなかでユニークな取り組みとして、「段々飛び懇親会」があります。

段々飛び懇親会は、部署や役職の違う社員がコミュニケーションを取る場として設定されています。懇親会の費用は、上限を設けて会社が負担しており、社内の食堂に居酒屋業者を招いて実施しているそうです。

組織力強化にコミュニケーション施策は不可欠な要素です。縦・横・斜めの交流を行うことで、自分の立場と異なる意見を得られるなど、視野を広げるきっかけにもなるでしょう。

[出典:NPO法人日本ネットワークセキュリティ協会『インタビュー連載「日本の人事と内部不正」<第4回>株式会社日立ソリューションズ』]

株式会社ダイメイ大阪

株式会社ダイメイ大阪では、モチベーションクラウドを活用して組織の状況を可視化し、改善に務めました。同時に、一人ひとりが主体的に事業に関わってもらうために、会社側が社員と対話をする機会を毎日設け、エンゲージメントの向上を図っています。

また社員同士のコミュニケーションを活性化させるため、「ありがとうカード」という取り組みも行っています。ありがとうカードは、感謝の想いをカードに書いて相手に渡す取り組みです。自分の行いが仲間から評価されることでやる気が生まれ、仲間同士の信頼も深くなる効果が期待できます。

同社では、以上の取り組みを通じて、社員の主体性や積極性が向上したことで、業績にもポジティブなインパクトを得ています。

[出典:モチベーションクラウド導入事例 『株式会社ダイメイ大阪』]

自社に必要な取り組みを実施し組織力の強化につなげよう

組織力の概念や、組織力向上に必要な取り組みを紹介しました。企業が変化の激しい時代を乗り越えるためには、組織力の強化が不可欠です。まずは自社の課題を明らかにし、組織力強化に向けた施策に取り組みましょう。

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