組織力を強化する必要性とは?強化するための具体的な方法や組織力が高い企業の特徴
企業経営を取り巻く時代や環境のさまざまな変化から必要性が叫ばれる「組織力の強化」。企業が持続的に発展するためには組織力の強化が不可欠ですが、どのように取り組めばよいのでしょうか。本記事では、組織力を強化する方法や組織力が高い企業の特徴、企業の成功事例等を紹介します。
目次
組織力の意味とは?
組織力とは、組織に属するメンバーが団結することで発揮される力を意味します。
各企業には目標が設定されていますが、誰か1人の力で達成できるものではありません。どんなに能力が高い社員が集まっていたとしても、各々が別の方向性で進んでいては、一つの目標を達成することはできないでしょう。
組織のメンバーが団結し、互いの能力を掛け合わせることで、企業としての大きな目標が達成できます。企業が目標を成し遂げ、成長するためには、組織力の強化が不可欠となるのです。
組織と集団の違い
組織とは、メンバー全員が共通の目的を持ち、それぞれが円滑なコミュニケーションを取りながら協力していく意思を有しているのが特徴です。一方集団は、同じ場所にただ人が集まっている状態を指しているため、必ずしも目的や協力する意思があるとは限りません。
ただし、特定のプロジェクト達成のために集められた人たちのことを集団と呼ぶこともあります。
チームワークとの違い
チームワークを日本語で解釈すると、「チームで行う共同作業」という意味になります。また、チームワークは、メンバーが共同作業をするうえでの団結力という意味で使用されることもある言葉です。
一方、組織力は「メンバーが団結することで発揮される力」を意味します。したがってチームワークとは、組織力を構成する一つの要素であり、良好なチームワークが組織力向上につながるといえるでしょう。
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組織力の強化が必要とされる背景
昨今は、今まで以上に組織力強化の重要性が叫ばれています。その大きな理由として、2つの社会的背景が関係しています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
VUCA時代に適応するため
組織力の強化が叫ばれるようになった背景の一つに、VUCA時代の到来が挙げられます。「VUCA」とは、予測が困難で不確実性の高い時代を意味する造語で、以下の頭文字から名付けられました。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
たとえば最近では、大災害の発生や疫病の流行など、未曽有の事態が次々と発生しており、世界中で先の見えない状況が続いています。ビジネスにおいては、AIの発展やグローバル化などの影響を受けて、市場ニーズが複雑化していることが挙げられるでしょう。
さらに日本では、終身雇用の崩壊やテレワークの普及によって、働き方も大きく変わりました。VUCA時代において、企業は今後も予測不能な事態に対応していかなければなりません。しかし組織力が低ければ、社内の方向性が揃わず、会社としての対応がどんどん遅れてしまいます。
時代の変化に飲み込まれることなく存続し続けるためには、組織力を強化し、変化に対してスピーディに対応する必要があるのです。
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働き方が多様化しているため
働き方の多様化が進んでいることも、組織力強化が必要とされる理由のひとつです。終身雇用は崩壊し、転職者数は増加しています。また、ダイバーシティ経営が進んでいることに加え、副業やフリーランスといった働き方も拡大しています。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの企業がテレワークを取り入れ、働く場所も制限されなくなりました。
個人の働き方やキャリア形成が自由化したからこそ、組織としての一体感を高めることが難しくなっています。たとえば、テレワークの導入によって社員同士の関係が希薄化してしまったという会社は少なくありません。
組織力が弱く社員のエンゲージメントが低い状態であれば、 優秀な人材の離職を招く恐れもあります。これからの時代において組織が成長するためには、個々の能力を最大限に活かせる環境を整えると同時に、社員のエンゲージメントを高め、組織力を強化することが大切です。
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組織力を強化するための具体的な取り組み例
組織力を強化するための取り組みを紹介します。効果を高めるためのポイントについても説明するので、どのような施策を行うべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
現状を把握し企業の課題を明確にする
まずは現状を把握して、企業の課題を明確化しましょう。解決すべき課題が分かっていなければ、適切な対策を取ることはできません。現在の組織力はどれほどなのか、成長を妨げている要因はないのかなど、課題をしっかり把握することが重要です。
課題を特定する方法として効果的なのは、組織サーベイの実施です。組織サーベイとは、従業員に対するアンケート調査のことで、データを集計し、数値で定量的に可視化できます。
企業理念の浸透度、エンゲージメント、従業員満足度などを多角的に調査して課題を特定しましょう。
企業の目指すべき姿を明確にし社内へ周知する
企業の目指すべき姿を明確化し、社員へ共有することも大切です。会社が目指すべき方向を示すことで、社員全員が一丸となって目標達成に向けた行動を取ることができます。
企業理念やミッションは、策定していても社員に浸透していなければ意味がありません。また抽象的な表現の目標では、意図が正しく伝わっていないこともあります。分かりやすく明瞭な言葉で、具体的な目標を提示することがポイントです。
目標が社員に齟齬なく浸透するまでは、朝礼やチームミーティング、全社会議などで何度も繰り返し伝え、粘り強く周知を図りましょう。
コミュニケーションが活性化・円滑化するような仕組みを作る
組織力向上のためには、社内コミュニケーションの活性化が不可欠です。コミュニケーション活性化に向けた施策としては、以下のようなものがあります。
- 1on1の実施
- ピアボーナスの導入
- 社内イベントの開催
定期的な1on1の実施は、部下が抱える課題の早期解決ができることに加え、上司と部下の良好な関係性の構築につながります。また、社員同士が互いに賞賛・評価するピアボーナスは、信頼関係を深め、エンゲージメントを高める効果があります。
さらに、社内イベントなどを通じて縦・横・斜めの交流ができることで、組織全体としての団結力が向上するでしょう。組織力向上において、コミュニケーションの活性化は重要な役割を果たす施策といえます。
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社員の自主性・自律性が養われる体制を整える
組織力を最大化するためには、社員一人ひとりが組織の一員であるという意識を持ち、高いパフォーマンスを発揮しなければなりません。そのため、社員の自主性や自律性を養い、エンゲージメントを高める体制を整える必要があります。
社員のエンゲージメント向上については、EVP(Employee Value Proposition)という言葉が注目されています。EVPとは「企業が社員に提供できる価値」という意味を持つ言葉です。
特に人材確保が難化しつつある昨今において、優秀な人材を確保するために「企業側が社員に何を提供できるのか」が重要視されています。
EVPの施策としては、以下のようなものがあります。
- 企業理念の設定
- 評価制度の設定
- 福利厚生の整備
- キャリア支援
特にキャリア支援は、社員の主体的な成長が期待できるでしょう。資格取得補助やリスキリング支援など、社員の挑戦を後押しする制度や体制の構築をするのが効果的です。
経営・マネジメント層の統率力を向上させる
組織力の強化には、経営・マネジメント層の統率力向上も不可欠です。組織のトップに立つ人材に統率力がなければ、部下たちはついてきません。また、適切なマネジメントができなければ、モチベーションや生産性の低下を引き起こす可能性もあるでしょう。
経営・マネジメント層は、部下のやる気を引き起こす発言力、相談ごとに向き合える傾聴力などを身に付ける必要があります。組織力を高めるためには、経営・マネジメント層に対してもマネジメント研修を行うなどのサポートが必要です。
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組織力が高い企業の特徴
組織力が高い企業には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、主な5つの特徴について詳しく説明します。
企業の目指す姿を全社員が理解している
組織力が強い企業は、企業の目指す姿を全社員が理解している傾向にあります。なぜなら、会社の目標が共有されていることで、社員全員が同じベクトルに向かって仕事に取り組めるためです。
未曽有の事態に遭遇した際にも、会社の目指すべき姿を理解していれば、どのような行動をとればよいか社員が自主的に判断でき、スピーディな対応ができます。また目標が明確化していることで、自分の業務に意義を見出すことができるため、モチベーションの向上につながるでしょう。
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心理的安全性が確保されている
心理的安全性が確保されている会社は、組織力も強くなりやすいものです。
心理的安全性とは、職場において自分の意見を安心して発言できる状態を意味します。心理的安全性が高い組織では、周りと異なる意見を発しても、不当な扱いを受ける心配がありません。コミュニケーションが活発になることで、新たなアイディアが生まれる可能性も高まるため、心理的安全性の確保は組織にとって重要といえるでしょう。
また、互いに話しやすい環境であれば、悩みや問題が発生した際にも助け合うことができます。その結果、社員同士の協調性が育まれて、組織力が高まるのです。
人材育成制度・人事評価制度が確立している
人材育成制度や人事評価制度が確立されているかどうかも、組織力に大きく影響しています。人材育成や人事評価は、社員の生産性およびエンゲージメント向上に直結するものです。
たとえば、人材育成制度が充実している会社であれば、社員が積極的にスキルアップに挑戦できます。社員がスキルを身に付け、個々の生産性が高まることで、組織全体の成長にもつながるでしょう。人材育成制度の例としては、以下のものがあります。
- 業務研修
- リーダー研修
- メンター制度
- 資格取得補助
人事評価制度が確立されていると、社員は自分の仕事を正当に評価してもらえます。その結果、会社に対してのエンゲージメントが高まり、より積極的に仕事に向き合えるようになるでしょう。
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人材配置が最適化されている
人材配置が最適化されている状況とは、社員一人ひとりのスキルや適性、希望に応じた配置がなされている状態を指します。
人にはそれぞれ得意・不得意があり、自分に適した環境であるほうが高いパフォーマンスを発揮できます。そのため、個々のスキルや能力を発揮できる人材配置を行うことで、生産性の向上につながるでしょう。また、「自分の能力を発揮して会社に貢献ができている」という意識が生まれるため、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントの向上も期待できます。
組織力を強化するためには、個々のパフォーマンスを最大限に発揮できる人材配置が重要な要素となるのです。
ミスをカバーしあう企業風土ができている
組織力が強い組織では、ミスをカバーし合う風土が形成されています。ミスを個人のせいにするのではなく、チーム全体の問題と捉え、互いにサポートし合っているのです。
ミスをするたびに非難される環境では、社員は失敗をおそれて新たな挑戦ができなくなったり、良いパフォーマンスを発揮できなくなったりしてしまいます。また、叱られることを避けようと問題を隠ぺいしてしまい、トラブルが深刻化する場合もあります。社員同士が助け合う風土を形成し、信頼関係を築くことが大切です。
社員で活発にコミュニケーションをとっている
社員同士が活発にコミュニケーションをとっていることも、組織力が高い企業の特徴です。社内でのコミュニケーションは、情報や意見の共有を促進し、チームワークを高めることにつながります。
コミュニケーションが活発化することで、他のメンバーがどのような状況にあるかを理解しやすくなるため、社員間での強固な信頼関係を築くことが可能です。このように、風通しの良い職場を実現できれば、問題解決や意思決定がスピーディーに行えるようになるでしょう。
経営陣にリーダーシップがある
組織力の高い企業には、優れたリーダーシップを備えた経営陣がいるものです。リーダーシップを発揮するには、率先して組織を率いていく主体性や、ビジョンを実現するための立案力、社員との良好な関係を築くためのコミュニケーション力などが求められます。
昨今企業では、年齢・性別・国籍などの違いを認め合い尊重しあうダイバーシティ化が進んでいることもあり、全員が同じ方向を向いて進んでいくためにも、経営陣のリーダーシップが不可欠といえるでしょう。
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組織力の強化が必要な企業の特徴
組織力が低い企業においても、いくつかの共通した特徴が見られます。ここでは、組織力の強化が必要な企業の特徴を見ていきましょう。
指示待ちの社員が多い
指示待ちの社員が多い組織は、意思決定に多くの時間を要してしまい、状況の変化やトラブルに柔軟に対応することができません。また、指示がないと動けない、言われたことしかやらないといった社員がいると、他の社員のモチベーションに影響するだけでなく、業務の生産性低下につながります。
このような社員が生まれる理由はさまざまですが、一人ひとりに権限とルールをはっきりと伝え、自分で判断して行動できるような自信を付けさせることが大切です。
社員間のコミュニケーションが少ない
社員間のコミュニケーションが少ない企業も注意が必要です。コミュニケーションが不足している職場では、認識の齟齬が頻繁に発生したり、メンバー内の誰かがミスをしてもフォローが遅れたりするといったリスクが考えられます。
コミュニケーションを活発化させるには、誰もが意見しやすい環境の構築や社員間の交流を深められるイベントの企画などを検討してみるとよいでしょう。
業績が下降している
業績が下降していることも、組織力が低下している企業にありがちな特徴です。業績が低迷している企業では、コストカットのために社員の給料を減額したり、リストラを行ったりする可能性もあります。
このような不安定な会社では、将来性が見込めずさらに社員のモチベーションは下がってしまい、悪循環に陥ることになるでしょう。
組織力強化に成功した企業事例
最後に、組織力強化に成功した企業の事例を3つ紹介します。ぜひ組織改革の参考にしてください。
LINEヤフー株式会社
LINEヤフー株式会社(旧ヤフー株式会社)では、上司と部下との1on1に力を入れています。
LINEヤフー株式会社での1on1は、「週に1度30分間、場所を確保し、部下の話を聞く」ことが特徴です。短いスパンで定期的に1on1に取り組むことで、部下の抱える悩みや意見をくみ取り、成長の後押しをする狙いがあります。
1on1を導入するにあたっては、外部専門家の力を借りながらカリキュラムを作り上げ、同時に管理職層の1on1スキルアップを図ることにも注力したそうです。現在は社内に1on1の文化が浸透しており、組織力の強化につながっています。
[出典:LINEヤフー株式会社「『1on1ミーティング』で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション」]
株式会社ダイメイ大阪
株式会社ダイメイ大阪では、モチベーションクラウドを活用して組織の状況を可視化し、改善に務めました。同時に、一人ひとりが主体的に事業に関わってもらうために、会社側が社員と対話をする機会を毎日設け、エンゲージメントの向上を図っています。
また、社員同士のコミュニケーションを活性化させるため、「ありがとうカード」という取り組みも行っています。ありがとうカードとは、感謝の想いをカードに書いて相手に渡す取り組みです。自分の行いが仲間から評価されることでやる気が生まれ、仲間同士の信頼も深くなる効果が期待できます。
同社では、以上の取り組みを通じて、社員の主体性や積極性が向上したことで、業績にもポジティブなインパクトを得ています。
[出典:モチベーションクラウド導入事例 「株式会社ダイメイ大阪」]
株式会社オリエンタルランド
株式会社オリエンタルランドでは、社員自身が主体的に成長し続けられるようなプログラムを提供しているのが特徴です。社員の採用においては、新卒採用だけでなく経験者としての強みを持つ人材の採用を行ったうえで、求める行動を明確に示しています。
求める行動とは、「より良いものを求め続けるチャレンジ意識」「最後まで諦めることなくやり切る姿勢」「一丸となって組織としての力を発揮する」という3つの行動を定めたものです。これをもとに、メンバーの把握、育成計画や業務のアサイン、育成の実施、評価による振り返りという育成サイクルを構築しています。このように、人材力を強化するための取り組みに力を入れることで、社員だけでなく組織の成長にもつながると考えているのです。
[出典:オリエンタルランド株式会社「研修と教育」]
自社に必要な取り組みを実施し組織力の強化につなげよう
本記事では、組織力の概念や組織力向上に必要な取り組みを紹介しました。企業が変化の激しい時代を乗り越えるためには、組織力の強化が不可欠です。まずは自社の課題を明らかにし、組織力強化に向けた施策に取り組みましょう。
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