医療業界でのBPOサービスの市場規模|依頼できる業務内容を解説
社会基盤のひとつである医療業界。医療費の増大抑制や医療従事者の負担軽減の観点から、医療業界においてもBPOの導入が進んでいます。本記事では、医療業界におけるBPOサービスの市場規模を解説し、BPOサービス活用のメリットや依頼できる業務内容を詳しく紹介します。
目次
医療業界におけるBPOサービスの市場規模
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、医療業界のBPOサービス市場規模は2022年時点で2772億4000万米ドル、2026年には4410億8000万米ドルになるといわれています。
医療向けBPOとは、医療機関や医療従事者・組織に対して事務処理などをサポートする業務やプロセスを外部に委託することです。BPOの活用により、医療従事者は本来注力しなければならないコア業務に集中できます。
医療業界では、とくに製薬やバイオ製薬業界でのアウトソーシング拡大、医療費の増加を抑止するニーズ、不正検知サービスなどのニッチなサービスへの需要が高まっています。
[出典:株式会社グローバルインフォメーション「医療向けBPOの市場規模、2026年に4410億8000万米ドル到達予測」]
医療業界でBPOサービスが普及している理由
医療業界でBPOサービスが急成長した背景として、臨床プロセスアウトソーシングの急増が挙げられます。
費用削減のために企業が人員を削減する一方で、医薬品開発の臨床段階が増加し、品質の高い試験結果を維持しなければならない背景があるためです。各企業は自社の製品ポートフォリオを適切に管理するために、医薬品開発業務受託機関にアウトソーシングを行っています。
たとえば2021年4月に、米国のヘルスケアアウトソーシング企業Parexelと、製薬・ライフサイエンス業界向けクラウドコンピューティング企業Veeva Systemsが協力関係を発表しました。両社は、Veevaのクラウド技術とParexelの臨床試験プロセスを融合し、効率的な臨床試験実施に向けて共同で取り組むことを目指しています。
このように臨床プロセスアウトソーシングが、医療向けBPO市場の成長を拡大させているといえるでしょう。
▷BPOとアウトソーシングの違いとは?目的や対象業務・注意点
医療業界におけるBPOサービス活用のメリット
BPOが積極的に活用されている医療業界において、BPOを活用する具体的なメリットについて紹介していきます。
医療業務にかかる費用を削減できる
BPOサービスの活用により、企業はリソース管理や工数などの医療業務にかかる費用の削減が可能です。
たとえば、月初や月末に集中しやすい請求関連業務をアウトソーシングすることで、残業や休日出勤などの時間外勤務にかかる費用の削減につながります。また、事務作業も医療業務に含まれているため、事務員の離職リスク回避や採用・育成コストの削減にも期待できるでしょう。
医療業務の改善・効率化が期待できる
請求業務やその他事務作業などを外部に委託することで、注力すべき医療業務の改善や効率化に期待できます。
たとえば、COVID-19のパンデミックが起きた際、医療機関は他の医療機関と協力して患者のアウトカム向上のために本来の仕事に注力することを余儀なくされました。そこで、医療機関は収益サイクル管理やクレーム処理のようなノンコア業務のアウトソーシングにより、コア業務へ注力することができています。
このようにBPOサービスを導入することで、医療業務の改善や効率化に期待できるでしょう。
医療業務の質向上が期待できる
BPOサービスは、専門性の高い人に業務を委託するだけでなく、バックアップ体制やサポート体制も充実しています。繁忙期やさまざまなトラブルにも柔軟に対応できるため、安心してコア業務に注力できるでしょう。
また、RPAやチャット・音声認識等のICTソリューション導入まで、支援してくれる企業もあります。ICTを活用することで、業務の自動化やヒューマンエラーの最小化を実現できるため、業務の効率化に期待できます。
BCP対策の一環になる
COVID-19のように大規模な感染症の流行や地震などの災害が起きた際には、医療業界での請求業務が滞る場合があります。
そこで、BPOサービスの導入により請求業務をアウトソーシングし、災害や感染症の流行時にも入金が滞る事態を回避できます。結果として、BCP対策としての役割も担うことができるでしょう。
▷BCP(事業継続計画)とは?初心者でもわかる策定の重要性と手順について
BPOサービスに依頼できる業務内容
それでは、BPOサービスにはどのような業務が依頼できるのでしょうか。BPOサービスに依頼できる業務内容は、以下のとおりです。
- 医療事務業務
- 経理・会計業務
- 病院給食の提供
- 訪問介護
それぞれ詳しく見ていきましょう。
医療事務業務
BPOサービスでは、請求・結果報告に関するフォーマットの統一や健康診断に関する業務など医療事務業務の委託が可能です。
国立病院の人員削減による影響を一番受けたのが、事務部門といわれています。病院の経営合理化が進み、国家資格が不要な部門は削減する方向となったため事務職が対象になりました。
そのため、医療機関は状況に応じて事務職の増員・削減を柔軟に行うために受付や病棟の医療事務を代行するためのBPOサービスを活用するケースが増加しています。
経理・会計業務
医療業界の経理や会計業務を委託することも可能です。たとえば、請求書発行・発送や支払いデータの作成は、医療従事者にとってノンコア業務になります。そのため、経理や会計業務をアウトソーシングすることで、本来注力すべきコア業務へ集中できるでしょう。
経理や会計業務には専門知識が求められるため、大規模病院では直接雇用することがあります。しかし規模の小さい医療機関では、BPOサービスのように外部へ委託することが多いです。
病院給食の提供
医療法の一部改正によって、病院給食の提供も外部委託できるようになり、「味が薄い」「冷たくておいしくない」などの悪いイメージから美味しい病院食の提供が可能になっています。
委託先では、栄養バランスに注意を払った上で、普通の食事と変わらない味を追求しています。そのため、患者に満足してもらえる美味しい病院食が実現しているのです。
[出典:厚生労働省「「医療法の一部を改正する法律の一部の施行について」の一部改正について」]
訪問看護
訪問介護に関してもBPOサービスの委託が可能です。
たとえば、レセプト請求や利用者請求といった事務作業の負担を削減できます。事務作業を削減することで、看護のコア業務に集中できるため業務の質向上に期待できるでしょう。
BPOサービスを活用し医療の質を向上させよう
医療業界は、COVID-19の蔓延や臨床プロセスアウトソーシングの急増により、BPOサービスの普及が進んでいます。COVID-19のような感染症や大型地震などが発生した場合、医療業界は多忙になることが予想されます。その際に患者が増加し、請求業務やその他事務作業に時間を割いていては優先すべき業務へ集中できません。
そこで、BPOサービスを活用することでノンコア業務を必要に応じてアウトソーシングでき、コストの削減や生産性の向上に期待できます。また、サービスによってはRPAやチャットなどのICTを取り入れて、業務の効率化を行うことも可能です。
そのため、BPOサービスを積極的に取り入れて委託できる箇所は委託してコア業務へ注力し、医療の質を向上させましょう。
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