中小企業の経理担当の業務一覧|スケジュールや大企業との違い

最終更新日時:2023/07/12

経理アウトソーシング

中小企業の経理業務

企業のお金の流れを管理する「経理」。企業の規模によって業務内容・範囲は異なりますが、中小企業における経理業務の特徴は何なのでしょうか。本記事では、中小企業の経理が担当している業務一覧を紹介します。大企業との違いや1ヶ月のスケジュール、経理業務を効率化する方法とあわせてみていきましょう。

中小企業の経理業務が大変な理由

中小企業の経理業務が大変な理由としては、以下の2点が挙げられます。

  • 一人当たりの業務量が多く範囲が広い
  • 中小企業を対象とする優遇税制・特例への対処がある

一人当たりの業務量が多く範囲が広い

中小企業は、大企業と比較して人員が少ない場合が多くあります。

大企業には経理に特化した専門部署が配置されており、経理のみの作業を行う社員が多数存在するのです。資金力にも余裕があるため、会計ソフトやシステムなどを導入して業務の効率化を図っているケースも多いでしょう。環境が整っているおかげでコア業務のみに注力でき、一人当たりの作業量も軽い傾向にあります。

中小企業は、経理に割ける人員リソースが不足している場合も珍しくありません。一人当たりの業務量が多く、業務内容の範囲が広いことも多々あります。経理担当者が体調不良などで欠勤すると、業務が滞ってしまうこともあるでしょう。

資金力や人員不足が課題となる中小企業において、経理の業務改善にはさまざまな工夫が必要です。適切な対策を取り入れて、業務の効率化を図らなくてはなりません。

中小企業を対象とする優遇税制・特例への対処がある

中小企業には、大企業にはない優遇税制・特例が存在します。企業の成長促進や、投資への支援などを目的とした法令です。

経済産業省の「中小企業税制」によると、中小法人は、平成24年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始する各事業年度分の年800万円以下の所得金額については、税率が23.2%から15%に軽減されています。

設備投資を促す中小企業経営強化税制、接待費などの削減に役立つ交際費課税の特例も、中小企業を助ける制度です。いずれも経営維持において欠かせない、魅力的な施策といえるでしょう。

中小企業ならではの制度を活用するには、専門知識や制度の勉強が必要です。大企業とは処理方法が異なる部分が多く、同じノウハウでは中小企業の経理業務に活かせません。企業規模が違うと適用されるルールも違い、経理業務を煩雑にしているのです。

[出典:中小企業庁「中小企業税制<令和5年度版>」]

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中小企業と大企業の経理業務の違い

中小企業と大企業の経理業務の違いについて、気になる方は多いでしょう。

両者における経理業務の違いについて、業務範囲やツールの導入、待遇面をもとに解説します。

一人当たりの業務範囲の違い

大企業では、経理業務の担当箇所が細かく分けられています。出納・主計・財務が独立した部署としてあり、各業務に専門の担当者を配置しているのです。企業規模が大きいほど、多額の取引が頻繁に行われることも珍しくありません。安全な取引のためにも、分業を行い管理環境を整えることが重要なのです。

中小企業では、経理業務を分担しようにもコスト面で厳しいことが予想されます。出納・主計・財務を一つの経理部署で管轄している場合がほとんどです。企業によっては、一人の担当者が経理業務のすべてを担うことも少なくありません。

中小企業と大企業では、経理業務に割ける人的リソースが大きく異なります。おのずと、一人当たりの業務範囲に差が生まれてしまうのです。

ITツールの導入実績の違い

大企業の場合には、デジタル化を積極的に推進しており、デジタル人材によってITツールを積極的に活用しています。そのため、ツールを利用して経理業務を最大限に効率化しています。

一方で、中小企業は大企業と比べてITツールの導入実績が少ない傾向があり、非効率な方法で経理業務をこなしています。大企業と比べて人数が少ない状態でありながら非効率に作業をしているため、生産性に差が生まれてしまうのです。

待遇面・年収の違い

大企業・中小企業の経理では待遇や年収に下記の表のように大きな差があります。

企業規模年収
大企業約600万円
中小企業約400万円

企業規模の違いに伴う資金力の差や根本的な業務内容の違いも、年収に差が出ている要因です。大企業であれば、経理担当者が経営戦略や決算報告会など経営に関わる業務に携わります。企業運営に直結する重要な役目であり、その分の報酬が含まれているとすれば年収が高くなります。

一方で中小企業の場合は、大企業のような経営視点での能力を求められることがありません。高水準なスキルよりも、幅広く経理業務をこなせるかを要求される傾向にあります。

このように求められる業務の差によって給与に差ができてしまうのです。

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中小企業の経理担当の業務一覧

中小企業の経理担当者は様々な業務に携わります。ここでは、日次・月次・年次に分けて経理担当者の業務内容について紹介していきます。

日次業務

中小企業の経理担当者が行うものに「日次業務」があります。日常的に処理する経理業務のことで、主に以下の作業です。

  • 現金の出納管理
  • 当座預金・普通預金の管理
  • 経費精算
  • 伝票の記帳・整理
  • 売上集計
  • 会計システムへの入力

現金の出納管理は、日次業務の中でとくに重要視されています。現金で行った取引を管理し、入出金を出納帳に記述してから残高を確認します。

当座預金・普通預金の管理や経費精算の後に行うのが、会計システムへの入力作業です。作成した会計書類から、必要なデータを入力していきます。

月次業務

「月次業務」とは、月に1度必要となる経理業務です。中小企業の経理担当者が行う月次業務には、以下のようなものがあります。

  • 取引先への請求と改修
  • 仕入れや経費の支払い決済
  • 月次決算と報告
  • 資金繰り表の作成
  • 源泉徴収
  • 給与計算
  • 社会保険料の支払い

取引先への請求や資金繰り表の作成、給与計算などやるべきことが膨大にあります。中でも給与計算や社会保険料の計算は煩雑であり、外部に委託している企業は珍しくありません。

給与計算をミスしてしまえば、社員とのトラブル発生リスクも懸念されます。不安な場合は顧問税理士に相談するなど、月次業務を一部アウトソーシング化するといった検討を行いましょう。

年次業務

経理業務は年末年始や決算期に多忙を極めますが、理由は「年次業務」によるものです。中小企業の経理における年次業務には、以下のようなものがあります。

  • 年次決算
  • 年末調整
  • 税金計算と納付
  • 償却資産の申告
  • 棚卸

会社法と税法をもとに年間の決算を実施し、決算の時期や回数は企業により異なるほか、税金の申告なども必要です。

年末調整は大企業と同様に、12月に行われます。控除や税金の計算などを従業員ごとに行うため、時間・量ともに多くの作業が必須です。中小企業規模といえど、年次業務にかかるコストは侮れません。

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中小企業経理担当の1ヶ月のスケジュール

経理業務における1ヶ月間のスケジュールを知れば、自社の予定管理にも役立てられます。

中小企業の経理担当者が1ヶ月のスケジュールを出すと、どういった内容になるのでしょうか。月初、月半ば、月末に分けて解説します。

月初

中小企業の経理担当者は、月初に取引先からの入金確認を行います。月末払いを採用する企業が多く、入金タイミング的に月初の確認が適しているためです。企業によっては、領収書発行に伴う事務作業も発生するでしょう。

前月分の売上や経費などによる入出金も、月末に締められます。前月分の経理データを月初に整理し、月次決算に反映させるための準備をするのです。経費精算が月次業務に含まれている企業の場合は、前月分の経費精算も月初に行うことがあります。

月半ば

月半ばは、経理業務が落ち着いている時期です。余裕があるうちに、月末のための準備を始めるケースも多いでしょう。月半ばの主な経理業務を挙げると、住民税や源泉所得税の納付処理があります。

所得税は事業所の管轄内となる税務署に、住民税は各市区町村へ納める税金です。控除した月の翌月10日までに納付を済ませましょう。国税庁によると、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、所得税を半年分まとめて納付可能とする特例もあります。特例の適用ができるか、早めに確認を行ってください。

[出典:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」]

月末

月末は、月次業務が集中する時期です。中小企業の経理担当者にとって、繁忙期となるでしょう。

メインの月末業務といえば、社員に支給するための給与計算です。技術手当や休日労働割増賃金など、給与体系の種類が増えたことで計算処理は煩雑化しています。

請求書を受け取っている取引先への精算も、済まさなければなりません。翌月に支払いをしてもらうための請求書の発行や、社会保険料の納付なども合わせて必要となります。

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中小企業の経理担当業務を効率化する方法

中小企業で経理業務を効率化するには、以下の方法がおすすめです。

  • 中小企業会計要領を導入する
  • ITツールを導入する
  • アウトソーシングを活用する

それぞれ詳しく解説します。

中小企業会計要領を導入する

中小企業会計要領とは、中小企業向けに用意された会計ルールです。自社の経営力や資金調達力向上のほか、経営状況を把握する目的で定められています。

会計要領のルールに従えば、人員不足の中小企業でも無理なく決算関連書類が作れるでしょう。

要領に沿った会計処理を行い業務適正化が進めば、金融機関や取引先からの信用向上も期待できます。取引先との契約拡大、金融機関からの資金調達が円滑になるといったメリットにも繋がるでしょう。中小企業会計要領は、導入を義務付けられているルールではありません。義務ではない分気軽に導入でき、経理業務の効率化にも役立つ頼もしい存在なのです。

ITツールを導入する

経理業務は、手作業やエクセルで単純な入力を繰り返すことが多くあります。見かけ以上に多大な時間や労力を要し、単調さから些細なミスを招きがちです。会計ソフトや経理システムを導入すれば、日々の経理業務を効率化できるでしょう。

クラウド上でのデータ管理が可能なITツールも、多数あります。クラウドデータなら時間や場所にとらわれず、自身のタイミングで経理作業が可能です。

ITツールを導入すると処理スピードが向上し、データでやり取りできるため報告・伝達がスムーズになります。社内はもちろん、取引先との意思疎通も円滑に行えるでしょう。経理業務を大きく効率化できることから、ITツールの導入をおすすめします。

【2023年最新】おすすめの会計ソフト15選徹底比較|失敗しない選び方とソフトの特徴

アウトソーシングを活用する

中小企業の経理業務の効率化を図るには、業務を外部へ委託するアウトソーシングの活用もおすすめです。

アウトソーシングにより、業務範囲が広く作業量の多い経理担当者の業務負荷を軽減できます。より重要な業務へ集中でき、効率向上が期待できるでしょう。

新規で経理担当者を採用する必要がないため、採用コストや教育コストの削減も可能です。専門性を持つ人材に業務依頼ができるアウトソーシングなら、コストを抑えながらも安心して利用できます。

【2023年版】経理アウトソーシングのおすすめ14選比較|メリットや費用の目安

経理業務を効率化し一人当たりの業務負担を軽減しよう

中小企業の経理は、一人当たりの業務量が多く範囲が広いことがよくあります。中小企業ならではの処理もあるため、業務過多になるケースが多いのです。

慢性的に人員不足である中小企業では、出納・主計・財務をすべて一人で担当する場合も珍しくありません。資金力も限られるため、大企業のように人員やITツール導入をスムーズに進めるのは困難でしょう。

経理担当者の業務負担を軽減させるならば、、ITツールやアウトソーシングの活用を検討してみてください。作業の自動化や外注化で、大幅な効率化が期待できます。

さまざまな対策を講じることで経理業務を効率化し、中小企業の経理担当者一人当たりの業務負担を軽減しましょう。

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