経理と財務の違いとは?仕事内容や求められるスキルを解説

最終更新日時:2023/12/11

経理アウトソーシング

経理と財務の違い

企業活動に必要なお金に関する業務、「経理」「財務」。企業規模が小さい場合、経理と財務を兼ねるケースもあるため、厳密な違いを知らないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、それぞれの仕事内容や求められるスキルなど、経理と財務の違いについて解説します。

経理と財務の違いとは?

経理と財務は、ともに企業のお金を管理する業務です。

しかし、扱うお金の種類や仕事内容には、大きな違いがあります。はじめに、その違いを確認しておきましょう。

【経理と財務の違い1】扱うお金の違い

経理は、過去から現在において、企業の中で動いているお金を扱うのに対し、財務が扱うのは、資金や資産など企業経営で将来的に必要なお金です。

現時点で動いているお金を扱うか、これから先のお金を扱うかという点が経理と財務では大きく違います。

【経理と財務の違い2】仕事内容の違い

経理の主な仕事は、日々発生する取引や入出金の管理、「損益計算書」「貸借対照表」「株主資本等変動計算書」といった決算書類の作成などです。

それに対して財務は、会社の資金繰りや資産状況を分析し、予算編成や資金調達など、今後の経営に向けたお金の使い方を考えるのが主な仕事になります。

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経理の仕事内容

ここからは経理の種となる仕事内容について紹介していきます

売掛金・買掛金の管理

商取引では、その場で現金のやり取りをせず、後日まとめて精算する「掛取引」が一般的です。

この取引において、納品した商品やサービスに対して請求できるお金を「売掛金」、自社が支払わなければならないお金を「買掛金」といいます。

経理の仕事のひとつは、これらのお金を管理して未払いや未回収が生じないようにすることです。

伝票の記帳・管理

伝票とは、取引や入出金の内容を簡潔に記した書類です。どのような伝票を扱うかは企業によって異なりますが、よく使われるものに「入出金伝票」「仕入伝票」「振替伝票」などがあります。

このような伝票を記載し、保管することも経理業務のひとつです。

以前は専用の用紙に手書きで記載することの多かった伝票ですが、近年は、会計システムを導入し、データ化する企業も増えてきました。

在庫管理

在庫品は、企業にとっては金銭価値があるととらえ、お金に置き換えた勘定科目で管理します。つまり、在庫管理も経理業務の一環ということです。

仕入数と販売数を照合し、在庫管理の帳簿に記録を残します。

経費の精算

営業など、従業員が業務に関する活動をした際に発生した費用を、領収書などの書類をもとに支払う仕事が、経費の精算です。

具体的には、業務に必要な事務用品や参考資料を立て替えた際の「小口精算」、電車やバス、タクシーを利用した際の「交通費精算」、宿泊代や日当など出張した際の「旅費精算」の3種類があります。

従業員から申請を受け、領収書などを確認、その領収書と引き換えに現金精算する作業です。

請求書の発行

購入された商品やサービスに対して、支払いを要求する請求書の発行も経理業務のひとつです。企業によっては、営業などのセールス担当部署が担当することもありますが、代金の支払いには請求書が必要で、支払いが行われない際は、取引の証明にもなります。

請求書の発行と保管は法律によって義務づけられ、自社の売上を管理するうえでも重要な書類です。

小切手・手形の管理

企業間の取引では、現金でのやり取りをせず、小切手や手形を用いる場合があります。小切手や手形は現金に代わるはたらきをするため、管理や発行も経理が行う業務です。

ただし、小切手と手形は、現金化などの細かい仕組みは異なります。そのような違いを把握し、適切に処理することも、経理業務では重要です。

財務諸表の作成

財務諸表は、企業の事業実績をまとめたもので、会社法により作成が義務づけられている書類です。作成するのは1年に1度の決算時ですが、納税する法人税の確定、次年度の経営方針の資料となるなど、非常に重要な役割を持っています。

作成が1年に1度とはいえ、日々の業務と並行して行わなければならないため、財務諸表を作成する時期は、経理担当者にとってはもっとも忙しくなる時期といって差支えないでしょう。

減価償却

長期利用を目的に購入した資産(不動産や車など)は、使用年数が増えるほど価値が下がります。その点をふまえ、購入した年の経費として購入費用の全額を計上するのではなく、何年かに分割して計上できるというルールが減価償却です。

この会計処理も、経理が行います。減価償却できる資産や計算方法には規定があるので、経理業務には、それらの知識も必要です。

年末調整

企業が従業員に給与を支払う際は、所得税と復興特別所得税を源泉徴収として差し引いています。しかし、源泉徴収額と納めるべき税額が必ずしも一致するわけではありません。

その差額を調整する手続きが、年末調整です。従業員に申告書を提出してもらい、経理がとりまとめて処理を行います。文字通り年末に行う作業となるため、12月は経理の繁忙期といえるかもしれません。

税金の納付・申告

税金に関する申告や納付も、企業経営における経理の重要な仕事です。

法人に課せられる法人税、法人事業税、法人住民税、消費税、固定資産税などを計算して期日までに申告し、納税をすませます。

株主総会用事業報告書の作成

事業年度の終了から一定期間内に開催する定時株主総会では、事業報告書を作成して提出しなければなりません。この報告書の作成も一般的には経理担当です。

決算終了後、株主総会の開催に間に合うように、作成を進めることが求められます。

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財務の仕事内容

続いて、財務の仕事内容を確認しましょう。

資金の調達

事業拡大や経営状況の改善に向けた資金調達は、財務の重要な仕事です。経営を左右するといっても、過言ではありません。

経理の仕事で解説した決算書類や事業計画案をもとに、資金調達の計画を立て、動いていきます。銀行と融資交渉すること、株式発行での資金調達などがその一例です。

予算の管理

経営方針の決定、業績評価に必要不可欠な予算管理も財務が担当します。

具体的に管理するのは、今後の売上を見積もる「売上予算」、商品原価を見積もる「原価予算」、人件費や設備費などの「経費予算」、各種予算から算出する「利益予算」の4点です。

特に利益予算は、今後の企業経営を判断する重要項目です。

財務計画の策定・実行

財務計画とは、資金やその流れ、各種予算などを明らかにすることです。

お金の流れに透明性が持たせられるため、金銭面での経営の指標となることはもちろん、投資家にとっても資金援助の判断材料となります。

M&A業務

M&A業務とは「企業合併・事業買収」を意味します。自社が発展を続けるための将来予測、資金調達や運用、財務計画立案の一環として、財務が担当することの多い業務です。

対象企業や事業の選定に始まり、交渉、契約までを行うため、企業生命のカギを握る内容といってもよいでしょう。

株式・社債の発行

株式や社債は、資金を調達する方法のひとつです。将来を見据えた資金調達は財務の役割のため、発行に関する業務も手がけます。

IR・監査の対応

IRは、投資家向けに経営状況を開示する業務です。資産状況、経営にまつわる情報を伝えるため、一般的には財務が担当します。

また、財務状況に不正や誤りがないかを調査する監査も、基本的には財務が対応する仕事です。

経理に向いてる人

経理業務の主な仕事内容がわかったところで、経理に向いている人の特徴を見ていきましょう。

数字・計算が好きな人

経理は、請求書の作成や経費精算など、常に数字と向き合う仕事です。日常生活では目にしないような、大きなケタの数字を扱うことも少なくありません。

数字や計算に苦手意識があると、そのような数字を見ただけで萎縮してしまい、データ入力で思わぬミスをすることもあるといいます。

しかし、数字に苦手意識がない人であれば経理に向いている人に当てはまるでしょう。

地道な仕事が苦にならない人

経理業務は、何種類もの伝票を1枚1枚処理しながら、お金を管理する仕事です。現金の管理では、たとえ1円でも違えば、すべての書類を洗い直すなどの作業が発生します。

地道にコツコツと積み上げていくこのような作業が苦にならない人であれば、経理は向いているといえるでしょう。

計画的に動ける人

月次単位の給与計算、年次単位の年末調整や決算作業など、経理業務の多くは期日までに終わらせなければなりません。

明日のことだけでなく、常に先の見通しを立て、計画的に動ける人は経理に向いています。

細かい部分まで配慮できる人

預貯金管理、伝票確認などは、日付、金額という細かい数字をひとつずつ確認し、ミスや誤差のないように処理する必要があります。特に決算では日付が重要になり、金額は1円単位まで合わせなければなりません。

ついうっかり見落としてしまうことも、ないわけではありませんが、細かい部分まで配慮できる人なら、見落としも少なくなるでしょう。

対話力・協調性がある人

数字に向き合う経理業務ですが、時には金額の確認など、自社の従業員や社外の人とコミュニケーションを取らなければならないことがあります。

お金に関することは、お互いに神経質になりがちです。しかし、対話力や協調性があれば、スムーズにコミュニケーションがとれるでしょう。

危機管理能力・注意力のある人

細かい数字を扱うからこそ、危機管理能力や注意力がある人も経理業務に向いているといえます。

例えば、ミスの出やすいポイントを事前に押さえて作業できれば、ミスをしてやり直しというムダが発生しません。金銭の流れに不審な点を見つけられれば、トラブルを未然に防ぐこともできるでしょう。

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財務に向いてる人

では、財務にはどのような人が向いているのでしょうか。主な特徴を4つ挙げてみます。

社交性のある人

財務計画の策定、金融機関への融資依頼や投資家への協力依頼、株主への説明など、財務業務には人と接する機会も多々あります。企業としての主張もしながら、相手の意見に耳を傾ける柔軟性も必要です。

数字を扱う業務とはいうものの、人と接することを楽しめる社交性のある人にとって財務は、向いているといえるでしょう。

提案力・説明力・対応力がある人

財務は、将来を予測し、経営方針の判断材料を提供する業務です。説得力のない提案や説明では、経営陣の賛同はもちろん、資金提供者の協力も得ることはできません。

根拠のある情報を提示し、相手をうなずかせる提案力、説明力、対応力は、財務担当者にとっては必要不可欠ともいえます。

会計・税務に関する知識がある人

財務の基本は、お金です。会計や税に関する広い知識を持っているにこしたことはありません。

税金など、年度によって制度が変わることもあります。

経営という視点から、現時点で動いているお金、これから動かしたいお金をしっかり把握し、法律に則った処理ができる人は財務に向いているといえるでしょう。

経理業務に求められるスキル

向き不向きだけでなく、経理業務では一定のスキルも必要です。経理業務に求められる主なスキル3つを紹介します。

簿記のスキル

伝票処理や帳簿の記載など、経理業務の基礎となるのが簿記です。資格試験もあるので、合格して資格を得ればスキルの証明にもなります。

なお、簿記の資格には1級〜3級までありそれぞれで勉強範囲や難易度が異なるため、あらかじめどの級が必要なのかを整理しておきましょう。

経理が取得すべきおすすめの資格一覧!資格の必要性や取得難易度を解説

PCの操作に関するスキル

近年は、WordやExcelで報告書や請求書を作成したり、専用の会計ソフトで経理処理をしたりというケースが増えてきました。

PCやWord、Excelの基本操作を身につけておくことは、経理以外の業務にも役立ちます。

会計ソフトは企業によって導入しているものが異なりますが、使い勝手のよいものが多いので、PC操作のスキルがあれば、心配はいらないでしょう。

コミュニケーションスキル

伝票や請求書の内容確認をしたり、税制の変更など必要な情報を伝えたり、経理担当者がほかの従業員と接する場面は、意外と多くあるものです。

コミュニケーションスキルがあれば、対人での仕事もスムーズに進みます。お互いが気持ちよく仕事をするためにも、身につけておきたいスキルのひとつです。

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財務業務に求められるスキル

では、財務業務にはどのようなスキルが必要なのでしょうか。主なスキルを2つ挙げてみます。

正確に資金を管理するスキル

財務の仕事のひとつは、保有する資金をもとに、どのような経営を行うのがベストかを考えることです。そのためにも、資金を管理するスキルは必要不可欠です。

適切な判断をくだすためには、自社の経営を俯瞰し、不明な資金があれば確認するなど正確性も欠かせません。その正確性があることも、スキルのひとつといってよいでしょう。

金融全般に関するスキル

財務計画の策定、監査、M&A、株式や社債の発行など、財務業務は多岐に渡ります。あらゆる場面で、金融の知識が必要です。

経理や簿記だけでなく、税や経済的な知識が役立つ面もあるでしょう。

金融全般に関する幅広いスキルは、財務の仕事に、やりがいももたらしてくれるはずです。

経理と財務の違いを理解しそれぞれに役立つスキルを身につけよう

経理と財務の違いについて、詳しく解説しました。

混同されがちな業務ですが、経理は過去や現在のお金を扱い、財務は将来的なお金を扱うなど、扱うお金の種類や仕事内容には、いくつもの違いがあります。

それぞれの仕事の特徴を理解し、役立つスキルを身につけて、日々の仕事に生かしていきましょう。

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