人材配置の目的とは?考え方や最適化する方法を解説
社員のスキル・経験を基に適材適所へ配置する人材配置。労働力不足を解決するために欠かせない手法として注目されていますが、人材配置が最適化されているかわからないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、人材配置の目的と考え方や最適化する方法を解説します。
目次
人材配置とは?
人材配置とは、従業員の適正や能力・経歴などを踏まえて適切な部署に配置するマネジメント手法です。経営目標を達成するには、在籍している人材をいかに有効活用できるかがポイントです。
また適性な人材配置をおこなうと、従業員の生産性向上や離職率の減少にも効果が期待できます。他にも誰にどの部署で何の業務を担当してもらうかを見極めて配置することで、最低限の人員で作業ができるため企業の生産性の向上にもつながるのです。
人材配置と人員配置の違い
人材配置と似た言葉に、人員配置があります。ほぼ同じ意味で使われることがありますが、厳密には異なります。
人材配置は、前述した通り従業員の適正や能力・経歴などを踏まえて適切な部署に配置するマネジメント手法です。人材が持つスキルや経験など総合的な判断をして配属します。
人員配置は、計画を達成するために誰がどの仕事をおこなうかを決めることです。組織の人材を部署やチームに適切に再分配することを意味しています。
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人材配置を最適化する目的・得られる効果
多くの企業で人材配置の最適化が実施されていますが、どのような目的があるのでしょうか。ここでは、人材配置の目的や得られる効果を紹介します。
人材を有効活用して経営目標を達成するため
経営目標を達成するには、従業員のモチベーション維持と生産性の向上が必要です。そのためにも、適正な人材配置が重要です。
従業員のポテンシャルを最大限に発揮できる部署に配置ができれば、業務効率が向上し経営目標の達成につながります。
従業員のモチベーション・エンゲージメントの向上のため
従業員のモチベーション・エンゲージメントの向上には、一人ひとりの能力と業務がうまくマッチしていることがポイントです。
パフォーマンスを最大限に発揮できると、従業員の達成感や充実感につながり離職率の低下が期待できます。離職率が低下すると採用活動に時間をかけずに済むため、教育の時間や手間の削減にもなります。
他にも人材配置を最適化することで、従業員同士のコミュニケーションが活発になることもメリットです。
従業員を計画的に育成をするため
適切な人材配置は、従業員の育成にもつながります。流動的に従業員の人材配置をおこなうと、新たな部署やチームで個人の潜在能力を上手く引き出せる可能性があります。
また適正や向いている業務が可視化できると、従業員のパフォーマンスを効率的に発揮できる場所がわかるため計画的な人材の育成が可能です。
他にも、さまざまな業務を経験することで、新しいアイデアや施策が生まれることで、企業全体の生産性向上も期待できます。
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人材配置のタイミング・考え方
人材配置のタイミングは主に6つのケースが考えられます。
- 人材採用
- 人事異動
- 昇格・降格
- 解雇
- 雇用形態の変更
- 組織の変更
ここでは、それぞれのケースを詳しく解説します。
人材採用
人材採用は、新卒採用のタイミングと中途採用のタイミングが主です。経営目標達成のために人材が不足している場合は、採用活動を強化します。特に中途入社は前職でのスキルを即戦力として使え、新しい価値観を企業に根付かせることにも有効です。
新卒社員の場合、採用直後は教育に時間と手間がかかります。しかし、知識やスキルが定着できると企業の成長につながります。企業の経営目標を達成するためには、離職率を下げ普段から人材の採用や育成が大切です。
人事異動
人事異動は組織の活性化に効果的です。定期的に環境を変え他部署の業務をおこなうことで、仕事へのマンネリを防止し部署間のコミュニケーションが活発になります。
また新しい考え方やアイデアが生まれる可能性も高くなるため、新しいイノベーションの創出にもつながるでしょう。
昇格・昇進
従業員のスキルが向上し業務の幅が広がるタイミングで昇格させて、より責任感のある仕事を与えるとさらに成長につながります。
その際は、基準を満たして昇格させるのではなく個人の適性や能力に合わせてポジションを決めるようにしましょう。本人の意向も考えずに昇格させると、重責からモチベーションが下がってしまう可能性もあるからです。
解雇
会社の業績や予算管理が好ましくない場合には、人材コストを抑えるために解雇やリストラなどで人材の見直しをすることがあります。
解雇は労働基準法の観点から訴訟に発展する可能性もあります。やむを得ず解雇する際には、法律の専門家への相談をおこない適切な対応をしましょう。
雇用形態の変更
雇用形態を変更する際も、人材配置をおこなうタイミングです。多様な働き方が増えている現代において、従業員は自分のやりたいことや理想の生活・価値観を大事にしながら仕事をしたいと考えています。
そのため正社員からパート・短時間勤務など従業員の要望にあわせて、企業は柔軟に異動や配置転換をすることが求められます。
組織の変更
部署の創設・統合・廃止といった組織体制の変更がおこなわれる際にも人材の適正化を実施します。
とくに創設されたばかりの中小企業は、経営方針の決定がスピーディーにおこなえるため、積極的な経営戦略の見直しが可能です。
しかし成功体験がなく新たな人材配置をすると、従業員に精神的な負担を与えてしまい早期離職につながることが考えられます。結果をすぐに求めずに、従業員の成長を一緒に考えていくことが大切です。
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人材配置の課題
人材配置をすることでさまざまな効果が期待できます。しかし、人材配置を間違えると課題もでてくるため注意が必要です。ここでは、具体的な課題を解説します。
人材配置の最適化が実現できていない
人手不足が顕著な場合、能力や業務内容を考慮せず人材を配置すると業務が非効率になる可能性があります。
他にも優秀な従業員から部署の配置を検討していく傾向が多いため、平均的な能力の従業員は後回しになることも考えられるでしょう。
能力とミスマッチな部署での業務は、従業員のポテンシャルが十分発揮されないだけでなく、モチベーションやエンゲージメントの低下にもつながります。
経営層の独断で決められてしまっている
従業員の持っている能力や業務内容を考慮せずに経営層が独断で人材配置を決めてしまうと、人材の適正化にはつながりません。
従業員の能力と関係ない業務を任せると非効率になるだけでなく、精神面にも悪影響を及ぼすため人材育成につながらず離職率が向上する可能性があります。
企業に根付く慣習によって決定されている
人材配置の基準が明確になっていないと、企業に根付く慣習や勤務年数・業績などの基準で配置決定されるケースがあります。
慣習で人材配置が決まると、従業員のポテンシャルが活かせないだけではなく、適正な評価につながらず離職率が高まる可能性があるため注意してください。
人事部門の人的リソースが不足している
人事部門は、採用・育成・評価・労務管理まで人材に関わるほとんどの業務を担当しています。業務が多岐に渡るため、人材配置にまで手が回らないことがあります。
人事部門のリソースが不足していると従業員の評価ができず、働きやすい環境づくりや教育指導の構築もできません。
人材配置の目的が理解されていない
人材配置の目的が理解されていないと適正な取り組みができず無駄になってしまいます。
人材配置の目的は、企業の活性化です。組織の現状を把握し改善点を明確にすることが大切なので、「早期離職を防ぎたい」「新しい人材を増やし戦力を強化していきたい」など具体的な目的を決めて取り組みましょう。
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人材配置を最適化するための手順
人材配置を最適化するには、手順を明確にして具体的な施策に落とし込む必要があります。ここでは、人材配置をおこなう手順を紹介します。
現在抱えている課題を明確にして整理する
自社が抱えている課題を洗い出し、優先課題に順位をつけましょう。
課題が複数ある場合は、同時並行で課題を解決すると時間も労力もかかります。一つひとつの課題に向き合って解決してください。規模が大きい企業は、部署ごとに分けて課題を整理することも効果的です。
人材の配置状況・適正人数を確認する
次に、人材の配置状況や適正人数の確認をしましょう。その際に、人材のデータを整理しておくと人材配置の客観的な判断材料になります。
その後、従業員の情報をもとに適正な人数を確認してください。適正人数が決まっていないと、従業員の配置に偏りが出る可能性があります。人材配置後に従業員が最大限のパフォーマンスが出せるようにしてください。
従業員の適正やスキルを把握する
適正な人材配置をおこなうには、誰をどの部署に配置していくかが重要なので個人の適正やスキルを把握しておきましょう。
人材配置に主観が入らないようにするためにも、持っている資格や経歴など客観的な情報を記録してください。
また人材分析ツールを活用して個人のタイプを把握しておくと、相性のよい上司や部下が配置できるため働きやすい環境づくりにも役立ちます。
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従業員に希望をヒアリングする
従業員に今後のキャリアや希望の部署をヒアリングして、情報の一元管理をしておきましょう。
能力や経歴以外にも従業員のワークライフバランスを考慮することで、会社へのエンゲージメント向上にも期待できます。
ヒアリングをする際には、従業員が質問に答えやすいよう工夫することもポイントです。話す機会の確保が難しい場合は、アンケートで異動の希望を聞く方法もあるため状況にあわせて取り組んでください。
人材配置を実行した後に効果を測定する
人材配置を実行した後は、どのような効果が得られたのか測定をしましょう。異動や配置転換の対象となった部署や従業員へのヒアリングや、アンケートの実施をするとより効果的です。
人材配置の効果が実感できれば実施内容やノウハウを記録し、もし効果がなければ改めて人材配置を見直す必要があります。
人材配置の最適化に役立つフレームワーク
人材配置検討する上で役立つフレームワークがあります。現状の把握や問題点の抽出・分析がしやすくなるので、ぜひ活用してみてください。
SWOT分析
SWOT分析とは、強み(Strengths)弱み(Weaknesses)機会(Opportunities)脅威(Threats)の4つの項目で情報を整理するフレームワークです。主に企業や事業の現状把握をするために活用されています。
縦軸で現状の内部・外部環境を記載し、横軸で組織のプラス要因とマイナス要因をまとめます。4つの項目でまとめることで、自社の現状把握が可能です。
SWOT分析のメリット
SWOT分析を活用するメリットは、内部・外部環境、機会・脅威などに目を向けることで客観的な分析ができる点です。自社で分析をすると、どうしても強みだけに目がいってしまいます。しかし、客観的な視点で自社を分析することで新たな発見が可能です。
また分析した結果を書き出すため、視覚的にわかりやすく確認ができます。SWOT分析はチームでおこなうことができるため、チームの情報共有や意思統一もしやすいです。
SWOT分析の活用方法
SWOT分析を最大限活用するには目的を明確にすることが重要です。目的が不明確なままSWOT分析を進めてしまうと、ポイントがずれてしまう要因になります。
また対象の顧客や競合企業の前提条件を整理することも大切です。前提条件が定まっていなければ、メンバーの認識に差が出てしまう可能性があります。
他にもSWOT分析をおこなう際には、さまざまな視点をもったメンバーが参加した方がより多角的な分析ができます。
SWOT分析はポイントを抑えておこなわなければ、非効率になる場合もあるため注意してください。
TOWS分析
TOWS分析とは、SWOT分析でまとめた強み(Strengths)弱み(Weaknesses)機会(Opportunities)脅威(Threats)を掛け合わせて具体的なアクションプランを立てる方法です。
SWOT分析にそれぞれを掛け合わせて分析することから、クロスSWOT分析とも呼ばれています。
TOWS分析のメリット
SWOT分析では現状分析はできるものの、具体的な戦略を考えることができません。そこで、SWOT分析に改善の方向性や妥当性の検討を加えたのがTOWS分析です。
TOWS分析をおこなうことで、具体的なアクションプランが立てやすくなり人材配置がスムーズに実行できます。
TOWS分析の活用方法
TOWS分析もSWOT分析と同様に、まずは目的を明確にします。企業にとってTOWS分析をおこなう目的はたくさんあるため、明確に絞り込まなければ意見にばらつきが出てしまい分析の精度が下がってしまいます。
またTOWS分析をおこなう際は、自社と他社の情報を正しく把握しましょう。間違った情報で分析すると自社にとって有効な分析にはなりません。担当者1人ではなく、さまざまな視点を持った人と複数人で調査や分析をおこなってください。
ロジックツリー分析
ロジックツリー分析とは、1つの課題を細分化し原因を追求しながら改善策を特定する手法です。木が1つの幹からいくつも枝分かれしており、さらに小枝に分かれていることから名付けられました。
ロジックツリー分析を使って要素を分解することで、効果的な課題の解決方法に気づけます。
ロジックツリー分析のメリット
ロジックツリー分析のメリットは、問題点が発見しやすい点です。問題を定義し原因を書き出すことで、問題点に関わる全体像の可視化ができます。そのためメンバーにも情報共有ができ、メンバー間で共通認識が持てます。
また、要素を分解するためには改善したい原因を見つけた際に解消方法と議題で別のロジックツリー分析の作成が可能です。つまり、ロジックツリー分析は解決策を考えやすいというメリットもあります。議題にのぼった解決のアイデアを書き出し、実現するためのアクションプランをリスト化してください。
他にも要素を書き出してアクションプランの優先順位をつけたり、全体像が可視化されるためメンバーに必要性の共有ができたりとメリットが大きいです。
ロジックツリー分析の活用方法
ロジックツリー分析を活用する際にはまずは仮説を立てましょう。事前に仮説を立てることで、新たなアイデアや切り口が見つかり、今ある要素以外の要素を書き出せます。
また、MECEに考えることも重要です。MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、「重複せず全体的な漏れがないこと」を意味します。
重複や漏れが発生してしまうと、無駄な投資や生産性が低下する可能性があり、ロジックツリーに見落としがあることを意味します。重要な事案を見落としてしまうと、問題解決が最初に戻ってしまう可能性もあり失敗することにもつながるため注意してください。
人材配置を最適化する際のポイント
従業員や部署が多い企業では、最適な人材配置が容易ではありません。ここでは、実際に役立つポイントを紹介します。
ピープルアナリティクスを活用する
ピープルアナリティクスは、従業員の情報をデータベース上に保管し分析できるツールです。IT技術の進化で人事に関係する業務でもデータ分析が主流になりつつあり、Googleなど多くのT企業が導入を進めています。
取得した情報から従業員の特性やスキル・モチベーションまで分析できるため、より効果的な人材の最適化が可能です。
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社内公募制度を活用する
社内公募制度とは、人材を募集している部署への異動を呼びかけ従業員が応募する制度です。
人材採用と同様に、書類選考や面接試験を実施することが多いです。選考に通った従業員は希望する部署で働けるため、モチベーション向上にもつながります。またその部署で働きたいという意思の確認にもなるため、部署にとってもメリットがあります。
PDCAサイクルを意識する
人材配置は「ヒト」の管理がメインですが、さらに広い視点で考えると「売上」「経費」「情報」といった観点も大きく関わっています。
限られたリソースを有効活用するには、人材配置の最適化をできるかがポイントです。より効果的な人材配置をおこなうためにも、PDCAサイクルを意識しながら取り組んでいく必要があります。
人材管理システムを活用する
人材管理システムとは、従業員の情報や評価・配置など人事に関わる業務に活用できるツールです。
企業全体の目標だけでなく、従業員一人ひとりの目標設定や経営層の評価までのプロセスをクラウド状で一元管理できます。他部署とも情報共有がスムーズにできるため、人事管理の最適化にも効果的です。
後継者の育成を視野に入れる
人材配置を実施する際には、後継者の育成も視野に入れることが重要です。事業を継続していくには、業務の担当者が休職・離職・転勤になっても、仕事がまわるようにしなければなりません。
特定の担当者が在籍するタイミングで、あらかじめ後継者を管理するサクセッションプランの実施をしましょう。
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人材配置を最適化し企業目標を達成しよう
最適な人材配置は、従業員の能力を最大限に活かすことができ精神面にもよい影響を与えます。したがって、モチベーションやエンゲージメントの向上にも期待ができます。
企業全体にとっても生産性向上や組織力の活性化などが見込まれるため、経営目標を達成できる可能性が高まるでしょう。本記事で紹介した人材配置の手順やポイントを参考に、人材配置の適正化をおこなってください。
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