定性評価とは?定量評価との違いや評価方法・項目、メリットとデメリットを解説

最終更新日時:2024/04/02

人事評価システム

定性評価とは

数値化が難しい事柄を評価する「定性評価」。事務職や保育・看護職など、成果の数値化が難しい職種の人事評価に用いられ、社員の知識や規律性、積極性を評価します。本記事では、定性評価とは何か、定量評価との違いや評価方法・項目をメリットとデメリットと併せて解説します。

この記事の要約

・定性評価とは、数値化しにくい業務に対して一定の評価基準を定めて社員を評価する方法のこと
・数値化できない項目を評価することによって、社員のモチベーションや成果の向上につながる

定性評価とは?

定性評価とは、数値化の難しい事柄に対して一定の評価基準を定め、社員の特性を評価する方法です。

一般的には求められる姿を目標に掲げ、その目標に対する社員の意思決定プロセスや行動パターンを評価します。

売上などの数的な成果指標に対して行う定量評価と組み合わせることで、ハイパフォーマーの特性を理解することにも役立てられます。

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定性評価と定量評価の違いとは?

定性評価と定量評価の主な違いは、目標に対する評価の視点です。

定量評価とは、金額や個数などの数値化できる項目に対して評価を行う方法です。客観的なデータに基づいて判定されるため、公平性が保たれやすい特徴があります。一方の定性評価は業務に対する姿勢などが評価対象です。

たとえば、顧客との接点拡大に努めたことで売上目標に対して120%を達成したという成果を評価する場合、定性評価はそこに至るまでの過程、定量評価は結果の数値にフォーカスします。

このことから、定性評価は「どのように取り組んだのか」、定量評価は「何を成し遂げたのか」に着目して評価を行うという違いがあるといえるでしょう。

定性評価が使われる主な評価項目

定性評価では、客観性や公平性を保つために評価項目を定める傾向があります。ここでは定性評価で主に使われる7つの評価項目について解説します。

スピード性

スピード性については、以下のような業務遂行能力の構成要素を評価します。

  • 作業速度
  • 状況判断力
  • 意思決定力
  • 学習力
  • 適応力

現代のビジネス環境は常に激しく変化しており、いかに迅速に変化の兆候を掴み、対応するかが重要です。そのため、思考や行動がスピーディーに行われているかは重要な評価項目となります。

知識

知識に関しては、業務の質を高めるために必要な以下の内容を評価します。

  • 業務知識
  • 業界知識
  • 経営知識
  • ITリテラシー
  • トレンド情報

こうした情報をどの程度収集してるかや、業務に必要な専門性をどれだけ有しているかが評価の基準になります。

創意工夫

創意工夫のカテゴリーでは、業務における社員の創造性を評価します。

  • 発想力
  • 提案力
  • 実行力
  • 柔軟性

社員が生み出したアイデアや改善策がどのように活用されているかをこれらの項目に当てはめて確認し、組織への貢献度を判断します。

積極性

積極性では、社員の業務遂行における意欲を評価します。

  • 主体性
  • 向上心
  • チャレンジ精神

これらの評価項目に対して実際の行動量がどうだったかを確認し、目標達成に向けて能動的に取り組む姿勢が見られたかなどを判断します。

規律性

規律性においては、組織のルールをしっかり守っていたかを評価します。

  • 勤怠状況
  • 業務態度
  • 身だしなみ

これらの項目はチームワークや業務効率に直結し、組織文化の形成にも影響を与える重要なポイントといえます。

責任感

社員のやり遂げる力や周囲への影響力を評価するのが責任感に関する項目です。具体的には以下のようなものがあります。

  • 業務完遂度
  • リーダーシップ
  • 期日や約束の厳守

責任感の強さは権限によって左右される部分もあるため、どこまで権限を付与するかも重要な検討事項です。

協調性

協調性では、チーム内での貢献度や他者との関係構築能力を評価します。

  • コミュニケーション能力
  • 傾聴力
  • チームワーク

共同作業をうまく進められるかどうかだけでなく、意見の相違がある場合の対話の進め方なども評価対象になります。

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定性評価のメリット

定性評価は、定量評価だけでは気付けない側面を補完することができます。ここでは定性評価の3つのメリットを見ていきましょう。

数値化できない業務やプロセスを評価できる

チームワークやコミュニケーション能力といった対人関係、創造性やイノベーションへの貢献度など、数値化できない事柄を評価できるのが定性評価のメリットです。

業務の成果だけでなくプロセスも評価に加えることで、成果の要因を導き出しやすくなり、成果を出せなかった場合の改善策も立てやすくなるでしょう。

モチベーションが向上する

定性評価では個々の成果に加え、努力や貢献度も考慮されるため、モチベーション向上も見込めます。

仮に目標を達成できずに終わったとしても、努力や貢献度にプラスの評価が出れば、社員は自分の姿勢が認められたと感じ、モチベーションが向上しやすくなります。

新卒社員の評価ができる

定性評価は過程にフォーカスするため、新入社員の能力や潜在力を見極める方法としても有効です。

思考力や判断力、コミュニケーション能力など、数値化しにくい資質が評価を通じて可視化されることで、新入社員が将来どのような成長を遂げる可能性があるのかを予測しやすくなるでしょう。

定性評価のデメリット

定性評価は数値化できない領域を評価できる反面、その性質がデメリットの要因にもなり得ます。ここからはデメリットについて紹介します。

評価基準の設定が難しい

定性評価は個人の価値観が結果に影響を与えやすいことから、一貫性のある評価基準の設定が難しいという課題を抱えています。

定量評価と比べてバイアスが発生しやすく、評価者間で認識を擦り合わせるなどの調整が必要です。

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評価者の主観に左右されやすい

定性評価は数値を基準とした絶対評価とは異なり、評価者の主観に左右されやすいというデメリットがあります。

個別の事情や状況などを1つの側面からしか見ていない場合には、被評価者の認識と齟齬が生まれ、納得感の薄い評価内容になってしまうでしょう。

評価に対する不満が生まれやすい

定性評価では、評価に対する不満が生まれやすいこともデメリットです。同じプロセスを経た社員が2人いたとしても、評価者によって評価の内容に相違が生まれやすいのが定性評価です。

同じ業務を担い、同程度の働きをしたと考えている被評価者にしてみれば、自分だけ評価が低いことには納得しがたいでしょう。

定性評価の評価方法

定性評価を効果的に運用するためには、目標と基準の明確化が重要です。ここでは目標と基準の決め方について解説します。

組織目標・職位目標を決める

定性評価に妥当性を感じてもらうためには、組織目標と職位目標をそれぞれ設定し、双方をリンクさせることが大切です。

特に職位目標に関しては、以下のように必達レベルと努力レベルを分けて設定しましょう。

​​必達レベル達成すべき最低限の目標
努力レベル達成に向けて努力すべき目標

2つのレベルを設定することで、必達レベルの目標を達成できない場合は能力や努力が足りていないと評価できます。さらに、努力レベルの目標を達成できなくても、過程を評価できるようになるのです。

評価基準を決める

評価者間で認識のズレが生じないよう、必達レベルと努力レベルをスコア化しましょう。たとえば、以下のような配点が考えられます。

  • 必達レベルを達成できていない(1点)
  • 必達レベルは達成できているが、努力レベルは達成できていない(2点)
  • 必達レベル・努力レベルの両方を達成している(3点)

このように評価の判断基準を定量情報に変換することで、評価者が主観で判断することを防ぎやすくなります。

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定性評価の具体例

ここでは、定性評価を取り入れる場合に、どのような点を評価するのかを具体的に紹介します。

具体例1.新卒社員を評価する

新卒社員の評価においては、積極性やチーム内での協調性、学習意欲といった行動面が定性評価の対象となります。

特に、新しいプロジェクトに主体的に参加する姿勢や、困難に直面しても解決策を見つけ出そうとする努力は高く評価されるでしょう。

また、日々の業務においても、常に改善を求める姿勢や、新しい知識を積極的に学ぼうとする態度は、定性評価においてプラスに評価できるポイントです。

具体例2.売上向上までのプロセスを評価する

売上が生じるまでの過程においては、社内外での発言や行動が定性評価の対象となります。

  • 顧客のニーズを的確に把握できているか
  • 本質的な課題解決に向けた提案ができているか
  • 信頼関係の構築に必要なコミュニケーションが取れているか
  • チーム内で適切な情報共有や役割分担ができているか
  • 結果を分析して次のサイクルに活かす改善策が理解できているか

これらの項目に対して適切な行動が取れているかを評価することで、売上向上のために足りていない要素を導き出すことができます。

具体例3.業務のオペレーションを改善した点を評価

既存業務のオペレーションの改善を評価する場合、課題の特定方法や採用した改善策の内容を把握することから始めます。

  • 各所と連携して業務フローの一部をデジタル化した
  • 管理しているシートの見やすさや入力工数を改善した

こうした例のように既存業務の効率や品質の改善に貢献した成果は、数値に表れていなくても評価することができるでしょう。

定性評価を実施する際の注意点

定性評価は評価者間で認識のズレが起きやすいため、予防のための対策を立てることが重要です。

ここでは具体的な対策を4つ紹介します。

客観的な事実を基に評価する仕組みを整える

客観的な事実に基づいた評価を徹底することで、個人の主観や偏見が評価結果に影響を及ぼすことを防げます。

そのためには、各社員の具体的な行動や成果を測定・記録する以下のような仕組みが欠かせません。

  • 業務記録(日報、会議録、プロジェクト資料など)
  • 顧客フィードバック(顧客満足度調査、アンケート、クレーム対応履歴など)
  • 360度評価

これらの情報源を活用することで、客観的な事実に基づいて評価を行うことができるでしょう。

評価基準を統一する

定性評価では全ての評価者が同じ基準に基づいて判断し、公平性を保つことが大切です。そのためには、評価基準の統一が求められます。

具体的には、評価項目の明確化や行動指標の設定だけでなく、評価者研修によって基準についての理解を深めることも効果的です。

多面評価を実施する

多面評価は上司だけでなく、チームメンバーや部下など、さまざまな立場の同僚からの評価を手掛かりに、より客観的な評価を行う手法です。

上司のみが行う評価には主観や感情が入り込みやすく、事実にそぐわない評価となってしまうこともあるでしょう。そこで多面評価を通じて評価者の視野を広げることで、評価の公平性や正確性を向上させることができるのです。

人事評価エラーがあることを認識する

人事評価エラーとは、評価者に無意識的なバイアスが働いた結果、公平な評価ができなくなることを指します。人事評価エラーの例としては、以下のようなものが挙げられます。

主な事象内容
ハロー効果被評価者の特徴が、全体的な評価に影響を与えること
中心化傾向被評価者の能力を無視して、中央値に寄った評価を行うこと
アンカリング効果他の被評価者への評価が、最初の被評価者に与えた評価に引っ張られてしまうこと

人事評価エラーを防ぐためには、評価者を対象とした研修を定期的に開催し、バイアスや評価基準についての理解を深めていくことが大切です。

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定性評価と定量評価を組み合わせて人事評価の精度を向上させよう

数値目標の達成の有無という二極化思考に陥りやすい定量評価を補完する材料として、定性評価は効力を発揮します。定性評価を効果的に運用できるようになると、社員の取り組みに対する過程と結果の両方を評価できるようになります。

本記事を参考に、定性評価と定量評価を組み合わせ、人事評価の精度向上を図ってみてください。

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