人事評価制度の作り方|作る際のポイントや手順、成功・失敗事例を解説

2024/04/08 2024/04/08

人事評価システム

人事評価制度の作り方

企業や労働の在り方が刻一刻と変化する現代社会において、注目が集まる「人事評価制度」。今ある人材を適切に評価・育成し企業の成長につなげるためには、どのような人事評価制度を作れば良いのでしょうか。本記事では、人事評価制度の作り方を、ポイントや注意点とあわせて解説します。

人事評価制度とは?

人事評価制度とは、従業員の働きぶりや業務態度などを定期的に評価し、その結果を昇進や給与、研修の機会などに反映させる仕組みのことです。

企業の目標に合わせてあらかじめ基準を設定しておくことで、従業員一人ひとりの成長と組織全体の成長を正しく測定することができます。目に見える業績だけでなく、チームワークやコミュニケーションスキルといった質的な要素も評価の対象に含まれるのがポイントです。

人事評価制度の目的

人事評価を行う主な目的は、従業員のモチベーション向上と組織の成長促進です。

評価制度を通じて個々の従業員が自己の強みや改善点を理解し、自らのキャリア開発に積極的に取り組むことができるようサポートします。また、公平かつ透明性のある評価制度は信頼関係の構築にも役立ち、組織全体の士気を高める効果も期待できるでしょう。

さらに、人事評価は組織の目標達成に直結する業務の重点化や、効率的な人材配置、育成計画の策定にも役立ちます。最終的には組織の競争力を高め、持続可能な成長を実現することが人事評価制度の大きな役割です。

人事評価制度とは?目的や導入方法・メリットとデメリットを解説

人事評価制度の作り方

人事評価制度を適切に導入・運用するためには、組織のビジョンや目標に合わせた丁寧な設計が不可欠です。ここでは、人事評価制度を作る際に押さえておきたいポイントを、事前準備から運用開始までの手順に沿って紹介していきます。

自社の現状を把握する

人事評価制度を作る第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。まずは経営理念や最新の基幹事業など、基礎的な部分を改めて確認しておきましょう。最終的なゴールや具体的なプロセスを俯瞰することで、制度に必要な要素が見えてきます。

また、現状の課題を洗い出すために、従業員からのフィードバックの収集も効果的です。現行の人事制度に対する意見、業務遂行上の障害、評価プロセスに関する不満など、幅広い情報を集めましょう。直接意見を募ることで、現場の従業員が直面している課題やニーズを理解し、評価制度が目指すべき方向性を明確にすることができます。また、従業員の意見を制度設計に反映させることで、受け入れられやすく、実効性の高い人事評価制度を構築できます。

人事評価の目的を決める

一貫性があり、信頼できる人事評価制度を設計するためには、明確な目的の設定が必要です。一般的に人事評価制度は、企業方針の明確化、従業員のモチベーション向上、パフォーマンスの評価と改善、キャリア開発の促進などを目的とします。

目的を明確化して、評価基準や方法を具体的に示し、組織と従業員の足並みをそろえることを意識しましょう。また、評価の透明性と公正性を確保することで、従業員の信頼と満足度を高め、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

評価基準を決める

評価基準を明確にすることは、人事評価制度の公正性と透明性を確保する上で非常に重要です。評価基準はさまざまな分類が考えられますが、ここでは能力評価・業績評価・情意評価の3つに分ける方法を解説していきます。

以下の表は、能力評価・業績評価・情意評価それぞれの概要と特徴をまとめたものです。評価基準を複数組み合わせることで、従業員の多面的な評価が可能となり、より公平な評価を行うことができます。

ただし、基準が多ければいいというわけではありません。現場の状況に合わせて適切なガイドラインを設け、定期的な見直しを心がけましょう。

評価基準概要特徴
能力評価従業員のスキル、知識、能力など、業務遂行に必要な能力を評価する基準。個人の成長可能性や将来性を重視し、継続的なスキルアップや能力開発を促進する。
業績評価個々の従業員が達成した業務の結果や成果に焦点を当てて評価する基準。明確な目標達成度や数値化可能な成果を基に評価を行うため、客観性が高い。
情意評価従業員の態度、コミュニケーション、チームへの貢献度など、職場での人間関係や行動様式を評価する基準。社内の人間関係やチームワークの向上を目的とし、積極的なコミュニケーションや協調性を奨励する。

情意評価とは?評価の書き方・例文や情意評価のメリット・デメリットを解説

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評価項目を決める

評価項目を決める際には、組織の中期計画や短期計画と一致するように調節すると、経営目標との齟齬を防ぐことができます。業務の成果だけでなく、チームワーク、コミュニケーション能力、問題解決能力など、従業員の総合的な貢献度を測るためのものになるよう心がけましょう。

有能な人材が実践している行動を参考にする、所属部署によって項目に変化をつけるなど、現場目線のアプローチも効果的です。

また、項目設定の際には経営者や現場の管理職、評価対象の従業員の意見を取り入れることが大切です。組織と現場の方針を明確にしつつ、理解しやすく納得感のある評価項目を設定することで、より評価制度を有効活用することができます。

評価方法やルール、処遇に関する規定を決める

一般的に、人事評価の結果は数字やアルファベットを用いて、明確なポイント方式で提示されます。多くはA・B・C・D・Eなどの5段階評価ですが、中心化傾向を避けるために偶数段階評価を取り入れるなど、企業ごとの工夫が見られるのも特徴です。

また、評価結果に基づく処遇変更に関しても、明確な基準と透明なプロセスを設けることが、従業員のモチベーション維持につながります。一方的に通知するのではなく、評価と待遇がどのように連動するのかをあらかじめ明示し、納得感のある人事を実現しましょう。

人事評価の5段階評価とは?評価基準や表現方法・4段階評価についても解説

社内へ周知して人事評価制度の運用を開始する

最後に人事評価制度を社内に周知し、運用を開始します。決算月などの区切れで導入すると待遇などへの反映もスムーズなため、そこから逆算して周知するのがおすすめです。従業員が新しい制度に適応するためや、労働組合の監査を受けるための期間を踏まえ、3ヶ月前後の余裕をみておくとよいでしょう。

周知の方法には書面や掲示のほか、社内会議、研修セッション、社内ネットワークの活用などが考えられます。運用開始前に従業員全員が制度の目的、評価基準、プロセスを理解できている状態を構築しましょう。

人事評価制度の種類

人事評価制度には様々な種類があり、組織の目的や文化、従業員のニーズに合わせて選ばれます。各方針の特徴を理解し、適切に取り入れることが重要です。ここでは、代表的な4種類の評価制度を紹介します。

目標管理制度(MBO)

目標管理制度(MBO)は経営学者のドラッカーが提唱した制度で、従業員自身が目標を設定し、上司がその達成度を評価する方法です。この制度のメリットは、明確な目標設定により従業員が自己の役割を理解しやすく、モチベーションの向上が期待できる点にあります。

デメリットとしては、目標の設定が不適切だと従業員のモチベーション低下を招く可能性がある点や、管理者と従業員間のコミュニケーション不足により目標達成が難しくなる点です。特に、高い評価を得るためにわざと低い目標を設定することも考えられるため、評価者と被評価者の信頼関係が必要になります。

目標管理制度(MBO)とは?メリット・デメリットや実施手順、OKRとの違いをわかりやすく解説

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、従業員の行動特性(コンピテンシー)を基に評価を行う方法です。高い業績を上げる有能な従業員の行動特性を分析し、いかにそれと同じ行動がとれているか、またどのようにすれば同じ能力を発揮できるかを評価・判断します。

実際に実績を上げている具体的なサンプルを基にするため、現場の方針に合致しやすく、即戦力となる人材の育成ができるのがメリットです。ただし、参考にするサンプル数が少ないと目標が偏りがちになったり、人材の多様性が失われたりするデメリットもあります。

コンピテンシー評価を取り入れる際は、他の方式と組み合わせるなどして、偏りの出ない工夫が必要です。

360度評価

360度評価は上司だけでなく、同僚、部下、時には外部の人々からもフィードバックを収集し、多角的な視点から従業員を評価する方法です。

多様な視点からの評価により、従業員の行動や能力についてより包括的な理解が得られるメリットがあります。デメリットは、評価プロセスが複雑で時間がかかることや、個人間の対立を引き起こす可能性があることです。

360度評価(多面評価)とは?目的やメリット・デメリット、導入ステップを解説

バリュー評価

バリュー評価は、組織の核となる価値観や文化(行動規範=バリュー)を従業員が達成できているかという視点で評価する方法です。この評価は、組織全体の価値観と個々の従業員の行動が一致しているかを測定することに重点を置いています。

メリットとしては、組織文化への適合性を高め、組織の価値観に基づいた行動を促進することが挙げられます。また、単なる業績だけでなく日頃の行動や態度も評価に含むため、自発的に行動できる人材の育成にも役立つでしょう。

人事評価制度を作る際のポイントについて

ここでは、従業員に受け入れられやすく、組織全体の成長につながる人事評価制度を作るために、抑えておきたいポイントを解説していきます。

評価基準・項目を明確にして公平に評価する

従業員の信頼とモチベーションを損なわないために、人事評価制度は常に公平性を保たなくてはなりません。公平性が確保されていない場合、従業員間の不満や競争心が不健全な形で高まり、組織内の人間関係が悪化するリスクがあるため注意が必要です。また評価制度への不信感が、優秀な人材の流出を引き起こすこともあるでしょう。

評価基準と項目を明確にし、すべての従業員に対して同じ基準で評価が行える制度を構築することで、従業員は自身の評価結果を理解し、評価結果を受け入れやすくなります。

長期的な視点で運用する

持続可能な組織成長と従業員のキャリア発展のためには、長期的な視点で評価制度を運用することが不可欠です。制度の定期的な見直しと更新を行い、組織の変化や市場の動向、従業員のニーズに合わせて柔軟に対応することを心がけましょう。

また、従業員一人ひとりの成長パスやキャリアプランにも着目し、個々のポテンシャルを最大限に引き出すような評価項目や方法を取り入れることも重要です。これにより、従業員は自身の成長を感じ、長期的に組織に貢献する意欲を持つようになります。

人事評価制度の失敗例

人事評価制度の導入は、組織にとって大きなチャレンジです。しかし、計画や運用が不十分だと、制度は失敗に終わることがあります。以下に、そのような失敗例を紹介します。

人事評価制度を運用できなかった

人事評価制度の失敗例の一つに、「制度を運用できなかった」ケースがあります。この失敗は、制度が複雑すぎたり、現実の業務プロセスに合っていなかったりすることが原因です。また、従業員や管理者に十分な説明がなされず、理解や協力を得られなかった場合にも見られます。このような状況では、評価制度は形骸化し、目的を果たすことができません。

特に日本の企業では、従業員の職域が曖昧な場合も多く、単純な成果主義の人事評価制度では実情に則さない場面があります。こういった根本的な失敗を防ぐためにも、評価制度を作る際には入念なリサーチと検討が必要不可欠です。

フィードバックが適切に行われていない

フィードバックの不足または不適切な提供は、人事評価制度の効果を損なう大きな原因です。適切なフィードバックが行われない場合、評価を受けた従業員は自分の評価結果の意味や、改善すべき点を理解できず、ストレスを感じたり、モチベーションが低下することがあります。

例えば複数の評価基準を組み合わせたり、個々の従業員の評価を相対化したりして複合的に判断する場合、評価の原因と結果が不明瞭になりがちです。また、評価を行うこと自体に満足してしまい、詳細なフィードバックを省いてしまうことも不信感の原因になりえます。

人事評価制度の成功事例

人事評価制度が成功すると、組織全体のモチベーション向上、目標達成率の上昇、そして従業員のキャリア成長を促進する効果があります。以下に、その成功事例を紹介します。

株式会社アクト

株式会社アクトでは、ビジョン実現型人事評価制度を導入しています。この制度の目的は、従業員一人ひとりが会社のビジョンと自身のキャリア目標を照らし合わせ、それに向かって具体的なアクションプランを立てることにあります。

特に近年の改善では、より現場の従業員に寄り添うため、人事評価プロジェクト会議に現場のリーダーを参加させるなどの工夫を行いました。声を上げやすい環境づくりや、改善案に対するスピーディーな対応を心がけ、より長い目で「現状」よりも「将来」を見据える組織づくりを実現したといいます。

[参照:日本人事経営研究室 事例「株式会社アクト」]

株式会社中央歯科補綴研究所

株式会社中央歯科補綴研究所でも、ビジョン実現型人事評価制度が成功を収めています。導入以前には業績こそ堅実であったものの、経営理念と現場社員のベクトルがうまく噛み合わず、慢性的な人手不足に悩んでいたそうです。そんな中、単なる「査定的」な評価制度を脱却し、「人を育てる」評価制度への切り替えを行ったことで、組織の活性化を実現しました。

特に株式会社中央歯科補綴研究所では、軸となるべき経営理念や経営者の意識が明確であったことが功を奏したといいます。人材育成を通じて経営目標を達成する、理想的な人事評価制度の運用には、現状把握と目的意識の強化が大切だとわかる事例です。

[参照:日本人事経営研究室 事例「株式会社中央歯科補綴研究所」]

人事評価制度作りにおすすめの本

人事評価制度を作る上で、知識とインスピレーションを得るための資料は非常に重要です。ここでは、人事評価制度の構築に役立つ知見や実践的なアドバイスを参照できる書籍をピックアップして紹介します。

小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方

画像参照元:Amazon

特にリソースが限られている小規模の企業向けに、効果的な人事評価制度の構築方法を解説した一冊です。先述の「ビジョン実現型人事評価制度」について、その制度作りと実践方法を3ステップでわかりやすく解説しています。

書籍名改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方
著者名山元浩二
定価1,760円(税込)
出版社あさ出版

人事の超プロが明かす評価基準

画像参照元:Amazon

「人事の超プロが明かす評価基準」は、1万人以上の人事担当者から支持される人事評価のプロフェッショナルが、効果的な評価基準の設定方法や評価制度の運用について、豊富な経験に基づく知識を分かりやすくまとめられた書籍です。注意すべき基準の作り方や、状況に応じた柔軟な制度設計など、人事評価を行ううえで確実に押さえておきたいノウハウが学べるのがポイントです。

書籍名人事の超プロが明かす評価基準
著者名西尾太
定価1,650円(税込)
出版社三笠書房

図解 人材マネジメント入門

画像参照元:Amazon

Q&A方式と豊富な図解で、人材マネジメントの全般にわたる基本的な知識を網羅する入門書的一冊です。評価制度の背景にある理論から実践的な運用方法まで、幅広くカバーしているため、人事領域に新しく足を踏み入れる人にとっても理解しやすい内容になっています。

書籍名図解 人材マネジメント入門
著者名坪谷邦生
定価2,860円 (税込)
出版社株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

作り方を参考に自社にあった人事評価制度を作成しよう

人事評価制度を作成する際には、書籍などを活用して、基本的な知識を深め、多様な視点からのアイデアを取り入れつつ、公平性、透明性を保った仕組みが重要です。

失敗例から学び、成功事例を参考にしながら、自社の文化やビジョンに合った持続可能な人事評価制度を設計しましょう。

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ビズクロ編集部
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