プロジェクト管理手法のCCPMの必要性|導入のメリットや注意点
納期短縮が実現できるプロジェクト管理手法として注目されるCCPMですが、具体的な導入手順やメリット・デメリットがわからない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、CCPMの概要や特徴、導入手順、実施の際の注意ポイントなどを詳しく解説します。
目次
CCPMとは?
CCPM(Critical Chain Project Management)とは、可能な限りスケジュールを短縮してバッファを設けるプロジェクト管理手法の一つです。プロジェクトを効率よく、計画通りに進めるための管理手法として、特にヒト・モノ・コストなどの制約が厳しい状況で効果を発揮するとされています。
たとえば、10日間かかる予定のタスクがあり、そのうちの3日間がバッファとして含まれているとします。このタスクが4つ連なっているプロジェクトの場合は、全体で12日分のバッファが生まれるため、まとめてプロジェクトの最後に設けます。
これにより、タスクに遅延が生じた場合でも12日分のバッファを割り当てることが可能です。
プロジェクトを遂行するにあたって、特に重要で時間がかかる作業工程を「クリティカルチェーン」と呼びます。CCPMは、そのクリティカルチェーンにリソースを集中させることで、効率的なプロジェクト進行を実現するものです。
CCPMの必要性とは?
CCPMは限られたリソースを念頭に、プロジェクトを俯瞰で見て全体のパフォーマンスを最適化し、プロジェクトの遅延を最小限に抑えるために必要です。
一般的に、プロジェクトは複数のタスクから構成され、それぞれが特定のリソースを必要とします。これらのタスクは互いに依存関係を持っており、一つのタスクが遅れると、連鎖的にほかのタスクにも影響を及ぼし、プロジェクト全体の遅延を引き起こす可能性があります。
このような状況を避けるために、CCPMはバッファを一元的に管理し、万が一遅れが発生した場合でもプロジェクト全体のバッファに吸収させて進捗の見通しを立てやすくするのです。
プロジェクトの遅れの原因としては、主に以下があげられます。
- 作業項目の漏れ
- タスクの優先順位が決まっていない
- 仕様変更が多い
- 段取りが悪い など
CCPMは、プロジェクトの効率性と成功率を高めるために重要な手法であり、プロジェクト管理において必要とされています。
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クリティカルパスとの違い
クリティカルパスとCCPMは、どちらもプロジェクトのスケジューリングと管理に使用される管理手法ですが、アプローチにいくつかの違いがあります。
クリティカルパスは、一連の工程の中で最も長い作業経路を指します。そして、プロジェクト完了のために実行不可欠なタスクを特定する手法がクリティカルパス法です。プロジェクトの開始から終了までに最も時間がかかるタスクを、全体のスケジュールに影響度の高い「クリティカルパス」として特定し重点的に管理することで、スケジュールの遅延を防ぎます。
一方でCCPMでは、クリティカルパスの考え方を取り入れつつも、ヒトやモノ(設備)といったリソースの可用性にも目を向けて管理するのが特徴です。リソースの制約が最も厳しいプロジェクトの「クリティカルチェーン」を特定したうえで、各タスクのバッファを集中管理し、全体のプロジェクトの遅延を防ぐことに重点を置いています。
つまり、クリティカルパスはタスクの所要時間と順序に焦点を当て、CCPMはリソースの制約とバッファ管理に焦点を当てる点に大きな違いがあります。
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プロジェクト管理にCCPMを取り入れるメリット
プロジェクト管理においては、多くのタスクを効率的に進行させるための戦略が求められます。その一つとして注目されるCCPMの具体的な3つのメリットを詳しくみていきましょう。
作業の優先順位が明確になる
CCPMでクリティカルチェーンを特定することにより、どのタスクがプロジェクトの進行に最も影響を与えるのかが明確になり、リソースの割り当てやスケジューリングが容易になります。
これにより、無駄な作業を排除し、重要なタスクに集中することが可能です。
スケジュールを可視化できる
各タスクのバッファをなくすことで、タスク自体にかける時間が明確にわかりやすくなるため、スケジュールを可視化できます。万が一遅れが生じていても、プロジェクト全体の進行状況を一目で把握することができ、必要な対策を迅速に打つことが可能です。
また、各タスクの遅延がプロジェクト全体にどのような影響を及ぼすのかを一目で理解することも容易になります。
チーム全体の体制を強化できる
CCPMを用いることで、リソースの管理とチームの効率が向上します。
全体の進捗状況が把握しやすくなるため、チームメンバーは自分の作業がプロジェクト全体にどのような影響を与えるのかを理解し、それぞれの責任を持ってタスクに取り組むようになります。また、共通のゴールに向かって協力する文化が醸成され、チームワークも強化されるのです。
これにより、個々の能力を最大限に活かしながら、プロジェクトの効率的な運営が可能になります。
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プロジェクト管理にCCPMを取り入れるデメリット
スケジュールの遅延やリソースの最適化などに高い効果を発揮するCCPMですが、考慮しておきたいデメリットもあります。ここでは、2つのデメリットを説明します。
他部署との連携が必要
CCPMは、プロジェクト全体の最適化を図る手法であることから、プロジェクトに関わるすべての部署やチーム間での密接な連携が求められます。そのため、部署間のコミュニケーションコストが増大し、リソースやタスクの調整に時間がかかることもあります。
また、各部署の目標や優先順位が異なる場合、プロジェクト全体の最適化が難しくなる可能性もあるでしょう。
短期間プロジェクトには不向き
CCPMは、比較的長期間にわたって実施されるプロジェクトに向いた管理手法です。
短期プロジェクトや単純なタスクを伴うプロジェクトにおいては、クリティカルチェーンの特定やバッファ管理は余分な手間となり、効率性を損なうことも考えられます。したがって、プロジェクトの規模や期間を鑑みたうえで、CCPMの適用を検討する必要があります。
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CCPMの導入手順
従来のプロジェクト管理手法とは異なる視点をもたらすCCPMは、正しい手順にそって実行することが極めて重要です。4つのステップにわかれた手順を詳しく確認していきましょう。
手順1.プロジェクトの設計
プロジェクトの設計段階では、目標の明確化、必要なタスクの特定、タスクの順序付けを行いゴールまでを明確にします。プロジェクトの目標を達成するための大枠を作成し、何が必要であるかを洗い出す作業が求められます。
設計時は、リソースの利用可能性も念頭に置く必要があるため注意しましょう。
手順2.PERT図の作成
CCPMでは、プロジェクトのタスク間の依存関係を視覚的に表すPERT図を使用します。これにより、タスクがどのように繋がり、プロジェクトの全体的な流れがどうなっているかを理解しやすくなります。
PERT図の作成段階で、クリティカルチェーンのタスクを識別することも重要です。
手順3.リソースの見積もり
各タスクに必要なリソース(人材、設備、資金など)の見積もりを行います。この時点で、リソースの制約がクリティカルチェーンの識別に影響を与える可能性があります。
リソースの確保はプロジェクトの進行に直結するため、リアルな見積もりが不可欠です。
手順4.バッファの算出・確保
クリティカルチェーンの終わりや、プロジェクト全体の終わりにバッファを設定し、計画に柔軟性を持たせます。バッファの適切な算出には、経験に基づく見積もりや過去のプロジェクトデータが役立ちます。
バッファを通じてリスクに対処し、スケジュール通りにプロジェクトを進めることが可能です。
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CCPMを導入しプロジェクト管理を成功させよう
プロジェクト管理において、納期遵守と品質確保は、常に求められる課題です。
CCPMの導入は、リソースの最適な配分とバッファ管理により、リスク管理と全体の生産性向上を実現する管理手法として、課題解決の一助となるでしょう。ぜひCCPMを導入し、プロジェクト管理を成功へと導きましょう。
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