PMBOKとは?プロジェクト管理との関係性や達成するための基礎知識
プロジェクトの達成には、プロジェクト管理の知識が必要です。PMBOKを活用すれば、プロジェクトの具体的なプロセスやマネジメントの基礎知識を押さえられます。本記事では、PMBOKの概要やプロジェクト管理との関係性、プロジェクト達成に必要な基礎知識を解説します。
目次
プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントとは、決められた予算や納期通りにプロジェクトを遂行するため、スケジュールを立てて管理することを指します。
いつまでにどの程度の品質のものを完成させるのか、かけられる費用はどのくらいかを明確にし、逆算して工程を考えます。つまり、プロジェクトマネジメントは、品質・費用・納期(QCD)を守ることであるといえるでしょう。
▷プロジェクト管理とは?目的ややり方・メリットやフローを紹介
▷QCDとは?改善に導く優先順位の立て方や事例・関係性をわかりやすく解説
PMBOKとは?
PMBOKは、「Project Management Body of Knowledge」の略で、プロジェクトマネジメントについての知識やノウハウを体系的にまとめたものです。現在は、プロジェクトマネジメントの世界標準として多くの人に活用されています。
ビジネス環境やテクノロジーの進歩に合わせて定期的にアップデートが行われているので、常に効果的な知識・ノウハウを確認することが可能です。
PMBOKの目的は、QCD(品質・費用・納期)の3つの要素を適切に管理し、達成することです。QCDの達成に重要な要素として、PMBOKには実行すべき「5つのプロセス」と、理解すべき「10個の知識エリア」がまとめられています。
PMIとは
PMI(Project Management Institute)とは、PMBOKを作成したアメリカの非営利団体です。本部はアメリカにあり、1998年には日本にも支部が設けられました。PMIは、PMBOKを各国の言語に翻訳して発行したり、PMPという資格認定を行うなどして、プロジェクトマネジメントを普及させる活動を行っています。
PMPとは
PMP(PMI Project Management Professional)とは、PMIが認定するプロジェクトマネジメントの資格です。PMP認定資格を取得することで、プロジェクトマネジメントの知識や実践的なスキルを証明できます。そのため、キャリアアップに役立つでしょう。なお、PMPは国際資格のため、海外での就職・転職の可能性も広がります。
受験資格
PMPの受験資格には、大きく2つの条件があります。1つは、以下どちらかの条件を満たすことです。
- 学士号または同等の資格の持ち主で、直近8年間でプロジェクトマネジメントの経験が3年(36ヶ月)以上あること
- 学士号以上の資格を持っていない場合、高校卒業もしくは同等の資格を持ち、直近8年間でプロジェクトマネジメントの経験が5年(60ヶ月)以上あること
もう1つは、PMIが認定した機関で35時間以上のプロジェクトマネジメント研修を受講することです。各機関でさまざまな講座を提供しているため、受験要件を満たすものかどうかを確認したうえで受講してください。
出題範囲・形式
PMPの出題範囲と割合は、以下のとおりです。
- 人……42%
- プロセス……50%
- ビジネス環境……8%
上記の中で、さらにアジャイル型・ハイブリッド型アプローチと予測型プロジェクトマネジメント・アプローチがそれぞれ約50%ずつ出題されます。
PMBOKの5つのプロセスについて
PMBOKでは、プロジェクトの流れを以下5つのプロセスに分けて解説しています。
- 立ち上げ
- 計画
- 実行
- 監視・管理
- 終結
それぞれのプロセスを紹介します。
1.立ち上げ
「立ち上げ」は、プロジェクト開始の認可・承認を得るプロセスです。まずは、プロジェクト憲章を作成します。プロジェクト憲章とは、プロジェクトの目的や期間、予算などを明確に定義し文書にまとめたものです。
立ち上げは、プロジェクト進行の枠組みを設定するため、とくに重要なプロセスといえます。なお、プロジェクト進行の枠組みをまとめると同時に、ステークホルダーの特定も行うのが通常です。
2.計画
「計画」は、PMBOKのすべての知識エリアで必要なプロセスです。プロジェクトの目的や目標をどのように達成するか、具体的な作業計画を作成します。たとえば、プロジェクトのスケジュール作成やリソースの配分、リスク管理計画の立案や品質管理の方法などが含まれます。
作業計画の内容は今後のプロジェクト進行に大きな影響を与えるため、抜け漏れのないようじっくりと作成することが重要です。
3.実行
「実行」は、計画に基づいて実際に取り組んでいくプロセスです。プロジェクトを計画通りに進めるため、事前に関係各所に計画を周知したり、内容のすり合わせを行ったりします。計画の実行に必要なリソースの割り当てやタスクの周知に加え、コミュニケーションの維持をはじめとしたマネジメント作業を行います。
実行プロセスが関わってくるのは「資源マネジメント」や「コミュニケーションマネジメント」「ステークホルダーマネジメント」など、人のマネジメントに関するものが主体です。
4.監視・管理
「監視・管理」は、プロジェクトが計画通りに進んでいるかを定期的にチェックし、必要に応じて調整するプロセスです。プロジェクト計画を綿密に立てても、予定通りに物事が進むことはほとんどありません。
計画との乖離があると、トラブルが起きたり予定通りに完了しなかったりするリスクが高まります。そのため、計画と現状に乖離がないかを監視し、ある場合は早期に計画の修正や変更を行うことが重要です。
なお、監視・管理プロセスは、リスクコントロールも含みます。トラブル発生時の影響を最小限に抑えるための対策を立て、適切に実行する役割も担っています。
5.終結
「終結」は、プロジェクトの完了を確認し、終結させるプロセスです。プロジェクトで得られた情報の保管作業や、実行を通してよかった点・反省点をチェックし、改善点の洗い出しをします。次回以降のプロジェクトに活かして、品質や業務効率の向上を図ります。
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PMBOKの10の知識エリア
PMBOKの10の知識エリアとは、プロジェクトマネジメントに必要な知識を定義したものです。ここでは、10の知識エリアを1つずつ解説します。
1.スコープマネジメント
スコープマネジメントとは、プロジェクトの作業範囲を明確にし、目標の達成に必要な成果物や行うべきタスクを定義するマネジメント分野です。WBS(作業分解構造図)の作成や成果物の検証などを行います。確実な目標達成のために重要な項目であり、プロジェクトの成否にも影響します。
▷WBSとは?ガントチャートとの違いや作り方・メリットをわかりやすく解説!
2.スケジュールマネジメント
スケジュールマネジメントとは、時間管理を行うマネジメント分野です。時間あたりの生産性を高め、納期を守ることを目的に行います。具体的には、洗い出されたタスクの段取りを決定したり、作業時間を見積もってスケジュールを立てたりします。また、タスクの進行状況に応じて調整を行うのもスケジュールマネジメントの役割です。
3.コストマネジメント
コストマネジメントとは、さまざまな費用を管理するマネジメント分野です。プロジェクトにかかる費用を予算内に収めるのが目的であり、具体的には必要コストの見積もりや予算管理、資金調達などを行います。コストの適切な管理は企業の収益性を向上させ、無駄な出費を抑えることにつながるため、経営体制の強化を図れるでしょう。
4.品質マネジメント
品質マネジメントとは、成果物の品質管理を行うマネジメント分野で、QCDのQ(Quality)にあたり、目指す品質の基準を明確にし満たすための計画・実行などを行うのがメインです。
さらに、クライアントの要求を満たす品質か、使用に適しているかも確認します。クライアントが満足する品質を確保することを目的としています。
5.資源マネジメント
資源マネジメントとは、プロジェクト達成に必要な資源の調達・管理を行い、組織づくりを行うマネジメント分野です。資源は、人材資源と物的資源の2つがあります。
とくに人的資源の割合が大きく、2017年以前までは「人材資源マネジメント」と呼ばれていました。具体的にはチームの育成・マネジメントや、人的・物的資源の管理を行います。
6.コミュニケーションマネジメント
コミュニケーションマネジメントとは、ステークホルダーとのコミュニケーションを行うマネジメント分野です。プロジェクト情報の伝達や進捗状況の報告など、情報共有や意思疎通をスムーズにするためのプロセスを含みます。
単なる情報共有だけではなく、ステークホルダーから理解を得るまでがコミュニケーションマネジメントの役割です。
7.リスクマネジメント
リスクマネジメントとは、プロジェクトに影響を及ぼす可能性のあるリスクを洗い出し、対策を立てるマネジメント分野です。リスクとは、予測できない事象や想定外の事態によって生じる不確実性や損失の可能性を指します。
つまり、危険性が高いもののみを指しているわけではありません。リスクはチャンスにつながる場合もあるため、ものによっては避けるのではなく予防し、コントロールすることが重要と考えられています。リスクマネジメントでは、リスクの洗い出しや優先順位付け、予防策の立案や実行、管理を行う役割があります。
▷リスクマネジメントとは?手法やリスクの種類・事例を簡単に解説
8.調達マネジメント
調達マネジメントとは、プロジェクト遂行に必要な資材・サービスの外部調達に関するプロセスを管理するマネジメント分野です。調達先の選定や契約交渉、発注、対象物の品質・納期の管理、成果物の検収を行います。調達マネジメントを適切に行うと、企業のコスト削減につながるでしょう。
9.ステークホルダーマネジメント
ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトに関わるすべての利害関係者(ステークホルダー)とのコミュニケーションや関係性の管理をする分野です。
ステークホルダーには、企業の経営者・従業員・株主・顧客・地域社会など多岐にわたる関係者が含まれます。各関係者の要望を理解し、適切に対応しながらビジネスを進行するための戦略を立てなければなりません。ステークホルダーマネジメントは、ステークホルダーとの関係性を良好に保つことが主な役割であるといえるでしょう。
10.統合マネジメント
統合マネジメントとは、9つの知識エリアを統合し、プロジェクト全体の調整を行うマネジメント分野です。5つのプロセスすべてに関わっており、プロジェクト全体の監視・管理を行います。各マネジメント分野の相互連携をとるのも、総合マネジメントの役割です。
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PMBOKを活用するメリット
PMBOKを活用するメリットは、主に以下の2つが挙げられます。
- 国際基準で業務を管理できる
- リスク・トラブルの回避につながる
それぞれの項目を解説します。
国際基準で業務を管理できる
PMBOKは、世界中で広く認識されているプロジェクトマネジメントのグローバルガイドラインです。そのため、PMBOKを使ってプロジェクトマネジメントを行うと、国際基準に準拠した業務管理が行えるというメリットがあります。
たとえば、複数の国でプロジェクトを同時進行するとしましょう。この際PMBOKを活用すれば、国が異なる場合でも、一貫した管理手法を適用することが可能です。国をまたいだプロジェクトも統一性のあるプロジェクト管理ができるのは、大きなメリットといえるでしょう。
また、PMBOKには、さまざまな業種のプロジェクト管理における最善策がまとめられています。新たなプロジェクトを進める際や、海外企業を含むパートナーを含めたプロジェクトを実施する際にも、最適な業務管理を行えるというメリットもあります。
リスク・トラブルの回避につながる
PMBOKを活用するメリットは、リスクやトラブルの回避につながることです。PMBOKには、プロジェクトに必要なプロセスと、考慮すべき要素がまとめられています。内容を理解し、プロセスどおりに進めることで、資金不足やユーザーとのトラブル、事故といったリスクやトラブルを予防することが可能です。
また、プロジェクトの初期段階でリスクを特定し、効果的な対策も講じられます。以上のことから、PMBOKを活用すると未然にリスクやトラブルを回避でき、プロジェクトの成功に貢献するといえるでしょう。
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PMBOKを活用する際のポイント
PMBOKをうまく活用するには、以下3つのポイントを意識することが重要です。
- 情報共有をこまめに行う
- プロジェクト管理ツールを活用する
- PMBOKは参考として捉えプロジェクトに落とし込んで利用する
それぞれについて具体的に解説します。
情報共有をこまめに行う
PMBOKを最大限に活用する際のポイントは、情報の共有をこまめに行うことです。最新の情報が関係者に適切に共有されなければ、誤解や調整不足が生じ、プロジェクトの達成を妨げる可能性があるからです。
また、情報共有不足が原因でステークホルダーが不信感を抱き、プロジェクトが円滑に進まなくなる場合もあります。PMBOKを用いてプロジェクトを進める際には、事前資料や議事録などを活用して、関係者間での情報共有をこまめに行いましょう。
プロジェクト管理ツールを活用する
プロジェクト管理ツールを活用するのも、PMBOKを活用する際のポイントです。PMBOKの5つのプロジェクト管理プロセスと10の知識エリアを管理するには、大量の情報を処理する必要があります。
しかし、すべてを手作業で行うのは困難です。そこで、プロジェクト管理ツールを活用すれば、情報を効率的に処理できます。各種管理データの保存やリアルタイムでの情報反映、スムーズな情報共有などが行えるので、プロジェクトの成功を後押しするでしょう。
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PMBOKは参考として捉えプロジェクトに落とし込んで利用する
PMBOKの内容は抽象的であり、具体的なノウハウの記載はほとんどありません。そのため、PMBOKはあくまで基礎知識を身につける参考書として活用し、状況に応じてプロジェクトに落とし込むことを意識してください。
プロジェクトに必要な項目もあれば、取り組むとかえって非効率になるために避けるべき項目もあるでしょう。まずはこのような項目を見極めることが重要です。そのうえで、具体的な形に落とし込んで活用することを意識しましょう。
▷ガントチャートとは何?意味やプロジェクト管理におけるメリット・デメリット
PMBOKを活用してプロジェクト管理を効率化しよう
PMBOKとは、プロジェクトマネジメントの知識やノウハウが体系的にまとめられたものです。QCD(品質・費用・納期)の達成のために実行すべき「5つのプロセス」と「10個の知識エリア」がまとめられており、プロジェクトマネジメントの世界標準として広く知られています。
本記事では、各プロセスと知識エリアの概要を解説したので、とくにプロジェクトマネジメントを行う立場の方は、知識として覚えておくとよいでしょう。また、実行する際はあくまでも参考程度にし、ツールも活用しながら効率的なプロジェクト管理を実施してみてください。
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