プロジェクトライフサイクルとは?意味や種類・導入までのステップについて解説
プロジェクトライフサイクルとは、プロジェクトの円滑な運営を目的に、プロジェクトを4つのステップに細分化する考え方のことです。本記事ではプロジェクトライフサイクルとはどのようなものか、特徴や種類、各ステップの内容について解説します。
目次
プロジェクトライフサイクルとは
プロジェクトライフサイクルとは、開始から完了するまでを4つのステップに分けたプロセスのことを指し、一般的には、次の4つのステップから構成されます。
- 開始(立ち上げ)
- 計画(準備)
- 実行(作業・モニタリング)
- 完了(終結)
プロジェクトを4つのステップで分けて考えることで、プロジェクト全体の流れへの理解が深まるうえに、各ステップでの必要な活動やタスクを明確にすることができます。プロジェクトを円滑に進めるための戦略も立てやすくなることから、多くのプロジェクトにおいて、プロジェクトライフサイクルが導入されているのです。
PMBOKにおけるプロジェクトライフサイクル
プロジェクトライフサイクルは、プロジェクトマネジメント協会が発行する、プロジェクトマネジメントに必要な知識やノウハウを体系としてまとめたガイドブックであるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)で、次のように定義されています。
「プロジェクトが開始されてから完了に至るまでに、プロジェクトが経由する一連の段階」
ちなみに、PMBOKはプロジェクトマネジメントの国際的な標準にもなっており、多くの企業や組織でプロジェクトマネジメントの基準として利用されています。
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プロジェクトライフサイクルの特徴
続いて、プロジェクトライフサイクルの特徴について詳しく見ていきましょう。
初期段階ほど不確実性が高い
プロジェクトライフサイクルの初期段階では、市場の状況、チームの能力、資源の可用性、顧客のニーズなど、多くの要因が不確実な状態にあり、完全に明確化されていません。そのため、多くの仮定に基づいて大まかな計画が立てられますが、これらの仮定は検証されていないためリスクが伴います。
ただし、プロジェクトが進行するにしたがって、情報量が増えることで、これらの不確実性は徐々に解消され、プロジェクトの成功に向けてより明確な道筋が立てられるようになります。
初期段階ほどステークホルダーの影響を受けてしまう
プロジェクトライフサイクルの初期段階で決定される、プロジェクトの目標、範囲、予算、納期などの基本的な方針や方向性は、ステークホルダーの要求に大きく左右されます。
ステークホルダーの影響は、プロジェクト全体を通じて持続しますが、プロジェクトの初期段階では、その影響を最も受けやすく、ここでの決定がプロジェクトの最終的な成果にも大きな影響を与えることになるでしょう。
そのため、できるだけ早い段階でのステークホルダーとの良好な関係構築が、その後のプロジェクト管理を円滑かつ効率的に行うために極めて重要となるのです。
終盤の変更や修正が難しい
プロジェクトライフサイクルが終盤に差し掛かると、方向性の大幅な修正は難しくなります。特に、終盤で設計や要件定義の段階での誤りが見つかった場合は、スケジュールが大幅に遅れることになります。プロジェクトの開始段階で、後々発生する可能性がある、予期できない事態にも柔軟に対応できる体制を整え、リスクヘッジをしておくことが重要です。
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プロジェクトライフサイクルの種類
プロジェクトライフサイクルには大きく分けて3種類のモデルがあり、プロジェクトの性質や目的に応じて採用します。それぞれの種類と特徴について見ていきましょう。
予測型ライフサイクル
予測型ライフサイクルは、プロジェクトの開始時点で、要件やタスク、成果物が明確に定義でき、変更が少ないと予測されるプロジェクトに適したモデルです。
このモデルでは、要件定義、設計、実装、テスト、リリースといったように、一つのフェーズが完了してから次のフェーズが始まるなど、各プロセスが直線的に一方向で進行されるため、「ウォーターフォール型」とも呼ばれています。
予測型ライフサイクルでは、初期の段階でプロジェクト管理に必要な情報が決定するため、全体のスケジュールやコストなどが可視化されやすいといえるでしょう。一方、プロジェクト途中の変更や軌道修正には多くの工数を必要とします。特に要件定義での誤りは大きなリスクとなるため、初期の十分な情報収集と緻密な計画性が必要です。
反復型・漸進型サイクル
反復型・漸進型サイクルは、プロジェクトを小さなフェーズに分けて、各フェーズを繰り返し改善しながら全体を完成させていきます。
反復型では、同じ工程を何度も行いながら要件を洗練し、漸進型では、それに加えて少しずつ新機能を追加していきます。早期にフィードバックを得ることができ、必要に応じて方向性を調整することができるなど、柔軟なプロジェクト管理が可能なため、変更が頻繁に発生すると予測されるプロジェクトに適したモデルです。
適応型ライフサイクル
適応型ライフサイクルは、プロジェクトの状況が変わるたびに、方針を変えて対応するモデルです。
2~4週間のスパンで1つのフェーズを繰り返し行うのが一般的で、特に変化の激しい環境や要件が流動的なプロジェクトに適しています。
スタートから終わりまで、進行中に得た新しい知見や状況の変化に応じて計画を調整しながら進めるため、顧客のフィードバックへの迅速な対応、きめ細かいリスク管理がしやすいというメリットがあります。
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プロジェクトライフサイクルのステップ
プロジェクトライフサイクルには、4つのステップがあります。それぞれのステップを詳しく説明します。
開始
プロジェクトの目的や目標を定義し、必要なリソースを洗い出すステップです。プロジェクトの目的、制作物の要件、納期、成果物などを明確にし、ステークホルダー間で合意形成します。このフェーズでプロジェクトマネージャーが任命され、プロジェクトが始まります。
計画(準備)
プロジェクトに関係する要素をすべてリストアップし、タスクを実行する順序、方法について立案するステップです。主に次のような計画が挙げられます。
- 制作スケジュール
- 予算、人材、時間、その他のリソースの見積もり
- リソースの割り振り
- リスクマネジメント
- 使用するツールの選定
ここで体制やスケジュールといった重要な要素が決められます。プロジェクトの円滑な進行につながる、重要なステップといえるでしょう。
実行・管理
計画を実行するステップです。マネージャーやリーダーは、進行具合や課題をチェックしながら、問題があった場合はその都度、問題を解決しながらプロジェクトを遂行していきます。また、プロジェクトの進捗を定期的にレビューし、ステークホルダーに報告します。
完了
プロジェクトの最終ステップです。プロジェクトのすべてのタスクを終え、成果物を納品します。プロジェクト全体を振り返り、評価できる点や、学びから得た今後の課題などを文書化して共有します。
このステップを経て、プロジェクトは正式に完了し、プロジェクトチームの解散やリソースの再割り当てなど、プロジェクトの終了に関連する活動が行われます。
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プロジェクトライフサイクル導入のメリット
プロジェクトライフサイクルを導入するメリットはどのようなものでしょうか? メリットとその影響について詳しく解説します。
プロジェクトを円滑に進められる
プロジェクトライフサイクルでは、プロジェクト全体を各ステップに分けたうえで、一連の流れを管理します。そのため、各ステップでのタスクや目指す品質がより明確になり、プロジェクト全体の進行状況や品質管理がしやすくなります。
リスク管理についても、ステップごとのリスク評価と対策が行われるため、プロジェクトの成功確率を高めることができるのです。
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プロジェクトにかかる費用を削減できる
プロジェクトライフサイクルを使ってプロジェクトを運営すると、初期段階でリソース配分の計画が立てられるため、人的・時間的なコストの無駄な消費が避けられます。
たとえば、要件やタスクが明確でない状態で開始されたプロジェクトでは、必要のないタスクや成果物に時間や手間を割いてしまう可能性があります。しかし、プロジェクトライフサイクルを導入することで、必要な成果物だけを効率的に作成することができ、コスト削減が実現するのです。
余分な労力や時間の回避は、チームメンバーのモチベーション向上にも効果が期待できるでしょう。
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プロジェクトライフサイクルのメリットを理解し積極的に導入しよう
プロジェクトライフサイクルは、プロジェクトを「段階」と「一連」の2つの視点で捉えることで、プロジェクト全体の進行管理と各ステップの最適なリソースの割り当てを実現し、効果的に目標達成するためのフレームワークとして有効であるとされています。
ここでご紹介したプロジェクトライフサイクルの特徴やメリットを理解したうえで積極的に導入し、プロジェクト成功率の大幅な向上を目指してみてはいかがでしょうか。
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