銀行業界でRPA化が活用される背景とは?導入事例からわかる活用方法
日本国内においてRPAによる業務改善の先駆けとなった銀行業界。RPAはさまざまな効果をもたらしますが、なぜ銀行業界において普及が進んだのか疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。本記事では、銀行業界でRPAが活用される背景のほか、活用方法や導入事例を紹介します。
目次
RPAが銀行業界において導入が進んでいる理由とは?
RPAの導入が銀行業界で進んでいる理由には以下の3つが挙げられます。
- 銀行業務とRPAの相性が良いため
- ヒューマンエラーを防止できるため
- 働き方改革の促進
それぞれの理由について詳しくみていきましょう。
銀行業務とRPAの相性が良いため
銀行業務には、窓口業務を始めとする、以下のような定型化が可能な事務業務が多い傾向にあります。
- 入出金処理
- 口座開設
- 利用者とのメールの送受信
そして、RPAは定型化された業務の自動化を得意としており、銀行業務とRPAの相性が良いため、銀行業界におけるRPAの導入が進んでいると考えられます。
上記で挙げた銀行における事務業務は日々大量に発生しており、手作業で行うには多大な時間と人的リソースを割かなければなりません。しかし、RPAによって業務を自動化できれば、事務業務の人的リソースと時間を削減でき、その分をコア業務に充てることが可能となります。
このような背景から、メガバンクを中心にRPAの導入が進められたのです。
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ヒューマンエラーを防止できるため
膨大な個人情報とお金のやり取りをする銀行では、些細なヒューマンエラーが、顧客の利益や生活を脅かす事態に発展するなど、大きな問題につながりかねません。しかしながら、すべての業務を手作業で行うとなると、計算ミスや誤入力などのヒューマンエラーをゼロにすることは不可能に近いでしょう。
しかし、RPAではあらかじめロボットに設定した動作が自動で機能するため、人間によって起きる判断ミスや失敗といったエラーは発生しません。正確かつ一定のクオリティを維持できることから、ミスの許されない銀行業務には最適なのです。
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働き方改革の促進
2017年、政府により「働き方改革」の実行計画が発表されて以来、各企業において、残業時間の削減やワークライフバランスの実現といった取り組みが実施されています。そんななか、銀行業界では日々大量に発生する事務業務に、多大な時間と人的リソースを割かなければならない点が課題でした。
すべての業務を手作業で行えば時間がかかってしまううえ、ヒューマンエラーの発生リスクも高まることになります。さらには、修正作業や事後対応にも人手が必要になるなど、イレギュラーな作業が次々と発生する悪循環に陥ってしまうでしょう。
しかし、RPAによって業務を自動化できれば、処理スピードが上がるだけでなく、自動化の後は、基本的に人間が介入する必要はありません。人間の手による仕事量や工数そのものを軽減・削減できることから、RPAの導入は働き方改革の促進にも大きく貢献するといえます。
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銀行業界にRPAを導入する上での課題
銀行業界にRPAを導入する際の課題としては以下の3つが挙げられます。
- 地方の銀行に普及しない
- リストラの前兆による抵抗感
- 必ずしも効果を得られるわけではない
それぞれの課題について詳しく解説します。
地方の銀行に普及しない
メガバンクでは業務効率化を目的としてRPAの導入が進んでいるものの、地方銀行ではRPAの導入が進んでいないのが現状です。地方銀行でRPAの導入が進んでいない原因として、地方銀行の業務効率化に対する意識の低さが挙げられます。
業務の効率性を重視した経営計画を立てている地方銀行はメガバンクに比べて少ない傾向があり、そもそも業務効率化の必要性を感じていない銀行では、RPAの導入は進みません。
また、RPAに関する知識や活用ノウハウが不足しており、導入を推進できる人材が少ない点も、地方銀行でRPAの導入が進まない原因のひとつです。
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リストラの前兆による抵抗感
業務を自動化し、手作業による業務が軽減あるいは削減されるのがRPA導入のメリットです。しかし、手作業で行う業務が減れば、その分人的リソースを割く必要がなくなるため、リストラを危惧した従業員がRPA導入に反発する可能性があります。
実際、RPAを導入したメガバンクでは数万人規模のリストラが計画されるなど、RPA導入とリストラを紐づけてイメージする人は少なくありません。
このように、RPAの導入によって「自分がリストラされるのではないか」と感じた従業員が抵抗感を示すことで、銀行側はRPA導入に踏み切れないという状況に陥るケースもあります。
必ずしも効果を得られるわけではない
業務効率化を目的として導入するRPAですが、RPAを導入したとしても必ず業務の自動化に成功するとは限りません。想定した効果を得られないことも多々あり、RPAの活用方法を誤ってしまうと、かえって負担が増えてしまうリスクもあります。
特に、RPAを使いこなせる人材が銀行の内部で確保できていない場合は、RPAの導入や運用を適切に進められず、効果を得られないままに負担だけが増大するといった可能性も高まってしまうでしょう。
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銀行業界におけるRPAの活用方法
ここからは銀行業務における、具体的なRPAの活用方法をみていきましょう。
入出金・振込業務などの定型業務
入出金・振込業務などの定型業務は、RPAによって自動化することで、窓口における業務の手間や時間の大幅な削減・短縮が期待できます。
窓口対応の手間や所要時間を削減できれば、担当者が他の業務に充てられる時間を確保できるうえ、より多くの顧客対応ができるようになるため、サービス品質の向上にも貢献するでしょう。
インターネットによる口座開設
これまでは実店舗の窓口でしか行えなかった口座開設ですが、近年ではインターネットを使った口座開設も普及しています。
インターネット経由での口座開設にRPAを活用すれば、インターネット上に入力された顧客情報を社内データベースに自動で取り込んだり、入力された顧客情報をもとに必要な資料を自動で請求したりすることが可能です。
このように、インターネットによる口座開設にRPAを活用すれば、人間が介入する手間を最小限に抑えた口座開設が実現します。
他システムとの連携
RPAは、AIや文字認識技術であるOCRと連携することで、その活用範囲を大きく広げることも可能です。OCRやAIとの連携によって、手書きの各種申込書類の文字を認識しデータとして入力・転記したり、顧客情報との照合や各種帳票作成を自動化したりできるようになるのです。
データ入力や顧客情報の照合などが自動化できれば、ヒューマンエラーの防止につながるうえ、手作業よりはるかに速いスピードで処理できるため、業務効率化や生産性向上にもつながります。
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銀行・金融業界におけるRPAの導入事例
最後に銀行を始め、そのほかの各種金融業界におけるRPAの導入事例を7つ紹介します。
三井住友銀行
三井住友銀行では、2017年から3年間にわたる計画のもと、RPA導入を推進してきました。RPAを活用した具体的な内容としては、「顧客訪問準備のレポート作成の自動化」や「預金・融資業務における事務作業の自動化」などが挙げられます。
その結果、2018年には年間約110万時間のPC作業の削減に成功。浮いた労働時間は、顧客への提案内容の質向上など、コア業務に振り分けることで生産性の向上につなげているといいます。
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行では、口座開設業務にRPAを活用しました。具体的には、顧客がスマートフォンから入力した情報をもとに、行内事務センターに設置された勘定系端末をRPAが操作し、情報照会や口座開設に必要な記帳処理を実行するというものです。
RPAを活用した口座開設の自動化により、担当者の負担軽減や業務効率化が期待できるうえ、顧客の利便性向上にもつなげています。
みずほ銀行
みずほ銀行では、2016年からRPAの導入を進め、さまざまな業務の自動化を行いました。自動化の過程や運用において業務にミスが発生しないよう、開発はグループ会社であるみずほ情報総研やITベンダーのエンジニアに依頼し、慎重に進めたといいます。結果、みずほ銀行では年間約77万時間のPC作業を削減しました。
現在は、他企業と協力しながらOCRやAIとRPAを連携させた業務効率化システムを開発しており、ITを活用した先進的な業務の効率化には、今後も高い関心が寄せられています。
伊予銀行
伊予銀行では、2017年5月よりRPA導入を推進し、具体的には「商品販売実績やATM利用件数などの集計業務の自動化」や「CRMシステムに蓄積された顧客と交渉履歴をもとにしたレポートの自動生成」にRPAの技術を活用しています。
その結果、RPAの本格導入後わずか1年半程度で、年間22,000時間もの業務時間削減に成功しました。浮いた時間は、顧客の隠れたニーズの発掘やよりよいサービスの開発などに活用されています。
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行では、住宅ローン関連業務を中心に2016年9月からRPAの導入を進めました。周辺業務の自動化を行ったことで、案件審査に注力する時間を捻出できるようになったため、住宅ローンの審査期間の短縮が実現したといいます。
2019年9月時点でRPAによって自動化した業務は260項目にものぼり、業務時間に換算すると94,830時間の削減に成功しています。
楽天カード
楽天カードでは、これまでカード決済システムからのログ抽出・データの加工・分析を手作業で行っており、その作業工程は200種類にも及んでいました。そこで、一連の業務にRPAを導入し、業務の自動化を図った結果、作業時間を従来の4分の1に短縮することに成功しています。
また、手作業では特定のログのみの分析しか行えなかったのに対し、RPA導入後はすべてのログの分析を行えるようになったため、より精度の高い分析が実現しました。
GMOクリック証券
GMOクリック証券では、2016年10月よりRPAの導入を進めており、わずか2年で「財務」「人事総務」「情報システム」「コンプライアンス」「証券業務」「経営企画」「顧客問い合わせ・FAQアクセス分析」の7部門まで、RPA活用の幅を広げました。
RPAを活用した各部門における業務の自動化・高度化により、2019年2月時点で毎月約170時間もの時間創出に成功しており、浮いた時間を「人間成長」につなげているといいます。
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RPA導入を促進し銀行業界の成長につなげよう
さまざまな業界・企業において導入や活用が進められているRPAですが、定型業務の多い銀行業界では、いち早くその導入が推進され、すでに多くの業務において効率化や生産性の向上といった実績をあげています。
ただし、RPA導入の取り組みは、活用方法を間違うと担当者の負担が増えてしまうリスクも潜んでいるため、どのような方法で活用するかを入念に計画することが大切です。適切な方法でRPAを導入し、銀行業務の効率化やさらなるサービス品質の向上による成長につなげていきましょう。
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