バーティカルSaaS・ホリゾンタルSaaSとは?各特徴やサービス事例を解説

最終更新日時:2024/03/22

SaaS

バーティカルSaaS・ホリゾンタルSaaS

SaaSには、バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSの2つの種類があることをご存知でしょうか。世界的に拡大を続けているSaaS市場ですが、その多くはホリゾンタルSaaSです。本記事では、そんな2つのSaaSについて徹底解説していきます。

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SaaSの意味とは?

SaaS(Software as a Service)とは、ベンダーが提供するクラウドサーバー上のソフトウェアを、ユーザーがインターネットを通じて利用するサービスのことです。

例えば、GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシート、Chatwork、弥生会計オンラインなどがSaaSの例として挙げられます。

SaaSのメリットは次のとおりです。

  • サーバーやアプリケーション、データベースなどのシステムをユーザー側で準備する必要がない
  • 個々の端末にソフトウェアをインストールする必要がない
  • 個々の端末でデータを保存する必要がない
  • パソコンだけでなく、モバイル端末に対応していることが多い(マルチデバイス対応)
  • 複数人で同時に利用できる
  • 環境構築にかかる導入コストを抑えられるため、低コストでサービスの利用を始められる
  • ソフトウェアのアップデートはベンダーが行うため運用管理の負担を抑えられる

ただし上記のように数多くのメリットがある一方で、ユーザーニーズに応じた細かいカスタマイズはできないなどのデメリットがあります。

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バーティカルSaaSとは?

バーティカルSaaSとは、業界・業種に特化したSaaSのことです。

具体的なメリットやデメリットは後述しますが、業種に特化していることから競合は少なく、シェアの獲得と維持が比較的容易というメリットがあります。一方、市場が限定的なので知名度を上げにくいというのがデメリットです。

なお、業種に特化したSaaSがバーティカルSaaSと呼ばれるのは、特定の業種に絞ってサービスを垂直方向に深掘りしていくことが由来です。

ホリゾンタルSaaSとは?

ホリゾンタルSaaSとは、業界・業種に特化していない、全業種型SaaSです。

例えばビジネスチャットやオンライン会計ソフトがホリゾンタルSaaSにあたり、一般的にSaaSというとホリゾンタルSaaSを指します。

具体的なメリットやデメリットは後述しますが、ホリゾンタルSaaSは新規ユーザーの母数が多く、知名度が向上しやすい点がメリットです。しかしその一方で、競合が多いというデメリットがあります。

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バーティカルSaaSのメリットとデメリット

バーティカルSaaSのメリットとデメリットを詳しく紹介します。

バーティカルSaaSのメリット

バーティカルSaaSのメリットは次のとおりです。

  • 比較的競合が少ない
  • 高シェアを狙うことができる
  • ユーザーが離れにくい

比較的競合が少ない

バーティカルSaaSは、ホリゾンタルSaaSと比較して競合が少ないのがメリットです。バーティカルSaaSは業種・業界に限定特化するため、通常はホリゾンタルSaaSより開発が難しいです。

そのため新規参入はホリゾンタルSaaSと比較すると限定的なため、競合が少なくなります。もっとも、現時点ではブルーオーシャンとも言えますが、今後市場が拡大すると新規参入が進む可能性もあります。

高シェアを狙うことができる

バーティカルSaaSは、業種・業界に特化しているので市場において高シェアを狙うことができます。

また、早期に市場参入ができればその市場において高い知名度を獲得できるほか、囲い込み戦略などを通じて先行者優位の状態を作ることができます。

ユーザーが離れにくい

ユーザーは、新規参入した競合SaaSに切り換えたくても、再度初期費用などの負担が必要になる金銭的コストや、各種システムとの連携をし直すなどの物理的コストがかかるので切り換えをためらってしまいます。

また、競合SaaSが少ないため、他社に切り換えることで感じる心理的コストが大きくなるためユーザーが離れにくいです。

このように、ユーザーが別の商品に切り換える際に感じる負担のことをスイッチングコストと呼びます。

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バーティカルSaaSのデメリット

バーティカルSaaSは競合が少なく高シェアを獲得でき、ユーザーが離れにくいというメリットがある一方、次のようなデメリットがあります。

  • 導入数が少ない
  • 知名度を上げるのが難しい

メリットとデメリットの双方を理解しておきましょう。

導入数が少ない

バーティカルSaaSは、そもそもの市場が比較的小さいため、導入数が少ないというデメリットがあります。

よってホリゾンタルSaaSと比べると、事業規模の拡大は限定的になってしまうでしょう。

知名度を上げるのが難しい

バーティカルSaaSは、特定業種内では知名度を上げることができても、市場自体が小さいことから一般的な知名度を上げることは難しいといえます。

事業規模を拡大して知名度を上げたければ、バーティカルSaaSで得た経営資源を活用し、他業種展開を検討することが必要でしょう。

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ホリゾンタルSaaSのメリットとデメリット

続いて、ホリゾンタルSaaSのメリットとデメリットを紹介します。

ホリゾンタルSaaSのメリット

ホリゾンタルSaaSのメリットには、次のような点が挙げられます。

  • 知名度が上昇しやすい
  • 営業における開拓先が豊富

知名度が上昇しやすい

ホリゾンタルSaaSは、バーティカルSaaSのように業種・業界に限定されたものではないため、事業活動を通じて高い知名度を獲得できるというメリットがあります。

しかし、ホリゾンタルSaaSは競合も多いので知名度を上げることが簡単というわけではありません。

営業における開拓先が豊富

ホリゾンタルSaaSは、営業における開拓先がバーティカルSaaSと比べて豊富です。比較的市場が大きく顧客の母数も多いことから、事業規模を拡大することもできます。

ホリゾンタルSaaSのデメリット

では、ホリゾンタルSaaSのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

競合が多い

ホリゾンタルSaaSは、業種・業界が限定されないため、バーティカルSaaSと比べると競合は多くなってしまいます。

競合が多いので、価格を見直したりサービスの質を向上させたりと差別化をしていく必要があります。

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日本のバーティカルSaaSのサービス事例

日本のバーティカルSaaSのサービス事例として、次の2社を紹介します。

  • カイポケ
  • futureshop

カイポケ

カイポケは、株式会社エス・エム・エスが運営する介護事業に特化した経営支援プラットフォームSaaSです。

介護事業者の運営に必要な保険請求機能のほか、業務・採用・購買・金融・営業・M&Aなどを支援する40以上のサービスを提供しています。

2022年10月時点で42,850以上の事業所に導入実績があります。

futureshop

futureshopは、株式会社フューチャーショップが運営するEコマースに特化したワンストップソリューションSaaSです。

サービス開始から19年の実績があり、バーティカルSaaSとして長期に渡り使われているサービスです。

ファン獲得に向けたキャンペーン機能が豊富で、サイトデザインの自由度が高く、多くの外部サービスとの連携に対応していることなどが特徴です。

ユーザーはECアドバイザーとWeb会議で相談することもできます。

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海外のバーティカルSaaSのサービス事例

続いて、海外におけるバーティカルSaaSのサービス事例を紹介します。

  • ORACLE Textura
  • Veeva

ORACLE Textura

Oracle Corporationは、企業の事業活動基盤となるソフトウェアやハードウェア、クラウドサービスなどを提供する企業で、ORACLE Texturaという建設業界に特化したバーティカルSaaSを提供しています。

ORACLE Texturaでは下請業者への請求と支払いシステムを利用でき、支払いの迅速化やリスクの軽減、キャッシュフローの改善を図ることが可能です。

また、プロジェクトの工程に沿った支払いができるほか先取特権放棄書のリアルタイムステータスを表示できるなど、業界ニーズに合った機能が提供されています。

Veeva

Veevaは、ライフサイエンスに特化したバーティカルSaaSです。顧客関係管理ソリューションをはじめ、ライフサイエンス業界に特化した多くのニッチなソリューションを提供しています。

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ホリゾンタルSaaSのサービス事例

続いて、ホリゾンタルSaaSのサービス事例も確認していきましょう。ホリゾンタルSaaSも、日本と海外のサービス事例に分けて紹介していきます。

日本のホリゾンタルSaaSのサービス事例

日本のホリゾンタルSaaSのサービス事例について、代表的なものとして次の2つを紹介します。

  • Sansan
  • マネーフォワードクラウド会計

Sansan

Sansanは、企業データベースと接点データベースを組み合わせて新たなビジネスチャンスを発見できるホリゾンタルSaaSです。

業績や従業員規模、売上高、役職者情報などを含む企業データベースが標準搭載されており、現時点では自社と接点がない企業に対してもアプローチ対象を見つけることができます。

接点のある顧客については、メールや商談履歴など接点情報をデータ化することで、接点情報データベースの構築が可能です。

これにより個人・組織の営業力を強化し、組織の営業成果を最大化することができます。

マネーフォワードクラウド会計

マネーフォワードクラウド会計は、取引の入力業務など面倒な作業を自動化し、業務効率を大幅に改善するホリゾンタルSaaSです。

銀行やクレジットカードだけでなく、電子マネーやPOSレジなどとも連携可能で、取引データを自動取得できます。

また、取得したデータの自動入力や自動仕訳、決算書やレポートの出力が可能です。

スモールビジネスから中小企業、上場企業まで対応可能な3つの料金プランが提供されています。初期費用が無料なのも嬉しいポイントです。

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海外のホリゾンタルSaaSのサービス事例

続いて、海外のホリゾンタルSaaSのサービス事例を紹介します。

  • Zendesk
  • Salesforce

Zendesk

Zendeskは、カスタマーサポートに特化したホリゾンタルSaaSです。Zendeskを利用すると、いつでもどこでも企業に連絡できるようにユーザーが選んだチャネルでサポートを提供できます。

カスタマイズ性にも優れており、ユーザーからのニーズに対して迅速かつ柔軟に対応することが可能です。

Salesforce

Salesforceが提供するCustomer 360は、顧客関係管理に特化したホリゾンタルSaaSです。15万社以上の企業が導入し、営業やカスタマーサービス、マーケティング、Eコマース、IT部門など企業の全部門が顧客データを活用できます。

例えば、営業部門は見込み客との過去の接触履歴やその他の情報をすべてSales Cloudから入手可能です。

また、AIが商談の最適タイミングとアクションを自動通知してくれる機能もありビジネスをサポートしてくれます。

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バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSの違いを正しく理解

業種・業界に特化したSaaSをバーティカルSaaS、業種・業界を問わないSaaSをホリゾンタルSaaSといいます。一般にSaaSというと、ホリゾンタルSaaSのことを指します。

この記事ではバーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSのメリットやデメリットを解説したうえで、具体的なサービス事例について紹介しました。

どちらもメリット・デメリットがあるので、内容をよく把握したうえで自社の施策を推進するためのSaaSを活用していきましょう。

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