バーティカルSaaS・ホリゾンタルSaaSとは?各特徴やサービス事例を解説
SaaSには、バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSの2つの種類があることをご存知でしょうか。世界的に拡大を続けているSaaS市場ですが、その多くはホリゾンタルSaaSです。本記事では、そんな2つのSaaSについて徹底解説していきます。
目次
SaaSの意味とは?
SaaSとは、ベンダーが提供するクラウドサーバー上のソフトウェアを、ユーザーがインターネットを通じて利用するサービスのことです。インターネット環境さえあれば、ソフトウェアをインストールすることなく利用できます。
そのため、自宅や外出先からソフトウェアを操作することができ、テレワークの実現など働き方改革の推進も可能な点が特徴です。複数人で1つのファイルを編集できるため、同時に編集・管理が行える点も魅力といえます。
ソフトウェアの運用や管理、サーバーの構築などはベンダーが行うため、自社で運用や保守を行う手間もかかりません。
▷SaaSとは?基礎知識やPaaS・IaaSとの違いをわかりやすく解説!
バーティカルSaaSとは?
バーティカルSaaSとは、業界・業種に特化したSaaSのことです。
具体的なメリットやデメリットは後述しますが、業種に特化していることから競合は少なく、シェアの獲得と維持が比較的容易というメリットがあります。一方、市場が限定的なので知名度を上げにくい点がデメリットです。
なお、業種に特化したSaaSがバーティカルSaaSと呼ばれるのは、特定の業種に絞ってサービスを垂直方向に深掘りしていくことが由来です。
ホリゾンタルSaaSとは?
ホリゾンタルSaaSとは、業界・業種に特化していない、全業種型SaaSです。
例えば、ビジネスチャットやオンライン会計ソフトがホリゾンタルSaaSにあたり、一般的にSaaSというとホリゾンタルSaaSを指します。
具体的なメリットやデメリットは後述しますが、ホリゾンタルSaaSは新規ユーザーの母数が多く、知名度が向上しやすい点がメリットです。しかしその一方で、競合が多いというデメリットがあります。
▷Caasとは?意味や読み方・類似したクラウドサービスとの違いなどを簡単に解説
▷【解説】FaaSとは?利用するメリットやCaaS・PaaS・IaaSとの違い
バーティカルSaaSのメリットとデメリット
バーティカルSaaSのメリットとデメリットを詳しく紹介します。
バーティカルSaaSのメリット
バーティカルSaaSのメリットは次のとおりです。
- 比較的競合が少ない
- 高シェアを狙うことができる
- ユーザーが離れにくい
競合が比較的少ない
バーティカルSaaSは、ホリゾンタルSaaSと比較して競合が少ないのがメリットです。バーティカルSaaSは業種・業界に特化しており、ホリゾンタルSaaSより開発が難しい傾向があります。
また、新規参入はホリゾンタルSaaSと比較すると限定的なため、競合が少なくなります。そのため、市場において高シェアを狙うこともできるでしょう。
早期に市場参入ができれば、その市場において高い知名度を獲得できるほか、囲い込み戦略などを通じて先行者優位の状態を作ることが可能です。もっとも、現時点ではブルーオーシャンともいえますが、今後市場が拡大すると新規参入が進む可能性もあります。
ユーザーが離れにくい
ユーザーは、新規参入した競合SaaSに切り換えたくても、再度初期費用などの負担が必要になる金銭的コストや、各種システムとの連携をし直すなどの物理的コストがかかるので切り換えをためらってしまいます。
また、競合SaaSが少ないため、他社に切り換えることで感じる心理的コストが大きくなりユーザーが離れにくいです。このように、ユーザーが別の商品に切り換える際に感じる負担のことをスイッチングコストと呼びます。
▷SaaS導入の際の選び方やポイントは?注意すべき点も解説!
バーティカルSaaSのデメリット
バーティカルSaaSは競合が少なく高シェアを獲得でき、ユーザーが離れにくいというメリットがある一方、次のようなデメリットがあります。
- 導入数が少ない
- 知名度を上げるのが難しい
メリットとデメリットの双方を理解しておきましょう。
導入数が少ない
バーティカルSaaSは、そもそもの市場が比較的小さいため、導入数が少ないというデメリットがあります。
よってホリゾンタルSaaSと比べると、事業規模の拡大は限定的になってしまうでしょう。
知名度を上げるのが難しい
バーティカルSaaSは、特定業種内では知名度を上げることができても、市場自体が小さいことから一般的な知名度を上げることは難しいといえます。
事業規模を拡大して知名度を上げたければ、バーティカルSaaSで得た経営資源を活用し、他業種展開を検討することが必要でしょう。
▷SaaSのメリット・デメリットを徹底解説!IaaS・PaaSとの違いや比較も
ホリゾンタルSaaSのメリットとデメリット
続いて、ホリゾンタルSaaSのメリットとデメリットを紹介します。
ホリゾンタルSaaSのメリット
ホリゾンタルSaaSは、バーティカルSaaSのように業種・業界に限定されたものではないため、市場規模が大きい点がメリットです。
営業先も非常に豊富であり、シェアを獲得できれば大きな成果が期待できるでしょう。顧客の母数も多いことから、事業規模を拡大することもできます。
ホリゾンタルSaaSのデメリット
ホリゾンタルSaaSは、業種・業界が限定されないため、バーティカルSaaSと比べると競合は多くなってしまいます。そのため、差別化したり知名度を向上させたりすることが難しい点がデメリットです。
価格競争も激しくなるため、できる限りコストを削減する必要があるでしょう。
▷SaaS利用におけるセキュリティの課題と対策法とは?リスクについて解説
バーティカルSaasの事例
ここからは、バーティカルSaasのサービス事例を5つ紹介します。
カイポケ
カイポケは、株式会社エス・エム・エスが運営する介護事業に特化した経営支援ソフトです。2024年4月時点で50,400以上の事業所に導入実績があります。
介護事業者の運営に必要な保険請求機能のほか、業務・採用・購買・金融・営業・M&Aなどを支援する豊富なサービスを提供しています。タブレットやスマホから簡単に操作ができ、端末を選ばず操作できるため業務を大幅に効率化することが可能です。
また、全国に拠点を設けてオンラインでのサポートや訪問サポートなどを提供しています。
futureshop
futureshopは、株式会社フューチャーショップが運営するEコマースに特化したワンストップソリューションSaaSです。
サービス開始から20年以上の実績があり、バーティカルSaaSとして長期に渡り使われているサービスです。ファンの獲得に向けたキャンペーン機能が豊富で、サイトデザインの自由度が高く、多くの外部サービスとの連携に対応している点などが特徴です。
ユーザーはECアドバイザーとWeb会議で相談することができるなど、サポート体制も充実しています。
スマレジ
スマレジは、iPad・iPhone・iPod touchアプリで利用できるPOSシステムです。無料で始めることができ、導入コストがかからない点が魅力です。
ECサイトや外部システムとの連携が可能で、キャッシュレス決済にも対応しています。またインボイスにも対応するなど、幅広い規模や業種の店舗で利用できます。
利用するうえで万が一わからないことがあっても、電話・チャット・メールでのサポートが365日受けられる点も特徴です。運用方法の相談にも無料で乗ってもらえるため、導入後の不安も解決できるでしょう。
atama+
atama+は、AIを搭載した学習システムです。
生徒一人ひとりの理解度や弱点などをAIが把握して、分析を行います。分析によって一人ひとりに合わせた専用のカリキュラムを構築し、効率よく学習できる点が特徴です。
問題を解く力だけではなく、学習がおもしろいと感じられる力や主体的に考える力、努力を続ける力など、「真の学力」とも呼べる力を身に付けられます。全国で4,000以上の塾教室で採用されており、導入実績も豊富なため信頼性が高いといえるでしょう。
milize Pro
milize Proは、ライフプランのシミュレーションに特化したソフトウェアです。19種類のシミュレーション機能があり、金融商品の運用シミュレーションや住宅ローン繰上げ試算などが行えます。
ほかにも、資産取り崩し運用や必要保障額の試算などにも対応しており、あらゆるお金の相談に対応可能です。milize Proだけで完結するため、面談時でも複数の資料やツールを用意する必要はありません。CRMシステムや家計簿ソフトなどと連携できる性能の高さも魅力です。
ホリゾンタルSaasの事例
ここからは、ホリゾンタルSaasのサービス事例を紹介します。
smartHR
smartHRは、労務管理やタレントマネジメントに特化したソフトウェアで、60,000社以上に導入されている実績があります。
人事・労務業務を効率化するための申請・承認機能やマイナンバー管理機能、年末調整機能などを備えています。業務を効率化しながら人事データを一元管理し、タレントマネジメントを行うことも可能です。
また、入社手続きや雇用契約手続き、給与明細の発行などが紙の書類なしで行えるため、ペーパーレス化も促進できます。
KING TIME
KING TIMEは、349万人以上に利用されている勤怠管理システムです。初期費用は0円で、1人あたり月額330円(税込)からとリーズナブルな価格で利用できます。
顔認証や指紋認証、ICカードなど自社の状況やニーズに合わせて打刻方法を自由に設定可能です。社内以外からもスマホを使って打刻できるため、テレワークの導入も促進できます。
画面構成もシンプルで、ITツールに慣れていない方でも簡単に利用できる点が魅力です。サポート体制も整っており、チャットや電話、動画など幅広い方法で支援が受けられます。
カオナビ
カオナビは、3,600社以上の企業に利用されているタレントマネジメントシステムです。
幅広い人材情報を一元管理することで人材配置や人材開発が容易になり、効果的なタレントマネジメントが行えます。タレントマネジメントに悩んだ際も、3,600社以上の人事ノウハウが凝縮された「コミュニティ」機能から、あらゆる課題を解決できるヒントを得ることもできます。
自社に合ったカスタマイズが可能で、機能や項目を自社仕様にしたり複雑な評価制度に対応したりするなど柔軟性の高さも魅力です。
ジョーシス
ジョーシスは、情シス業務の効率化やセキュリティ強化に特化したソフトウェアで、中小企業から大企業まで、幅広い企業で導入されています。
SaaS・デバイスの一元管理ができ、それぞれの最新の利用状況を一覧で確認することが可能です。利用状況やコストが可視化できるため、棚卸しが楽になるほかセキュリティ管理も効率的に行えるようになります。
Google WorkspaceやMicrosoft 365、ChatworkやSlackなど250個以上のアプリと連携が可能です。従業員ごとにそれぞれのアプリの権限設定や削除漏れアカウントの検知が行えるため、セキュリティを強化できます。
ペライチ
ペライチは、誰でも簡単な3ステップでレスポンシブ対応のホームページが作成できるサービスです。
豊富なテンプレートが用意されており、デザインを選んで文章や画像を挿入するだけでクオリティの高いホームページが完成します。修正や新着情報の更新が簡単に行えるため、更新作業が疎かになることもないでしょう。
また、オンライン決済や予約システム、メルマガ配信など豊富な機能も揃っており、売上の向上につながるホームページを作成可能です。
バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSの違いを正しく理解
この記事ではバーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSのメリットやデメリットを解説したうえで、具体的なサービス事例について紹介しました。
業種・業界に特化したSaaSをバーティカルSaaS、業種・業界を問わないSaaSをホリゾンタルSaaSといいます。一般にSaaSというと、ホリゾンタルSaaSのことを指します。どちらもメリット・デメリットがあるため、内容をよく把握したうえで自社の施策を推進するためのSaaSを活用していきましょう。
SaaSの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら