CAC(顧客獲得費用)とは?計算方法やSaaS事業における重要性を解説

最終更新日時:2023/02/28

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CACとは

SaaS事業の重要なKPIとして活用されているCAC。しかし、CACの意味や重要性を詳しく説明できない方も多いのではないでしょうか。本記事では、そんなCACについて、定義や計算方法など詳しく解説していきますのでぜひ参考にしてください。

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CAC(顧客獲得費用)とは?

CAC(Customer Acquisition Cost)とは、顧客を獲得するために必要なコストを表した指標を指します。Web・SNS運用・広告運用・営業などを行った結果、利益が出ているかを判断することが目的です。

SaaS事業などのサブスクリプションビジネスは、従来の買い切り型ビジネスと違い成約後すぐに費用対効果を判断することが難しいです。

そのため継続的な売上を獲得し事業を継続するためにも、CACをチェックしながら施策に取り組んでいくことが求められます。

CACとCPAの違い

CACと似ている用語に、CPA(Cost Per Action/Acquisition)があります。どちらの意味も「顧客を獲得をするのに要したコスト」なので同じように使われる方も多いですが、指標を使用するシーンが異なります。

CACはSaaS事業などのサブスクリプションビジネス全体のコストに対しての善し悪しを判断する指標です。一方でCPAは、Web・SNSなどで広告運用でコストをかけて行なった施策の結果を判断する指標です。

SaaS事業の全体がCACで、CACの一部がCPAに該当すると覚えておいてください。

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CACの種類

CACは3種類があり、意味やSaaS事業でどのような施策を行うかで使用する指標が異なります。ここではそれぞれの特徴を解説します。

OrganicCAC

OrganicCACとは、広告運用などをしなくても自然に顧客を獲得するアプローチ展開に要したコストのことです。具体的なアプローチ展開には、次のような方法があげられます。

  • 検索エンジンを利用したサイト運営
  • SNS運営
  • 既存顧客からのおすすめ紹介

OrganicCACの特徴は、広告費をかけずに顧客を獲得できた指標なので他の施策との基準として活用できます。また広告やキャンペーンなどの施策で獲得した顧客のコストと自然増で獲得した顧客のコストを比較できるので、今後のマーケティング施策の方針につながります。

広告運用中もOrganicCACは獲得し続けることが可能です。そのため、「OrganicCACで獲得した顧客」と「広告運用で獲得した顧客」のコストを分けておくと、どちらが顧客の獲得につながったか明確にできます。

PaidCAC

PaidCACは、Web広告や有料チャンネルなどを活用し獲得できた顧客に要したコストです。媒体ごとにコストパフォーマンスの測定が可能なので、複数の媒体を運営している場合はそれぞれのCACを出すことで精査が高い数値を把握できます。

広告運用はWebだけでなくSNSなどさまざまな種類がありますが、活用する媒体によって特徴やユーザー属性が異なります。効率的に新規顧客を獲得するためにも、SaaS事業の商品・サービスの特徴やターゲットにあった媒体を選んで運営していくことがポイントです。

まずは各媒体のPaid CACを計算し、どの媒体が自社の利益につながりやすいかを精査しながら比較検討してみてください。

BlendedCAC

BlendedCACはOrganicCACとPaidCACを掛け合わせた指標で、SaaS事業全体で顧客を獲得するのに要したコストを表します。CACを使用する際には、一般的にBlendedCACを表す場合が多いです。

SaaS事業で成果をあげるためには、BlendedCAC を最小限におさえることがポイントです。OrganicCACの割合を上げて、PaidCACを下げると利益につながります。例えば新規顧客は獲得できているものの利益が出ていない場合には、成約率が悪かったりコストがかかりすぎていたりといった原因が考えられます。

利益が出ない状況を改善するには、PaidCACのコストを最低限に抑えOrganicCACを向上する施策に取り組んでいきましょう。

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CACがSaaS事業において重要な理由

CACは、あらゆる業種の中でもSaaSやサブスクリプションを扱う事業で重要な指標です。なぜ重要とされているのか、その背景を紹介します。

合理的に最適なマーケティングチャネルを決定するため

SaaS事業で売上獲得と継続的な事業を行っていくためにも、顧客に商品・サービスをリピートしてもらうことが重要です。

顧客に契約してもらえた段階ではCACが売上を超えている状態なので、中長期的な施策を行い利益を出していくことが欠かせません。限られた予算の中で効率的に売上を出すには、自社にあった施策や媒体を選ぶことが重要です。CACがあれば、コストパフォーマンスが高い施策や運用媒体を選定しやすいといった利点があります。

ユニットエコノミクスを把握するため

ユニットエコノミクスとは、顧客1人あたりに要したコストから利益が出ているかを表した指標です。

顧客の継続的な商品・サービスを利用して売上を上げるSaaS事業では、かけたコストを長期間かけて回収していきます。そのため、ユニットエコノミクスによる費用対効果の把握は欠かせません。

ユニットエコノミクスは、顧客生涯価値(LTV)を顧客獲得単価(CAC)で割ると求められ、数値が1以上になれば良好と判断できます。

CACの計算方法

CACの計算方法は下記のとおりです。

CAC = ひと月でかかった広告や営業などのコスト÷ ひと月で獲得した新規顧客数

顧客を獲得するために、どのような方法と媒体でコストを要したかで計算式に含む数値が異なります。ここでは、Organic CAC・Paid CAC・Blended CACの計算式とポイントをチェックしておきましょう。

  • Organic CAC:自然増で顧客獲得に要したコスト ÷ 自然増した媒体からの新規顧客数
  • Paid CAC:広告などに要したコスト ÷ 広告媒体からの新規顧客数
  • Blended CAC:(営業に要したコスト + マーケティング戦略に要したコスト)÷ 新規顧客数

正しい効果検証を行うためにも、Organic CACとPaid CACを分けて計算することがポイントです。計算は1ヶ月あるいは四半期に一度のペースで効果検証を行います。

Blended CACは一般的なCACと同様の計算式なので、行った施策にフォーカスした指標ではなくSaaS事業全体の費用対効果を表します。

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CACの平均的な目安

CACの平均的な目安を出すには、LTVやユニットエコノミクスといった用語の理解が必要です。

LTVがCACの3倍以上

SaaS事業の費用対効果を判断するためには、LTV(生涯顧客価値)が必要です。LTVとは、顧客が商品・サービスの利用から契約終了までの期間に、企業にどれくらいの利益をもたらすかを表した数値です。このLTVがCACを上回らなければ、会社の売上につながりません。

とくにSaaSなどのサブスクリプションビジネスは、利益が出るまで時間がかかります。

他の事業と同じ指標を使っても精度の高い効果検証が難しいため、ユニットエコノミクスと呼ばれる指標を活用します。ユニットエコノミクスは顧客1人あたりの採算性を表し、計算式は以下の通りです。

ユニットエコノミクス = LTV÷顧客獲得単価(CAC)

ユニットエコノミクスの計算式から、SaaS事業では「LTVがCACの3倍以上だと効果が出ている目安」と言われています。LTVを増加させるためには、コストを抑えることが重要ですが、CACを抑え続けることは最適とはいえません。

買い切り型ビジネスは単発的なコストをかけると成約につながりやすい傾向がありますが、SaaS事業はコストを継続的にかけながら売上を出す必要があるからです。無駄なコストを削減することは大切ですが、コストを削減しすぎてサービスを利用してもらえなくなるというケースも考えられます。

事業を継続させるためにも、コストをかけて顧客を獲得する必要があります。LTVとCACの指標をバランスよく維持することを心がけてください。

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CACの回収期間は12ヶ月以内

CACは獲得できる売上目標に向けてコストを先回りして投資した費用なので、可能な限り早く回収することが収益化のポイントです。CACの回収期間の目安は6〜12ヵ月と言われており、12ヶ月を超えてしまうと費用対効果が減少してしまいます。

売上獲得に中長期的な期間が必要なSaaS事業では、コストパフォーマンスが発揮されているかを把握するためにも大切な目安です。予算に余裕がある大企業であれば、低価格な資本に多く投資できるのでCACの回収期間を中長期的に設定することができます。

一方でスタートアップ企業の場合、資本が高額になりがちなので短期間で回収しなければいけないと捉えてしまうかもしれません。商材によってLTVが異なるため、CACの回収期間も変わってきます。

まずはどのくらいの期間でコストが回収できるかを計算してみてください。そして算出した期間から、短期的にコスト回収できる施策に取り組んでいきましょう。

CACを改善させるための施策

最適なタイミングで投資を行い売上をあげていくためにも、顧客獲得にかかる営業やマーケティングにかかるCACを抑えることがポイントです。ここでは、どのような施策があるか確認していきます。

CRMやMAツールなどの管理ツールを導入する

CRMやMAなどの顧客管理ツールは、顧客ごとのインサイトを管理できるので、ニーズや顧客の心理状態のタイミングに合わせたアプローチができます。そのため、無駄な費用や時間的コストを省くことが可能です。

これまで手作業で行なっていた顧客管理のデータ入力や管理を省くことで、顧客にアプローチをかける時間や準備に充てることができます。

ツールによって機能や顧客データの管理ができる内容が異なるので、自社の最適な内容を精査しながら比較検討してみてください。

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CVRを向上させる

CACを改善するためには、CVR(コンバージョン率)を上げる方法も有効です。CVRが上がれば、同じコストでも獲得できる顧客数が増加するので売上アップにつながります。

CVRを上げるためには、顧客管理ツールやデータ分析ツールを用いて成約につながらない原因を抽出することが大切です。複数の施策を行っている場合、運用媒体ごとのCACの指標があると費用対効果の見込める施策が選定できるのでCACの改善に効果的です。

広告を最適化する

広告運用などは選ぶ媒体によって特徴や費用が異なるので、媒体ごとのCACを採算化することがポイントです。

効果が出ていない媒体の運用を辞めて効果が出ている媒体に注力できるので、CVRの向上だけでなく広告費用のコスト削減にもつながります。

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CACだけではなくLTVの最大化もSaaS事業には不可欠

SaaS事業の継続には、顧客に商品・サービスをリピートしてもらうことが必要です。長期的にリピートしてもらうためにも、さまざまな施策に取り組むことが大切ですが、効果検証の指標となるCACの算出は欠かせません。

顧客を獲得する方法が、広告か自然増かで該当するCACも変わります。自社の商材にあったCACを設定しておくと、コストをかけずに成果につながる施策や運用媒体の選定が可能です。

利益を獲得するためには、LTVがCACを上回る必要があります。しかし顧客獲得のためにCACをかけすぎては、利益が得られない場合も考えられます。

SaaS事業では長期的に施策に取り組むことが大切ですが、長期的なコストをかけすぎても利益が得られないケースもあります。

現状の体制を踏まえつつ、CACだけでなくLTVや状況によって見直しも大切です。

本記事で紹介したCACのポイントを押さえて、SaaSビジネスの展開を成功に導いてください。

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