バックキャスティングとは?フォアキャスティング・使い方・欠点について
バックキャスティングとは、未来を起点にし逆算して実現手段を考えていく手法です。SDGsの取り組みでも基本的な考え方として活用されています。本記事では、そんなバックキャスティングについて、特徴や使い方など詳しく解説していきます。
目次
バックキャスティングとは?
バックキャスティングとは、「最初に未来像を決め、その内容から逆算して未来から現在への道筋を決めるシナリオ作成の手法」です。SDGsの対策方法など、多くの課題解決に利用されています。
とくに解決までに長い時間が必要な課題や、現状から大きな変化が求められる課題を取り扱う際に有効です。企業も持続して経営をおこなううえで、バックキャスティングの手法を活用することがあります。
「理想の姿から逆算していって今何をすべきなのか」というバックキャスティングの考え方はビジネスシーンでも重要となります。
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バックキャスティングとフォアキャスティングの違い
バックキャスティングとよく似た言葉に、フォアキャスティングがあります。フォアキャスティングとは、現在の状況を始点にして未来までの積み上げをおこなう手法です。未来の目標を明確にせず、できる範囲からおこなっていきます。そのためフォアキャスティングは、現在のビジネスモデルやマネジメントを改善する場合に用いられます。
一方でバックキャスティングは未来から逆算する手法なので、フォアキャスティングとは正反対です。フォアキャスティングでは考えない未来を考えるので大きな変化を起こしたい時に活用されます。どちらが良いかではなく、課題に応じてバックキャスティングとフォアキャスティングを使い分けるようにしてください。
バックキャスティングのメリット
バックキャスティングの代表的なメリットは2つです。
- モチベーションを上げて取り組むことができる
- より広い視野を持って取り組むことができる
ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。
モチベーションを上げて取り組むことができる
1つ目のメリットは、フォアキャスティングに比べるとモチベーションを上げて取り組めることです。バックキャスティングは、未来から物事を考える思考です。そのため、あくまでも目標の達成が前提なので、モチベーションを上げて取り組めます。
難しい目標を達成したいと考えている場合は、ぜひバックキャスティングを活用してください。
対して、すぐに目標を達成したい場合には長期的な目標達成の考え方であるバックキャスティングは不向きです。短期的な目標達成にはフォアキャスティングを活用するようにしましょう。
より広い視野を持って取り組むことができる
2つ目のメリットは、広い視野を持って課題解決に取り組めることです。現状では無理と考えていても、未来から逆算して道筋を立てて考えるのでより課題が明確になり、自分が考えてた目標より大きな達成につながる可能性があります。
また、長期的な目標に向けて行動できるため、これまでのアイデアや仕事の進め方に左右されずに新しいやり方が生まれることもあります。否定的にならずどのやり方が最も効率的なのかという視点を持っておくようにしましょう。
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バックキャスティングの欠点
バックキャスティングには、メリットだけでなく欠点もあります。
- 長期的に課題と向き合っていく必要がある
- 失敗のリスクが比較的高くなってしまう
欠点をしっかりと確認しておくことで、バックキャスティングのより効果的な活用が可能です。ここでは主な欠点を2つ解説します。
長期的に課題と向き合っていく必要がある
1つ目の欠点は、根本的な課題解決をおこなう必要があるため、長期的に課題と向き合わなければならない点です。なぜならバックキャスティングを短期的な問題で使う場合、逆算していると効率が悪くなるからです。短期的な課題には、フォアキャスティングの方が合っています。
失敗のリスクが比較的高くなってしまう
2つ目の欠点は、失敗のリスクが比較的高くなってしまう点です。バックキャスティングを活用する場合、現状を考えず未来を考えるため非現実的になる傾向があります。そのため成功率が下がってしまうのがバックキャスティングです。成功率を上げるためにも、活用中に無理を感じたら軌道修正をおこないましょう。
バックキャスティングの戦略策定における使い方|4つのフレームワーク
バックキャスティングを活用する際は、決められた手順に沿って実施すると効率的です。ここでは、バックキャスティングを実施する際の具体的なフレームワークを4つ紹介します。
- 未来ビジョンの設定
- 課題の洗い出し
- 必要なアクションの提案
- 時間軸ごとの配置
1.未来ビジョンの設定
バックキャスティング戦略を進めていく上で重要となるのは、未来ビジョンの設定です。未来ビジョンとは、現時点で想定できる課題が解決した未来像のことを指します。未来ビジョンが明確になると、早期の課題解決につながり、実現の可能性や現状のリソースなどを一切考慮せず、理想的な未来を想像することがポイントです。
ただ、理想と現実のギャップがありすぎると達成の見込みがかなり低くなってしまうため、現実を踏まえた上で最適なビジョンを設定するようにしましょう。
2.課題の洗い出し
次に、課題の洗い出しをおこないます。設定した未来ビジョンを実現させるために必要な課題を洗い出してください。
- 予算が足りない
- 慢性的な人員不足
- 専門スキルがない
などがよく課題として挙げられます。自分の組織だけでなく、取引先・顧客・地域住民・各組織が連携して生まれる新しい組織など、幅広い視野から課題の考察が大切です。
3.必要なアクションの提案
3つ目に、課題解決に必要なアクションを提案します。
- 予算が足りない
- 業績の向上
- 慢性的な人員不足
- 自動化ツールによる業務数の削減
上記のようになるべく具体的な提案に実現性が低いアクションでもいいので、とにかく多くの事例を出す事が重要です。
必要なアクションの提案が少ないと、バックキャスティングの効果が薄れてしまいイメージしていたような結果が得られにくくなるリスクがあるので注意しておきましょう。
4.時間軸ごとの配置
最後に、アクションを時間軸ごとに配置します。長期的なスケジュールを作成すると、現時点で不足しているアクションが見つかります。課題解決までのスケジュールも可視化されるため、チームメンバーのモチベーションを高めることが可能です。
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バックキャスティングをSDGsの取り組みに活用する際のポイント
ここでは、バックキャスティングをSDGsの取り組みに活用する際のポイントを2つ紹介します。
- 2030年を意識して計画を立てる
- 制約条件で未来を絞り込む
近年注目されているSDGsですが、会社全体で取り組めば社外へのアピールにもつながります。
2030年を意識して計画を立てる
1つ目のポイントは、2030年を意識して計画を立てることです。SDGsは2030年までに持続可能なよりよい社会を目指す国際目標のことです。
したがって、2030年に向けたアクションの提案をしなければなりません。2030年までの長期的な計画で考えるため、どうしても現状とはギャップが生じてしまいますがしっかりと未来を見据えて計画を立てましょう。
制約条件で未来を絞り込む
2つ目のポイントは、制約条件で未来を絞り込むことです。制約条件があると、発生する可能性がある未来を絞り込めます。また未来の選択肢を提示すると、企業や社会にとって活用できる未来のシナリオを提供することもできます。
計画を成功させるには、より実現度が高い未来ビジョンの選定が必要です。不確定な要素が少なく、一定期間の状態が変わらない条件(人口の変動や国際的な条約など)を盛り込むとよいでしょう。
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バックキャスティングの具体的な事例
バックキャスティングを実施した主な成功事例は数多くあります。ここでは、具体的な事例を2つ紹介します。
- 2050 日本低炭素社会シナリオ
- オーラライト社
2050 日本低炭素社会シナリオ
1つ目の事例は、国立環境研究所などで構成された「2050 日本低炭素社会シナリオ」チームです。この研究ではバックキャスティングを通して、「2050年に想定されるサービスを運用するために、1990年と比較して温室効果ガスを70%削減できる技術力が、日本に存在すること」を明らかにしました。
温室効果ガス削減のために、該当要素の削減量を計算することで、課題解決に必要な12の方策を導き出しました。この方策は、今も広く社会で活用されています。
オーラライト社
2つ目の事例は、スウェーデンのオーラライト社です。もともと電球の製造をしていましたが、LEDの普及に危機感を感じバックキャスティングの手法で改革をおこないました。
「5年で売上2倍、営業利益率2倍」という売上目標を掲げて、目標達成のために改革をおこないました。とても大きな目標でしたが、製品の改良や営業力の向上・製造からサービスへの転換を通じて事業の拡大に成功した事例です。
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バックキャスティングを実践して大きな目標を達成していこう
達成するまでの期間が長く規模も大きい目標は、バックキャスティングを使うと効率よく計画が進められます。
バックキャスティングと似た言葉にフォアキャスティングがありますが、両者は未来から逆算してシナリオを作成するか、現在を視点に未来への積み上げをおこなうかで違います。本記事で紹介した内容を参考にして、ぜひ自社の目標達成にバックキャスティングを取り入れてみてください。
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