ソーシャルビジネスとは?社会課題にアプローチする事業の事例や課題について

2022/8/5 2022/08/05

SDGs

ソーシャルビジネスに取り組む会議

近年SDGsの広まりと共に注目が集まっているソーシャルビジネス。ソーシャルビジネスとは、社会問題の解決を目的としたビジネスのことですが、果たしてどのような特徴があるのでしょうか。本記事では、そんなソーシャルビジネスについて、定義や事例を詳しく解説していきます。

ソーシャルビジネスとは?

ソーシャルビジネスは、ノーベル平和賞の受賞歴を持つ経済学者のムハマド・ユヌス博士が提唱した概念です。具体的には、気候変動や人種差別などのようなあらゆる社会課題の解決を担うビジネスであるといわれています。

ソーシャルビジネスの定義

ソーシャルビジネスには世界共通の定義がなく、各国によって捉え方が微妙に異なります。日本におけるソーシャルビジネスの定義は、経済産業省が2011年に発表したソーシャルビジネス研究会報告書にて、「社会性」「事業性」「革新性」という3つの要件を満たすものであると触れられています。

つまり、日本におけるソーシャルビジネスとは、法人組織が社会課題の解決をビジネスモデルの中核に据え、事業活動での継続的な支援によって、社会的な価値を生み出すことを指します。

[出典:経済産業省「ソーシャルビジネス研究会報告書」]

ソーシャルビジネスの7原則

ムハマド・ユヌス博士が提唱したソーシャルビジネスには、7つの原則が存在します。

  1. ユヌス・ソーシャル・ビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、貧困、教育、環境等の社会問題を解決すること。
  2. 経済的な持続可能性を実現すること。
  3. 投資家は投資額までは回収し、それを上回る配当は受けないこと。
  4. 投資の元本回収以降に生じた利益は、社員の福利厚生の充実やさらなるソーシャル・ビジネス、自社に再投資されること。
  5. ジェンダーと環境へ配慮すること。
  6. 雇用する社員にとってよい労働環境を保つこと
  7. 楽しみながら。

[引用:一般社団法人ユヌス・ジャパン「ユヌス・ソーシャル・ビジネスの7原則」より]

通常、企業は営利目的で事業活動を行います。しかし、ソーシャルビジネスにおける目的は利益の追求ではありません。あくまで社会課題の解決を目的としています。

加えて、社会課題の解決は、短期的な取り組みで成果を出せるほど簡単なものではありません。中長期的な活動が前提となるため、一定の持続性が求められます。この活動を継続するためには、投資家や従業員などのステークホルダーとの連携が不可欠です。

つまり、ソーシャルビジネスの実現には、ステークホルダーと良好な関係を構築し、人権や環境に配慮しながら、社会課題の解決に貢献できるだけの影響力を持つ必要があるといえます。

ソーシャルビジネスの歴史

ソーシャルビジネスの原型は、1980年代のイギリスで誕生したといわれています。当時、イギリスで政権を執ったマーガレット・サッチャー首相は、歳出の削減を目的に「サッチャリズム」という経済政策を実施しました。

これは小さな政府を追求するため、規制の緩和や国営事業の民営化によって公共サービスの縮小を推し進めるものでした。しかし、サッチャリズムによる財政の引き締めが実現する一方で、失業率は増加の一途をたどり、貧富の拡大が問題視されることになります。

この際、縮小していく公共サービスの隙間を埋めるため、民間企業が事業を立ち上げたことが、ソーシャルビジネスの起源といわれています。その後、ムハマド・ユヌス博士がノーベル平和賞を受賞し、ソーシャルビジネスの概念を提唱したことで、広く認知されるようになりました。

ソーシャルビジネスが注目されている背景

ソーシャルビジネスが注目されている背景には、世界共通の目標として設定されたSDGsの存在があります。SDGsとは、持続可能な開発目標を意味し、2030年までに達成すべきグローバル・スタンダードでの目標設定です。

17種類の目標と169個のターゲットによって構成され、貧困、飢餓、ジェンダー平等、気候変動など、世界各国が共通して取り組むべき社会課題が列挙されています。

さらに、経済活動の中核を担う次世代の年齢層として、世界人口の約3分の1を占めるZ世代(ジェネレーションZ)の存在も忘れてはいけません。25歳未満の若年層を指すZ世代は、SNSを起点に多様性を受け入れる傾向にあり、社会課題に対する強い興味・関心を持つことが特徴といわれています。

Z世代が消費者層のメインになろうとしている現代において、従来の利益追求型のビジネスでは、消費者から支持を得ることは難しいです。このような背景から、ソーシャルビジネスを通じて社会課題の解決に取り組むことは、ブランドの好感度や信頼度を高めるうえでも重要であると考えられています。

ソーシャルビジネスの特徴

ここではソーシャルビジネスの特徴として、「一般ビジネス」「NPO法人」「ボランティア」との違いを解説します。

一般ビジネスとの違い

一般ビジネスとの大きな違いは、事業の目的です。一般ビジネスは利益を追求することに対して、ソーシャルビジネスは社会課題の解決を目的としています。もちろん、一般ビジネスの中に社会貢献の一端を担っているものもあるでしょう。しかし、それはあくまで結果論に過ぎません。

目的が違えば、根幹にある価値観や事業の方向性が変わってきます。そのため、社会課題の解決を最優先としているものをソーシャルビジネスとして区別する傾向にあります。

NPO法人との違い

NPO法人との大きな違いは、事業の持続性です。NPO法人の活動には、寄付金、助成金、補助金などの外部資金が欠かせない存在となっています。

そのため、事業の維持を外部資金に左右される可能性があり、経済産業省が定めるソーシャルビジネスの定義やソーシャルビジネスの7原則と部分的な相違があるといえるでしょう。

ボランティアとの違い

ボランティアとの大きな違いは、活動の定義です。ボランティアは自由意志による無償の奉仕活動を指すため、あくまで参加する立場にあり、事業運営には携わることは基本的にありません。また、ボランティアは無償での活動になるため、持続性の観点からもソーシャルビジネスと相違点があるといえるでしょう。

ソーシャルビジネスの課題とは?

ソーシャルビジネスの課題は主に2つあり、「認知度」と「人材不足」が挙げられます。

認知度の低さ

1つ目は、認知度の低さです。近年は国や自治体の普及・啓発によって、メディアに取り上げられる機会は増えてきたものの、ソーシャルビジネスの詳細を理解している層は決して多くありません。

ステークホルダーの理解を得るためにも、活動の意義や社会的な影響に加え、対象を明確化した戦略的な情報展開が課題となっています。

専門人材の不足

2つ目は、専門人材が足りない点です。ソーシャルビジネスの事業性を支えるためには、経営戦略、マーケティング、ITなど、各領域のプロフェッショナルの協力が欠かせません。

しかし、社会課題のハードルの高さや福利厚生の薄さなどから、専門人材の採用が難航する傾向にあり、人材不足が課題となっています。

ソーシャルビジネスに取り組む際のポイント

ソーシャルビジネスは、社会課題を解決するという目的だけでは維持できません。新たな仕組みを構築し、持続的な事業活動を行うためには、投資家や従業員などのステークホルダーの協力が重要です。

そして、ステークホルダーの共感・賛同を得るためには、取り組む社会課題やターゲットを明確化し、解決に導くための現実的な計画を描く必要があります。

ステークホルダーを上手く巻き込むことができれば、資金調達、認知度、人材育成というソーシャルビジネスを展開するうえでの課題解消にもつなげられるでしょう。

ソーシャルビジネスの事例

ここでは国内・海外でのソーシャルビジネスの事例をご紹介します。

国内のソーシャルビジネスの事例

国内企業のソーシャルビジネスとして、「株式会社ボーダレス・ジャパン」と「株式会社ウェルモ」の事例について解説します。

起業家集団によるプラットフォームカンパニー

ソーシャルビジネスを通じて社会課題の解決に取り組む株式会社ボーダレス・ジャパンは、世界15ヶ国で46にも及ぶソーシャルビジネスを展開しています。

社会起業家が集まり、人種差別、貧困、エネルギー対策、廃棄ロス、就労支援など、あらゆる社会課題に切り込むソーシャルビジネスをゼロから立ち上げるのが、同社の特徴です。

プラットフォームの有効活用により、同社には2022年7月時点で43名の社会起業家と143名のサポーターが参画し、事業を通じて新たな起業家を生み出す循環を作り上げています。

ケアテックによる少子高齢化社会への取り組み

福祉領域に特化したソーシャルビジネスを展開する株式会社ウェルモは、AI技術を駆使したケアテックによる支援を行っています。

AIによる業務効率化や技術伝承でケアマネジャーの負担を軽減する「ミルモぷらん」、業界の偏ったイメージの改善と価値観でのマッチングを重視した「ミルモわーく」などが、代表的な事業です。

これらの取り組みが評価され、同社は厚生労働省や経済産業省の主催イベントにおいて数々の賞を受賞しています。

海外のソーシャルビジネスの事例

海外企業のソーシャルビジネスとして、「グラミン銀行」と「Thankyou Ltd.」の事例について解説します。

マイクロクレジットによる貧困層への支援

ソーシャルビジネスのパイオニアであるムハマド・ユヌス博士が起業したグラミン銀行は、貧困層に対する少額融資を実現するため、マイクロクレジット制度を創設しました。

これは一般の銀行から融資を受けられない貧困層の人々を対象に、数十ドル単位から無担保・低金利で貸し付けを行い、経済的自立を支援するための制度です。

この取り組みをきっかけとし、グラミン銀行とムハマド・ユヌス博士は2006年にノーベル平和賞を受賞しました。そして、現在では貯蓄や保険などの金融サービスまで対象が拡大され、マイクロファイナンスとして世界各国に広まっています。

エシカル消費による社会課題の解決支援

オーストラリアを拠点とする社会企業Thankyou Ltd.では、エシカル消費に重点を置き、人、動物、環境などの社会課題の解決に取り組んでいます。

同社が扱う製品は、オーガニック、ヴィーガンフレンドリー、クルエルティフリー、パームオイルフリーなど、人体や動物、森林への影響を考慮したものが中心となっています。

また、同社はボランティアに対する売上の寄付や グローバルキャンペーンによる消費者への呼びかけなど、貧富の差をなくすための活動に注力しているのも特徴です。

ソーシャルビジネスが描く未来と今後の重要性

本記事ではソーシャルビジネスの意味や歴史、課題や事例を中心にご紹介しました。SDGsによる世界共通の目標設定によって、ソーシャルビジネスの重要性は着実に高まっています。

さらにZ世代をはじめとする若年層の意識変化や、ESG投資(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)による投資家からの要求により、企業の社会課題に対するアクションが、これまで以上に厳しくチェックされることは必至です。

企業のブランド価値を向上させるためにも、ぜひこの機会にソーシャルビジネスを通じて事業活動と社会課題の結びつきを考えてみましょう。

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