福利厚生は節税効果を得られる?仕組みや要件・種類について解説

最終更新日時:2024/03/26

福利厚生サービス

福利厚生の節税効果

従業員の生活の向上を目的に導入される「福利厚生」。福利厚生の導入に必要な費用は「福利厚生費」として経費計上が可能なため、福利厚生を上手に活用すれば節税効果が期待できます。本記事では、福利厚生でどのような節税効果を得られるのか、仕組みや要件などを解説します。

福利厚生費とは?

福利厚生とは、従業員やその家族の健康や生活、働き方の満足度を高めるために、給与とは別に提供されるサービスや制度を指します。

そして、福利厚生のためにかかった費用は福利厚生費として経費計上できるため、上手く運用することで会社側は節税効果を期待できるでしょう。

福利厚生にはさまざまな種類がありますが、大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分けられます。どちらも従業員のための福利厚生ではありますが、勘定科目では、法定福利厚生にかかった費用は「法定福利費」、法定外福利厚生にかかった費用は「福利厚生費」として分類されます。

福利厚生とは?種類や必要性・導入メリット、企業事例を簡単に解説

法定福利費・法定外福利費について

まず、法定福利費と法定外福利費の違いを説明します。

「法定福利費」とは、法律によってすべての企業に設置が義務付けられている、福利厚生に対する費用です。つまり、企業が法定福利厚生を従業員に提供していない場合には、法律違反として罰則が科される可能性があります。

法定福利厚生には以下の6つがあります。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 介護保険
  • 子ども・子育て拠出金

対して「法定外福利費」とは、会社が独自で設定できる福利厚生に対する費用です。たとえば、通勤手当や社員への食事・健康サポート、社内イベント開催などにかかった費用などが該当します。法定外福利厚生は法律による決まりがないため、設置の有無や、提供内容は企業が自由に決めることができます。

ちなみに、経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)が公表した「2019年度福利厚生費調査結果の概要」によると、企業が負担した福利厚生費の1ヶ月平均は、従業員1人当たり108,517 円。うち、法定福利費は84,392 円、法定外福利費は24,125 円です。

近年は、優秀な従業員を確保するために法定外福利厚生に注力している企業も多いですが、正しく節税効果を得るためには、福利厚生費として認められる諸条件を満たす必要があります。

[出典:一般社団法人日本経済団体連合会「2019 年度福利厚生費調査結果の概要」]

福利厚生費として認められるための要件

従業員に福利厚生を提供していたとしても、すべての費用が福利厚生費として認められるとは限りません。福利厚生費として認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 福利厚生規定が整備されていること
  • 全ての従業員が対象であること
  • 費用が妥当な金額であること
  • 現金または換金性の高いものを支給していないこと

たとえば、一部の社員しか参加できない社員旅行に対する費用や、高額すぎる食事手当、現金や金券の支給などは福利厚生費として認められません。節税効果を期待して福利厚生を導入したとしても、福利厚生費として認められなければ課税対象となってしまうため、十分注意しましょう。

福利厚生費で節税ができる仕組み

企業が福利厚生を設置することは、法人税の節税に効果的です。

では、どのような仕組みで節税につながるのでしょうか。まず、法人税は以下の式で算出されます。

法人税=利益×法人税率

つまり、法人税を算出するにあたり、会社の利益を計算しなければなりません。そして、会社の利益は以下の式で算出できます。

利益=売上-費用(損金算入額)

このとき、福利厚生費は税法上「損金」として計上できます。損金とは、会社の資産を減少させる費用や損失のことです。損金額が増加すると、それだけ法人税の対象となる利益が減少するため、最終的な法人税の納税額も減少します。このような仕組みにより、適切な福利厚生は節税につながります。

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節税効果のある福利厚生の種類

ここからは節税効果のある福利厚生を紹介していきます。

社宅

社宅とは、会社が所有・契約している賃貸物件を従業員に貸し出す制度です。

家賃補助として現金を支給する場合は福利厚生費に計上できませんが、従業員が住む社宅の場合は、会社が負担する家賃を福利厚生費に計上できます。社宅の家賃を非課税の福利厚生費とするための条件は、従業員が支払う1ヶ月あたりの家賃が、賃貸料相当額の50%以上であることです。

賃貸料相当額は、以下の①〜③の合計額を指します。

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2. 12円×{その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡)}
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

社宅制度によって節税効果を出すためには、賃貸料相当額の50%以上を従業員から徴収し、残りを会社が負担する必要があります。会社側が賃貸料相当額の51%以上を負担している場合は、課税対象となるため気を付けましょう。

[出典:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」]

出張・通勤手当

一定の条件を満たしている場合、出張手当や通勤手当も福利厚生費として計上できます。

営業活動などのために、普段の勤務地から離れた場所へ出張する場合、常識の範囲内の金額であれば福利厚生費として計上可能です。ただし、出張の諸経費に関するルールを記した「出張旅費規程」を作成し、その規程に基づいて支給する必要があります。

また、原則として現金支給は福利厚生費として認められていませんが、国が定める上限額を超えていなければ、例外的に通勤手当も福利厚生費にできます。

通勤手当の非課税限度額は、公共交通機関や有料道路を利用している場合は1ヶ月あたり15万円までです。自家用車で通勤している場合の非課税上限額は、以下の表のとおりです。

片道55km以上31,600円
片道45km以上55km未満28,000円
片道35km以上45km未満24,400円
片道25km以上35km未満18,700円
片道15km以上25km未満12,900円
片道10km以上15km未満7,100円
片道2km以上10km未満4,200円
片道2km未満(全額課税)

[出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」]

社員割引

社員割引とは、従業員に対し、自社の商品やサービスを割り引いて提供する制度です。その際、企業が負担した分の費用は福利厚生費として扱えます。

ただし、社員割引を福利厚生として計上するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 仕入れ価格以上の割引、かつ、通常価格販売の約70%以上であること
  • 従業員全員が一律の割引利率である、もしくは、地位や勤続年数に応じた合理的な割引率であること
  • 割引する商品やサービスの数は、消費者が一般的に消費する量であること

従業員に福利厚生の限度を超えた経済的利益があるとみなされると、福利厚生費としては認められません。節税効果を得るために、上記条件の範囲内で社員割引を提供しましょう。

[出典:国税庁「給与等に係る経済的利益」]

食事手当

福利厚生としての食事手当は、残業時間内の支給が前提です。たとえば、勤務時間外に弁当などを現物支給した際、その分の費用を福利厚生費として計上できます。

しかしながら、社員食堂など、勤務時間中の食事をサポートする制度を運用している企業も多いでしょう。勤務時間中の食事手当を福利厚生費として計上するためには、次の条件を満たす必要があります。

  • 従業員が食事代の50%以上を支払っていること
  • 1ヶ月あたりの補助上限が3,500円以下であること

食事手当は基本的に現物支給ですが、深夜勤務者など、食事の現物支給が難しい場合に限り、1食あたり300円(消費税および地方消費税の額を除く)の支給は福利厚生費として認められています。

[出典:国税庁「No.2594 食事を支給したとき」]

制服支給

業務に必要な制服を支給・貸与するためにかかった費用も福利厚生費にできます。ただし、以下の条件を満たす必要があります。

  • 業務上のみ着用する被服である
  • 全従業員、または、該当業務を行う従業員を対象とする
  • 被服から自社企業の従業員であると判断できる
  • 現物支給である

なお、仕事上着用するものだとしても、私服としても着用可能なスーツなどの場合は非課税対象にならないため注意しましょう。

[出典:国税庁「背広の支給による経済的利益」]

法人保険の加入

法人保険の加入は、節税効果の高い福利厚生の一つです。最高解約返礼率(その保険の保険期間を通じて解約返戻率が最も高い割合となる期間におけるその割合)が50%未満の場合、法人保険の保険料は福利厚生費として計上できます。

ただし、最高解約返礼率が50%を超える場合は、一定期間、保険料の一部を資産として計上する必要があります。

[出典:国税庁「第3節 保険料等」]

健康診断・人間ドック費用の負担

健康診断や人間ドック費用も福利厚生費として計上可能です。上限金額に決まりはないものの、一般的な健康診断の費用相場である5,000円〜15,000円ほどに収めることが望ましいでしょう。

原則として全従業員が対象でなければなりませんが、「人間ドックは〇歳以上の全従業員が対象」のように、年齢による合理的な制限を設けることは認められています。

スポーツクラブの法人契約

従業員の健康増進施策として、スポーツクラブを契約している企業も少なくありません。全従業員を利用対象者としてスポーツクラブを法人契約した際、利用費用は福利厚生費として計上できます。

ただし、特定の従業員しか利用できない場合や、常識の範囲を超える利用費の場合は、福利厚生費として認められない場合があります。

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部活動の取り入れ

社内に部活動を設置している場合、以下の条件を満たすことで、部活動の取り入れにかかった費用を福利厚生費に計上できます。

  • 全従業員が自由に参加できる
  • 費用が常識の範囲内である
  • 費用は本来の目的に利用される

福利厚生費として計上できるよう、部活動に関するルールをあらかじめ作成するなどし、適切に運用できるようにしましょう。

社内イベント

会社で開催する忘新年会やレクリエーションなど、社内イベントにかかった費用も福利厚生費になります。

ただし、福利厚生費として認められるのは全従業員を対象にしているイベントの場合のみです。特定の部署や役職のみで開催されるイベントの場合は、福利厚生費として計上できない可能性があります。また、費用に上限はないものの、常識の範囲内であることが前提です。

保養所・別荘の購入や借り上げ

一定の条件を満たしている場合、保養所や別荘の購入や借り上げにかかった費用は福利厚生費として計上可能です。福利厚生費として認められる条件は以下のとおりです。

  • 全従業員が利用できる
  • 利用状況を記録している
  • 社内規定を整備している
  • 従業員の受ける利益が妥当

運用の際には、利用状況を記録し、運用実績を提示できるようにしておきましょう。なお、役員しか利用できない施設などは、福利厚生として認められません。また、従業員への福利厚生としては豪華すぎる設備や施設である場合にも、福利厚生費として認められない場合があります。

社員旅行・研修旅行

一定の条件を満たしている場合、社員旅行や研修旅行の費用は福利厚生費として扱えます。福利厚生費として計上できる主な条件は以下の通りです。

  • 旅行期間が4泊5日以内
  • 全従業員の50%以上が参加
  • 会社が負担する旅費が少額である
  • 不参加の従業員に現金支給をしない

費用の上限は定められていませんが、1人10万円程度が一般的です。役員のみの旅行や、表彰を目的とする成績優秀者のみの旅行など、全従業員を対象としていない場合は福利厚生費として計上されず、課税対象となります。

また、従業員の自由度が高すぎる旅行の場合は私的な旅行とみなされ、福利厚生として認められない場合があります。

[出典:国税庁「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」]

慶弔費用の支給

慶弔費用とは、結婚祝いや出産祝い、傷病見舞、香典など、従業員やその家族の慶弔に対して支払われる費用です。

原則、現金支給は福利厚生費として認められていませんが、慶弔費用は例外として、福利厚生費としての現金支給が認められています。慶弔費用に対して上限は定められていないものの、祝金は2〜3万円、弔慰金は1万円ほどが一般的な相場です。

育児・介護のサービス費

従業員のライフステージに応じた支援ができる育児・介護サービス費も、福利厚生費として扱えます。育児・介護サービス費の例としては、保育園料や病児保育施設利用料の補助、介護保険対象サービスの利用補助などが該当します。

いずれの場合も、全従業員が利用対象であることが原則です。支援を必要とする際には、誰でも利用できることを社内に周知しておきましょう。

資格取得支援費

資格取得支援とは、業務上必要なスキルや資格を取得するために必要な研修費や教材費、資格試験受験費を補助するための制度です。従業員のスキルアップやキャリアアップにつながる資格取得支援費も、福利厚生費として計上できます。

資格取得支援費が福利厚生費として認められるのは、会社の業務に関係のある資格やスキルを習得する場合に限ります。なお、業務に関係のある資格だとしても、税理士や医師のような国家資格の取得は、個人の独立・開業に役立つとして福利厚生費にできないため注意しましょう。

福利厚生費に含まれない福利厚生

さまざまな福利厚生が節税効果がありますが、福利厚生費に含まれないものもあります。

交際費・消耗品費用

交際費や消耗品費は、福利厚生には含まれません。

福利厚生の目的は、あくまでも従業員やその家族の健康・生活面の支援です。交際費とは、業務上の関係者や取引先との交渉・交流のための費用であり、社外向けの費用として捉えられます。また、消耗品費は、業務を遂行するうえで必要となる費用であり、従業員の健康・生活の向上には関係ないため、交際費や消耗品費は、福利厚生には該当しないのです。

福利厚生費と交際費・消耗品費の違いを理解し、正しく仕訳を行いましょう。

無利息・低利息の貸付金の利息

災害や病気などの事情によって従業員が一時的に生活費を必要としている場合、社内貸付として、企業は無利息・低利息で貸付金を支給できます。

このとき、利息相当額と実際に支払う利息の差額分は給与として扱われるため、福利厚生費には該当しません。

[出典:国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」]

健康診断のオプション・高額な人間ドック費用

全従業員を対象とする健康診断や人間ドックの受診費用は、福利厚生費として計上が可能です。ただし、高額すぎる人間ドックや、健康診断の追加オプションなどは福利厚生費として認められないため注意が必要です。福利厚生費として認められるのは、一般的な検査項目の受診、かつ、常識的な金額である場合に限ることを理解しましょう。

また、健康診断費用として従業員に現金を支給した場合も、福利厚生として認められず、課税対象となります。福利厚生費とするためには、会社側が診療機関へ費用を支払う必要があります。

家賃補助

従業員個人が契約している賃貸物件の家賃や、住宅ローンの費用の一部を現金支給する家賃補助は、福利厚生費にはできません。

ただし、会社が保有する社宅などの賃貸物件を従業員に貸し出す際は、会社負担分を福利厚生費として計上できます。その際は、従業員から賃料相当額の50%以上を受け取っていることが条件です。

【中小企業向け】おすすめの福利厚生ランキング|導入手順や事例を解説

福利厚生費を上手く活用し節税効果を高めよう

本記事では、福利厚生費の節税効果について解説しました。福利厚生は適切に運用することで、法人税の節税につながります。ただし、福利厚生費として認められるためには条件があり、導入の際には注意が必要です。福利厚生を上手く活用し、節税効果を高めましょう。

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