役員の正しい勤怠管理とは?従業員と異なる点や注意すべきポイントを解説

最終更新日時:2022/11/25

勤怠管理システム

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会社の取締役などの役員は勤怠管理が必要なのか?勤怠管理を行う上で、迷うことがありますよね。原則役員の勤怠管理は不要ですが、例外もあります。この記事では役員の勤怠管理の概要や従業員との法的立場の違い、勤怠管理が必要になるケースや注意点を解説しています。

役員の勤怠管理は原則不要

勤怠管理とは、企業が従業員の出勤や退勤など就業状況を把握、管理することを指します。具体的にはタイムカードや出勤簿などを用いて、始業と終業の時間、労働時間、時間外労働、有給休暇取得などの状況を記録します。

一方で、同じ会社で働いていても役員は従業員とは法的な立場がまったく異なるため、勤怠管理は原則として不要とされています。では、役員の勤怠管理について、詳しく確認していきましょう。

役員は法人との委任関係のため労働時間の管理が不要

法人と役員との関係は、会社法330条によって規定されている「委任」に関する規定に従うこととされています。

法人の所有者が会社の経営を役員に委託し、受託した役員が会社の経営を行うというものです。これは一般の従業員が企業と契約する「雇用契約」ではなく「委任契約」の締結であるため、一般の従業員のように労働基準法が適用されず、就業規則も適用されません。

そのため、労働時間の管理、いわゆる勤怠管理は不要であり、労働時間や残業時間の上限もありません。必要に応じて業務に対応するため、いわば24時間体制で業務を執行することになるのです。

労働基準法の適用は従業員(使用人)のみ

前述の通り、法人と「雇用契約」を結んでいるのが従業員です。従業員は労働基準法第9条に定められる労働者であり、会社・上司の監督のもとに労働する者を指します。

労働基準法は、労働者の生存権の保障を目的としていて、労働者と企業の間で交わされる労働条件について最低基準を定めている法律です。具体的には「労働契約」の内容や賃金、また、勤怠管理の項目でもある始業・終業の時間、休憩時間、休日及び年次有給休暇、災害補償、就業規則などといった項目があります。

くり返しになりますが、一方の役員が法人と交わしているのは「委任契約」であるため、役員には労働基準法は適用されません。労働基準法が適用されるのは、あくまでも従業員のみとなります。

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役員と従業員の立場・取り扱いの違い

同じ会社で働いていても、役員と従業員は法的な立場・取り扱いが異なります。両者の違いへの理解を深めるために、まずは役員と従業員について、詳しく解説していきます。

役員とは

役員とは会社の経営、業務執行や監督を行う者のことで、会社法では「取締役」「監査役」「会計参与」の3種類が定義されています。

「取締役」は、業務執行に関する意思決定を行う役員です。「会計参与」は、取締役と一緒に貸借対照表などの計算書類を作成します。また、その計算関係書類は、会社とは別に備え置き、株主・債権者より開示を求められたときには応じることなども職務としています。「監査役」は、法律や規則に反することがないように、取締役や会計参与の職務を監査する役員を指します。

役員は雇用する側のため、前述の通り勤怠管理は原則として不要です。役員と混同されがちな「専務」や「常務」のみの役職の場合は、役員ではなく社内の規定によって定められた役職名の1つですので注意しましょう。

また、よく耳にする「代表取締役」の肩書きは、文字通り取締役の代表者という意味になります。ちなみに取締役が複数名いる場合は、代表者が社長である必要はありません。

従業員とは

従業員とは、会社と雇用契約を結び、雇用契約の条件に基づいて働く者(労働者)を指しています。

その労働の対価として会社側は、労働者に対して賃金を支払うことになります。会社側は、正確な給与計算を行う目的においても、勤怠管理によって、正確な就業状況を把握していなければなりません。

役員と従業員の違い

役員と従業員の違いは、雇用している側と雇用されている側という、明確な立場の違いがあります。そのため、役員と従業員を兼務しているといったケースを除き、役員は従業員数にはカウントされません。また、報酬の面などでも違いがあります。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

契約形態

役員は法人と「委任契約」を締結しています。この委任について、民法では以下のように記載されています。

(受任者の注意義務)

第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

[出典:e-Gov 民法 第六百四十四条]

これは、役員の業務は、いずれかの監督者のもとで行われる業務ではなく、善良なる管理者としての注意義務をもって委任された業務に当たることを求められているという意味を示しています。

一方、従業員は会社と交わした「雇用契約」または「労働契約」の内容を守りつつ、会社や上司、監督及び命令に従って業務を遂行しなければなりません。例外的な契約を除いて、毎月決まった日に給与が支払われ、基本的には、会社が一方的に従業員を解雇することはできません。

報酬

役員が会社から受け取る報酬は「役員報酬」といい、その金額は原則として株主総会によって決められます。一般的に従業員の給与よりも高い水準ですが、会社の業績が悪化した際などには大幅に減額されることもあります。

従業員が会社から支給される報酬は「給与」として区別され、従業員の給与は役職や勤続年数などによって決められます。さらに会社側は、労働基準法に定められた原則週40時間を超えた労働には、残業代、休日出勤手当など時間外手当を支給しなければなりません。

また、「役員報酬」と「給与」は、税務上の取り扱いにも違いがあり、従業員の報酬は、不当に高額な金額でなければ経費として計上されますが、役員報酬に関しては、一定の条件を満たさない限り経費として計上することはできません。

労働時間

従業員の労働時間は、労働基準法第32条にて、以下のように定められています。

(労働時間)

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

[出典:e-gov 労働基準法 第三十二条]

上記を超えた労働に関しては、会社は残業代を支払う必要があります。しかし、企業や職種によっては、始業から終業までの拘束時間や休憩時間の設定が異なるため、1か月単位で法定労働時間を超えないように管理する「変形労働時間制」を導入している企業も多いです。ただ、いずれの場合にも勤怠管理が欠かせません。

片や、役員は「委任契約」であるため、労働時間の上限はありません。休憩、休日や有給休暇などの付与もないため、勤怠管理も不要なのです

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役員でも勤怠管理が必要なケース

先ほどもお伝えしたように、一般的に役員は「委任契約」であるため、勤怠管理は不要です。しかし、役員であっても次のようなケースでは勤怠管理が必要になります。

  • 兼務役員の場合
  • 役員として登記されているが権限がない場合

それぞれを詳しく確認していきましょう。

兼務役員の場合

兼務役員は法的には「使用人兼務役員」といいます。「取締役営業部長」や「取締役業務部長」のように、役員でありながら同時に従業員としての身分を有し、かつ従業員として常時その職務に従事している者を指します。

この場合、「委任契約」と「雇用契約」の両方が適用となります。さらに、会社や監督者の命令に従って業務を遂行している労働者の側面が強い場合には、労働基準法の適用及び労働時間の管理なども必要です。

以前は役員だったが、後に従業員になった人も、勤怠管理が必要なので注意してください。

また、会社法(第335条2項)により監査役は使用人を兼任することはできず、「社長、理事長その他特定の役員」も使用人を兼任することはできません。

「社長、理事長その他特定の役員」は、具体的には以下が該当します。

一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人

二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員

三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員

四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事

五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の役員のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者

[出典:e-gov 法人税法施行令 第七十一条]

役員として登記されているが権限がない場合

経営の事柄を決定するような権限を持たない役員は、勤怠管理が必要です。権限を持たない役員とは、一般的に「執行役員」と呼ばれています。

執行役員は、「取締役」「監査役」「会計参与」のように、会社法上で定められた役員ではありません。法律上では従業員に該当するため、勤怠管理が必要になるのです。

役員と従業員の勤怠管理の違い

先ほどお伝えしたように、役員であっても勤怠管理が必要な場合があります。しかし、役員と従業員の勤怠管理は同じではありません。ここでは、役員と従業員の勤怠管理の違いについて確認していきます。

健康保険・社会保険は役員も従業員も適用される

社会保険は従業員だけでなく、役員にも適用されます。社会保険とは「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の3つを合わせた総称です。

法人、または常時5人以上の従業員が働く個人事業所の事業主や役員は、労務の対象として報酬が1円でも支払われている場合、原則として健康保険と厚生年金保険に加入しなくてはなりません。

ただし、非常勤役員には社会保険の加入義務は発生しないので、覚えておきましょう。

労災保険と雇用保険は役員には適用されない

原則として、労災保険と雇用保険は役員には適用されません。

しかし、従業員としての労働実態もある使用人兼務役員の場合は、ハローワークが指定する「兼務役員雇用実態証明書」等を管轄のハローワークに提出し、ハローワークが被保険者資格があると認めることで雇用保険に加入できます。この証明書は、すでに従業員として働き、雇用保険の被保険者だった人が役員に就任し、兼務することになった場合でも必要となりますので、注意しましょう。

また、中小事業主や「一人親方」のような場合は「労災保険特別加入制度」を用いて、労災保険への加入が可能です。

役員の勤怠管理をする際の注意点

役員においては、原則として勤怠管理が不要なことはお伝えしてきました。しかし、実働把握のための管理、他社へ出向する際の勤怠管理など、注意点を理解しておく必要があります。

必ず出勤簿を付ける

勤怠管理が不要な役員であっても、労働の実態を会社側が把握しておく必要はありますので、出勤簿は必ず付けるようにしてください。これらの内容は、社会保険適用の際にも重要な記録となります。

また、役員は労働者ではないため、賃金台帳を作成する必要はないと勘違いされているケースがよくあります。しかし、報酬がゼロ出ない限り、役員であっても賃金台帳は作成しなければなりません。その点も注意しておきましょう。

役員が他社へ出向する場合は”従業員”として勤怠管理が必要

役員が他社へ、従業員として出向する場合は、勤怠管理が必要になります。従業員と同様に、何日、何時に出社して何時に退勤しているかの記録が必要です。

従業員としての扱いになるため、各種保険も適用され、報酬及び給与、労働時間、休日などにも関わります。正確に把握しておくために、事前に出向先の企業に確認しておくことも重要です。

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役員でも勤怠管理が必要なケースはある!正しい勤怠管理を

役員は「委任契約」であるため、原則として勤怠管理は不要です。しかし、お伝えしたように、兼務や権限がない役員においては、勤怠管理が必要なケースもあります。

役員の勤怠管理は従業員とは異なる部分も多いため、ここでお伝えした注意点などを参考にしながら、役員の正しい勤怠管理を行ってください。

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