役員も勤怠管理は必要?従業員との違いや必要になるケースを解説

2022/02/04 2024/08/27

勤怠管理システム

役員の勤怠管理

勤怠管理を行ううえで、取締役などの役員は勤怠管理が必要なのか迷うこともあるでしょう。原則として役員の勤怠管理は不要ですが、例外もあります。本記事では、役員の勤怠管理の概要や従業員との法的立場の違い、勤怠管理が必要になるケースや注意点を解説しています。

役員の勤怠管理は原則不要

勤怠管理とは、企業が従業員の出勤や退勤など就業状況を把握、管理することを指します。具体的にはタイムカードや出勤簿などを用いて、始業と終業の時間、労働時間、時間外労働、有給休暇取得などの状況を記録します。

一方で、同じ会社で働いていても役員は従業員とは法的な立場がまったく異なるため、勤怠管理は原則として不要とされています。ここからは、役員の勤怠管理について、詳しく確認していきましょう。

役員には労働基準法・就業規則が適用されない

役員には、労働基準法・就業規則が適用されません。労働基準法・就業規則が適用されるのは、基本的に従業員のみとなります。

役員は、法人と雇用契約ではなく委任契約を締結しているため、一般の従業員のように労働基準法が適用されず、就業規則も適用されません。

労働時間の管理、いわゆる勤怠管理は不要であり、労働時間や残業時間の上限もありません。必要に応じて業務に対応するため、役員の勤怠管理は不要になるのです。

従業員になった場合には勤怠管理が必要

役員から従業員になった場合は、雇用契約を結んで労働者となり労働基準法・就業規則が適用されるようになるため、勤怠管理が必要です。たとえ以前は役員であっても、現在は従業員であれば勤怠管理が必要になります。

また、役員と従業員の性質を併せ持つ「使用人兼務役員」の場合も、委任契約と雇用契約のどちらも締結するため勤怠管理を行わなければなりません。

「勤怠管理が必要なのにできていない」という事態を避けるためにも、契約の内容をよく確認して勤怠管理が必要かどうかを見極めましょう。

勤怠管理とは?目的や重要性・管理項目や方法をわかりやすく解説!

役員でも勤怠管理が必要なケース

一般的に、役員は「委任契約」であるため勤怠管理は不要です。しかし、役員であっても次のようなケースでは勤怠管理が必要になります。

  • 兼務役員の場合
  • 役員として登記されているが権限がない場合

それぞれを詳しく確認していきましょう。

兼務役員の場合

兼務役員は、法的には「使用人兼務役員」といいます。

具体的には、「取締役営業部長」や「取締役業務部長」のように、役員でありながら同時に従業員としての身分を有し、かつ従業員として常時その職務に従事している者を指します。

この場合、「委任契約」と「雇用契約」の両方が適用される点が特徴です。さらに、会社や監督者の命令に従って業務を遂行している労働者の側面が強い場合には、労働基準法の適用及び労働時間の管理なども必要となります。

以前は役員だったが、のちに従業員になった人も、勤怠管理が必要なので注意しましょう。

また、会社法(第335条2項)により、監査役は使用人を兼任することはできず、「社長、理事長その他特定の役員」も使用人を兼任することはできません。

「社長、理事長その他特定の役員」は、具体的には以下が該当します。

一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人

二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員

三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員

四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事

五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の役員のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者

[出典:e-gov 法人税法施行令 第七十一条]

役員として登記されているが権限がない場合

経営の事柄を決定するような権限を持たない役員は、勤怠管理が必要です。権限を持たない役員とは、一般的に「執行役員」と呼ばれています。

執行役員は、「取締役」「監査役」「会計参与」のように、会社法上で定められた役員ではありません。法律上では従業員に該当するため、勤怠管理が必要になります。

会社役員の種類と役割

会社役員には、取締役や常務執行役などいくつかの種類があります。ここからは、会社役員の種類とそれぞれの役割を詳しく解説します。

取締役

取締役とは、会社の重要な意思決定を行う取締役会のメンバーのことです。株式会社の設立時に必ず設置が求められる役職で、取締役会の代表は代表取締役と呼ばれます。

日本では、社長と代表取締役が同じ役職と思われがちですが、実はそれぞれ別の役職です。代表取締役は取締役会の代表ですが、社長は会社の代表で​最高責任者​であるという点に違いがあります。なお、代表取締役と社長を兼任する場合は、代表取締役社長と呼ばれます。

常務執行役

常務取締役とは、会社の業務を統括しながら代表取締役や専務取締役をサポートする役員です。必ず設置しなければならない役員ではないため、常務執行役を設置していない会社もあります。

役員ではありますが、日常業務の管理も行うためどちらかといえば従業員寄りの役員といえるでしょう。

専務取締役

専務取締役は、会社を統括しながら代表取締役をサポートする役割があります。常務執行役と同じく、会社法によって必ず設置しなければならない役員ではありません。

業務内容は会社によって異なりますが、一般的には業務の管理や監督、経営方針や経営戦略の決定、執行などがあげられます。

監査役

監査役は、取締役の職務や会計の監査をする役割があります。大会社などの一部の会社において、設置が義務付けられています。

監査役の設置によって会社の健全性を担保し、健全な営業を行えるようにしている点が特徴です。

執行役員

執行役員は、役員の名はありますが実際には従業員に該当します。

従業員でありながら経営方針に基づいて事業を推進する役割があります。経営にも関わりますが、経営自体に参画する権限はありません。執行役員は従業員であるため、勤怠管理が必要です。

会計参与

会計参与は、取締役などと共同で賃貸対照表や損益計算書などの作成・保管を行い、株主や債権者へ計算書類を開示する役割があります。

公認会計士や税理士だけが会計参与になれる点が特徴です。会計参与が取締役などと共同で計算書類を作成することで、虚偽の記載や改ざんなどを防止できます。

役員と従業員の違い

役員と従業員では、主に報酬や雇用形態、保険などに違いがあります。ここからは、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

報酬の違い

役員が会社から受け取る報酬は「役員報酬」といい、その金額は原則として株主総会によって決められます。一般的に従業員の給与よりも高い水準ですが、会社の業績が悪化した際などには大幅に減額されることもあります。

従業員が会社から支給される報酬は「給与」として区別され、従業員の給与は役職や勤続年数などによって決められます。さらに会社側は、労働基準法に定められた原則週40時間を超えた労働には、残業代、休日出勤手当など時間外手当を支給しなければなりません。

また、「役員報酬」と「給与」は税務上の取り扱いにも違いがあります。従業員の報酬は、不当に高額な金額でなければ経費として計上されますが、役員報酬に関しては、一定の条件を満たさない限り経費として計上することはできません。

役員報酬とは?給与計算との違いや種類・決め方まで解説

雇用形態の違い

役員は、法人と「委任契約」を締結しています。雇用契約ではないため、労働時間の上限はありません。休憩、休日や有給休暇などの付与もなく、勤怠管理も不要です。

一方、従業員は会社と交わした「雇用契約」または「労働契約」の内容を守りつつ、会社や上司、監督及び命令などに従って業務を遂行しなければなりません。

例外的な契約を除いて毎月決まった日に給与が支払われ、基本的には会社が一方的に従業員を解雇することはできず、勤怠管理も必要になります。

保険の違い

保険のうち、社会保険は従業員だけではなく役員にも適用されます。社会保険とは「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の3つを合わせた総称です。

法人、または常時5人以上の従業員が働く個人事業所の事業主や役員は、労務の対象として報酬が1円でも支払われている場合、原則として健康保険と厚生年金保険に加入しなくてはなりません。

ただし、非常勤役員には社会保険の加入義務はありません。加えて、役員には労災保険や雇用保険といった従業員を守るための保険は適用されません。

しかし、従業員としての労働実態もある使用人兼務役員の場合は、ハローワークが指定する「兼務役員雇用実態証明書」などを提出し、ハローワークが被保険者資格があると認めることで雇用保険に加入できます。

この証明書はすでに従業員として働き、雇用保険の被保険者だった人が役員に就任し、兼務することになった場合でも必要となるため注意しましょう。

また、中小事業主や一人親方のような場合は、「労災保険特別加入制度」を用いて労災保険への加入が可能です。

社会保険とは?基本の仕組みや加入条件・制度の種類について解説

労災保険とは?加入条件と労災保険料の給与計算方法

役員の勤怠管理をする際の注意点

基本的に役員の勤怠管理は不要ですが、勤怠管理をする場合は注意すべきポイントがいくつかあります。ここからは、役員の勤怠管理をする際の注意点を2つ紹介します。

必ず出勤簿を付ける

勤怠管理が不要な役員であっても、労働の実態を会社側が把握しておく必要はあるため、出勤簿は必ず付けるようにしてください。これらの内容は、社会保険適用の際にも重要な記録となります。

また、役員は労働者ではないため、賃金台帳を作成する必要はないと勘違いされているケースがよくあります。しかし、報酬が0円でない限り、役員であっても賃金台帳は作成しなければならない点に注意しましょう。

役員が他社へ出向する場合は“”従業員”として勤怠管理が必要

役員が他社へ従業員として出向する場合は、勤怠管理が必要になります。従業員と同様に、何日、何時に出社して何時に退勤しているかの記録が必要です。

従業員としての扱いになるため各種保険も適用され、報酬及び給与、労働時間、休日などにも関わります。正確に把握しておくために、事前に出向先の企業に確認しておくことも重要です。

役員は原則として勤怠管理は不要なものの、実態の把握は必要

役員は「委任契約」であるため、原則として勤怠管理は不要です。しかし、お伝えしたように兼務や権限がない役員においては、勤怠管理が必要なケースもあります。

役員の勤怠管理は従業員とは異なる部分も多いため、ここでお伝えした注意点などを参考にしながら、役員の正しい勤怠管理を行ってみてください。

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