勤怠の改ざん・不正打刻は違法!勤怠管理での防止法や対処法まで解説

最終更新日時:2022/12/09

勤怠管理システム

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勤怠管理にタイムカードを利用する企業は少なくありません。しかし、タイムカードは「打刻漏れ」を理由に、手書きで出退勤時間を記入するなど、勤怠を容易に改ざんすることができてしまいます。本記事では、そんな勤怠の改ざん・不正打刻の違法性について解説し、不正の防止法や対処法などもあわせてご紹介します。

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勤怠の改ざん・不正打刻は違法?

結論として、勤怠を改ざんする行為は、会社側・従業員側のどちらが行なっても違法です。

まず、従業員が残業代の水増しを目的に残業時間を増やすなど、故意に勤怠の改ざんをした場合は、詐欺罪や私文書偽造罪に問われることがあるほか、データ保存されている勤怠記録を改ざんした場合にも、電磁的記録不正作出罪が成立する可能性があります。

また、私文書偽造罪や電磁的記録不正作出罪は、会社側が勤怠記録を改ざんした場合にも成立する可能性があります。

さらに、それらの行為により、本来支払われるべき残業代が支払われていなかったり、実際の労働時間が時間外労働時間の上限規制を超えていたりした場合には、労働基準法違反とみなされ、罰則が科されることもあるでしょう。

加えて、従業員のこのような不正行為に対する社内の処分としては、その内容が悪質な場合、最も重い処分である「懲戒解雇」が妥当であるとした過去の判例もあります。

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タイムカードの改ざん・不正打刻の手法

では、タイムカードの改ざんや不正打刻に該当する行為とは、具体的にどのような行為なのでしょうか。

過去の事例などから、主な手段として挙げられる、4つの改ざん・不正手段をみていきましょう。

代理による打刻

遅刻をした際に、その事実を隠すため、出勤済みの同僚などにタイムカードの打刻を依頼する代理打刻は、タイムカードを使った不正打刻の代表的な例です。

この場合、代理打刻をお願いした本人が罪に問われる可能性があるのはもちろん、それを受けてしまった従業員にも、何らかの処分が下されると考えられるでしょう。

また、就業規則に「他人に打刻させた場合は解雇する」といった明確な掲示がある場合は、即解雇となることもあります。

手書きでの打刻

出退勤時に打刻せず、故意に打刻忘れなどを装って、後日、手書きで出退勤時刻を改ざんするケースもあります。

従業員においては、実際の退勤時刻より遅い時間を書き込むことで、残業代を水増しするため、一方の会社側においては、残業時間を減らし、人件費などのコストをカットする目的などで、このような不正が行われます。

機械の不正操作による打刻

タイムレコーダーの時刻を不正に操作し、実際よりも出勤時間を早めたり、退勤時間を遅くして、勤怠を改ざんした事例もあります。

いずれも従業員が自ら、自分に不利益となる事実を隠すためであったり、残業代の水増しなど、不当な利益を得るために行われることの多い不正行為です。

企業による改ざん

残業代削減や法定労働時間を超える労働を隠蔽するため、会社側が勤怠管理の責任者にタイムカードの改ざんを指示するケースもあります。

もちろん違法行為であり、刑事責任を追及されることもあります。

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勤怠の改ざん・不正発覚時の対処法

勤怠の改ざんや不正は、そのような行為をさせないための防止策を講じておくことが重要ですが、それでも起きてしまった場合には、どのような対処をすべきなのでしょうか。

ここからは、従業員の不正打刻や改ざんが発生した場合の対処法について確認していきます。

ただし、重要なポイントとして、不正が発覚したと同時に「即時解雇」するような処分は、不当解雇とみなされることがあるリスクを認識し、冷静に対処する必要があることを覚えておきましょう。

証拠を確保する

不正行為が疑われる場合は、まず確固たる証拠を確保します。

具体的には、オフィスやビルへの入退室記録、パソコンのログ、入退室の状況がわかる防犯カメラの映像などです。当該従業員に「言い逃れ」させないための、客観的な証拠を収集してください。

不正受給分の返還請求

証拠が確保できたら、本人にその事実を告げ、確認します。同時に改ざんや不正打刻によって、不正に取得された残業代などがある場合は、返還請求を行いましょう。

従業員側が、返還に応じない、支払う意思をみせない場合などは、損害賠償請求訴訟を提起するなどの法的措置を検討することになります。

懲戒処分を課す

次に、懲戒処分を検討します。懲戒処分とは企業の規律や秩序を見出した行為に対して、会社側(使用者)が、従業員に課す制裁罰を意味しています。

処分には、いくつかの種類があり、最も重いとされるのが「懲戒解雇」です。

戒告処分

戒告処分は従業員に口頭での反省の弁を促す、懲戒処分の中で最も軽とされる処分です。

ちなみに書面での反省を求める場合は、譴責処分にあたり、戒告処分よりも重い処分と位置づけられています。

減給処分

減給処分は従業員に毎月支払う給与から一定額を差し引くことです。戒告や譴責処分を行なっても改善が見られない場合などに下されることが多いでしょう。

ただし、減給の額については労働基準法により規制があるため、会社が自由に決められるものではありません。減給処分を下す際は、以下の2点に注意しましょう。

  • 1回の減給額が1日の平均賃金の半額を超えない
  • 継続的に減給処分を下す場合、減給総額は1賃金支払期における賃金総額の1/10未満

停職処分

停職処分は一定期間出勤を禁止する処分です。停職期間は、就業規則に記載されている内容が優先されます。10日〜15日が一般的な期間です。

停職期間中の給与は無給扱いになるため、減給処分よりも重い処分と位置付けられています。

諭旨解雇

諭旨解雇は一定期間以内に退職届を提出するよう、従業員に促す処分です。期限までに退職届を出さない場合は、懲戒解雇の処分が下されることになります。そのため、企業から従業員への情状酌量を含む措置と言えるでしょう。

期限内に退職届を提出すれば自主退職として扱われ、解雇予告手当や退職金が支給されます。ですが、懲戒解雇の場合はどちらも支給されません。従業員に反省が見られた場合やこれまでの貢献度が大きかった場合、諭旨解雇が行われます。

懲戒解雇

懲戒解雇は企業側が解雇予告期間を設けずに、従業員との雇用契約を一方的に解消することです。企業が下す懲戒処分のうち最も重い処分です。多くの場合、解雇予告手当や退職金は支給されません。

また、懲戒解雇は労働者の経歴として残り、離職票・雇用保険受給資格者証・退職証明書など、各種書類からも懲戒解雇の経歴が明らかになるため、再就職にも影響を及ぼすと言えます。

勤怠管理の改ざん・不正の防止法

ここからは、勤怠管理の改ざんや不正打刻を防ぐ方法についてご説明します。

就業規則の周知

出退勤の打刻は本人が打刻する、残業する場合は事前に申請するなど、勤怠管理に関するルールを就業規則に明記しておきましょう。

また、勤怠の不正に関しては、犯罪行為となる可能性があることを周知し、さらに社内においても重い処分が課されることを就業規則で明確にしておくことも、一定の不正抑止策になります。

不正行為に対して厳しく処罰する姿勢を見せることで、社員の意識改革を図ります。

不正防止機能付きタイムレコーダーの導入

不正防止機能付きのタイムレコーダーを導入するのも一つの選択肢です。時間を変更した場合の打刻は表示が区別されたり、時刻が変更されたことが通知されたりするなど、不正防止に役立つ機能を搭載したタイムレコーダーもあります。

このような機能により、不正操作を「しにくくする」環境を整えることも大切です。

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勤怠管理システムの導入

タイムカードのよる勤怠管理にシステムを導入し、管理方法そのものを変えるのも有効な手段となります。

勤怠管理システムには、種類により、打刻と同時に打刻した位置が記録されるGPS機能や、打刻者の顔写真が撮影されることで代理打刻を防止する機能、生体認証など、不正な打刻を予防する多様な機能が搭載されています。

さらに、打刻もれが発生した際の修正などは上長の承認を得た上で、勤怠情報に反映されるフローを搭載しているシステムがほとんどのため、管理者が把握できないところで、打刻が改ざんされてしまうリスクを低減することができます。

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従業員の改ざん・不正による懲戒処分の妥当性について

勤怠の改ざんや不正は、違法となる行為ですが、会社側の管理に問題があった場合、不正を行なった従業員に対する懲戒処分、特に「懲戒解雇」などの重い処分は、不当であると判断されることもあります。

  • 不正に気づいていたにもかかわらず、長期間に渡って黙認していた
  • 同様の前例では「戒告処分」だったにもかかわらず「懲戒解雇」の処分を課した
  • 残業時間に関して実態よりも長いものと短いものが混在している
  • 会社側が、従業員に対して十分な指導を行なっていなかった

などの背景がある場合、特に、従業員になんらかの利益を「詐取」する意図はなかったと認められるようなケースや会社の労務管理に問題があるとされたケースでは、「懲戒解雇」などの重い処分は認められないこともあるため、注意しましょう。

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改ざん・不正を防止して勤怠管理を徹底しよう

タイムカードなどの勤怠記録の改ざんや代理打刻といった不正は違法なだけでなく、罪にもなる可能性のある行為です。

適正な給与支払いのためにも、従業員一人ひとりが、正しい理解のもと、適切に運用することが求められますが、それでも、故意や過失などにより勤怠記録が改ざんされてしまうリスクは十分に考えられます。

そのため、企業においても、不正が起こりにくい環境づくりが求められるでしょう。勤怠管理に関するルールをしっかりと決め、周知するとともに、不正に対する処分については厳正に対処することを示しておくことも大切です。

また、不正防止機能が搭載された勤怠管理システムの導入なども含め、徹底した適切な勤怠管理を目指しましょう。

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