予算管理とは?目的や基本の手順から効率化するコツ・分析方法を解説
予算管理は利益の創出や企業の成長に欠かせない重要な業務です。しかし、具体的な内容や流れについていまいちイメージができていない方も多いと思います。そこでこの記事では、予算管理を行う目的や必要性、具体的な手法などについて解説していきます。
目次
予算管理とは?
予算管理とは、企業が立てた経営企画に沿って適切に予算が使われているかを管理することを指します。企業の経営状況を把握する上では非常に重要な管理指標の一つです。
売上・原価・経費・利益を数値化し、予算と実績を照らし合わせることで、計画と現実にズレがないかを把握します。
なお、企業の予算には大きく分けて下記の4つ種類があります。
- 売上予算(過去の実績や市場・為替動向から算出する売上計画)
- 原価予算(製品やサービスの提供に必要となる費用)
- 経費予算(事業活動を維持するために発生する費用)
- 利益予算(最終的な目標利益)
予算管理の目的
経営に欠かせないといわれる予算管理には、主に4つの目的があります。
(1)経営目標を全社に共有する
経営目標が定性的な情報だけで構成されていると、個々の受け取り方によって、解釈に相違が生まれてくるでしょう。だからこそ、定量的な数値情報を併せて伝えることが重要です。
数値が加わることで、部門や部署において達成すべき目標の共通認識化ができるようになるでしょう。
(2)業務計画を効率的に作成できる
経営目標を数値に落とし込むことで可能になるのが、経営資源の割り当てです。どの部門にどれほどのリソースが必要になるかが明確になれば、意思決定がスムーズになり、業務計画の作成を効率化できます。
予算管理を通じて目標が数値化されることで、実現可能な範囲が把握でき、目標達成に至るまでの障害やリスクも考慮しやすくなるでしょう。
(3)業務計画が予定通り進んでいるか確認する
予算は策定するのがゴールではなく、計画通りに進んでいるか・目標が達成されているかなど、予算と実績を比較することが予算管理の目的です。
適切に予算管理が行われていれば目標に対しての進捗状況を判断できるのです。
なお、当初の予定よりも状況が芳しくない場合は、原因を追究し、改善に向けたアクションを検討することで、軌道修正を図ることができるでしょう。
(4)経営の方向性を決める
予算管理は、経営の方向性を決めるうえで重要な判断材料となります。予算を適切に管理することで、課題点の早期発見による損失の最小化だけでなく、現状における予算の適正値を把握したり、軌道修正の必要性を判断したりすることも可能です。
近年は市場や為替などの外的要因による変動も激しいため、予算管理が行われることで、適切なタイミングで経営の方向性を改めることができるでしょう。
予算管理と経営管理・予算統制との違い
予算管理と類似した概念として、「経営管理」「予算統制」の2つがあります。ここからはそれぞれの違いについて解説していきます。
経営管理とは
予算管理はその名の通り予算の管理のみを行うのに対し、経営管理は、会社の経営目標を達成する上で必要となる社内のリソース調整や総括などを指します。
労務管理・人事管理・財務管理・生産管理など、予算管理を含む幅広い意味合いで経営管理という言葉が用いられます。なお、予算管理は企業の利益に直結する重要な要素となるため、経営管理の中でも特に重要といえます。
予算統制とは
予算管理が予算の計画や管理をはじめとした一連の管理活動であるのに対し、予算統制は進捗状況の管理・分析をして予算と実績の差をなくすことを指します。
そのため、予算管理を構成する要素の一つであり、PDCAサイクル内のD(実行)・C(評価)・A(改善)のプロセスに該当します。
▷予実管理とは?目的・必要性・やり方や効率的な管理方法を解説!
予算管理のメリット
企業の経営において欠かせない予算管理には様々なメリットがあります。
(1)社内で経営目標を共有できる
予算管理をすることによって、コストや売上などの客観的なデータが明確になり、具体的な目標を共有することができます。
経営目標が数値に落とし込まれることによって、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)が設定しやすくなるのです。
また、これらの指標が明確になることで、目標に対する認識のズレを予防したり、施策の効果検証が行いやすくなるでしょう。
(2)物資や費用の配分ができる
経営資源となるヒト・モノ・カネは有限な資源であり、適切に分配しなければなりません。不適切に分配してしまうと、売上の低下や予算と実績の差分が大きくなってしまうなどのリスクがあります。
しかし、予算管理をすることによって、どの分野にどの程度の経営資源を分配すれば良いのか、効率的に分配するにはどうすべきかなどの適切な判断が可能です。
(3)改善点を可視化できる
経営計画における問題点を可視化して分析することも可能です。経営目標が数値化されることで、実績との比較が容易になり、計画とのズレを把握しやすくなります。
当初の目標をショートしそうな場合には、数値に大きなズレが発生している箇所を特定し、その原因を究明していくことで、改善につなげられるでしょう。
▷予算管理でよくある問題点とは?システム導入で改善できる5つの課題
予算管理を実施する方法
ここでは予算管理を実施する方法として、主に4つのプロセスをご紹介します。
(1)予算の編成(Plan)
予算編成は、業績や市場同行などを参考に売上予算、原価予算、経費予算、利益予算などの予算編成を行います。なお、予算編成の主なフローは、トップダウン方式とボトムアップ方式の2つの種類があります。
トップダウン方式では、経営層が計画や目標を設定し、その内容をもとに予算を部門単位で算出していきます。トップダウン方式はスピーディな意思決定ができる反面、現場の実態に即した予算配分が難しいため、細かな実態把握が重要となるでしょう。
ボトムアップ方式では、部門や部署などの現場から予算の見積もりを提出してもらい、その内容をもとに予算を編成します。ボトムアップ方式は現場の意見が反映されやすい反面、経営目標と乖離するリスクがあるため、注意が必要です。
(2)予算編成に基づいて事業計画を実践(Do)
編成した予算をもとに、事業計画を実践する工程です。事業計画では中長期的な目標が設定されているため、定期的な進捗確認が重要になります。
計画と実績の差異を早期発見するタイミングがあることで、数値の乖離が大きくなる前に軌道修正を図ることができるでしょう。
(3)予算実績の分析(Check)
進捗確認など、定期的な振り返りのタイミングで、分析を行う工程です。ここでは予実差異分析を通じて、予算と実績の差額を可視化し、原因特定や影響予測を行います。
進捗が芳しくない場合、詳しい状況を把握できなければ、的確な軌道修正は望めません。
- 計画遂行の妨げとなっている原因は何なのか
- なぜそれが起こってしまったのか
- 影響範囲はどのくらいなのか
これらの詳細な情報を収集し、対策を立てることで、目標達成に向けて改善策を実施できるようになります。
(4)予算分析の結果をもとに改善を実施(Action )
分析結果をもとに立てた改善策を現場にフィードバックし、実行に移す工程です。具体的には達成の可能性を高めるために、予算の増減修正を行い、増減額に応じて資金調達やリソースの再配分を進めていきます。
年間の実績が出た後は、今期全体の課題を抽出しましょう。経営資源をはじめとする社内でコントロールが効く内部環境だけでなく、社会や市場などの外部環境も踏まえながら、来期以降の改善策を立てることで、経営の安定化を図ることができるでしょう。
▷予算管理の業務フローを細かく解説!注意すべきチェックポイントも紹介
予算の分析方法
一般的な予算の分析には、月次試算表が用いられることが多いです。ここでは月次試算表を用いた分析方法についてご紹介します。
(1)月次試算表を作成し結果と比較する
月次試算表とは、月次で作成される賃借対照表と損益計算書をひとまとめにしたものです。
月次試算表によって経営成績や財務状況が可視化されることで、利益、資産、負債などの情報を整理でき、予算と実績の差額が明らかになります。
(2)差異が生まれた部分の原因を分析・解決法を実践する
月次試算表を通じて予算と実績の差異が判明した後は、課題分析を行いましょう。金額差がどのくらいなのかという数字的な観点だけでなく、結果の要因が社内外のどこにあるのかを特定し、解決法を実践することが重要です。
しかし、それでも予算と実績の差額が埋まらない場合は、自社の営業力を適切に理解できない可能性もあり得ます。その際は予算の見直しを検討するだけでなく、最悪の場合は事業からの撤退も考慮するなど、冷静な判断が求められるでしょう。
予算管理を行う具体的な手法
予算管理を行う具体的な手法は、エクセル管理とシステム管理の2種類があります。
(1)エクセルで管理する
1つ目は、エクセルを利用して予算管理を行うパターンです。計算式の入力による自動計算や、月次や年次単位でのファイル管理ができます。
一方で、エクセルでの予算管理は、「リアルタイムでの進捗把握が難しい」「ヒューマンエラーが起こりやすい」などのデメリットもあります。
特に部門を横断して予算管理を行う場合、進捗確認が煩雑になることに加え、関与者の増加で入力ミスが多発するなど、工数を圧迫する可能性は否めません。
▷予算管理はエクセルでは厳しい?問題点やシステムを導入すべき理由
(2)予算管理システムを導入する
2つ目は、予算管理システムを導入して管理するケースです。共有機能によるリアルタイムでの情報管理や、他の業務システムとの連携機能によるデータ抽出ができます。
システムの導入には費用がかかるものの、デモ画面などで実際の機能を無料で試せるシステムもあるため、従来のエクセル管理からシステム管理への切り替えを検討する企業も増えてきています。
▷【2023年最新】おすすめ予算管理システム16選!機能や費用を徹底比較
予算管理システムを導入するメリット
予算管理システムの導入には、主に6つのメリットがあります。
- データの入力を自動化してミスなく管理ができる
- 予算編成の効率化ができる
- 適切なKPIの設定とモニタリングができる
- 分析・評価作業の簡便化ができる
- 月次試算表で部署ごとに達成状況が表示できる
- 社内の機密情報を安全に保管できる
これらのメリットについて、1つずつ解説します。
(1)データの入力を自動化してミスなく管理ができる
予算管理システムでは、予実管理に必要なデータ入力の多くを自動化できます。
原価管理、販売管理、会計管理など、各部門で利用している業務システムのデータを収集し、一元管理できる機能によって、入力ミスを予防できるのは大きなメリットです。
(2)予算編成の効率化ができる
予算管理システムではフォーマットが統一されているため、エクセル利用時に起きていたデータの転記や調整が必要ありません。これによってデータの取りまとめに要していた工数が大幅に削減でき、作業効率を飛躍的に向上できるでしょう。
(3)適切なKPIの設定とモニタリングができる
予算管理システムにはシミュレーション機能が搭載されているため、予算計画が適正か判断でき、KPIなどの指標の見直しにも役立てることができるでしょう。さらに入力項目のカスタマイズにより、指標を部門単位で周知することも可能です。
また、予算管理システムは自動的にモニタリングを実施するため、リアルタイムでの業績把握ができます。事業の進捗をタイムリーに把握できることで、オペレーションの改善や予算の再編成の必要性を迅速に判断できるでしょう。
(4)分析・評価作業の簡便化ができる
予算管理システムでは、フィードバック機能によって分析・評価作業を簡便化できます。このフィードバック機能は、事前に設定した期間の終了タイミングで、予算と実績を比較し、その差額を評価する機能です。
さらにシステムに搭載されたレポーティング機能や分析ツールを併用することで、現場に対して視覚的に分かりやすい状態でデータを提供しつつ、分析による改善案の立案にも貢献できるでしょう。
(5)月次試算表で部署ごとに達成状況が表示できる
前述したレポーティング機能では、月次試算表による部署単位での達成状況の可視化が可能です。これによって経営戦略と従業員の結びつきが把握でき、部署単位で評価や責任が明確化することで、結果的に全体のモチベーションや生産性の向上が期待できます。
(6)社内の機密情報を安全に保管できる
近年の予算管理システムはクラウド型のものが主流となっており、サービス提供者のクラウドサーバを活用してデータのやり取りを行います。
クラウド型のシステムは、アップデートによるセキュリティパッチの更新が定期的に実施されるため、自社でのセキュリティ対策が難しい企業にとっては、機密情報を安全に保管するうえでも役立てられるでしょう。
▷予算管理システム導入のメリット・デメリットをそれぞれ徹底解説!
業務を効率化できる予算管理システム
ここでは主な予算管理システムとして、5社のサービスをご紹介します。
(1)BizForecast
BizForecastは、プライマル株式会社が提供するグループ経営管理システムです。エクセルの良い部分を活かすというコンセプトを採用しており、データベースによる一元管理や集計の効率化を行いながら、属人化の排除やエクセルでは難しい複雑な処理を実現しています。
提供元 | プライマル株式会社 |
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初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
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機能・特長 |
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URL | 公式サイト |
(2)iFUSION
iFUSIONは、株式会社インプレスが提供するExcel運用サポートシステムです。あらゆる拠点で管理されているExcelデータを集約し、進捗確認、データ分析、システム間連携などを実施できます。
提供元 | 株式会社インプレス |
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初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特長 |
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URL | 公式サイト |
(3)Workday Adaptive Planning
Workday Adaptive Planningは、米国に本社を置くWorkdayが提供するクラウド型の予算管理ソリューションです。マウス操作を軸とした直感的な使用が可能で、ドラッグ&ドロップによるレポーティングやプルダウンによる切り替えなど、初心者でも覚えやすい操作性が特徴になっています。
提供元 | Workday, Inc. |
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初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入企業数 | 累計導入社数5,500社以上(2021年7月時点) |
機能・特長 |
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URL | 公式サイト |
(4)bixid
bixidは、株式会社YKプランニングが提供するクラウド型の経営管理サービスです。勘定奉行、弥生、freeeなど30メーカー/60種類の会計ソフトに対応しており、財務・会計の可視化を通じて、金融機関や会計事務所などとの連携強化を目的としています。
提供元 | 株式会社YKプランニング |
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初期費用 | 初期導入サポート:71,500円(税込)~ |
料金プラン | フリー:0円 ライト:660円(税込)/月 シミュレーション:5,390円(税込)/月 プランニング:10,780円(税込)/月 bixider:10,780円(税込)/月 |
導入企業数 | 導入事業者数10,000社以上(2022年5月時点) |
機能・特長 |
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URL | 公式サイト |
(5)Board
Boardは、Board Internationalが提供するクラウド型の経営管理サービスです。CPM(企業パフォーマンス管理)とBI(ビジネスインテリジェンス)を兼ね備えたプラットフォームを強みとし、40を超える国際的なアワードでの受賞歴があります。
提供元 | Board International |
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初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入企業数 | 3,000社以上 |
機能・特長 |
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URL | 公式サイト |
効率的かつ適切な予算管理を行うことが重要
本記事では経営の安定化に欠かせない予算管理について、意味や目的、具体的な方法やサービス例についてご紹介しました。
企業が存続するには、継続的に利益を出すことが不可欠です。そのためには経営計画の定量面を支える予算管理が適切に行われることが重要となります。
企業として成長し続けるためにも、予算管理の改善を通じて予算編成の精度を上げ、ボトルネックの解消に取り組んでいきましょう。
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