予算管理とは?目的や基本の手順から効率化するコツ・分析方法を解説

最終更新日時:2022/11/15

予算管理システム

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予算管理とは経営において欠かせないものです。この記事では、予算管理の概要や目的、必要性などを解説します。また、予算管理を行う方法や分析方法、具体的な手法と効率化するためのコツを紹介します。あわせて、予算管理に役立つ5つのシステムも取り上げます。

予算管理とは?

予算管理とは、経営管理の一端を担う活動であり、経営の安定化を実現するうえで欠かせないものです。

企業における予算とは、一般的に売上・利益目標を指します。主な構成要素は、次の4つです。

  • 売上予算(過去の実績や市場・為替動向から算出する売上計画)
  • 原価予算(製品やサービスの提供に必要となる費用)
  • 経費予算(事業活動を維持するために発生する費用)
  • 利益予算(最終的な目標利益)

予算管理の概要

予算管理は、企業が継続的な利益をあげるために、経営判断の材料として必要な情報を整理するためのものです。売上・原価・経費・利益を数値化し、予算と実績を照らし合わせることで、計画と現実にズレがないかを把握します。

企業が存続していくためには、利益を出すことが絶対的な条件です。倒産を回避するためにも、企業は予算管理で利益・損失の実態を把握し、仮に損失が発生している場合には原因究明を進めることが重要となります。

予算管理の目的

経営に欠かせないといわれる予算管理には、主に4つの目的があります。

(1)経営目標を全社に共有する

経営目標が定性的な情報だけで構成されていると、個々の受け取り方によって、解釈に相違が生まれてくるでしょう。だからこそ、定量的な数値情報を併せて伝えることが重要です。

数値が加わることで、部門や部署において達成すべき目標の共通認識化ができるようになるでしょう。

(2)業務計画の作成を効率化する

経営目標を数値に落とし込むことで可能になるのが、経営資源の割り当てです。どの部門にどれほどのリソースが必要になるかが明確になれば、意思決定がスムーズになり、業務計画の作成を効率化できます。

予算管理を通じて目標が数値化されることで、実現可能な範囲が把握でき、目標達成に至るまでの障害やリスクも考慮しやすくなるでしょう。

(3)業務計画が予定通り進んでいるか確認する

予算は策定がゴールではありません。策定後の実績比較による現状分析こそ、予算管理の重要な目的です。予算が設定されていれば、現状がどのくらいの到達率で、予定よりどのくらい遅れているのかなど、着地見込みや進捗状況を可視化できます。

当初の予定よりも状況が芳しくない場合は、原因を追究し、改善に向けたアクションを検討することで、軌道修正を図ることができるでしょう。

(4)経営の方向性を決める

予算管理は、経営の方向性を決めるうえで重要な判断材料となります。予算を適切に管理することで、課題点の早期発見による損失の最小化だけでなく、現状における予算の適正値を把握したり、軌道修正の必要性を判断したりすることも可能です。

近年は市場や為替などの外的要因による変動も激しいため、予算管理が行われることで、適切なタイミングで経営の方向性を改めることができるでしょう。

予算管理はなぜ必要なのか

予算管理が求められる理由として、主に3つのメリットが挙げられます。

(1)目標の数値化ができる

1つ目は、目標の数値化ができる点です。経営目標が数値に落とし込まれることによって、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)が設定しやすくなります。

これらの指標が明確になることで、目標に対する認識のズレを予防したり、施策の効果検証が行いやすくなるでしょう。

(2)物資や費用の配分ができる

2つ目は、物資や費用などの配分を適正化できる点です。目標の数値化が施されることで、力を入れるべきポイントが明確になり、物資や費用のバランス調整に客観的な判断材料が生まれます。

これによってリソース配分の過不足を抑制し、目標達成に必要な生産量を確保することができるでしょう。

(3)経営における問題点を可視化・分析できる

3つ目は、経営計画における問題点を可視化し、分析できる点です。経営目標が数値化されることで、実績との比較が容易になり、計画とのズレが把握しやすくなります。

当初の目標をショートしそうな場合には、数値に大きなズレが発生している箇所を特定し、その原因を究明していくことで、改善につなげられるでしょう。

予算管理を実施する方法

ここでは予算管理を実施する方法として、主に4つのプロセスをご紹介します。

(1)予算の編成

予算編成は、売上予算、原価予算、経費予算、利益予算を数値化する工程です。予算編成の主なフローは、トップダウン方式とボトムアップ方式の2つの種類があります。

トップダウン方式では、経営層が計画や目標を設定し、その内容をもとに予算を部門単位で算出していきます。トップダウン方式はスピーディな意思決定ができる反面、現場の実態に即した予算配分が難しいため、細かな実態把握が重要となるでしょう。

ボトムアップ方式では、部門や部署などの現場から予算の見積もりを提出してもらい、その内容をもとに予算を編成します。ボトムアップ方式は現場の意見が反映されやすい反面、経営目標と乖離するリスクがあるため、注意が必要です。

(2)予算編成に基づいて事業計画を実践

編成した予算をもとに、事業計画を実践する工程です。事業計画では中長期的な目標が設定されているため、定期的な進捗確認が重要になります。

計画と実績の差異を早期発見するタイミングがあることで、数値の乖離が大きくなる前に軌道修正を図ることができるでしょう。

(3)予算実績の分析

進捗確認など、定期的な振り返りのタイミングで、分析を行う工程です。ここでは予実差異分析を通じて、予算と実績の差額を可視化し、原因特定や影響予測を行います。

進捗が芳しくない場合、詳しい状況を把握できなければ、的確な軌道修正は望めません。

  • 計画遂行の妨げとなっている原因は何なのか
  • なぜそれが起こってしまったのか
  • 影響範囲はどのくらいなのか

これらの詳細な情報を収集し、対策を立てることで、目標達成に向けて改善策を実施できるようになります。

(4)予算分析の結果をもとに改善を実施

分析結果をもとに立てた改善策を現場にフィードバックし、実行に移す工程です。具体的には達成の可能性を高めるために、予算の増減修正を行い、増減額に応じて資金調達やリソースの再配分を進めていきます。

年間の実績が出た後は、今期全体の課題を抽出しましょう。経営資源をはじめとする社内でコントロールが効く内部環境だけでなく、社会や市場などの外部環境も踏まえながら、来期以降の改善策を立てることで、経営の安定化を図ることができるでしょう。

予算の分析方法

一般的な予算の分析には、月次試算表が用いられることが多いです。ここでは月次試算表を用いた分析方法についてご紹介します。

(1)月次試算表を作成し結果と比較する

月次試算表とは、月次で作成される賃借対照表と損益計算書をひとまとめにしたものです。

月次試算表によって経営成績や財務状況が可視化されることで、利益、資産、負債などの情報を整理でき、予算と実績の差額が明らかになります。

(2)差異が生まれた部分の原因を分析・解決法を実践する

月次試算表を通じて予算と実績の差異が判明した後は、課題分析を行いましょう。金額差がどのくらいなのかという数字的な観点だけでなく、結果の要因が社内外のどこにあるのかを特定し、解決法を実践することが重要です。

しかし、それでも予算と実績の差額が埋まらない場合は、自社の営業力を適切に理解できない可能性もあり得ます。その際は予算の見直しを検討するだけでなく、最悪の場合は事業からの撤退も考慮するなど、冷静な判断が求められるでしょう。

予算管理を行う具体的な手法

予算管理を行う具体的な手法は、エクセル管理とシステム管理の2種類があります。

(1)エクセルで管理する

1つ目は、エクセルを利用して予算管理を行うパターンです。計算式の入力による自動計算や、月次や年次単位でのファイル管理ができます。

一方で、エクセルでの予算管理は、「リアルタイムでの進捗把握が難しい」「ヒューマンエラーが起こりやすい」などのデメリットもあります。

特に部門を横断して予算管理を行う場合、進捗確認が煩雑になることに加え、関与者の増加で入力ミスが多発するなど、工数を圧迫する可能性は否めません。

(2)予算管理システムを導入する

2つ目は、専用のシステムを導入して、予算管理を行うパターンです。共有機能によるリアルタイムでの情報管理や、他の業務システムとの連携機能によるデータ抽出ができます。

システムの導入には費用がかかるものの、デモ画面などで実際の機能を無料で試せるシステムもあるため、従来のエクセル管理からシステム管理への切り替えを検討する企業も増えてきています。

予算管理システムを導入するメリット

予算管理システムの導入には、主に6つのメリットがあります。

  1. データの入力を自動化してミスなく管理ができる
  2. 予算編成の効率化ができる
  3. 適切なKPIの設定とモニタリングができる
  4. 分析・評価作業の簡便化ができる
  5. 月次試算表で部署ごとに達成状況が表示できる
  6. 社内の機密情報を安全に保管できる

これらのメリットについて、1つずつ解説します。

(1)データの入力を自動化してミスなく管理ができる

予算管理システムでは、予実管理に必要なデータ入力の多くを自動化できます。原価管理、販売管理、会計管理など、各部門で利用している業務システムのデータを収集し、一元管理できる機能によって、入力ミスを予防できるのは大きなメリットです。

(2)予算編成の効率化ができる

予算管理システムではフォーマットが統一されているため、エクセル利用時に起きていたデータの転記や調整が必要ありません。これによってデータの取りまとめに要していた工数が大幅に削減でき、作業効率を飛躍的に向上できるでしょう。

(3)適切なKPIの設定とモニタリングができる

予算管理システムには、シミュレーション機能が搭載されているものがあります。この機能を活用することで、予算計画が適正か判断でき、KPIなどの指標の見直しにも役立てることができるでしょう。さらに入力項目のカスタマイズにより、指標を部門単位で周知することも可能です。

また、予算管理システムは自動的にモニタリングを実施するため、リアルタイムでの業績把握ができます。事業の進捗をタイムリーに把握できることで、オペレーションの改善や予算の再編成の必要性を迅速に判断できるでしょう。

(4)分析・評価作業の簡便化ができる

予算管理システムでは、フィードバック機能によって分析・評価作業を簡便化できます。このフィードバック機能は、事前に設定した期間の終了タイミングで、予算と実績を比較し、その差額を評価する機能です。

さらにシステムに搭載されたレポーティング機能や分析ツールを併用することで、現場に対して視覚的に分かりやすい状態でデータを提供しつつ、分析による改善案の立案にも貢献できるでしょう。

(5)月次試算表で部署ごとに達成状況が表示できる

前述したレポーティング機能では、月次試算表による部署単位での達成状況の可視化が可能です。これによって経営戦略と従業員の結びつきが把握でき、部署単位で評価や責任が明確化することで、結果的に全体のモチベーションや生産性の向上が期待できます。

(6)社内の機密情報を安全に保管できる

近年の予算管理システムはクラウド型のものが主流となっており、サービス提供者のクラウドサーバを活用してデータのやり取りを行います。

クラウド型のシステムは、アップデートによるセキュリティパッチの更新が定期的に実施されるため、自社でのセキュリティ対策が難しい企業にとっては、機密情報を安全に保管するうえでも役立てられるでしょう。

業務を効率化できる予算管理システム

ここでは主な予算管理システムとして、5社のサービスをご紹介します。

(1)BizForecast

BizForecastは、プライマル株式会社が提供するグループ経営管理システムです。エクセルの良い部分を活かすというコンセプトを採用しており、データベースによる一元管理や集計の効率化を行いながら、属人化の排除やエクセルでは難しい複雑な処理を実現しています。

提供元プライマル株式会社
初期費用要問い合わせ
料金プラン

  • Standard(年払いプラン:年額660,000円(税込)/月、月払いプラン:60,500円(税込)/月)
  • Enterprise(要問い合わせ)
機能・特長

  • 部門別・店舗別P⁄L予算編成
  • 中期経営計画/事業計画
  • 日次レポーティング分析
  • 各種予実比較・分析
  • 管理会計レポーティング
  • B⁄S・C⁄F予算管理
  • KPI管理・分析
URL公式サイト

(2)iFUSION

iFUSIONは、株式会社インプレスが提供するExcel運用サポートシステムです。あらゆる拠点で管理されているExcelデータを集約し、進捗確認、データ分析、システム間連携などを実施できます。

提供元株式会社インプレス
初期費用要問い合わせ
料金プラン要問い合わせ
機能・特長

  • データ収集からレポート作成までの自動化
  • Excelフォーマットを活用したノンプログラミングでのシステム設計
  • ユーザー/組織単位での利用権限の設定
  • 提出状況のリアルタイム確認
URL公式サイト

(3)Workday Adaptive Planning

Workday Adaptive Planningは、米国に本社を置くWorkdayが提供するクラウド型の予算管理ソリューションです。マウス操作を軸とした直感的な使用が可能で、ドラッグ&ドロップによるレポーティングやプルダウンによる切り替えなど、初心者でも覚えやすい操作性が特徴になっています。

提供元Workday, Inc.
初期費用要問い合わせ
料金プラン要問い合わせ
導入企業数累計導入社数5,500社以上(2021年7月時点)
機能・特長

  • 直感的なユーザビリティ
  • シート間連携による柔軟な管理基盤
  • 部門単位での利用目的の拡大
URL公式サイト

(4)bixid

bixidは、株式会社YKプランニングが提供するクラウド型の経営管理サービスです。勘定奉行、弥生、freeeなど30メーカー/60種類の会計ソフトに対応しており、財務・会計の可視化を通じて、金融機関や会計事務所などとの連携強化を目的としています。

提供元株式会社YKプランニング
初期費用初期導入サポート:71,500円(税込)~
料金プランフリー:0円

ライト:660円(税込)/月

シミュレーション:5,390円(税込)/月

プランニング:10,780円(税込)/月

bixider:10,780円(税込)/月

導入企業数導入事業者数10,000社以上(2022年5月時点)
機能・特長

  • 会計基本帳票
  • 財務診断
  • 簡易5ヵ年シミュレーション
  • 経営計画
  • モニタリング
  • KPI管理
  • 接続アカウント管理
  • 会計データチェック
URL公式サイト

(5)Board

Boardは、Board Internationalが提供するクラウド型の経営管理サービスです。CPM(企業パフォーマンス管理)とBI(ビジネスインテリジェンス)を兼ね備えたプラットフォームを強みとし、40を超える国際的なアワードでの受賞歴があります。

提供元Board International
初期費用要問い合わせ
料金プラン要問い合わせ
導入企業数3,000社以上
機能・特長

  • FP&A(Financial Planning&Analysis)
  • データディスカバリ
  • エンタープライズレポーティング
  • IBPプラットフォーム
URL公式サイト

効率的かつ適切な予算管理を行うことが重要

本記事では経営の安定化に欠かせない予算管理について、意味や目的、具体的な方法やサービス例についてご紹介しました。

企業が存続するには、継続的に利益を出すことが不可欠です。そのためには経営計画の定量面を支える予算管理が適切に行われることが重要となります。

企業として成長し続けるためにも、予算管理の改善を通じて予算編成の精度を上げ、ボトルネックの解消に取り組んでいきましょう。

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