業務改善提案とは?提案のポイントや提案書の書き方・実現する方法を解説
日々の業務を進めていく中で、少なからず改善すべき点が見つかることがあるでしょう。業務改善を行えば、生産性向上やコスト削減が実現できる場合があります。そこで本記事では、業務改善における提案書の書き方や実現までのポイントを解説します。提案書の書き方に悩んでいる方はぜひお役立てください。
目次
業務改善提案とは
業務改善とは、社内の業務の現状を見直し、改善する取り組みのことです。業務改善では以下のような、「ムダ」「ムリ」「ムラ」の3Mを取り除きます。
- 不要な作業や人材によるムダ
- ムリな業務量や納期の設定
- 業務量や人件費によるムラ
現状の業務を可視化し、どれだけ非効率なのかを明らかにして、改善策を上司や経営層に提案することが業務改善提案です。
業務改善提案の目的
業務改善をする目的は、現状の業務状態をより良いものにすること以外にも、次のような目的があります。
- 業務プロセスの最適化
- 属人化の防止
- 人材不足への対応
- 働き方改革への対策
昔から変わらないやり方や性能の劣る設備を使い続けている場合には、効率よく作業するために最新のツールやシステムを導入することで、業務プロセスの最適化が期待できます。
また、属人化の防止も業務改善提案の目的の1つです。特定の社員しか行えない業務や作業があると、担当の社員が長期で休んだり退職してしまうと仕事が回らなくなり、事業にも影響が出る可能性があります。
人手が不足している企業では業務改善により、効率化を進めることで少ない人数でも通常通り業務が行えるようになるでしょう。業務改善の推進で業務のムダを無くすことで、残業時間の削減にもつながることが期待されます。働き方改革の推進で、長時間労働の是正に取り組む企業にとって、意味のある施策といえます。
また、適切な納期設定の実現や過重労働に陥っている社員の業務量を減らすことは、働きやすい職場作りの実現にとっても重要なことといえるでしょう。
業務改善による3つのメリット
業務改善を実現することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、次の3つのメリットを紹介していきます。
- 生産性の向上
- 無駄なコスト削減
- 従業員のモチベーションUP
1.生産性の向上
業務改善を進めることで、生産性の向上につながります。企業の生産性は投入した時間や労働力に対して、どのくらいの成果を出せたかで示されます。
例えば、ある業務で1人あたり30分短縮できた場合、5人では150分の時間短縮に成功したことになります。短縮した時間を別の業務に当てることで、企業全体における生産性の向上につながります。
定型的な作業の場合には、ツールの導入などの自動化によって生産性向上が実現できる場合があります。先の例ではノンコア業務で150分の時間を短縮した分を、コア業務にリソースを振り向けることで業績アップが期待できます。
2.無駄なコスト削減
業務効率化が実行され、3M(ムダ・ムリ・ムラ)が取り除かれると、人件費などが下がり企業の業績向上につながります。
ただし、業務効率化のため、ただ経費を削ると商品やサービスの品質低下を招くことになりかねないので注意が必要です。業務改善はコストの削減を実現させつつ、企業の利益や競争力を損なわないように行うことが重要です。
浮いた経費で、技術力の向上やサービス改善のための設備や施策に投資することで、顧客の満足度が向上し、売上拡大につながることが期待できます。
どのような部分が3Mにつながっているのか社内で入念に検討し、業務改善によって無駄なコストの削減を実行しましょう。
3.従業員のモチベーションUP
ムダ・ムリ・ムラが改善された最適な職場環境は、働きやすさにつながり、従業員のモチベーションアップにも寄与するでしょう。
意味や意義が見出せない業務は従業員にとってストレスとなり、モチベーションを低下させ生産性や効率にも悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、社員の離職につながるリスクもあるため企業にとって大きなデメリットとなります。
業務の問題点を発見した場合、他の従業員と共有することで業務への取り組み方や姿勢を把握できるうえに、チームの一体感の醸成にもつながります。
「従業員の負担が増していないか」「残業が増えていないか」などの問題を見つけて労働環境を見直すと、従業員のやる気も向上してパフォーマンスの最大化も期待できます。
業務改善提案の実現方法
ここでは、業務改善提案の実現方法を、次の6つの手順で解説していきます。
- 業務内容の把握
- 課題の洗い出し
- 課題に優先順位をつける
- 改善案を提案する
- 改善案を実行する
- 効果の検証をする
1.業務内容の把握
提案書を作成する前に、まずは業務内容を把握します。現状の業務内容から業務プロセスを可視化しないと、複雑化や属人化している業務を見つけにくいためです。
可視化することでブラックボックス化されている業務が明確になり、「どのような課題を抱えていて、なぜ解決できていないか」がわかります。
一般的に、業務内容やプロセスの把握は業務の流れをフローチャート化して、可視化すると便利です。担当部署や担当者に、作業の流れをアウトプットしてもらうことで、業務内容の正確な把握ができるうえに課題の発見にもつながりやすくなります。
2.課題の洗い出し
次に、課題の洗い出しを行います。現場で実際に作業をしている従業員にヒアリングやアンケート調査を実施して課題を見つけ出します。
その際、特に意識するのが先述した3M(ムダ・ムリ・ムラ)です。次の4つのポイントに注意して、現場で発生している課題や各業務プロセスのボトルネックとなっている部分を抽出します。
- 作業量
- 納期
- 人件費
- 残業時間
さまざまな視点から3Mに当てはまる部分がないかチェックして、課題を整理しましょう。
3.課題に優先順位をつける
課題に関して、優先順位をつけていきます。どの課題から解決すべきなのか、重要度や緊急度をもとに優先順位をつけることで、効率的・効果的に課題の解決を実施できます。
例えば、マトリクス表を作成して仕分けすると優先順位を整理しやすくなります。2×2のマトリクス表を作り、縦軸を緊急度、横軸を重要度として、業務内容を当てはめる方法が一般的です。
- どの程度の改善が必要なのか
- 実行できる改善方法なのか
- 投資した場合のメリットや効果
など、企業独自の基準を設定することで、優先順位の仕分けがしやすくなります。
4.改善案を提案する
優先順位をつけた課題に関して改善案を提案していきます。具体的な案は個人またはチーム内で検討しましょう。チームで改善案が出てこない場合、他部署などと連携する方法や、他社の成功事例や失敗事例を見て参考にするのも1つの手です。
具体的な事例を見せながら、上司に説明すると説得力が増し業務改善提案が承認されやすくなります。実現するまでの費用や期間、具体的な効果やメリットなどを踏まえて、業務改善提案書を作成しましょう。
5.改善案を実行する
作成した提案書をもとに改善策を実行していきます。優先順位が高い課題から改善していきます。
進捗状況や業務管理のために以下のツールを導入すると、円滑に業務改善が進むためおすすめです。
- タスク管理ツール
- プロジェクト管理ツール
- 定型業務自動化ツール
6.効果の検証をする
業務改善を実施する前と後で、どのくらいの効果があったのか検証していきます。数値化して検証する項目の例は、以下のようなものがあります。
- 削減できたコスト
- 業務効率化できた時間
- 残業時間
- 生産性
計画通りに改善できなかった項目については、改善案の修正を行うなどPDCAを回しながら、精度を上げていきましょう。
改善前と改善後でどのくらいの効果があったのか記録しておくと、将来の業務改善において役に立つ事例となります。改善案と実行過程や効果などを、社内で共有する仕組みも同時に構築しておくと良いでしょう。
業務改善提案書の記載項目と書き方
上司や経営層に提出する業務改善提案書には、決まったテンプレートはありません。必要なポイントさえ押さえておけば自由に作成できます。
業務改善提案書に記載する項目と書き方はどのようにすればいいか、以下にまとめたので紹介していきます。
- 全体的な概要
- 詳細の説明
- 現状の業務内容
- 問題点や課題
- 解決までの手段
- 定量的なコスト
- 改善後のメリット
- スケジュール
1.全体的な概要
上司や経営層などの読み手が一目で全体像をつかめるように、業務改善提案書の概要をはじめに記載します。
業務改善提案書の全体はA4サイズの用紙一枚にまとめて、ダラダラと記載するのではなく5W1Hで簡潔に伝えましょう。
- When:いつ・どのくらいの期間
- Where:改善を行う業務範囲
- Who:対象となる部署・メンバー
- What:業務改善の内容
- Why:業務改善を行う背景や理由
- How:業務改善のアプローチ方法
2.詳細の説明
次に、具体的に業務改善を行う部分について、詳細を説明していきます。
上司や経営層であっても、業務改善を実施する部署の業務内容や業務プロセスをすべて理解しているわけではありません。読み手の理解が促進されるように、丁寧に記載しましょう。
3.現状の業務内容
業務改善の必要性を理解してもらうために、改善する部署や現場の業務内容を説明します。文章のみで記載するのでなく、グラフや表などを使い、数字を入れながら表現すると読み手にとってわかりやすくなります。
例えば、図表や数字を入れる要素には次のような項目があります。
- 業務の発生件数
- 担当人数
- 工数
- 期間
詳細の説明と同じように、読み手の視点に立って記述することが大切です。
4.問題点や課題
問題点や課題は、意思決定層に業務改善の必要性を理解してもらうために大切なポイントです。問題点や課題を伝える際、「ミスが多い」「残業が増えている」など漠然とした理由を提示しても伝わりません。
「毎月〇回ミスが発生している」「毎月〇時間の残業時間が発生している」など具体的な数を用いて伝えると、問題や課題の重要性が伝わります。
5.解決までの手段
次に、どのようなアプローチで課題解決を実行するか、具体的な手段を記載します。「~したい」といった個人の主張ではなく、具体的にどのように効果的な業務改善を実施するのか記載することがポイントです。
課題を解決することによるメリットや、仮説に基づく数値を使いながら記載することが大切です。
6.定量的なコストについて
業務改善を行う際に発生するコスト、時間や人員がどのくらいなのか記載します。経営層は費用対効果を考えて、提案内容を実行に移すかどうか判断します。
実現性が乏しいと判断された場合や、費用対効果が低い場合には、業務改善案が採用されないケースもあるでしょう。提案が通らない場合は、優先順位を見直して、実現できる部分から再度提案していきましょう。
7.改善後のメリット
上司や経営層に説得する際、どのように企業の利益になるのか理解してもらうために、改善後のメリットと効果を伝えます。メリットだけでなく、改善策を実施した際に起こりうるリスクやデメリットも合わせて記載しておくと説得力が増します。
例えば、業務プロセスの実施に伴う一時的な現場の混乱や、それに伴う効率の低下などが考えられます。こうした事象への対策も併記することで、より精度の高い提案書となるでしょう。
8.スケジュール
最後に業務改善における実施スケジュールについて、想定期間を記載します。具体的なスケジュールを掲示することで、改善内容に現実味を与えます。
全体的な期間はもちろん、具体的な業務プロセスや部署の改善策がいつまでに終了するのか、段階的に明記しておくと良いでしょう。
業務改善を提案する時のポイント
上司や経営層に業務改善を提案する際、どのような伝え方をすれば採用される確率があがるのか、提案する際のポイントを5つにわけて紹介します。
改善後のゴールを明示する
業務改善の提案をする際、改善後のゴールを明示することが大切です。上司や経営層は、業務改善案によってもたらさせる効果やメリットを見て、採用するかどうか判断します。
「メリット」「施策による効果」「実施する目的」などについて、提案内容に実効性がない場合には承認される確率が低くなります。
企業全体に波及するメリットと、業務改善による数値的な効果を念頭に置き、具体的にどのようにゴールを設定すべきなのかを意識して提案しましょう。
解決までの手段を明確にする
改善策を提案する際には、解決までの具体的な手段を明示する必要があります。どのような方法を用いて、業務改善を実行するのかを明確に伝えましょう。例えば、手段には次のようなものがあります。
- ツール・システムの導入による自動化
- ノンコア業務を外部に委託
- 業務担当者の変更
- 業務を分業または一元化
手段が記載されることで、上司や経営層も具体的にイメージできるようになり、提案書が採用される確率が高まるでしょう。
数値による定量的な内容にする
業務改善の必要性を伝えるためには、数値による定量的な表現を心がけます。具体的な数字を用いることで、齟齬(そご)なく相手に正しく伝わるためです。
業務改善を例にすると、「この業務を改善すると成果物が飛躍的に増えます」ではなく、「この業務を改善すると、業務時間が30分短縮されるうえに成果物が2割増えると期待できます」としたほうが、提案を受ける側も理解しやすくなります。
業務改善の必要性を理解してもらうためにも、抽象的な表現は避けて数値で表現することを意識しましょう。
生じるリスクを考慮する
上司や経営層にメリットだけを伝えても「本当に成功するのか?」と疑われてしまいます。業務改善の提案をする際、必ず業務改善中に起こりうるリスクを説明しましょう。
計画の段階で起こりうるリスクを考慮して関係部署に伝えておくと、問題が発生した時に被害が最小限に抑えられます。
リスクを洗い出す方法は、例えば次の3つがあります。
- 従業員へのヒアリング
- 業務の流れの視覚化
- 「なぜなぜ分析」
生じるリスクを徹底的に分析することで、発生した際も業務改善が停滞することなく続けられます。
主観的にならない
上層部に業務改善を伝える場合、主観的ではなく客観的に伝える必要があります。主観的な内容の場合、仲のいいメンバーや付き合いの深い部署のことを考え、会社全体の利益にはつながらないおそれがあります。
業務改善の必要性を上層部に伝えるには、あくまでも企業全体のことを考えて改善の必要性を訴えます。読み手は改善を実施する部署の詳細な業務プロセスについて深くは理解していない可能性もあるため、日ごろからどのような業務を行っているのか業務フローや内容を記載して説明します。
その際には、できる限り定量的で客観視した内容を心がけるべきでしょう。
業務改善の実現は必要な情報を揃えて提案しよう
本記事では、業務改善の提案をする際のポイントや提案書の書き方、実現する方法について解説しました。提案書では、改善後にどのような効果があり、企業にどのようなメリットが生まれるのかを記載して上層部に客観的な視点で伝えることが大切です。
業務改善提案書は決められたフォーマットは特にないので、ここで紹介したようなポイントを押さえて記載することが大切です。効果的な提案書を作成し、業績アップや生産性向上、働き方改革を実現させましょう。
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